goo blog サービス終了のお知らせ 

付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「ベン・トー6~和栗おこわ弁当310円」 アサウラ

2010-08-31 | 食・料理
 文化祭も間近なある日。
 佐藤洋は学校のすぐ近くにスーパー・マーケットを見つけた。こんな近くにあるなら、今まで何故行かなかったのかと訊ねる佐藤に、槍水はあの店は特殊だから近寄らない方が良いと警告するのだが……。

 かねてより噂の、槍水先輩の年の離れた妹・茉莉花の登場編、烏田高校の文化祭です。前回、主人公不在と見間違えてしまったくらい扱いの悪かった口絵ですが、さらにひどいことになってます……。

「これはな、犯罪じゃない。……ロマンだよ」

 16歳高校生と20歳超えているだろう男子がそろって、10歳の女の子の下半身を仁王立ちでガン見するのも、ロマンの探求者であるからだと<毛玉>の主張。

 今年のSF大会『TOKON10』にまで出張してきた本屋の店舗では、ゲストで来場している作家やマンガ家の作品が平積みで売られていましたが、そんな中に異彩を放っていたのは『ベン・トー』。
 なんで『ベン・トー』?と思っていたら、作者の人がゲスト参加していたのですね。「セガをかたる2010<メガドライブ秘話>」なんて企画で、みんなで社長の名刺とかの話をしてましたよ……(ちらっとだけ見た)。確かに、この話の何割かはレトロゲームのネタですね。(2010.8.31)

 面白かったので、そのままの勢いで1冊目から読み直し。年相応にエッチで狡くて、でも気性はまっすぐな主人公の、熱くて笑えて夜中に読むとお腹が減って仕方がない話です。(2010.8.31)

【ベン・トー】【和栗おこわ弁当310円】【アサウラ】【柴乃櫂人】【スーパーダッシュ文庫】【アフターバーナー】【レイアース】【青の6号】【ガリー・トロット】【文化祭】【イチジク浣腸】【特性和牛ステーキ弁当(山葵ソース)】【ペド野郎】【移動販売】【ビッグ・マム】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「この中に1人、妹がいる!」 田口一

2010-08-30 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「世界はもやもやしてるのよ~」
 好きと嫌い以外の感情はあるし、なんでもハッキリしなきゃいけない理由もないと、天導愛菜・生徒会長の言葉。

 成績優勝でスポーツや芸術にも優れ、マナーや気品も文句なし。高校卒業後はそのまま大財閥の当主の座が内定しているという完璧な主人公が、最後に1つ与えられた条件は、在学中に生涯の伴侶を決めろというものだった。
 ところが亡くなった父親には隠し子の妹がいたらしく、しかもこの正体不明の妹は血のつながった兄と結婚する気まんまん。
 果たして帝野将悟は見事妹をよけて伴侶をみつけられるだろうか?

 いかにも18禁のギャルゲーにありそうなあらすじです。普通なら最初からパスなんだけれど、このオマヌケなタイトルは買わずにはいられません。続きを買うかどうかは微妙ですが。

【この中に1人、妹がいる!】【田口一】【CUTEG】【シュークリーム】【ダンスパーティー】【マイナー特撮ヒーロー】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「雪玉に地獄で勝算はあるか?」 チャールズ・ストロス

2010-08-29 | その他SF(スコシフシギとかも)
『神の名において憎しみを広めるような真似をすると地獄に行く。そういう行為を神の名の商標権侵害、と彼女は呼んでいる』

 イギリスの作家ストロスの短編3編にエッセーのようなもの1本、ワールドコンで来日した際の旅行記、それに大森望による解説をハヤカワSFシリーズを模した装幀でまとめたもの。
 SF大会がマッドサイエンティストに乗っ取られた近未来の一幕やら悪魔との契約やら、解説にあるとおり、SFオタク気質の作家なのかも。「インターネットが肉で出来ている」の後に「MAXO信号解析報告」が載っているのに脱帽。いや。非道い話だ、「MAXO信号解析報告」は!(誉め言葉です)

【雪玉に地獄で勝算はあるか?】【チャールズ・ストロス】【大石まさる】【はるこん実行委員会】【SPAM】【チェレンコフ放射】【ハローキティ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「大戦前夜」 ジョン・リンゴー

2010-08-28 | ミリタリーSF・未来戦記
「どんな戦闘計画も、敵と接触するまでの命」
 みんなトレッキー。

 “良い知らせ”と“悪い知らせ”があった。
 “良い知らせ”は人類が友好的な異星人とのファースト・コンタクトに成功したこと。
 “悪い知らせ”は、その異星人は敵対的な種族と星間戦争のまっただ中であり、5年後には地球も最前線になるということだ。
 2001年3月のことであった……。

