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阿賀野川水系随一の発電所を抱える「大川ダム」

2021年06月19日 | 土木構造物・土木遺産


さて、今回紹介するのは、前回紹介した只見線の大川橋梁から上流に10数キロのところにある「大川ダム」。大川橋梁のときの看板を写した写真にも、ちょっと顔を出していた。
会津若松市と下郷(しもごう)町の境界、阿賀川に設けられた、水系唯一の多目的ダム。会津盆地の治水と利水、そして発電施設を備える。北陸地方整備局管轄ダムで、16年の歳月を費やし1987年(昭和62年)に完成した。
このダムはコンクリートの重力式とロックフィル式の複合形式で「コンバインダム」という珍しい形式である。上の写真でダムのコンクリート堤体と右岸側(写真では手前)の軟弱な地盤を克服するためロックフィルで支えた。



多目的ダムとはいえ、発電施設として電源開発(J-POWER)が建設した下郷発電所は、認可出力100万キロワット(kw)という巨大発電施設で、阿賀野川水系では他の水力発電所と比べても飛びぬけて第一位。(同ダムを利用して東北電力も大川発電所を設置している。)
というのも、ここでは「揚水発電」という仕組みを取り入れている。揚水発電は、大川ダムのダム湖「若郷湖(わかさとこ・下池)」から、支流・小野川の上流にある「大内ダム(上池)」に水を汲み上げて、電気需要に応じて発電するというもの。
大抵、日中や夕方の電気の需要の多い時に発電・送電をして、夜間や休日の余剰電力を使って上部の大内ダム調整池(上池)に水を汲み上げておく。国内では40ヶ所以上、総出力2,600万kWを揚水式で発電している。



上部調整池の大内ダムは、かの会津の一大観光地である「大内宿(https://ouchi-juku.com/detail/622/index.html)」のすぐ上流、宿場からも見えるところにある。ロックフィル式で、堤高102.0 m、堤頂長340m、総貯水量1,850万㎥のダムだ。
考えてみるとこのエリアは、大内宿のほか、芦ノ牧温泉や湯野上温泉、塔のへつり、阿賀川(大川)の新緑や紅葉、尾瀬や日光と会津地方の途中に位置するなど、観光と密接な場所である。大川ダム湖畔も公園として整備されている。
高度経済成長期に発電施設が火力に依存を強めていく中で、オイルショックにより水力発電が見直されて揚水発電という方式により技術の粋を結集して建設に至ったこれらダムと発電所も、観光ルートに取り入れてほしいものだ。

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