付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「天気晴朗なれど波高し。2」 須賀しのぶ

2022-11-28 | 水の世界・海洋冒険SF
「悲劇こそ笑い飛ばそうというか、人に言われるより自分で道化になって笑いをとったほうがまた救われるっつうか」
 トルヴァン・コーア海尉は、帰港したら新妻が消えていた男の心理をランゾットに説く。

 南洋の剣島沖を通過する際には、ワーデン神に芸を捧げて航海の安全を祈るという。剣島は今回が初めてだというランゾット海尉が今回の士官代表となり、士官として水夫なんかには負けない芸を披露するよう命じられる。
 実はギアス家には代々ワーデン祭で演じる演目が引き継がれていたが、それは現地の巫女が舞ったという神舞を腰ミノ一つでむくつけき男たちが手足をくねらせ踊るというものだ。とてもじゃないがやってられない芸だが、あのエリートコースを進む兄たちも、謹厳実直な父も、もしかしたら祖父すらこの芸には全身全霊を以て挑んでいたのだ……。

 作家志望で船乗りはなりたくないけど、家が代々海軍提督を輩出する名門でなりゆきで海軍士官になってしまったとはいうものの、辞める機会があっても辞められないのが海の男の一族で、そこが女たちには理解はしても不満が残るところなのだ。こいつもかと。
 前巻で士官候補生として三等艦ジュリエンド号に乗り込んだランゾットも18歳。今回はラティナ号に五等海尉として乗艦。ワーデン祭の出し物に悩むあたりから娼館通い、奴隷交易、海賊船襲撃あたりまでが描かれます。イラストもちゃんとポイントを押さえていて、かつ小柄でパッとしない主人公はいつも冴えない様子で描かれ、活力たっぷりの女性陣とは対照的です。
 刊行されたのは2003年。この頃は、日本でも海洋冒険ものがそれなりに流行っていて、「海の勇士ボライソー」シリーズがクライマックス。「英国海軍の雄ジャック・オーブリー」シリーズを『マスター・アンド・コマンダー』のタイトルで映画化されてます。最近、海軍ものはパッとしないねえ。
 海軍入門編くらいのライトタッチで読める海の男たちの物語です。

【天気晴朗なれど波高し。2】【須賀しのぶ】【船戸明里】【コバルト文庫】【愛と笑いと冒険の青春海軍コメディ】【遺族年金】【娼婦】【奴隷貿易】【私掠船】【切り込み】
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「天気晴朗なれど波高し。」 須賀しのぶ

2022-09-22 | 水の世界・海洋冒険SF
「本当に恐ろしいものは悪意ではなく、善意から来る狂気なのだ」
 ランゾット・ギアス「シュムール号の叛乱」より。

 苦労知らずのギアス家の三男坊、ランゾット・ギアスは小説家になりたいが、代々海軍提督を送り出すルトヴィア帝国の海軍一族の生まれゆえ士官候補生として三等艦ジュリエンド号に乗り込むこととなった。とはいえ、最初の航海が終わったら、カーヴォイ侯の娘ネイに婿入りすることで退役する手はずになっている。小説家になりたいランゾットと海軍の夫はいらないネイとのウィンウィンの約束だ。
 ところが、ジュリエンド号で艦長が刺殺され、叛乱が今にも起きそうな状況に陥ってしまう……。

 ウェブで読んでいた『アドミラル・ブレイヴ~大英帝国海軍提督は異世界SFディテールが嫌いなので生活改善するようです~』が面白かったので、なんとなく英国海軍ものを読みかえそうと書架を探していたら、ボライソーやホーンブロワーより先にこちらが出てきたので、まずこれから。
 架空世界の海を舞台にした帆船アドベンチャー。あおりには「笑い」とか「コメディ」とあるけれど、そこまでコメディ作品ではありません。明るくポジティブで主人公の設定はコメディっぽいけれど、人死にが出てくる状況を笑い飛ばせるほどブラックでも悪趣味でもありません。普通に青春カイヨウアドベンチャーかな。

