付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

『宇宙戦艦ヤマト2199』 第二章「太陽圏の死闘」

2012-06-30 | ミリタリーSF・未来戦記
 公開初日に劇場まで足を運んできました。14時20分からの回でしたが、見回せば知り合いの顔もちらほら確認でき、最前列あたりを除けばほぼ満席。

 今回はオリジナル・シリーズでいうと4話のワープテストから8話の冥王星基地攻略の5話までを4回構成なので話数はやはり1つ減ってますが、メイン以外のクルーや敵方将官の描写、艦隊戦や航空戦、陸戦もしっかり追加されて見応え十分。艦載機の発艦シークエンスも、あれだけの航空機をなにがなんでも艦内スペースに積み込んでやるぞと気合い十分のワンダバです。メカ的には、確かに波動砲も凄かったしコスモゼロやファルコンも活躍したけれど、見せ場からして三式弾無双のような……。
 あとは、理論派で強気の南部や軟派な太田に対して相原の影が薄いことが気になったことと、薮が真面目に仕事をこなしながらも少しずつ追いつめられていくのが注目点。シュルツとドメルの関係、真田副長の鉄面皮ぶりも含め、大筋を変えることなく、きちんと伏線を張って設定を補完していくスタイルは変わらず。もちろん第一章の「赤錆びた戦艦大和」と同じように、理屈としてどうよ?というシーンでも「ここが大事なんですっ!」という箇所はきちんと残してます。主にワープ中の森雪ですが。

 センス・オブ・ワンダーにあふれた星の異世界や未知のテクノロジーを体験し、血湧き肉躍る艦隊戦や航空戦を堪能し、さまざまな若者たちがぶつかり合うさまは、劇場まで足を運んだ甲斐のあった出来映えで、満足できる90分ちょいでした。
 でも、根本と杉山はテレビシリーズの時と同じく不遇であったことよ……。(2012/06/30) あ、でも1人は死ななくて済んだか……。

 帰宅してから、オリジナル版のDVDでおさらい。
 2199はテンポが早すぎ端折りすぎという声もないわけじゃないが、オリジナルのゆったりさ、尺稼ぎ、説明過多を今の目で見るとけっこう苦行に近いものがあります。うん。(オリジナルのままかどうかが判断基準になっている)オリジナル至上主義者はオリジナルのフィルムだけ見返していれば良いのだ……と新作に感謝。
 さすが四半世紀前の作品。内容の評価以前に、キャラクターが安定しない、カットによって色が変わる、色指定ミス、1機しか発艦しなかったコスモゼロが3機で帰還して、正解は2機だったらしいとか、気になりだしたらきりがありません。佐渡先生も今回は「ただの呑んだくれだ!」という感想でしたが、オリジナルでは「たちの悪い呑んだくれ」でした……。
 こうやって見直してみると、毎回トラブルで修理してますね。そこで火星不時着のプロセスをカットして、ワープテスト前の空戦をカットして、冒頭のあらすじ部分の端折って、説明的なセリフを削り、全体的にテンポ良い演出にすることで圧縮して時間を稼いでいるのですね。
 夜には、観賞済みのロートル数人で今後の展開予想。懸案事項は、なぜヤマトには陸戦隊(空間騎兵隊)ではなくて保安部員が乗り込んでいるのか、七色星団の空母部隊の護衛艦隊はどうなるのか、ルビーやサファイアの戦線でガミラス艦隊はどこと戦っているのか、そしてガミラス本星にいるらしいヒルデ・シュルツはヤマトの脅威から生き残れるのか?でした。
 特に、おもむろにあちこち顔を出しているくせに、エピソードに絡んでこない保安部員は「気になりますっ!」。陸戦隊ではなく、わざわざ情報部系の保安部員を乗り込ませているくせに最終的には叛乱・脱走となるはずなので、誰の系統なのかなと……。(2012/07/02)

