■中央研究院歴史言語研究所 歴史文物陳列館(台北市南港区中研路)
故宮博物院からの移動は所要1時間くらいで、13:30には歴史文物陳列館に到着することができた。冷たい小雨がパラパラ降り始めていたので、急いで館内に駆け込む。エントランスに大勢の参観客が溜まっていたが、ここは無料と分かっていたので、脇をすり抜けて展示室へ直行。
階段を上がって2階の展示室は、前回じっくり見ていたので、前回見残した1階(考古資料)の展示室に向かう。考古資料の冒頭にいたのは『大理石梟形立雕』。1930年代に殷墟西北岡王陵区で発掘されたものだ。中研院歴史言語研究所は、1928~37年に河南省安陽殷墟遺跡において全15回の発掘調査を実施しており、その貴重な成果が、ここで無料公開されているのである。
この大理石のフクロウは、前回見た記憶がないな、と思ったら、あとで壁に「親近国宝」というパネルが掲示されているのに気づいた。いくつかの「国宝」文物をローテーションで展示しているという告知で、前回は左側の写真『大理石虎首人身立雕』を見た記憶がある。
なお、興味を持って中研院歴史言語研究所の歴史(日本語ページあり)を調べたら、1928年に広州で設立され、北平(北京)→上海→南京→長沙→昆明等々を経て台湾に移ってきたらしい。いやあ流転の国宝は故宮の文物だけではないのだな…戦火で失われなくて本当によかった。傅斯年先生、ありがとうございます。
ここは研究所の付属施設らしく、所蔵品を「研究資料」として扱う態度が徹底している。美術品的な名宝が見たい向きには合わないが、歴史好きには本当に楽しい。まず展示品の数が圧倒的である。類似の資料も全部見せてしまう。
いちいち修復せずに、出土したそのままの状態を見ることができるのも興味深い。
中にはこんな可愛い子もいる。首の細い壺の蓋に使われていた。
これは展示室の隅の暗がりにそっと片付けられていた等身大のボード。殷といえば女将軍の婦好かなと思ったら、これは紂王に寵愛された妲己のイメージらしい。2020年に『為己而来-被史家耽誤的女人』(歴史家に邪魔/誤解をされた女性?)という展示があったようで、見たかった!
前回訪問の2018年(時間切れで考古資料を全部参観できなかった)以来の念願をようやく果たすことができ、2階に戻って、木簡(居延漢簡)、科挙資料、拓本、中国西南地方の少数民族資料、台湾考古資料などをひととおり見た。科挙資料の中に道光27年(1847)の会試合格者の名簿と石碑の拓本があって、李鴻章の名前があるというので探してしまった。少数民族資料では、1930~40年代の古写真と現在の同じ地域の写真を比較したスライドショーが流れていて興味深かった。
たぶん私にとっては1日いても飽きないワンダーランドだが、朝から歩き続けで、さすがに疲れてきたので、2時間くらいで退出し、帰途についた。帰りのバスは、MRTの駅に行く路線を確かめて乗ったつもりだったが、下りたら、行きの南港展覧館駅でなく、1つ前(台北駅寄り)の南港駅だった。台鉄に接続していることもあり、大きなターミナルビルがあって、こちらのほうが賑わっていた。台北駅のフードコートで昼だか夜だかよく分からない食事を食べてホテルに帰着。
ホテルでしばらく休んだあと、暗くなり始めた街へ出て、近くの雙城美食街をぶらぶら冷やかし、行天宮を訪ねてみた。
■行天宮(台北市中山区民権東路)
行天宮は関聖帝君を主神としてお祀りする廟。道教の廟だと思っていたが、ホームページを見ると、儒教、仏教、道教の三教を習合した民間信仰に属すると書いてある。
気軽な観光のつもりで訪ねたら、境内では道士(?)の方が演台でマイクを使って説教をしており、静かにそれに聞き入る者、長い時間をかけて真剣に祈る者など、思っていた以上に生きた信仰の場であることを感じた。ホテルに戻って2日目を終了。