【天気晴朗なれど波高し。】【須賀しのぶ】【船戸明里】【コバルト文庫】【愛と笑いと冒険の青春海軍コメディ】
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「海の上はいつも晴れ」 坂東真紅郎

2022-03-01 | 水の世界・海洋冒険SF
 散歩をしていてうっかり公園の池に転落したと思ったら、異世界に転移していて、しかも手足は縛られて怪しい儀式の生け贄になっていた相ヶ瀬幸司は、自分と瓜二つの顔をした女海賊ハリエットに助けられる。しかし、その際に幸司をかばって鳥の姿にされてしまったハリエットには、邪教団からつけ狙われているアレクシア王女殿下を守る王女親衛隊長という、もう1つの顔があった。
 かくして、幸司は女海賊の替え玉となったのだが……。

 地球の歴史上に存在していたあらゆるタイプの海賊たちが、徒党を組んでバトルロイヤルしているという、「名誉」が物理法則として作用している異世界『黄金の海』を舞台にした海洋冒険譚で、とりかえばや物語で、異世界転移もので、ボーイ・ミーツ・ガール。
 表紙から解説までどこにも書いてないけれど、1999年~2000年に運営されていたPBM『海賊王女の凱旋』の後日譚小説で、時間経過はほぼ同じく3年後の話という2003年刊行。もうちょい原作ありということをアピールしても良かったんじゃないかしら。

【海の上はいつも晴れ~海原の緑宝石号出航】【坂東真紅郎】【高崎とおる】【D.K】【MF文庫J】【海洋冒険アクション】【異世界転移】【男女入れ替わり】【私略船】【海賊女王国】【エルスウェア】
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「ふしぎの海のナディア ハーフBOX」 NHKエンタープライズ

2019-12-12 | 水の世界・海洋冒険SF
 NHK総合で金曜夜に放送されていたアニメ。ジュール・ヴェルヌの『海底二万マイル』が原案というけれど、序盤以外に面影はほとんどないし、ヒロインの性格は悪いし、無人島で作画は崩壊するし……と散々だったけれど、60年代特撮映画や70年代アニメへのオマージュが濃厚で、当時はそれだけを楽しんでみていました。
 そのレーザーディスクがBOXの前後編で発売され、買う人はやっぱり買ったわけですが、何度も見るのは本編ではなく、悪のりしたパロディ全開の「おまけ劇場」。NHKのドキュメンタリー番組を再現したような回とか好きだったなあ。

【ふしぎの海のナディア】【ジュール・ベルヌ】【海底2万マイル】【庵野秀明】【樋口真嗣】【貞本義行】【ケイエスエス】【鷺巣詩郎】【NHKエンタープライズ】【グループタック】【GAINAX】【世映動画】【鷹森淑乃】【日高のり子】【滝沢久美子】【堀内賢雄】【桜井敏治】【羽佐間道夫】【水谷優子】【大塚明夫】【井上喜久子】【清川元夢】【辻谷耕史】
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「海のトリトン オリジナル・サウンドトラック」 日本コロムビア

2019-09-20 | 水の世界・海洋冒険SF
 TVアニメ「海のトリトン」のサントラ。最初に出たときは、LPレコードで、しかも自主製作に近い通販だったり、人気がないわけではなく、昔の同人界では一大勢力となっていて、お姉さま方がいっぱいイラストやらポエムを書きまくっていましたね。人気はあるのに権利関係でトラブルがあってなかなか形にならなかった印象ですが、ちゃんと2枚組のCDでリリース。プレミア価格もつかないお手頃価格で入手。
 オープニングもフルサイズから水柱の効果音から入るTVバージョンまでしっかり網羅。広川あけみの「ピピの唄」も入っていて満足。

【海のトリトン】【Columbia Sound Treasure Series】【鈴木宏昌】【ヒデ夕樹】【広川あけみ】【須藤リカ】【南こうせつとかぐや姫】
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「怪獣の子供」 原作:五十嵐大介

