見もの・読みもの日記

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お盆満喫・冥府の使者に会いに/あの世の探検(静嘉堂文庫美術館)

2023-08-28 23:10:10 | 行ったもの(美術館・見仏)

静嘉堂文庫美術館 『あの世の探検-地獄の十王勢ぞろい-』(2023年8月11日〜 9月24日)

 静嘉堂文庫美術館所蔵『十王図・二使者図』(中国・元~明時代)は『地蔵菩薩十王図』(高麗時代)と一具で伝来してきた名品。 本展では、1999年の『仏教の美術』展で初公開して以来、揃って展観する機会のなかった『十王図・二使者図』及び『地蔵菩薩十王図』全13幅を一堂に展観する。

 『十王図・二使者図』は、見たことなかったかなあ…と思って探したら、2016年の『よみがえる仏の美』展では『十王図・使者図』の題名で2件だけ展示されていたようだ。13幅並ぶと壮観! しかも撮影可能なので、ばしばし写真を撮ってきた。あわせて図録も購入。コラム「十王図・二使者図(静嘉堂本)について」が詳しくて勉強になる。十王信仰は、中国南北朝の道教的な要素の強い仏教に、中国古来の冥界信仰が摂取され、成立したこと。日本には平安時代末期に入り、鎌倉時代に急速に広まったこと。とりわけ、陸信忠に代表されるような南宋・元時代の明州(寧波)の職業的画工の作品が多数請来され、多数の転写本が作られたこと。しかし静嘉堂本は寧波系とは別系統で、五代・北宋期、華北系の様式を継承していること。余白無く文様が描き込まれた描写は、明代の「水陸画」(水陸会で用いられる)と共通することなど、興味深い情報でいっぱいであある。「寧波系では一部を除き外されることの多い『二使者図』」という指摘も気になった。え、逆に「寧波系」以外では「十王・二使者」の形式は一般的なんだろうか。

 静嘉堂本の二使者のうち、緑衣の「監斎使者」は斎を行う人々を検行する。笏を持つ文官の姿。六角形の筒をたすきがけにした侍者を従える。偽経『預修十王生七経』には黒馬に乗った使者が登場するそうで、神奈川県立歴史博物館の所蔵作品は黒馬を連れていた。静嘉堂本の図様は『天地冥陽水陸儀文』の監斎使者と四直使者の記述と関連するという(四直使者?また新しい言葉だ)。

 紅衣の直府使者(直符使者)は、冥界の符文を執る。武官の姿。赤いバンダナみたいな被り物をしており、これが十王を囲む判官や侍者の一団の中で「使者」を判別する目印にもなっている。

赤いバンダナを巻いたこのひとも「使者」。

左端のこのふたりも「使者」。

しかし、中にはあれ?と思う人物もいて、図録の解説に「獄卒(使者の服装だが責苦を行っている)」などとあった。どう見ても獣の顔をした獄卒が、赤いバンダナで頬かむりしている図もあっておもしろい。

 本展は、このほかにも仏教美術好きには垂涎の作品が多数出ていた。南北朝時代の『如意輪観音像』『千手観音二十八部衆像』、高麗時代の『水月観音像』、みんな美麗で妖艶。図録解説によると、本展に出品されている仏画の多くが、過去10年以内に解体修理を受けているのだな。文化財を未来に伝えるため、ありがたいことだ。あと、南宋時代の『妙蓮華経変相図』、細かい描写が可愛くて、すっかりファンになってしまった。こういうの、拡大できる高精細画像で、隅々まで眺めてみたいなあ。「仏画」の中に、応挙の『江口君図』が堂々と混じっていたのもよかった。

 室町時代の『十二霊獣図巻』も楽しい。これは䶂犬(しゃくけん)。華流ファンタジーなら主人公の相棒として活躍しそう。

 これは兕(じきゅう)。皮が硬く、丈夫な鎧になるそうで、正体はインドサイともいう。「山に登って、夜、水の音を聞くのを好む」という説明が好き。

 『十二霊獣図巻』は後期から展示箇所が変わるので、また見に行こうかと思っている。


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