〇横須賀美術館 企画展『運慶展 運慶と三浦一族の信仰』(2024年10月26日〜12月22日)
2022年に特別展『運慶 鎌倉幕府と三浦一族』を開催した横須賀美術館で、また運慶展が開催されていると聞いたときは、ちょっと戸惑った。しかしまあ。運慶と言われれば、行かないわけにはいかないので、出かけてきた。
その前に、12月1日(日)に「ニコニコ美術館」でこの展覧会が取り上げられた。朝8時から横須賀美術館の『運慶展』の紹介があり、夜19時から金沢文庫の『運慶-女人の作善と鎌倉幕府-』(2024年11月29日~2025年2月2日)の紹介があったので、どちらも視聴した。なお今回の運慶展は、鎌倉国宝館の特別展『鎌倉旧国宝展-これまでの国宝、これからの国宝-』に付随する特集展示『鎌倉の伝運慶仏-教恩寺 阿弥陀如来及び両脇侍立像 修理完成記念-』(2024年10月19日~12月1日)を含む3館連携展示であると、12月1日朝のニコ美で知ったので、その日が最終日だった鎌倉国宝館の展示も、慌てて見て来た。鎌倉ゆかりの名品(旧国宝)が勢ぞろいする豪華な展示だったが、「鎌倉の伝運慶仏」として、初めて見る教恩寺(鎌倉市大町)の阿弥陀如来及び両脇侍立像が出ていたのが珍しかった。
さて横須賀美術館は、2年前と同様、京急線の馬堀海岸駅からバスに乗り換えて訪ねた。運慶展のチケットを買って入口を入ると、「特集:かながわ散歩」を掲げた所蔵品展示の回廊に誘導される。廻廊を進んでいくと、厚いカーテンで隠された、秘密めいたエリアの入口があって、そこが運慶展の第1展示室になっている。横長のひろびろした展示室には、芦名の浄楽寺所蔵の阿弥陀如来坐像、両脇侍、不動明王、毘沙門天の計5躯。全て運慶仏と考えられている。私は、今年3月に久しぶりに浄楽寺で拝観しているのだが、お寺さんよりもゆったりした空間で、時間制限もなく拝見できるのは、大変ありがたかった。背景の壁の色は、アクアマリン、あるいはターコイズブルーかな? 海の見える横須賀にふさわしいしつらえだったと思う。仏像との距離も近くて、手を伸ばせば触れるというより、阿弥陀如来の手が自分のほうに伸びてきそうな気がした。阿弥陀三尊の頭髪は、かなり青色が残っている。両脇侍(特に向かって右)はお腹のあたりの金箔が剥げているのに初めて気づいた。
もう2つ、展示室というか展示コーナーがあって、1つには清雲寺の観音菩薩坐像がいらしていた。「滝見観音」とも呼ばれる、リラックスしたポーズの観音様である。両手とも指が長く、縦に長い手のかたちが優雅に感じられた。
別のコーナーには、三浦市・天養院の薬師如来坐像と両脇侍がいらしていた。かなり古風な雰囲気の薬師如来(平安時代)で、和田義盛ゆかりの寺院・仏像である。本尊の前面に大きな亀裂が入っているのは、和田合戦の折、義盛の身代わりになったためと伝えられている。ニコ美で、金沢文庫の瀬谷貴之さんが、義盛は、いつぞやの大河ドラマで描かれたような武辺者ではなく、もっと教養人だった、ということを残念そうに、繰り返し強調していたのが面白かった。
以上、浄楽寺阿弥陀三尊の像内納入品(の複製)を入れても、全10件という小規模な展示だが、見に行って損をした感はなかった。金沢文庫はまた別の日に、じっくり見にいく予定である。