 ファースト・コンタクトと同時に銀河系レベルの星間戦争に巻き込まれた地球人類が、なかば傭兵として戦いまくる話。ファースト・コンタクトがあり、銀河文明のテクノロジーが入ってきた上に、まともに戦っていたら勝てないような宇宙人の大艦隊襲来!ときたら、政治、科学、宗教、市民生活とあれこれあるでしょうに、ただただ軍隊視点だけで話が進みます。ダーヘル人の陰謀も、一般家庭での様子も、戦闘の合間にちらっと描写されるくらい。片っ端から徴用されたというミリタリーSF作家陣も具体的な出番無し。

 『エリアル』でもファースト・コンタクトしたときの地球の技術レベルは銀河系水準に遙かに及びませんでしたが、あちらは口八丁で乗り切った話。こちらは戦争技術と闘争心で乗り切る話です。闘争心にあふれる文明の大半は宇宙進出前に自滅してしまうものらしく、敵であるポスリーン以外の銀河系文明は戦うこともできない臆病者の群なのです。そういう意味ではポール・アンダースンの『天翔る十字軍』とシチュエーションは似ています。ベトナム戦争や湾岸戦争を生き残ってきた兵士たちが今度は宇宙の果てで戦うぞ!……って、ジェリー・パーネルの『地球から来た傭兵たち』にも似ています
 でも、こちらの地球人は時間が足りない上に、銀河文明の窓口であるダーヘル人が地球人を警戒して裏工作をしてくるのでなかなかうまくいきませんが、それでもパワードスーツみたいなコンバット・スーツの実戦配備に成功したものですから、レオパルド戦車を機動歩兵が支援するという光景すら見られます。「追いつめられた人類が何をするか、見せてやる!」というやつですね。

 表紙イラストも好きだけれど、コンバット・スーツは頭部にバイザー部分が無く、前面もグレー一色ということだから、ちょっと違う気がします。AH版『宇宙の戦士』のパッケージ・アートが近いような気がしますが……。

【大戦前夜】【ポスリーン・ウォー1】【ジョン・リンゴー】【ひろき真冬】【ファースト・コンタクト】【後方潜入】【特攻】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「螺旋人リアリズム」 速水螺旋人

2010-08-27 | エッセー・人文・科学
 まるまるっとしていて、ごちゃごちゃっとしていて、ロシアが大好きで、ファンタジーやレトロ風味のSFにとっぷりつかっている速水螺旋人のモノクロ・イラストやカット、あるいはカットともいえないラクガキをたっぷり詰め込み、解説のコメントを加えた1冊。
 コミックも3本入っていますけれど、やはりメインは個性豊かなカット群。「セーラー服とショットガン」とか「露天式歩行便所1号」とか「湾岸ロック」とか「対ドラゴン擲弾兵」とか、タイトルだけで中身が想像できて、実際は予想の一歩斜め上の作品を何百点もぱらぱらと読んでいくのは愉しいもんです。

【螺旋人リアリズム】【ポケット画集】【速水螺旋人】【宮沢賢治】【大祖国戦争】【パラダイス・トリガー】【ソードワールド】【Aの魔法陣】【ハイパーT&T】【サタスペ】【天元突破グレンラガン】【迷宮キングダム】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「宇宙の傭兵たち」 ジェリー・パーネル

2010-08-27 | ミリタリーSF・未来戦記
「軍人にできることは時間を稼ぐことだけだ」
 軍事作戦の成功で世界が救われたり平和が築かれたりすることはない。それは政治の仕事であり、軍人はそのための汚れ役に過ぎないのだと。

 2004年にオルダースン航法が完成し、人類の太陽系外進出が始まって100年近くが経過。既に宇宙各地に植民地が建設されていたが、地球を統治する《連合国家》は崩壊寸前となり、植民惑星の治安も悪化していた。
 政情不安な惑星ハドリーも治安回復のために傭兵部隊を雇い入れたが、その指揮官ジョン・クリスチャン・ファルケンバーグ大佐には謎が多かった……。

 今はすっかりハヤカワ文庫の独壇場となったミリタリーSFですが、かつては弓と剣で戦う文明レベルの星まで異星人に連れてこられた地球の兵隊が戦う『地球から来た傭兵たち』とか、傭兵を育て上げることが国家産業となっている星の物語『ドルセイ!』とか、創元推理文庫も翻訳をいくらでも出しておりました。原書風のイラスト中心で展開してたから、売れなかったのかねえ……。