2019-07-20 | 水の世界・海洋冒険SF
「宇宙は人と似ている」

 自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の安海琉花は、部活からはじき出されてしまい、長い夏休みの間、家にも学校にも居場所がなくなってしまった。
 つい、父親の働いている水族館へと足を運んでしまった琉花は、そこでジュゴンに育てられたという不思議な少年・海と知り合う。彼とその兄である空は水中に適応しすぎて地上での長時間の生活が困難となっており、研究と保護のために水族館に預けられているというのだ。
 その頃、地球各地の海で、不思議な現象が起こりはじめていた……。

 最初に感想を言うと、琉花は悪くない。正しいとは言えないけれど、少なくとも先生の指導が悪い。
 あと、デデばあさん、リアルすぎて怖い。
 
 妻が五十嵐大介のファンなので、嵐の中、劇場へ。
 映像はきれい。あの五十嵐大介のキャラクターをよく映像にして動かしたなあと思う一方、それが雨とか海の自然描写とすごく合っています。それがダイナミックかつ美麗すぎて、クライマックスのシーンがなにか万博の映像展示みたいに思えてしまいました。映像でスピリチュアルなメッセージをがつんと受け取ってくれ!……みたいなインパクトです。
 あと、劇場アニメは普段は声の仕事をやらない俳優や芸人に声優をやらせることが多いのだけれど、この作品は特に多いですね。聞いていて、ふいに違和感を感じることがありました。声優の演技はパターンに陥りがちだからというけれど、逆に俳優や芸人の演技は自分が出過ぎて映像とズレることがありますよね。普段の会話はあまり気にならないけれど、感情が大きく揺れるシーンになるとちょっとぶれるように感じました。富司純子は言うまでもなく、芦田愛菜も上手かったです。

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「戦え!マイティジャック Vol.3」 制作:円谷プロダクション

2019-04-11 | 水の世界・海洋冒険SF
 海中から大空まで翔る万能戦艦マイティ号に乗り込み、悪の組織と戦う秘密組織MJ(マイティジャック)の活躍を描く、大人向け特撮テレビドラマの触れ込みで始まり、視聴率が振るわず途中打ち切りになった「マイティジャック」。その設定やミニチュア、セットなどをそのまま転用し、こども向けにリニューアルしたのが「戦え!マイティジャック」。
 冨田勲作曲のテーマソングは大好きで、サウンドトラックのLPレコードもテーマ曲収録のCDも買い集めたけれど、作品そのものにはたいした思い入れもないのだけれど、このDVD3巻に収録された「マイティ号を取り返せ!!」前後編くらいは映像で持っていたいと思うのは、第一次ウルトラブームで育った者には当然の感覚じゃないですか??

 MJの副隊長、源田のミスからマイティ号が謀略組織Qに乗っ取られた。無敵の万能戦艦マイティ号によって日本の工業地帯は火の海と化し、自衛隊機による迎撃もマイティ号の対空砲火をかいくぐることはできず壊滅してしまう。
 源田は責任を取るべく単身、敵のアジトと思しき孤島にマイティ号奪還のために潜入するが、その彼の前に謎の風来坊が姿を現した……。

「遥かな星が故郷だ?」
 「ウルトラマン」でイデ隊員を演じた二瓶正也と「ウルトラセブン」でモロボシダンを演じた森次浩司の共演回で、どこからともなく現れる謎の男、弾超七がなぜそこに!どうやってここに?そこからなにを!とご都合主義炸裂で大活躍する回。脚本の人も「そこは気にしない」と言ってました。
 マイティジャックの戦闘シーンって、どちらが先に弾を撃ち尽くすか?みたいな大味なものが多いのだけれど、この前後編はそのあたりのバランスが良く、アクションシーンも派手だし、源田と弾の掛け合いもお遊び満載で面白いので、正直、この1話があれば満足。
 マイティ号のセキュリティがしっかりしているのかガバガバなのか分からないとか、後始末で誰の首が飛んだのかとか、ツッコミどころも満載ですが、気にしちゃいけませんね。