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「若き少尉の初陣」 グレアム・シャープ・ポール

2012-06-30 | ミリタリーSF・未来戦記
 火星の人面石をあがめ奉った宇宙時代の新興宗教が、何を間違えたかハンマー・オブ・クラア同盟として宗教独裁国家を樹立。冷戦時代のソ連邦も真っ青の、強硬外交と恐怖政治と熾烈な内部抗争を繰り返している。
 しかし、技術的に後れを取っているハンマーは、テラフォーミング・システムの積み込まれている民間旅客船を密かにハイジャックしてしまう。内部の権力抗争の余波である。
 これを察知した艦隊は、拉致された乗客乗員の奪回作戦のため、新任士官であるマイケル・ヘルフォート少尉の乗り込む深宇宙軽偵察艦387を送り込むのだが……。

 やっていることは真っ黒だけれど周囲からはバレバレで、本当に戦争になったら酷い目に合うのが明白なのに、戦争になると国際外交的に面倒くさいので放置されている感じの独裁国家……という冷戦まっただ中というか最近でも心当たりがないでもない敵国相手に、帆船時代の海戦のような宇宙戦を挑むミリタリーSF。『紅の勇者オナー・ハリントン』あたりの系統の作品で、600ページ近い大作だけれど、どうしてこれだけの紙幅が必要だったかは不明。

【若き少尉の初陣】【若獅子ヘルフォート戦史】【グレアム・シャープ・ポール】【新間大悟】【ハヤカワ文庫SF】
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「ログ・ホライズン2~キャメロットの騎士たち」 橙乃ままれ

2012-06-29 | VRMMO・ゲーム世界
 あ、いましたね。ああいうキャラが。あまり前面にはそういう箇所を押し出していませんが、本当に大事なポイントは確実に押さえてきますね。

 アキバの街に屋台が出た。
 MMORPG「エルダーテイル」の世界では、食事には困らないがどんな食材をどんな風に調理しようとも同じ味、湿気った煎餅のような味しかしないはずなのに、この屋台のハンバーガーは本当にハンバーガーの味がするのだ!
 この外食ブームこそシロエの打った最初の一手、初心者プレイヤーを食い物にして恥じることもなくなった、せこくて格好悪くてみっともないアキバの街を掃除するための戦いの始まりだった。
 “腹ぐろ眼鏡”がいよいよ本領を発揮する……。

「腐らないものがあったら逆にそれは信用ならないにゃ。生病老死は三千世界の理なのにゃ。生まれ出でたものは、腐りもすれば、病に苦しみもする。老いて衰えることもある。いずれ死を迎える。確かにそれは苦しいことだけれど、それを否定するのは、誕生を否定するのと同じことなのにゃー」
 遠慮なんかしないで「一番すごいことをするといい」と、にゃん太班長の言葉。

 「食べる」って大事なことだよね!ということと「遠慮するなよ」が今回の2本柱。それから大地人、ゲームの中のNPCのこと。ネットゲーム、判定処理をコンピュータが自動的におこなうタイプのRPGではなく、人間のゲームマスターが一々判定するタイプのゲームにもこうした認識の相違がありました。
 ゲームに登場するNPCたちを単なるかきわりの群衆、情報提供やアイテム売買の端末、あるいはアイテムそのものとみなすのか、あるいはプレイヤーのキャラクターたちと同じように、そのゲーム世界で生きている血の通った存在なのか。そこまで考えられるかどうかが、そのゲームをより深く遊べるか遊べないかのボーダーラインになっていた気がします。
 そんなところまできっちり話を広げてしまうあたり、本当にあなどれないというか、好きです。

【ログ・ホライズン】【キャメロットの騎士たち】【橙乃ままれ】【ハラカズヒロ】【エンターブレイン】【MMORPG】【PK】【WEB小説】【初心者互助】【虎のような笑み】【料理人スキル】【パレート最適断頭台の刑】【ルール】【全力管制戦闘】【最善】【トラのバター】
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「ソードアート・オンライン3」 川原礫

2012-06-28 | VRMMO・ゲーム世界
「仮想世界だからこそ、どんなに愚かしく見えても、守らなければならないものがある」
 プレイヤーと分離したロールプレイはありえない。卑しい行為をしてばかりいればプレイヤー本人までおかしくなるとキリト。

