年間約3~4ヶ月程しか歩けない下の廊下の散歩。
黒部峡谷は黒部川が北アルプスの北部を立山連峰と後立山(うしろたてやま)連峰に二分して流れているため、その山頂と谷底の高度差は1500~2000mに及び、日本で最深の峡谷地帯であります。
黒部第四ダムの下流域を『下の廊下』と呼び、その中心部には白竜峡、十字峡、S字峡などが有ります。
このルートは1935(昭和10)年ごろ当時の日本電力の調査ルートとして、黒部川の左岸に付けられた足下100mの断崖の登山ルートとなっています。
※この絵は 2010(H22)年10月に歩いた時のものです。
今迄、扇沢駅からトロリーバスで黒部ダムに入っていましたが、そのバスも2018年で54年間の運行終了、2019年よりトロリーと同様に環境を考慮した「電気バス」に切り替わりました。
黒部ダム駅(地下)に到着すると観光客の方々はダム広場や展望台へ向かいますが、下の廊下に入る登山者はダム駅の右手にある坑道を抜け、約30分程でダムの下に降ります。
下から見上げる黒部第四ダムの大きさには圧倒されます。
そこに観光放水でもしていたら、黒部川の左岸に渡る手すりのない木橋の通過は、 台風 の中を歩くようなのです。
最初は黒部川の河原歩きから始まります。放水してないと水は、この程度です。
下流に進むにつれ河床との高度差が大きくなって行き、綺麗な滝や瀞(とろ)が見え足が止まる。
そして徐々に岩肌が多くみられるように、周りの景色が変化して来ます。
岩肌に刻まれた田の畔ほどの狭い道を慎重に進む。 このコースは、悪天候時の逃げ場がなく、雨は直ぐに側壁からの滝と変わり、沢筋からの鉄砲水も発生する。入山時の天候判断はとても重要です。
峡谷の谷間に落ち込んだ雪は10月でもこれほど残り、ほとんど万年雪の様です。
左岸の岸壁に横線のように刻まれている所が旧日電歩道(水平歩道)と言い、この様な道をワイヤーロープに手を掛けながら慎重に歩きます。
左岸の岩に刻まれた水平歩道は雪に埋もれてしまうと、雪のトンネルを抜けたり、時にはスノーブリッジの上を歩いたりします。
雪の重さで水平歩道が崩されてしまうと、関西電力で整備して下さった丸太3本の道へ、梯子で登下降し崩壊地を高巻きし更に狭い岩壁の水平歩道を進む。 この丸太道の下が白竜峡。
整備して下さった丸太の道は、その年の降雪量で崩れてしまうと、毎年変わってしまうのです。
両岩壁が迫り、滝が見えてきたところが白竜峡 である。 ザックや頭を岩にぶつけないよう注意が必要な所です。
白竜峡を過ぎると峡谷が少し広くなり、更に水平歩道を進む。
水平歩道の岸壁にはワイヤーロープが設置され、常にロープを軽く握りながら歩くので、サビが手に付くため軍手などがあると助かります。
峡谷の両側には立山連峰と後立山連峰の標高の高い山々が連なり、春先の雪解けが始まると、この狭い峡谷に雪が落ち込んでくるのです。
早いと10月下旬には 雪が降り始めます。 十字峡に近くなると高度感を感じ、ワイヤーロープをしっかり手にして慎重に通過。 川面から50mほどの高さをたどる道は、狭い上に高度感があり、転落は致命的です。
十字峡の手前に休憩に丁度良い広場があり、そこで緊張感を解く。 気持ちを落ち着けてから十字峡 の吊橋に向かう。
十字峡吊橋の下には剱沢が、そして右岸からは棒小屋沢の流れが黒部川に合流している。
遥か下方にコバルトブルーの水を湛えたS字峡を俯瞰する。 近くに見えますが、実際は遥か深い峡谷の底であります。
水平歩道が終わり、東谷吊り橋へ下る途中から見た黒四地下発電所の送電口。 山奥でこんな人工的なものが、急に現れると異様である。
東谷吊り橋を渡り、初めて黒部川の右岸の道へと移る。
そして現れた仙人ダムの上を通り、再び左岸に戻る。ダムの上から下流を覗いた景色である。
初めて単独でこの下の廊下を歩いた時は、ダムから先の道が消えてしまいビックリしました。 ダムの上を行ったり来たりしても、こんな山奥に誰もいない 仕方なくダムの事務所に誰かいるかと思い、声掛けしドアを引いたら開いてビックリ。 中を覗いたが人の気配は無かった。 開けた正面の壁に「登山道 」の表示があり、「何だ外に表示板を出しといてよ。」と一寸「ムッ」とした。
ダムの事務所に入り、案内に沿って進むと直ぐ右折、20m位だろうか? 狭い高熱隧道を通過。 この高熱隧道には、ガス抜き用なのか、幾つかの横穴があり蒸気が吹き出し先が見えずに怖い思いをした。
高熱隧道を抜けると、やっと安心して歩ける広場に出た。でもまたビックリ。 目の前に白亜の大きな建物(人見平宿舎)が現れた。人が居るのだろうかと声掛けするも返事なく気味悪し。 白亜の建物を右に回り込み、再び水平歩道への急坂に取り付く。
水平歩道に登ってから約1時間ほど歩いてプレハブの阿曽原温泉小屋に到着し、ホッとした。
露天風呂に浸かりながら危険な峡谷に道を作り、ダムを造った先人の努力に思いを馳せ、ノンビリ疲れと緊張感を解きほぐした。
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