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「アクアマン」 監督:ジェームズ・ワン

2019-02-10 | 水の世界・海洋冒険SF
国のために戦うのではなく、皆のために戦う者。
 それは「王」ではなく「英雄」なのだ。

 DCコミックのヒーローで、海底人で、ヒゲ親父という予備知識だけで映画『アクアマン』を観てきました。あ、ジャスティス・リーグのメンバーらしいってのも知ってたか。
 そんな予備知識だったけれど、「壊すな!」「食うな」と!一気呵成の怒濤の展開で息つく暇もなく、ただただ圧倒的な暴力に打ちのめされて帰宅。それはひどい戦いじゃった……。
 DCとかジャスティス・リーグとか知らない人でも普通に楽しめる、海洋冒険スペクタクル戦争映画、一部ホラー風味で、発声可能上映向きの映画でした。観ていて、いちいち「野生の天才技術者はどこにでもいる」とか「滝の裏ってレベルじゃねーっ!」とか「どこかってどこだよ!?」などとツッコみたくなるんですよ。

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「ウェイプスウィード」 瀬尾つかさ

2018-09-05 | 水の世界・海洋冒険SF
「パートナーの機嫌をとるっていうのは、実験用の大型培養漕に湧いたボウフラを掃除するのに似ている」
 面倒な作業だが、手を抜くとあとで大惨事になるという意味で。

 人類の多くが宇宙空間のコロニーを生活圏としている25世紀。地球の大陸のほとんどが海中に没しており、その海洋の多くはウェイプスウィードと呼ばれるミドリムシの変異体エルグレナと肉食菌類ミセリウトが接続した巨大な海草の群体によって支配されていた。
 木星生まれの研究者ケンガセンは調査のためにシャトルで地表に向けて降下していたが、突入時の事故でシャトルが爆発。漂流していたケンガセンを助けたのは、地球の巫女ヨルだった。
 地球に残った人々の多くが迷信に支配されがちになる中、巫女は過去のデータベースに接続して科学文明を継承する数少ない職であった……。

 木星生まれの研究者と巫女が、知性を持つ巨大海藻の謎に挑む物語。帯で「『ソラリス』の系譜に連なる」と豪語しているけれど、まさにその価値はあるかと思います。
 でも、過去の巫女の記憶と人格を移植した海底のデータベースって、神ステーションっぽいなあ。

【ウェイプスウィード】【ヨルの惑星】【瀬尾つかさ】【植田亮】【ハヤカワ文庫JA】【海洋SF】【コロニー】【クローン】【電脳体】【集合知】
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「ひとつ海のパラスアテナ」 鳩見すた

2015-05-23 | 水の世界・海洋冒険SF
『アキ、たくさん生きろ。海は広いぞ』
 アキに父が残した言葉。

 隕石の落下やら地殻の変動やら地殻の変動など、いろいろあって地球上の陸地はほとんど海に沈んだ。生き残った人々はゴミの塊の浮島などに棲みつき、海底に沈んだ「ビフォア」の時代の遺跡から食料品や衣料品をサルベージしては食いつないでいる「アフター」の時代。
 オウムガエルのキーちゃん船長をパートナーにする少女アキは、性別をごまかしてディンギー(小型ヨット)パラス号を駆り、大海に点在している人々の居留地を行き来するメッセンジャーをしていた。
 だがある日、今まで見たこともない白い嵐に巻き込まれて船を失い、小さな無人の浮島に取り残されてしまう……。

 遙か未来の海洋を舞台にした、海洋冒険アドベンチャー。一見して、名作アニメ劇場にでもなりそうなタイトルと表紙イラストですが、途中まで読んで表紙イラストを見返し、思わず「ウソツキ!」と一言。
 ひとことでいえば、主人公が非力な少女というだけで、ちょっと百合風味なウォーターワールドでした。

【ひとつ海のパラスアテナ】【鳩見すた】【とろっち】【電撃文庫】【正統派の海洋冒険ファンタジー小説】【イルカ】【海賊】【ウミボーズ】【シャワー】【アロケエ】
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「水端のベローズ」 しゅー