 桐ヶ谷和人は現実世界へと帰還した。
 しかしアスナはいまだ意識を取り戻さない。他にも300人ほど意識を取り戻さないプレイヤーがいるという。
 雑貨屋のエギルからアスナらしき妖精が写っている写真を手に入れた和人は、その妖精が捕まっているというMMORPGの世界へと再び飛び込む。
 そこはプレイヤーキャラはすべて妖精でありPK推奨というゲームだったが、それはまた『ソードアート・オンライン』のシステムを流用した世界でもあった……。

 フェアリィ・ダンス編の開幕。キリトとユイのコンビが勝手分からぬ『アルヴヘイム・オンライン』の世界で暴れ回ります。今度のボスキャラは単純にイヤなやつなので、ここはスキッと勝って欲しいもんですね。

【ソードアート・オンライン】【フェアリィ・ダンス】【川原礫】【abec】【電撃文庫】【MMORPG】【PK】【二刀流】【WEB小説】
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「下士官の使命」 ジャック・キャンベル

2012-06-27 | ミリタリーSF・未来戦記
「答えを知りたくない質問はするな」
 イーサン・スターク軍曹の言葉。

 21世紀、巨大な軍産複合体と化して地球の資源をあらかた支配したアメリカが、今度は月の資源もいただきだと月面へ進出。既に足場を築いていた他国に治安維持活動だと言い張って戦争を吹っかけるのだけれど、思い上がりも甚だしい動機の戦争なので、最前線も愚劣指揮官ばかりで……。

 今作も主人公は逆境だ!……という、スターク軍曹の宇宙戦争。
 企業は権益を確保するために戦争を始め、民間人はその戦争をビデオ中継で観て楽しむ。民間人も企業も税金を払わないから、企業は利益のために戦争を仕掛け、その利益で戦争が継続されるけれど、上級指揮官は今どき精神論で「精神は物質の3倍の力を持つ」と言い出すバカばかり。
 勝っても負けても明るい未来は来そうにない3部作の1冊目。

【月面の聖戦1】【下士官の使命】【ジャック・キャンベル】【寺田克也】【ハヤカワ文庫SF】【平和維持活動】【視聴率】【税金】
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「銀のプロゲーマー」 岡崎裕信

2012-06-26 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 持って出かけた本を読み切ってしまって出先の本屋で目についた本を買い、ぱらぱらとページをめくって「各界の天才ばかりを集めたエリート校にゲーマーが入学」という設定に、あまり期待できそうにないなと読み始めたら予想外に面白くてぐいぐい読まされてしまい、ふと気がついて作者を見たら岡崎裕信。そりゃあ、巧いよ。

「大人は怒りやすい方を怒る。決して悪を叱るのではない」

 各界の天才だけを特待生で集めた枡江学園になぜか推薦入学できてしまった、五ツ星秋煌。彼の唯一の取り柄はパソコンゲームの、しかもマインスイーパーだけだというのに、天才ゲーマー16名が集うプロゲーマー養成クラスの一員となってしまったのだ。
 その秋煌の前にその天才ゲーマーたちの中でも頭ひとつ飛び抜けている、天堂銀華が立ち塞がる……。

 思えば、岡崎裕信には作品の出来にムラがあって、登場人物は多くなく筋書きが単純であればあるほど話が面白くなるのです。勢い任せのぶつかり合いに見えても、その中にはちゃんと駆け引きがあり、登場人物同士の機微が反映される、勢いと情に彩られたゲーマーの物語です。
 ゲームを好きだからってバカにされない世界が1日も早く来ますように。

【銀のプロゲーマー】【岡崎裕信】【龍太】【スーパーダッシュ文庫】【MMORPG】【ボールは殺人鬼】【Eスポーツ】【時給の違いは実力の違い】【賞金つきゲーム】【ふひーん】【きゅーん】
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「空色メモリ」 越谷オサム

2012-06-25 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「世の中には、ペンを執る人間と執らない人間とがいるんだよ」
 上手い下手とは関係ないよと、顧問の吾妻先生の言葉。

 ハカセこと河本博士は文芸部長にして、たった1人の部員。
 汗っかきでデブの桶井陸は、毎日のように部室に入り浸っているが、まだ部員じゃない。部員になると年1の会報に原稿を書かなくてはいけないのが面倒くさいのだ。
 そんな文芸部に新入部員が来た。メガネのかわいい女子生徒だ。あまりのかわいさに、何が目的だ?浄水器でも売りつける気ではないのか?と疑心暗鬼になる2人だが……。

