見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2013秋@京都非公開文化財特別公開(市中編)、おまけつき

2013-11-06 23:49:31 | 行ったもの(美術館・見仏)
宇治編の続き。京阪電車の東福寺駅で下車。今回は、東福寺三門と塔頭寺院の永明院(ようめいいん)が開いているが、時間がないので前者はパスして、後者のみ拝観とする。と、途中で「同聚院」という表札に目が留まる。

■同聚院(京都市東山区)

 同聚院の名前は何度か聞いたことがある。2012年春の特別公開で、東福寺駅からほど近い法性寺を訪ねたとき、びっくりするような巨大な不動明王がいらっしゃって、同聚院の不動明王の模刻だと聞いた。昨秋、小浜の円照寺で大きな大日如来を拝観したときも、京都にも大きな不動明王がいらっしゃいましたな、そうそう同聚院、みたいなことを和尚さんと拝観客が話していた。その同聚院である。

 境内にはうどんやさんの店も出ていて、オープンな雰囲気。立ち寄る人の姿も多い。しかし、拝観料を払って、お堂に上がってみる人が少ないのは、もったいない。いや、静かに拝観できて、ありがたかったけど。坐像だが、腰から下は申し訳みたいで、地面からずぼっと太い幹が生えている雰囲気。もとは不動明王を中尊として、降三世明王・軍荼利明王・大威徳明王・金剛夜叉明王の五大明王が祀られていたと聞き、その迫力を想像すると、身の震える思いがした。建立したのは藤原道長で、伝えられる豪気な気性を彷彿とする。王朝貴族文化を平等院の阿弥陀如来だけで語ってはいけないのだな。

■永明院(ようめいいん)(京都市東山区)

 東福寺山内の、かなり外れまで歩いたところにある(鳥羽街道駅のほうが近い)。いかにも鎌倉期の肖像彫刻らしい圓鑑禅師坐像は、禅師の墓所の真上に安置されているという。キリスト教の教会みたいだ。蝶の翅のような華やかな宝冠をつけた釈迦如来像あり。

■西念寺(京都市下京区)



 五条高倉にあるというので、地下鉄五条駅から歩いていくと、特にお寺らしい門構えもないところに「非公開文化財特別公開」の看板が立っていて、驚く。小さな玄関を上がり、どことなく日常生活の名残りが感じられる部屋を抜けると本堂で、須弥壇のお厨子から出した阿弥陀如来坐像が安置されていた。ううむ、いいなあ。胸の前の低い位置で、あやとりをするように両手を少し広げた中品中生の説法印が、開きかけた蕾のようで美しい。

 しかし、もっと驚いたのは、左隣の壁に掛けられた仏涅槃図。『拝観の手引』等の写真では、これほど素晴らしいとものは思わなかった。解説によると、ずっと室町時代の作と思われていたものが、平成21年8月の調査で、平安後期の作と判明したのだそうだ。そんな馬鹿な、と思ったが、西念寺が16世紀に創建されたという寺伝が影響したのだろうか。あと、劣化が進んでいるので、確かに写真だけだとよく分からない。本堂に入っても、まだよく分からなくて、にじり寄ってみて初めて、弟子たちの個性的な表情をとらえた、細密な描写の美しさに気づく。私は、涅槃図じゃないけど『釈迦金棺出現図』を思い出してしまった。

 壁の貼り紙によれば、この仏涅槃図は保存修復を急務としていて、国の重要文化財に指定されれば6割補助が受けられるが、それでも700万円は必要とのこと。400万円までは寺で集めたという。ちょうどご住職がご在宅だったので、御朱印を書いていただき、拝観の御礼を申し上げることができた。※写真は朝日新聞デジタルに多数。

 以上で、今年の「非公開文化財特別公開」のどうしても見ておきたかった拝観は終了。まだ時間があるので、秋季一般公開中の京都御所に急ぐ。15時30分の閉門までに中に入らなくてはいけない。

■京都御所(京都市上京区)

 京都御所に入るのは久しぶりだ。9年目になるこのブログに記事がないものなあ。10年ぶりくらいかもしれない。いろいろ知識が増えると「面白い」と感じるポイントが増える。

紫宸殿の東側の「滝口」。いわゆる滝口の武士が詰めた。


小御所(こごしょ)では舞楽人形を展示中。音楽も流れていた。「安摩」だ!