2014-07-24 | 水の世界・海洋冒険SF
「我々にしかできない--ということが重要なのです」
 機能特化で役割分担による共存共栄がベロボーグ船団のベストな選択だと。

 世界は海面に覆い尽くされていた。
 人々はさまざまな船を集めて船団とし、それを都市のようにして暮らしていた。
 大嵐で自分の船団を失った少女ベローズは、旧文明の遺物を海底からサルベージすることに特化したベロボーグ船団に助けられたのだが……。

 アニメ『翠星のガルガンティア』のスピンオフ作品で、本編の3年前。ガルガンティア船団でレドのチェインバーを引き上げたベローズがサルベージャーになった経緯を語る海洋冒険マンガ。

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「東京湾 海中高校」 青柳碧人

2014-07-02 | 水の世界・海洋冒険SF
 ほんの20年の間ではあったけれど、千葉市の沖合、東京湾の底に街があった時代があったのだ。
 低コストではあるけれど空気中では劣化が著しいシーコンクリートと、海流発電の実験のための海底都市が建設され、人々はそこで子を産み、育て、その街の学校には地元の生徒も通うし、陸から通ってくる生徒もいた。
 そんな高校で育った教師の青春時代を語って欲しいと、化学実験室まで新聞部員がやってきた……。

 かつては男子高校生だった教師の回想と、当時の女子高生の視点の2つから交互に語られる、今はもうない街と高校の物語。
 ダムで村が沈んで分校も無くなった……という話と基本的には変わらないのだけれど、そこに今とほとんど変わらないテクノロジーによって建設された海の中の世界という要素が加わって様相が一変。それに現在と過去と視点を変えて語られる回想の中で、この物語がどこに着地するのか最後まで予断を許しません。
 故郷を失っても人はそれなりに生きていけるけれど、良い想い出は大切なんです。

『夏波のような海中生まれ海中育ちの女子高生は、ウェットスーツを着てフィンを付けた足で海水を蹴って登校しなければ、1日が始まった気がしない』

 巻末の校則集やJRの時刻表はマニアック。無くても良いのに、ちゃんと作ってるんだ。

【東京湾 海中高校】【青柳碧人】【とみー】【講談社文庫】【切なくも美しいSF青春小説】【近未来青春小説】【カラオケ】【回転寿司】【校歌】【文化祭】
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「アクアノート・クロニクル」 中村学

2014-05-26 | 水の世界・海洋冒険SF
 全てが海に覆われた世界で、人々は海中に点在するシェルターと呼ばれる街に暮らしていた。そもそもなぜ人間が海中に住んでいるのか、海以外の世界が存在していたのか、そんなことは太古の歴史の彼方に消え失せていて、宗教の形でその名残が残っているに過ぎない。
 幼なじみのメリルたちと小さな運送会社を営んでいる少年ウルは、ある日の仕事帰りに海底に倒れている少女を発見した。
 その少女アビーは内戦中の南方地域の王家の娘で、エルアザル帝国に救援を求めてやってきたというのだが……。

 白兵戦あり1対1の対決あり艦隊戦ありの水中冒険大活劇。まずは少年の冒険物語として面白く読めましたが、誰が良いとか悪いとか言い切れない関係で互いの状況だけが悪化して戦火が広がっていくという、考えてみればイヤな話です。分かりやすい悪役がいない。みんな真面目な良い人っぽいのに、なんで戦争が起きるのかなという話でもあります。
 ここが地球なのかどうかもはっきりしないまま、むしろそこがポイントなのに「パブロフの犬」とかそのまんまの固有名詞の多用が気になったけれど、そのあたりは「固有名詞を翻訳する際には、各国の言語に修正するように」というトールキン先生の言葉もあるから気にしちゃいけない。
 まだまだ回収されていない伏線、鳴り物入りで登場しても活躍していないキャラが多いので、続きが楽しみです。