 創元推理文庫だけれど、推理はフレーバー程度のまごうことなき青春小説。
 青春ミステリで文芸部というと創元推理文庫なら似鳥鶏の『理由あって冬に出る』、角川文庫で米澤穂信の『氷菓』、少し色が付いてファミ通文庫の野村美月『“文学少女”』とかいろいろあるけれど、それらと比べるとミステリ分は遙かに薄いですね。
 なぜ創元?と思わないでもありませんが、痛面白いからいいか。
 小柄で黒縁メガネのハカセと小柄で体重98キロのブーちゃんが、新入生をめぐる謎を解き明かす……というより、言動が気になってストーカーまがいの詮索をしちゃう話。痛い、痛い……。

【空色メモリ】【越谷オサム】【タケナカミノル】【創元推理文庫】【爽やかなそして胸が熱くなる青春小説】【文芸部】【ラノベと一般文芸】【靴泥棒】
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「デュラララ!! ×11」 成田良悟

2012-06-24 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「年上には、仲良くない内には敬語を使っとけ。仲良くなってから、タメ口を聞いて良い相手かどうか確かめろ」
 なんでも屋の黄根の言葉。

 呉越同舟、成り行き次第。敵も味方も一緒くたに、岸谷新羅とセルティのマンションに集まったのは、それぞれがそれぞれの事情を抱えた異常者ばかり。
 途方に暮れたセルティはそれぞれの事情を聞き取り、まとめはじめるが、いつの間にかこの奇妙なギルドの責任者にされていた……。

 罪歌の所有者3人が表紙の今回は、ラストの大騒ぎ直前の状況整理回? あちらこちらで小競り合いと接触が起き、大嵐の前の梅雨のような状況です。

【デュラララ!!×11】【成田良悟】【ヤスダスズヒト】【電撃文庫】【夜のセルティ】【善と悪は紙一重】
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「ゴールデンタイム外伝 二次元くんスペシャル」 竹宮ゆゆこ

2012-06-23 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 若い男が女に誘われるまま、深夜の自室へと招き入れられたなら、やることはひとつだ。
 愛可からの電話に飛び出した隆哉は、こっそり上がり込んだ彼女の部屋で、髪にベタを塗り、ネームを切り貼りし、局部の結合部分には海苔を張り、なんとか締め切りまでに入稿できるよう徹夜作業のアシスタントだ……。

「ほとんど呪いだよ。イヤとかヤダとか言ってられないの。満たされないままでいるか、満たされようとあがくか、その二択だけ。そう生まれついちゃったんだから、しょうがないよね」
 それが創作しなければ生きられない二次元オタの業なのだと愛可の言葉。

 周囲にかわいい女性がいっぱいいるのに、三次元を拒否して二次元の脳内嫁とキャッキャウフフしている“二次元くん”こと佐藤隆哉を主役に据えた短編集。
 自分が傷つくのが怖い、二次元好きな青少年の心の内側をえぐり込むような笑いの数々は、コメディではあっても登場人物のみならず読者も血反吐を吐きそうなストーリーです。

【ゴールデンタイム4】【裏腹なるdon’t look back】【竹宮ゆゆこ】【駒都えーじ】【電撃文庫】【青春ラブコメ】【二次元レディ】【乳首トーン】【合コン】【土下座】【あやなみ】
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「はたらく魔王さま!(5)」 和ヶ原聡司

2012-06-22 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「神様は汝の隣人を愛せよって言ったんでしょー? 自分の言うこと聞かない奴はぶっ殺しちゃえなんて言う神様は、神様なんかじゃないし、みんな仲良くでいいじゃん」
 そんなこと言う奴は神ではなくて、ただの人間なんだと、テレアポ会社勤務の鈴木梨香。

 魔王軍は復活のために着々と足場固めをしようとしていたが、端から見れば、悪魔大元帥アルシエルは規則正しい生活で節約家計を守り、堕天使ルシフェルはパソコンにかじりつきっぱなしのニートで、魔王サタンはただただ笑顔でホスピタリティいっぱいに働いているだけだ。
 その頃、ネカフェで寝泊まりしている大天使らに状況の変化を伝える知らせが届いた……。

