■朝の散歩(南京大学)
私の中国旅行は朝の散歩から始まる。ホテルの近くに南京大学があるらしいので、地図を頼りに歩いていく。やがて、表札のない裏門から、大学の構内に入ってしまったらしい。よく手入れされた緑の芝生に、優雅な反りを見せる黒灰色の屋根瓦、白茶けたレンガの壁、臙脂色の窓枠が映えて美しい。イギリスの大学にきたような気分である。
■紫金山、そのほか
南京市街の北東に位置する紫金山には、明孝陵(明の太祖・洪武帝の墓)、呉の孫権の墓、孫中山こと孫文の墓陵、霊谷寺などの名勝地が並んでいる。
南京~鎮江を担当するローカルガイドの馬さん(男性)の案内で、紫金山天文台からスタート。古代ふうの天文儀器が野外に展示されている。三鷹の国立天文台に勤めた経験のある私としては、一度は来てみたかったところでうれしい。
ここは、かつて実際に観測活動を行っていたが、今は市民に対する社会教育が主のようだ。ふと見上げると、建物の壁面に「子午儀」とあるのが、ちょっとアールデコ風の書体でよかった。三鷹の子午儀室も古くて趣きあったな...などと感慨にふける。
■昼食
中山陵公園のレストランで昼食になった。我々のツアーは、基本料金に食事代を含んでいない。その日その場で、適当なレストランに連れていってもらうためだが、中国のガイドさんは、高価なものを食べ切れないほど注文するのがサービスと心得ているので(中華料理では正当なマナーなのだが)、物価の高くなった近年、予想より食事代が高くつくようになってきた。
そこで、今回はガードを固くし、メニューを奪って「これとこれとこれ、あとは要らない」と申し渡した。「足りますか?足りないでしょう?」と本気で心配するガイドの馬さん。しかし、結局、ビールを含めて7人で400元(約6,000円)に収めることに成功した。
午後は郊外の棲霞寺へ。本殿は改修中で、ところかまわず建築資材が積み上げられていたが、裏にまわると、見事な舎利塔と千仏崖があって、面白かった。
■瞻園(せんえん)、夫子廟
市街に戻り、夕食までのひととき、瞻園という庭園で、お茶を飲みながら雑技と音楽の短いショーを楽しむ。入口でいかにも中華ふうの龍の装飾図を前に聞いた説明によれば、ここは清の乾隆帝のお気に入りの庭園だったそうだ。このあと、乾隆帝の南巡にまつわる伝説が、いかに数多く江南の各地に残っていて、今も 人々の心を引き付けているかを実感することになる。
そのあと、徒歩で夫子廟のあたりへ。かつては危ない歓楽街として名を馳せたが(大木先生の近著に詳しいらしい。未読)、アヘン窟の後はマクドナルドになり、おのぼりさん相手の明るい露店が軒をつらね(奈良の猿沢池周辺みたい)、秦淮河にはおもちゃのような脚漕ぎのドラゴンボートが浮かんでいる。今では家族連れもOKの健全ムードに満ちていた。
【2019/5/4 geocitiesより移行】