見もの・読みもの日記

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NHK土曜ドラマスペシャル『真珠湾からの帰還』を見て

2011-12-11 22:01:22 | 見たもの(Webサイト・TV)
○NHK土曜ドラマスペシャル『真珠湾からの帰還~軍神と捕虜第一号~』(2011年12月10日)

 打ち明けて言ってしまうと、2010年の大河ドラマ『龍馬伝』で後藤様(象二郎)を演じた青木崇高氏が主演することを知って、じゃ、見てみるか、くらいに軽く考えていた。テレビを見る習慣がどんどんなくなっているので、気をつけていたつもりなのに、最初の10分は見逃してしまった。しかし、見始めたら一気に引き込まれて、1時間半があっという間。一昼夜たっても、まだ、感動と呼ぶのも軽すぎるような、片付かない気持ちが重たく残っている。

 ドラマは、1941(昭和16)年12月8日、5艇の特殊潜航艇「甲標的」に乗り込み、真珠湾攻撃に参加した10人のうち、ただひとり生き残って、米軍の捕虜となった酒巻和男少尉の実話に基づく。戦死した9人は「九軍神」と讃えられ、捕虜になった酒巻の存在は極秘とされた。私は全然知らなかったが、ネットで「九軍神」を検索すると、当時の写真や新聞紙面がけっこう見つかる(画像検索、すごい!)。

 酒巻氏には『捕虜第一號』(新潮社、1949)という著書もあるので、おおよそ事実に基づいているのかな、と思う。だが、ドラマは事実そのものではないだろうし、ある必要もない。こういう極限状況におかれた人間が、何を考え、どういう振舞いをするか、納得できる映像を作り出すのは、制作者と俳優の力量である。

 「死を覚悟することと、死を願うことは違う」とか「命の使い方が分からなければ、分かるまで生きればいい」とか、終盤にちょっとカッコいいセリフがあるにはあるが、全体としては、淡々とした進行で、そこがよかった。変な煽りがないかわりに、ずっと緊張の糸の途切れるところがなかった。主演の青木崇高は期待以上。視線ひとつに万感の思いを込めることのできる役者さんだと思う。あと、男泣きが似合うよなあ。大河ドラマでは、セリフが聴き取りにくい印象があったが、今回は問題なし。大河は、大声ばかり出させていた演出が悪かったのかもしれない。

 エンディングでは、今も真珠湾の水底に沈む「甲標的」の画像に「その戦果はなかったとされている」というスーパーが流れた(ただし異説もあり)。実在の酒巻氏は、終戦の年にはまだ27歳で、1999年、81歳までご存命だった。ドラマのエンディングに「トヨタ・ド・ブラジル社長に就任」と流れたので、戦後の日本に居場所を持てなかったのかな…と思ったりもしたが、最後は愛知県豊田市の自宅で亡くなられたそうだ。人間の生きる意味をいろいろ考えさせられるドラマだった。

 制作はNHK名古屋放送局。NHKの組織体制ってよく分かってないけど、地方局が、これだけクオリティの高いドラマを作れるって、いいことだな、と思った。

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