見もの・読みもの日記

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捨て子の成長物語/中華ドラマ『神鵰侠侶』(2006年版)

2022-09-03 23:54:01 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『神鵰侠侶』全41集(張紀中制作、重慶衛視、2006)

 今年のヒットドラマ『夢華録』を見たあとで、そういえば私は、劉亦菲が主演した『神鵰侠侶』見てないんだよなあ…と思ってネットを検索したら、Youtubeに全編搭載されているのを見つけたので、視聴してみた。ところどころ音声が飛ぶ不完全版だったが、まあ概要を把握するには困らなかった。

 物語は『射鵰英雄伝』の後日談である。郭靖・黄蓉夫妻は、楊康・穆念慈の遺児・楊過と出会い、彼を育てることにする。楊康との因縁から武術を教えることはせず、終南山の全真教に預けることにした。楊過は全真教を嫌って飛び出し、古墓の中で人知れず暮らしていた小龍女(劉亦菲)に拾われて弟子となり、古墓派の武功を修練する。青年になった楊過(黄暁明)と小龍女は、次第に惹かれ合うようになっていたが、ある誤解から小龍女は姿を消してしまう。楊過は、幼い頃に欧陽鋒に見込まれて蝦蟇功を修得していたが、洪七公からも奥義を伝授される。

 その頃、蒙古軍と対峙する襄陽では、郭靖・黄蓉夫妻が中原の英雄を集めて「英雄大会」を開催していた。小龍女の消息を求めて訪ねてきた楊過は、蒙古の武功高手、金輪大王や霍都を返り討ちにし、郭靖らを感歎させる。しかし師匠である小龍女と結婚したいという楊過の願いは(師匠=親同然という当時の道徳観念から)人々に受け入れられなかった。

 落胆した小龍女は、彷徨の末に絶情谷にたどりつき、谷主・公孫止からの求婚を承諾してしまう。ところが公孫止は不埒な色好みで、かつての妻・裘千尺を動けない身体にして地底に閉じ込めていた。娘の公孫緑萼と楊過は裘千尺を助け出すが、この老婦人も復讐心に凝り固まっていた。絶情谷で情花の毒に当たってしまった楊過に、解毒薬が欲しければ、郭靖・黄蓉の首級を持ってこいと条件を出す。

 郭靖夫妻こそ亡父の仇と信じていた楊過は、望むところと思って襄陽へ戻る。しかし大宋の国のため民衆のため蒙古軍と戦う郭靖を見た楊過は、いつしか郭靖を助けて奮戦していた。戦乱の中で、黄蓉は男女の双子を出産するが、女子の襄児は、蒙古の金輪大王に掠われ、さらに古墓派の悪女・李莫愁に奪われるなど波乱の運命となる。

 郭靖夫妻の長女・芙児は、行き違いから楊過を怨み、病床にあった楊過の右腕を切り落としてしまう。楊過は巨大な神鵰に救われて命を取り留め、山奥で養生する。一方、小龍女は、かつて自分の純潔を奪った相手が、楊過ではなく全真教の道士・甄志丙だったことを知り、終南山で彼を討ち果たす。しかし小龍女も致命的な痛手を負う。ようやく再会した楊過と小龍女は、互いの運命を悲しみながら全真教の王重陽の像の前で正式な結婚を誓う。そして古墓の中で小龍女の治療につとめるが、あと一歩のところで侵入してきた李莫愁、芙児によって治療の努力は灰燼に帰す。

 舞台は再び絶情谷へ。黄蓉は裘千尺と対面し、楊過のために解毒薬を得ることに成功する。しかし楊過は、小龍女を救う術がないまま、自分だけが生き延びることを肯んじない。困り果てる黄蓉。すると小龍女は断崖絶壁上に「十六年後、在此相会」の文字を残して消えてしまう。黄蓉は、南海神尼が連れていったのだろうと説く。生きて再会を待つ決意をする楊過。

 十六年後、娘らしく成長した郭襄は、江湖で評判の「神鵰侠」と呼ばれる大侠客に憧れていた。ある日、郭襄が出会った神鵰侠こそは楊過で、楊過も郭襄に孤独を慰められる。楊過は、江南七怪の生き残り・柯鎮悪に出会い、実父・楊康の真実の物語を聞く。

 そして約束の日、小龍女は現れなかった。絶望して崖から身を投げた楊過は、深い谷底でひっそり暮らしていた小龍女に出会う。二人は、このまま静かな暮らしを続けることを願う。しかしその頃、襄陽には蒙古の大軍が迫っていた。どこからともなく現れた楊過と小龍女は、郭靖らを助けて蒙古軍を撃退し、救国の英雄と称えられた。

 以上のあらすじは、かなり簡略化している。『射鵰』の登場人物では、ほかに黄薬師、一灯大師、周伯通、瑛姑、それから傻姑も登場する。裘千尺は、裘千丈・裘千仞兄弟の妹という設定である。なので『射鵰』との関係は、思っていた以上に密接だった。本作を読んで(視聴して)初めて『射鵰』の物語を理解したと言えるのではないか。過酷な運命を乗り越え、立派に成長した楊過の姿には、善人としても悪人としても中途半端だった父親・楊康を思い出して感慨深かった。私は『射鵰』ドラマを3バージョン見ているが、やっぱり最初に見た2003年版の楊康の顔が浮かぶ。黄蓉・郭靖は、納得できる中年の姿だった。

 本作独自のキャラで印象深かったのは、まず李莫愁。冷酷な悪女だが、かつて愛する男性に裏切られた傷を負っている。それから金輪大王。終盤では自分の武功を伝授する弟子がいないことを悲しみ、郭襄に「師父と呼んでくれ」と執心するのが可愛かった。最近の中国ドラマに比べれば、撮影技術はいろいろ稚拙だが、展開の面白さで楽しむことができた。

※備忘:古い記事では「射雕英雄伝」の漢字を使っていたのだが、最近は「鵰」が出るのだな。検索の便宜のため、どこかで統一しておこう。


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