宇治編の続き。京阪電車の東福寺駅で下車。今回は、東福寺三門と塔頭寺院の永明院(ようめいいん)が開いているが、時間がないので前者はパスして、後者のみ拝観とする。と、途中で「同聚院」という表札に目が留まる。
■同聚院(京都市東山区)
同聚院の名前は何度か聞いたことがある。2012年春の特別公開で、東福寺駅からほど近い法性寺を訪ねたとき、びっくりするような巨大な不動明王がいらっしゃって、同聚院の不動明王の模刻だと聞いた。昨秋、小浜の円照寺で大きな大日如来を拝観したときも、京都にも大きな不動明王がいらっしゃいましたな、そうそう同聚院、みたいなことを和尚さんと拝観客が話していた。その同聚院である。
境内にはうどんやさんの店も出ていて、オープンな雰囲気。立ち寄る人の姿も多い。しかし、拝観料を払って、お堂に上がってみる人が少ないのは、もったいない。いや、静かに拝観できて、ありがたかったけど。坐像だが、腰から下は申し訳みたいで、地面からずぼっと太い幹が生えている雰囲気。もとは不動明王を中尊として、降三世明王・軍荼利明王・大威徳明王・金剛夜叉明王の五大明王が祀られていたと聞き、その迫力を想像すると、身の震える思いがした。建立したのは藤原道長で、伝えられる豪気な気性を彷彿とする。王朝貴族文化を平等院の阿弥陀如来だけで語ってはいけないのだな。
■永明院(ようめいいん)(京都市東山区)
東福寺山内の、かなり外れまで歩いたところにある(鳥羽街道駅のほうが近い)。いかにも鎌倉期の肖像彫刻らしい圓鑑禅師坐像は、禅師の墓所の真上に安置されているという。キリスト教の教会みたいだ。蝶の翅のような華やかな宝冠をつけた釈迦如来像あり。
■西念寺(京都市下京区)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/f4/c63ef19996171f106aa63a31aca05e5e.jpg)
五条高倉にあるというので、地下鉄五条駅から歩いていくと、特にお寺らしい門構えもないところに「非公開文化財特別公開」の看板が立っていて、驚く。小さな玄関を上がり、どことなく日常生活の名残りが感じられる部屋を抜けると本堂で、須弥壇のお厨子から出した阿弥陀如来坐像が安置されていた。ううむ、いいなあ。胸の前の低い位置で、あやとりをするように両手を少し広げた中品中生の説法印が、開きかけた蕾のようで美しい。
しかし、もっと驚いたのは、左隣の壁に掛けられた仏涅槃図。『拝観の手引』等の写真では、これほど素晴らしいとものは思わなかった。解説によると、ずっと室町時代の作と思われていたものが、平成21年8月の調査で、平安後期の作と判明したのだそうだ。そんな馬鹿な、と思ったが、西念寺が16世紀に創建されたという寺伝が影響したのだろうか。あと、劣化が進んでいるので、確かに写真だけだとよく分からない。本堂に入っても、まだよく分からなくて、にじり寄ってみて初めて、弟子たちの個性的な表情をとらえた、細密な描写の美しさに気づく。私は、涅槃図じゃないけど『釈迦金棺出現図』を思い出してしまった。
壁の貼り紙によれば、この仏涅槃図は保存修復を急務としていて、国の重要文化財に指定されれば6割補助が受けられるが、それでも700万円は必要とのこと。400万円までは寺で集めたという。ちょうどご住職がご在宅だったので、御朱印を書いていただき、拝観の御礼を申し上げることができた。※写真は朝日新聞デジタルに多数。
以上で、今年の「非公開文化財特別公開」のどうしても見ておきたかった拝観は終了。まだ時間があるので、秋季一般公開中の京都御所に急ぐ。15時30分の閉門までに中に入らなくてはいけない。
■京都御所(京都市上京区)
京都御所に入るのは久しぶりだ。9年目になるこのブログに記事がないものなあ。10年ぶりくらいかもしれない。いろいろ知識が増えると「面白い」と感じるポイントが増える。
紫宸殿の東側の「滝口」。いわゆる滝口の武士が詰めた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/25/ae1ca6ab93087017270175da15cc7dae.jpg)
小御所(こごしょ)では舞楽人形を展示中。音楽も流れていた。「安摩」だ!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/3c/48326edf4789f098b4e821f973c11d13.jpg)
金粉・金泥って、自然光の下では、こんなに輝いて見えるのか、と驚く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/1b/5dff39b2c25c84825436bd70c7f9ca49.jpg)
■京都国立博物館 特別展覧会『魅惑の清朝陶磁』(2013年10月12日~12月15日)
タイトルを聞いたときは、純粋に清朝陶磁の「美」を愛でる展覧会かと思った。実際は、日本・中国・東南アジア・ヨーロッパを「やきもの」がつないだ文化交流に重点を置いた展示である。出陳者(所有者)が、両足院、大中院、霊洞院など京都市中の禅寺に加えて、角屋保存会、究理堂文庫(医家の小石家)、さらには長野県須坂の田中屋本家などに及んでいるのが興味深かった。
完成の近づく常設展示館。やっぱり東博の法隆寺館に似てるなあ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/d1/7cdb275a4ec21cc101f10e0cb8d69cba.jpg)