 魔王なき世界にとって最大の危険要因は勇者である……というのは、決して目新しい発想ではないけれど、その根本的な着想については「そりゃそうだよねえ」と冒頭の台詞も含めて展開の巧さに納得させられました。序破急の破にあたりますが、この先どう展開するのか、「フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー」の基本線は堅持して欲しいなあと願っています。タダ券絡みで、失敗をちゃんと失敗として認識できないと成長はないと言い切るのが、この話の醍醐味ですから。

【はたらく魔王さま!】【和ヶ原聡司】【029】【電撃文庫】【フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー】【はなまるうどん】【地デジ】【ネットカフェ】【空気を読むニートなんか二流】【監視者】
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「アルカナオンライン(1)」 猿野十三

2012-06-21 | VRMMO・ゲーム世界
 クリアできないゲームなど、ゲームじゃない。
 でもヌルゲーは大嫌いだ。

 2117年7月。仮想現実体験型オンラインRPG(VRMMO-RPG)ベータテストに参集したプレイヤーたちが、ゲーム世界からログアウトできないという事態が発生した。強欲な役員の愚かな指示でゲームバランスを狂わされ、手塩にかけたゲームをつぶすはめに陥ったプログラマーの復讐らしい。
 ところがコアゲーマーの妹の付き添いで参加した水泳部のジンは、チュートリアルもこなさず初期装備の防具のまま、仮想世界で泳ぎを極める日々。雑魚相手からマグロや鮫へと対戦相手をランクアップしては徒手格闘のレベルを上げ、侍に転職すれば今では誰もやりたがらない一刀流を選択し……

「AOでは、盾と重装備が一番安定するので、前衛職は盾騎士が一番人気ですね。まあ兄さんの場合、何をしでかすかよく分かりませんので、好きなようにされるのが一番だと思います」

 この手の話の常であるゲームクリアをほとんど意識せず、好き勝手にゲーム世界を愉しんでいる主人公なので、前半ほとんど魚との白兵戦が続きます。『ログ・ホライズン』などではメインテーマの一つになっていた、帰還できないことに起因する混乱と凶行からの秩序回復も、主人公のいないところで解決しています。いわく「この世界にいるのが、(大災害が起きたときに暴動よりも秩序が生まれる)日本人だけだから」。
 どんなゲームでも役に立たないといわれているキャラや技を黙々と伸ばす人は幾らでもいるので(某スーパーロボット大戦でバーニーをLv99まで育てるとか)、ここまで本流を外れるのが主人公しかいないというのもどうかなという気もしましたが、結果的に気軽に愉しめる話になっているので善しとしておきましょう。
 なぜか、わが家の相方さんがむやみに気に入ってしまい、読みふけってました。帯には「お気楽男」とか書いてあるけれど、ぜんぜんお気楽じゃなくて真面目な好漢だよね、ただゲーム的なお約束に疎いし従う必要を感じていないだけで。

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「腕貫探偵、残業中」 西澤保彦

2012-06-20 | ミステリー・推理小説
 街のあちこちに出没する「市民サーヴィス課臨時出張所」の窓口で、悩める市民の相談ごとを次々に解決していく『腕貫探偵』の続編というか、連作短編集の2冊目。
 前の時も、ユーモアたっぷりだけれど救いのない話も多いという感想を抱いたけれど、今回も同じ。人間の優しさや弱さをユーモアたっぷりに描いているように見えて、実は陰湿。解説の言葉を借りるなら「底意地が悪い」。

 いつの間にか、街のあちらこちらに出没する市役所の「市民サーヴィス臨時出張所」。窓口を担当するのは杓子定規な公務員。
 相談者のこみいった個人的事情を聞きだすうちに悩みを解決していくのだが、そこに隠されている日常の暗部をも暴き出していき……。

