就職活動中の大学生、間繁はいつの間にか異世界にいた。そこで偶然拾った卵から生まれたトカゲはなんとなくバジリスクっぽくて、敵対する生物の動きを止めてしまう。
そんなトカゲの「バジル」と孤独なサバイバル生活を続けていたハザマ・シゲルが、人間やエルフの女性を誘拐して苗床とする犬頭人の集団と出くわした……。
面白いのは間違いないけれど、いろいろ内容詐称の疑いのあるシリーズ。
たぶん人が簡単に死んでしまい、女性が魔物に拐かされ妊まされたり食われたりするところから始まるので、編集部は「ダークファンタジー」というのだろうけれど、作品全体の雰囲気じゃないよね。
どちらかといえば女たちの建国ファンタジー、主人公が魔物から女を助け、そのまま居着いてハーレムになるというのはパターンだけれど、数が多いのですね。女性ばかりではないけれど、助けた相手が30人が100人、100人が1000人、1万人……。
最初は駆逐した犬頭人の洞窟を拠点としていたことから洞窟衆と名乗りますが、その影響力が洞窟1つから複数の村へ、村から国家間の緩衝地帯へと拡大し、普通なら主人公べったりになるだろう女性陣は行政から経理、外交、戦闘とおのおの役割を与えられ散っていき、(ウェブ版では)ぜんぜんダークファンタジーでもチートハーレムでもなくなっていきます。
ついでにいうと、タイトルそのものも引っかけ。表紙イラストだとトカゲがどこにいるか分かりにくいですが、本篇でもそんなもんです。マスコットですらありません。最初は戦闘で活躍していますが、そのうち戦闘でもいるのかいないのか分かりにくくなり、ただ主人公と初対面の人が「トカゲといっしょ」だからハザマだと認識するので一緒にいるんだなと分かるくらいになります。
とりあえず面白いということは断言します。
ただ、かわいいトカゲと主人公が繰り広げる冒険譚とはちょっと違うし、全体的に重苦しく残酷な空気のダークファンタジーでもなく、普通だったら歴史に名前の残ることもない、村娘や行商人の生き残りの少女や持て余されていた貴族の姫君たちらが、自分たちの力で町を作り、大都市を築き、国を動かし、世界中にその影響力を広めていく、いわば「ようこそ女たちの王国」といったところでしょうか。女性たちが自立していく物語なので、主人公のハーレムにヒロインが増えていく話とはベクトルが逆方向なのです。登場して、主人公に関わってくる皇女、公女、族長の娘、巫女は何人もいるけれど、ぜんぜんそういう雰囲気にはなりません。
今回はとりあえず、盗賊団を壊滅させるまで。
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