見もの・読みもの日記

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しばらくお別れ/トプカプ宮殿博物館・出光美術館所蔵 名宝の競演(出光美術館)

2024-12-22 23:58:42 | 行ったもの(美術館・見仏)

出光美術館 日本・トルコ外交関係樹立100周年記念『トプカプ宮殿博物館・出光美術館所蔵 名宝の競演』(2024年11月2日~12月25日)

 休館前の最後の展覧会は、日本とトルコ共和国が外交関係を樹立して100周年を迎えた本年にあたり、両国の友好を記念する特別展。

 冒頭にはトルコのトプカプ宮殿を彩った工芸品、金銀や宝石をふんだんに使った香炉や水指し、コーヒーカップなどが並ぶ。華麗で愛らしくて、高級チョコレートのパッケージを思い出させるものが多かった。驚いたのは水晶製の水指しおよび蓋付きカップ。完全に透き通っているので、どう見てもガラスだろうと思ったら、一塊の水晶を加工したものだという。また乳白色の玉から、複雑な浮彫り・透かし彫りのある鉢や皿を彫り出したものもあって、これは産地が中国になっていた。実はトプカプ宮殿には、中国の工芸品が多数伝わっており、特に今回、中国陶磁の名品を請来しているのである。

 最初に登場した浅めの青磁鉢(元時代)は、見込みの中心に菊花形の貼り付け装飾があって、こんなの見たことないぞ?と思ったら、出光美術館所蔵の青磁鉢(元時代)にも同じような装飾があった。大型の鉢の場合、焼成に耐えられるよう底に孔をうがち、それを隠すために貼り付けたという解説が付いていた。壺や瓶の場合も、共土で別に作った円盤状の皿を落とし込んで底にする場合があるらしい。図録には、青磁瓶を横に倒した写真が載っていて、底部を下から見るとよく分かる。

 青磁・青花は、まさにトプカプ宮殿博物館の至宝と出光美術館の名品の競演。両館の持っている青磁瓶(元時代、龍泉窯)はとてもよく似ていた。中国陶磁に大皿が登場するのはイスラム文化の影響だと言われているが、今回の展示品でいちばん大きかったのは、出光美術館所蔵の青磁皿(明時代初期)で直径68.5センチ。これを超えるものがあれば見てみたい。

 青花は出光美術館の名品が惜し気もなく並んでいた。休館前の最後の展覧会なのに、なぜ「トプカプ宮殿」なの?と思っていたけど、ちゃんと自館コレクションの粋を見せてくれて嬉しかった。明代の草花文の大皿(2種)は、藍色の発色が美しい。元時代の躍動感ある魚藻文の大皿も好き。解説に、トプカプ宮殿にも本作と類似する青花の大皿がある、と書いてあったけれど見たかったなあ。トプカプ宮殿コレクションでは、大きなひょうたん型の青磁瓶(元時代)が、表面をフラットな牡丹文で覆っており、英国のテキスタイルみたいで可愛かった。麒麟を描いた青花鉢(明時代)は、崩れた表情が民窯ぽくて、これも好き。あとで壁の年表を見たら、オスマン帝国(1299-1922)は、中国でいうと元時代から中華民国までをカバーするのだな。

 本展には日本陶磁も登場する。トプカプ宮殿には、古伊万里の色絵蓋付瓶(ゴージャスな金襴手!)や染付瓶も収蔵されているのである。中国磁器とは異なるテイストで世界に売り出そうとした古伊万里の例として、和装美人を描いた色絵蓋付壺(江戸時代中期、出光美術館)も展示されていた。

 あと珍品というか、ピンクや黄色のポップな色調で楼閣山水を描いた五彩皿(景徳鎮窯、清時代)も気に入った。最後に出光美術館が所蔵するトルコのタイルや陶器が展示されていたが、こちらは宮殿美術とは異なる民窯の世界で、バラやチューリップの造形がひたすら可愛い。

 休館前の最後の展覧会、私の大好きな「陶磁器の国際交流」をテーマにしてくれてありがとうございます。いちおう、先日公表された建替計画には出光美術館の存在が明記されていたので、少し安心した。

※三菱地所:(仮称)丸の内3-1プロジェクト(国際ビル・帝劇ビル建替計画)始動(2024/12/16)

陶片室は残るよね。入口で警備員のおじさんがエレベーターを案内してくれるシステムは、好きだったんだけど、なくなっちゃうかな。

それでは、さよーなら、またいつか!

コメント
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