見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

関西よくばり旅行(1):泉屋博古館、思文閣美術館など

2010-09-22 00:05:25 | 行ったもの(美術館・見仏)
 あらためて、週末の関西ミニ旅行のレポート。金曜の夜、新幹線で大阪入りからスタート。

■第五番 紫雲山葛井寺(大阪府藤井寺市)

 翌朝(9/18)、まずは西国第五番の葛井寺へ。毎月18日は、本尊・十一面千手千眼観世音菩薩(千手観音坐像)の開扉日である。久しぶりのお姿を拝見しているうち、これはもと立像だったってことはないのだろうか、という疑問が湧いてきた。全く根拠のない妄想なので、書き留めておくだけ。調べてみても、古い時代の千手観音「坐像」はめずらしい気がする。「渡航安全お守」を見つけて購入。でも、中国で墓誌が発見された遣唐使・井真成ゆかりの葛井寺では、往きの安全は守られても、帰国できないんじゃないか…と思った。

泉屋博古館 創立50周年記念特別企画『住友コレクションの中国美術』(2010年9月4日~10月17日)

 京都へ移動。私が9月の上洛を考え始めたきっかけは、この展覧会だった。上記サイトのニュース「重要文化財『安晩帖』全22面順次公開!」のニュースを見て小躍りし、ん?ちょっと待て。”順次”公開って…と詳細を読んで愕然とした。曰く、「八大山人の代表作として知られる「安晩帖」は、会期中に全画面の展示替を行います。画冊仕立てのため、一回に一画面しかお見せできませんが、会期中に題跋を含む22 面すべてをご紹介するのは今回が初の試みとなります」。つまり22面全部見るには、22回通わなければならないのだ。「有料入館の方にはもれなく『安晩帖リピート入館券』をプレゼント」をうたっているけれど、それでも11回分の入場料がいる。何より、開館時間が10:30~17:00では、たとえ京都在住であっても、一般人は平日に行くことができない。これは親切なのか意地悪なのか、判断に苦しむところだ。

 それでも宣伝につられて、来てしまった。本日(9/18)の展示は「魚図①」。たっぷりした余白に、半開きの大口に上目づかいの魚一匹が描かれている。でも、この魚の目線に、清初の遺民画家(前王朝への忠節を表現する画家)であった八大山人の心境が表れていると見る人もいる。やれやれ、お前に会いに来たんだぜ、と小さな魚に心の内で呼びかけてみる。

 ほか、石濤、石渓、龔賢、漸江など、明末清初の画家を中心とした、いつものラインナップ。私は、むかしは古い時代の書画を珍重して、明清なんて歯牙にもかけていなかったのだが、この泉屋博古館のコレクションを見るようになって、明清の絵画の魅力に開眼した。ありがたいことだ。それにしても、作者と作品は切り離して考えるべきものだと分かっていても、解説キャプションを読むと、精神異常とか困窮の晩年を送った画家が多くて、沈鬱な気持ちになる。

思文閣美術館 『奈良絵本・絵巻の宇宙展』(2010年8月28日~11月7日)

 美術品・古書売買と出版業を営む思文閣の美術館を初訪問。奈良絵本は、素人には楽しいが、書誌学の専門家にはあまり珍重されない。それで、かえって詳しく学ぶ機会がなかったのだが、「奈良絵本」とは明治期以後に使用された言葉であること、興福寺周辺に住む絵仏師が絵を描いていたから、という説明もあるが、おそらく奈良の土産物として知られた奈良絵の素朴な作風に似ていたからと考えられること、実は京都周辺の絵草紙屋や扇屋に雇われた職人が分業で制作していたことなど、いろいろ興味深かった。

 本展は、奈良絵本を「天正頃」「慶長頃」「寛永頃」「寛文頃」「元禄頃」「享保以降」の5期に分けて紹介。「寛永頃」から絵と詞の分離(分業)が始まり、「寛文頃」が最盛期とされる。本展の協力(監修?)者である石川透氏(慶応大学)は、仮名草子作家・浅井了意の筆跡(自筆の版下を使った版本がある)と共通する筆跡の奈良絵本があることを突き止めている。研究者って、すごいなあ…。また、元禄期には、居初(いそめ)つなという女性の絵本職人の存在を発見。つなの作品は、確かに他の作者に比べて、群を抜いて愛らしい。

 展示品(50余点)には、所蔵先が示されていなかったので「思文閣のものですか?」と聞いてみた。そうしたら「いえ、石川透先生のコレクションです」とのこと。貴重な個人コレクションを公開していただき、ありがとうございます。

相国寺 秋の特別拝観「法堂」「開山堂」「浴室」(2010年9月15日~12月8日)

 考えてみると、承天閣美術館には、しじゅう訪れているのに、相国寺に参拝してご朱印をいただいたのは、ずいぶん久しぶりのことだ。法堂は気宇広壮な建築に見応えがある。天井の龍は狩野光信筆と伝える。復元修復された浴室も面白かった。承天閣美術館の特別展示、応挙筆『七難七福図巻』については別掲。名品展『書画と工芸』では、周文の『十牛図』を初めて見た。思っていたより小さくてびっくりした。

 既に夕方だが、今回は目的がもうひとつ。大阪・心斎橋附近に連泊を決めたのは、ウイリアム・メレル・ヴォーリズの建築として名高い大丸心斎橋店を訪ねることである。以下、別稿にて。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 上田秋成の墓(西福寺)に参拝 | トップ | 大丸百貨店・心斎橋店(ヴォ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (dxxr)
2010-10-03 13:15:43
私も9/18に道明寺,葛井寺,野中寺に行ってきました。どこかですれ違っていたかもしれません。

お寺の方によれば,葛井寺の御本尊は,かつて天王寺の大阪市立美術館で開催された展覧会の図録に解体された状態の写真が掲載されていたらしいので,その図録に何か書いてあるかもしれませんね。
返信する
京都のdxxr様 (jchz)
2010-10-04 13:41:56
9/18は葛井寺→南大阪コースは、私も何年か前に歩きました。古墳が点在するのんびりした風景がいいですよね。

この週末はまた上洛します。今回は名古屋と奈良が主目的です。京都にも、また近いうちに伺います!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

行ったもの(美術館・見仏)」カテゴリの最新記事