【アクアノート・クロニクル】【中村学】【こずみっく】【ファミ通文庫】【本格冒険ファンタジー】【シェルター・ヘブン】【傭兵団】【両刀】【第15回えんため大賞 最終選考作】
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「水の迷宮」 高千穂遙

2013-05-19 | 水の世界・海洋冒険SF
「種の保存を最優先としている以上、すべての生物は必ず戦争を起こす。戦争のできない種は滅びていく」
 ネレイスの言葉。

 今回の仕事は水の惑星マルガラスでの先史文明調査。だがマルガラスは内戦のただ中で、チームの責任者ディーラーを護衛するため海底遺跡調査船に乗り組んでいたジョウとアルフィンの目前で戦闘が始まる。
 そして、被弾して調査船に飛び込んできたのは、水中行動に特化した能力を持つ傭兵アプサラの機体だった……。

 久々のクラジョウです。
 これ以前には宇宙を舞台にしたジュブナイルSFはあったし、翻訳のスペオペもありました。けれど、スペースオペラといえる日本の作品はなく、これがアニメ『宇宙戦艦ヤマト』に燃えた本好きの少年が真っ先にたどり着く作品となり、その後、『銀河乞食軍団』『ハイスピード・ジェシー』などと続くことになります。
 今回は水の惑星での遺跡探査の護衛任務。もちろんドンパチはありますが、ミリタリーSFではなく冒険アクション。欲を言えば、メロドラマというかラブコメというか艶っぽい笑いの一つも欲しいところですが、最近はアルフィンがおとなしいので残念。物わかり良すぎ、手際よすぎで、すっかりベテランっぽくなっていて、「おてんば娘」はもう死語の世界。
 話は壮大で血生臭いだけに、もう少し潤いが欲しいなあ。いや、クラッシャー・ジョウは1作目から話が壮大で血生臭い作品だったのですけどね。

【水の迷宮】【クラッシャージョウ】【高千穂遙】【安彦良和】【ハヤカワ文庫SF】【日本アクション・スペースオペラの祖】【スペース・オペラ】【ファースト・コンタクト】【海底遺跡】【遺伝子改良】【宗教国家】
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「海底二万里」 ジュール・ヴェルヌ

2009-09-17 | 水の世界・海洋冒険SF
 学生時代は「あんたに薦められた本を読んでみたけれど、そんなに面白くなかったぞ」と良く言われたもんです。いや、どんな本にでも誉めるところ見るべき点はあるわけだし、つまらない点だけを大声でまくし立てても野暮ってもんでしょ?
 自分の好きな本が「良書」とか「名作」とは限らないし(逆も真なり)、「好きな本」と「人に勧めたい本」も同じとは限りません。書かれた時代や目的も考えないといけませんよね。
 個人的な記録としては★で評価するのも良いと思うのだけれど、ブログとして公開するのであれば、時代性とか歴史上の意義まで含めて「作品」として評価するのか、あくまで自分の「好み」として評価するのか、スタンスが定まらないのならやらない方が良いですね。

 さて、そこでジュール・ヴェルヌの『海底二万里』です。

 1866年。次々と海難事故を引き起こす「動く暗礁」を調査するため、パリ科学博物館のアロナックス教授らは太平洋に向かうが、その船もまた謎の怪物によって沈められてしまう。
 だが、漂流する教授らを救ったのは潜水艦<ノーチラス号>だった。怪物とは海中を走る船だったのだ!

 この作品も今のラノベ感覚で読むと、ちっとも面白くないと思います。キャラクター性は弱いし、期待に反してメカはあまり活躍しないし、海底の描写ばかり延々と続くし、しかもやたらと長い。じっくりと神秘と驚異の海底の旅を仮想体験するのが目的のような本だから当然。
 もう21世紀として科学知識はそれなりに普及しているので「未知の世界に触れる興奮」というのはかなり薄まっていますし、ラノベ的に「想像の余地がないわかりやすさ」を求めてもいけません。個人的には後日譚的な『神秘の島』の方が面白い気がします。

【海底二万里】【ジュール・ヴェルヌ】【ネモ船長】【ノーチラス】
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