金粉・金泥って、自然光の下では、こんなに輝いて見えるのか、と驚く。


京都国立博物館 特別展覧会『魅惑の清朝陶磁』(2013年10月12日~12月15日)

 タイトルを聞いたときは、純粋に清朝陶磁の「美」を愛でる展覧会かと思った。実際は、日本・中国・東南アジア・ヨーロッパを「やきもの」がつないだ文化交流に重点を置いた展示である。出陳者(所有者)が、両足院、大中院、霊洞院など京都市中の禅寺に加えて、角屋保存会究理堂文庫(医家の小石家)、さらには長野県須坂の田中屋本家などに及んでいるのが興味深かった。

完成の近づく常設展示館。やっぱり東博の法隆寺館に似てるなあ。


(11/10写真追加)
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2013秋@京都非公開文化財特別公開(宇治編)

2013-11-05 23:58:01 | 行ったもの(美術館・見仏)
11/1(金)夜に名古屋入り。三連休の初日は、京都非公開文化財特別公開の探訪から始めた。

■放生院(橋寺)(京都府宇治市)



 宇治には何度か来ているが、橋寺は、立ち入り自由の境内に、宇治橋断碑の様子を見に寄るだけで、ひっそり締め切られたお堂の中に関心を寄せたことは一度もなかった。だから、この秋の特別公開のポスター(何パターンかある)に使われている眉目秀麗な地蔵菩薩像の写真が、橋寺のご本尊と知ったときは驚いた。

 鎌倉時代後期の作で、1.9メートルのすらりとした長身。これだけ大きな仏像で、衣の装飾がはっきり残っているものは珍しいのではないかと思う。幾何学文様を細い線で描く截金も使われているが、むしろ金泥を厚塗りして朱や緑を配した唐草文様が印象的。

 側面から見ると、ものすごい前傾姿勢で「人々のもとに駆け寄ろうとする姿」と説明されているが、正面から見ると、ほとんど気がつかない。もしや手足が後補で、付け替えるときにバランスを崩した?という意地悪な想像をしてみたが、朝日新聞デジタル「放生院(橋寺)ルポ」(※写真多数!)によれば、過去に一度も修理をされたことはないそうだ。堂内には、平安後期のおおどかな不動明王など、ほかにもじっくり拝したい仏像あり。

 もうひとつ特筆すべきは、境内の宇治橋断碑が公開されていたこと。古文化財好きの血が騒ぎ、「これって、ふだんはブルーシートでぐるぐるにくるまれているんですよね!」と興奮しながら説明のお兄さんに言ったら、「そうです、そうです」と笑いながら答えてくれた(たまに公開されているらしい)。継目の上の原碑と、下の復元部(これも寛政5年完成だから十分な古碑)をしげしげと見比べる。

■恵心院(京都府宇治市)

 真言宗智山派。開基は弘法大師、平安時代中期に恵心僧都源信によって再興され、恵心院と称した。なるほど、源氏物語宇治十帖のヒロイン浮舟を助けた横川僧都のモデルが源信とされるのは、このお寺の存在があるためか。本尊は、きらびやかな十一面観音。ほかにも多種多様な仏像がお堂に集まっていたので、解説の女子学生さんが「まるで仏像のデパートのような」と思わず口をすべられていたのに笑った。20cmくらいの小さな十二天像を、六体ずつ並べて屋根の下に収めたものが面白かった。

 歓喜天の円筒形の厨子は扉が閉ざされていたが、いま古都古文化協会発行の『拝観の手引』を読んだら「源頼道の娘寛子の自念仏」とある。ええと「藤原頼道の娘(四条宮)寛子の念持仏」のことか? 後冷泉天皇の皇后として、華やかな宮廷文化の中心となったが、ついに御子を産むことはなかった女性だったはずで、その念持仏が歓喜天って、単なる伝承かもしれないけど気になる。

■興聖寺(京都府宇治市)

 道元禅師開創のる曹洞宗の寺院。中国風の山門をくぐると、広い寺域に、回廊につながれた堂宇が点在している。本尊は釈迦三尊だが、宇治十帖・手習の巻にちなんで「手習観音」と呼ばれる聖観音立像が愛らしかった。

↓座禅用の座布団が並んだところ。かわいい。


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関西旅行・行ったものメモ(2013年11月)

2013-11-04 23:57:22 | 行ったもの(美術館・見仏)
結局、この秋の三連休は、全て関西方面に出かけてしまった。11月は、こんな感じ。

11/2(土)京都非公開文化財特別公開(放生院/橋寺→恵心院→興聖寺→永明院→西念寺)→京都御所一般公開→京都国立博物館『魅惑の清朝陶磁』
11/3(日)奈良国立博物館『正倉院展』→薬師寺『国宝東塔 水煙降臨展』→大阪市美術館『大阪の至宝』展
11/4(月・祝)ミホミュージアム『朱漆「根来」-中世に咲いた華』

レポートは今週の宿題。とりあえず、明日の仕事に備えて寝る。

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