 カフェレストランに押し入った強盗の目的とか、好きだった彼女とのツーショット写真が出てきたけれど自分には撮った覚えがないとか、退職した女教師が死の直前に引き出した5000万円はどうなったのかとか、強盗や放火、殺人など前作以上に愛憎どろどろの血生臭い話がつまった6編のミステリ。
 腕貫さんといえばクリスティーのクイン氏なみに謎の人なんだけれど、今回は食いしん坊でエキセントリック美女な女子大生ユリエのおかげで、かなり血肉の通った存在になりましたね。普通の公務員みたいだよ、だーりん。そのせいで、極端に陰湿な雰囲気にならなかったのでしょう。
 氷見刑事のサブ・レギャラー化も含め、バランスの取れた1冊になりました。

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「ソードアート・オンライン2」 川原礫

2012-06-19 | VRMMO・ゲーム世界
 見事に1巻完結した『ソードアート・オンライン』の2冊目。つまりは拾遺集ともいうべき、本編で語られなかった期間のあれこれを描いた短編4本を収録。

「レベルなんてただの数字だよ。この世界での強さは単なる幻想に過ぎない」
 そんなものより大事なものはあるとキリトの言葉。

 使い魔を失ったビーストテイマーの少女の前に現れたキリト、腕の良い鍛冶屋として評判になりつつある少女の前に現れたキリト、森の中で幽霊のような状態だった幼女が出会ったキリトとアスナ、そして水路に隠れていた槍使いの少女の前に現れたキリト……まごうことなくさすらいの女たらしっぷり。
 でも赤鼻のトナカイで泣かせるなんて、ずるいよ!!

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「氷風のクルッカ」 柳内たくみ

2012-06-18 | 戦記・戦史・軍事
 第2次世界大戦の初頭、1939年11月30日にソビエト連邦はフィンランドへの侵攻を開始した。
 国際世論はフィンランド支持であったものの、近隣のスカンジナビア諸国が保身の中立を堅持したため、実効性のある支援が届くことはなく、大国であるソ連の攻勢を小国フィンランドが単身迎え撃つこととなった。
 しかし大方の予想を覆し、フィンランドはこの侵略に抵抗し、多くの犠牲を出して国土の10%をソ連に割譲するという条件を受け入れながらも独立を守った…………という「冬戦争」の顛末を、フィンランドとソ連をスオミ共和国とニューヴォスト連邦(ヴェナヤ軍)に名前を変えて再話したのが、この話。

 フランス外人部隊では“モロッコの恐怖”と呼ばれたアールネ・ユーティライネンとか、その部下で“白い死神”と呼ばれた伝説の狙撃手シモ・ヘイへとか、史実をそのまま記述した方が面白くない?という話ですけれど、冬戦争を題材とした文献はさほど多くなく、いちばんメジャーなのが『ストライク・ウィッチーズ』のエイラなので、ここらでその中間くらいの作品があっても良いですよね。

 ヴェナヤ軍から祖国を守るため、老若男女を問わずすべての国民が立ち上がった。
 もちろん、後方で工場や輸送に携わるのも大事な仕事だが、少女クルッカの特技は狙撃だった……。

 やはり、そのまま敵味方共に実名でいくべきだったというのが読後感。ついでにいうと、最後の最後で恋愛っぽいやりとりが出てくるのに唐突な印象を受けました。

【氷風のクルッカ】【雪の妖精と白い死神】【柳内たくみ】【アルファポリス】【超ド迫力天才美少女スナイパー小説】【血縁対決】【雪中の奇跡
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「カメレオンの呪文」 ピアズ・アンソニイ

2012-06-17 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 ザンスは魔法の国だ。
 そこに住む生き物は人も獣の植物も、皆、魔法が使えるか、魔法的存在であり、その能力は唯一無二なのだ。
 もちろん目の色が変えられる程度であっても魔法は魔法。その住人は成人するまでに自分の使える魔法を発見しなくてはならない。
 ところがビンクはいつまで経っても魔法の力が発現しない。このままでは魔法の無い世界マンダニアに追放されてしまうと、物知りの魔法使いハンフリーに助けを求めに出かけるのだが……。

 ダジャレと魔法がいっぱいのボーイ・ミーツ・ガール+謎解きの冒険譚。魔法の国ザンスのシリーズは、私の周囲では「奇数巻が面白い」と言われてました。10冊超えたら、もう何でも良くなってきましたけど。

【カメレオンの呪文】【魔法の国ザンス1】【ピアズ・アンソニイ】【だじゃれ】【ボーイ・ミーツ・ガール】
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