(11/10写真追加)
■同聚院(京都市東山区)
同聚院の名前は何度か聞いたことがある。2012年春の特別公開で、東福寺駅からほど近い法性寺を訪ねたとき、びっくりするような巨大な不動明王がいらっしゃって、同聚院の不動明王の模刻だと聞いた。昨秋、小浜の円照寺で大きな大日如来を拝観したときも、京都にも大きな不動明王がいらっしゃいましたな、そうそう同聚院、みたいなことを和尚さんと拝観客が話していた。その同聚院である。
境内にはうどんやさんの店も出ていて、オープンな雰囲気。立ち寄る人の姿も多い。しかし、拝観料を払って、お堂に上がってみる人が少ないのは、もったいない。いや、静かに拝観できて、ありがたかったけど。坐像だが、腰から下は申し訳みたいで、地面からずぼっと太い幹が生えている雰囲気。もとは不動明王を中尊として、降三世明王・軍荼利明王・大威徳明王・金剛夜叉明王の五大明王が祀られていたと聞き、その迫力を想像すると、身の震える思いがした。建立したのは藤原道長で、伝えられる豪気な気性を彷彿とする。王朝貴族文化を平等院の阿弥陀如来だけで語ってはいけないのだな。
■永明院(ようめいいん)(京都市東山区)
東福寺山内の、かなり外れまで歩いたところにある(鳥羽街道駅のほうが近い)。いかにも鎌倉期の肖像彫刻らしい圓鑑禅師坐像は、禅師の墓所の真上に安置されているという。キリスト教の教会みたいだ。蝶の翅のような華やかな宝冠をつけた釈迦如来像あり。
■西念寺(京都市下京区)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/f4/c63ef19996171f106aa63a31aca05e5e.jpg)
五条高倉にあるというので、地下鉄五条駅から歩いていくと、特にお寺らしい門構えもないところに「非公開文化財特別公開」の看板が立っていて、驚く。小さな玄関を上がり、どことなく日常生活の名残りが感じられる部屋を抜けると本堂で、須弥壇のお厨子から出した阿弥陀如来坐像が安置されていた。ううむ、いいなあ。胸の前の低い位置で、あやとりをするように両手を少し広げた中品中生の説法印が、開きかけた蕾のようで美しい。
しかし、もっと驚いたのは、左隣の壁に掛けられた仏涅槃図。『拝観の手引』等の写真では、これほど素晴らしいとものは思わなかった。解説によると、ずっと室町時代の作と思われていたものが、平成21年8月の調査で、平安後期の作と判明したのだそうだ。そんな馬鹿な、と思ったが、西念寺が16世紀に創建されたという寺伝が影響したのだろうか。あと、劣化が進んでいるので、確かに写真だけだとよく分からない。本堂に入っても、まだよく分からなくて、にじり寄ってみて初めて、弟子たちの個性的な表情をとらえた、細密な描写の美しさに気づく。私は、涅槃図じゃないけど『釈迦金棺出現図』を思い出してしまった。
壁の貼り紙によれば、この仏涅槃図は保存修復を急務としていて、国の重要文化財に指定されれば6割補助が受けられるが、それでも700万円は必要とのこと。400万円までは寺で集めたという。ちょうどご住職がご在宅だったので、御朱印を書いていただき、拝観の御礼を申し上げることができた。※写真は朝日新聞デジタルに多数。
以上で、今年の「非公開文化財特別公開」のどうしても見ておきたかった拝観は終了。まだ時間があるので、秋季一般公開中の京都御所に急ぐ。15時30分の閉門までに中に入らなくてはいけない。
■京都御所(京都市上京区)
京都御所に入るのは久しぶりだ。9年目になるこのブログに記事がないものなあ。10年ぶりくらいかもしれない。いろいろ知識が増えると「面白い」と感じるポイントが増える。
紫宸殿の東側の「滝口」。いわゆる滝口の武士が詰めた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/25/ae1ca6ab93087017270175da15cc7dae.jpg)
小御所(こごしょ)では舞楽人形を展示中。音楽も流れていた。「安摩」だ!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/3c/48326edf4789f098b4e821f973c11d13.jpg)
金粉・金泥って、自然光の下では、こんなに輝いて見えるのか、と驚く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/1b/5dff39b2c25c84825436bd70c7f9ca49.jpg)
■京都国立博物館 特別展覧会『魅惑の清朝陶磁』(2013年10月12日~12月15日)
タイトルを聞いたときは、純粋に清朝陶磁の「美」を愛でる展覧会かと思った。実際は、日本・中国・東南アジア・ヨーロッパを「やきもの」がつないだ文化交流に重点を置いた展示である。出陳者(所有者)が、両足院、大中院、霊洞院など京都市中の禅寺に加えて、角屋保存会、究理堂文庫(医家の小石家)、さらには長野県須坂の田中屋本家などに及んでいるのが興味深かった。
完成の近づく常設展示館。やっぱり東博の法隆寺館に似てるなあ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/d1/7cdb275a4ec21cc101f10e0cb8d69cba.jpg)
(11/10写真追加)