 この『宇宙の傭兵たち』はミリタリーSF界の御大パーネルの代表作なので、ミリタリーSFの代表作みたいなもんです。腐りきった政争の巻き添えで軍より追放された優秀な司令官と、彼が育て上げ、人減らしのために解散させられた前線海兵隊第42連隊が傭兵として星々を渡り歩く話なのだけれど、その背後には大海軍大将セルゲイ・レールモントフの深謀遠慮かつ諦観による長期計画が隠されていて……というあたりがSFなのかな。
 戦場がベトナムのジャングルから中東の砂漠に変わっただけ、あるいは使う武器がマスケット銃からM-16に変わっただけではSFと呼ばないように、単に、未来の異星でドンパチするというだけではミリタリー小説であってもSFじゃありません。そのあたりのさじ加減は巧いと思いますが、ガチ右な作品です。敵もあくまで地球出自の人間であり、見た目も醜悪で思考も異質な異星人ではないですしね。
 話せば解る、交渉でなんとかなるという段階を過ぎてから送り込める傭兵の話ですから、情け無用です。

 今、戦乱をテーマにしたブラウザゲーム(ブラウザ三国志)とかやっていると、すぐに「開戦だ!」とか別陣営と戦争が始まり、出撃したかと思うと「停戦!攻めるな」とか命令が来て、「なにを始めたり終わったりしてんだよ? そんな簡単に終わるくらいなら始める前に外交でなんとかしろよ」と思ってしまうのは、ここらの作品を読んで育ったせい。
 自分の無能で悪化した事態の収拾に軍を使っておきながら、もうこれくらいでいいよと(あとの状況悪化も予想できず)作戦途中で撤収させたがる政治家なんて!と文民統制を否定したくなるのには困ったものです。

【宇宙の傭兵たち】【ジェリー・パーネル】【傭兵】【連合国家】【神の目の小さな塵】【ファルケンバーグ傭兵部隊】【《連合国家》】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「おひとりさま自衛隊」 岡田真理

2010-08-26 | 戦記・戦史・軍事
「武力放棄を謳っている政党本部にも警備員はいる」
 教官の言葉。
 戦争のない世界は理想だけれど、武力放棄をするというなら、何かあったときに自分や家族の身に何が起きても我慢する覚悟が必要だよね。

 日本の自衛隊にも予備役制度があって「予備自衛官補」というのだけれど、著者は酔った勢いで予備自衛官補に応募してしまい、応募した翌日には説明書類が届いてしまいます。
 本職の自衛官の訓練に比べれば簡単で易しいというけれど、それでも訓練はハード。捧げ銃で持つ銃の重さは半端ではありません。本人の意欲はもちろんですが、本来の勤めを休んで訓練を受けることになるので、職場の理解が無くては続けられません。
 重い装備を背負っての行進はあるし、簡単そうに見える匍匐前進も素人には至難の業で、空包射撃だって目の前に置いた雑誌がズタボロになるくらいの威力はあり……と、勢いに任せて飛び込んでしまった、そんなトータル50日の訓練過程の日々を素人女性の目線で書きつづった体験談。
 ここでも、自衛隊の災害出動が年間600件超あり、かつては災害の非常時でも独自の判断で動くことができなかったという記述がありましたが、ぼくも思わず阪神淡路大震災のときのことを思い出しました。
 当時のコミュニケーションの主流はインターネット以前のパソコン通信。よく覗いていたパソコン通信の掲示板にも、朝から各地の被害状況や友人知人の安否情報が交錯していましたが、その中の自衛隊関連情報では「まだ出動命令が出ません!」という現場の声が何度も上がっていました。ちょうど社会党の連立政権時代。
 助けを求めている人がいくらでもいて、助ける力があるのに動くことができないというのは、さぞや悔しかったことと思います。

【いざ志願】【おひとりさま自衛隊】【ヨビジホになってみた。】【岡田真理】【催涙ガス】【ヤッターガエル】【親子丼】【KY】【武士は食わねど高楊枝】【レンジャー】【カップヌードル】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「蓬莱学園!!10周年記念イベント」 2000/05/03-05/04

2010-08-25 | イベント・コンベンション
 先日のTOKON10の「蓬莱学園20周年記念イベント」にて、作家・新城カズマこと柳川マスターがふと言いました。

「10周年のときはみんなで温泉地かどこかで宴会してたんだよねえ。楽しそうだったけれど、ぼくは原稿を書いていて参加できなくて、確かチャットで参加したんだ……」

 ああ、そんなこともありました。
 でも、たいていのイベントはしっかり記録してレポートを書き、写真も残しているのですが、あの記念すべき10周年ばかりはろくな記録が残っていないのです。その4カ月後に東海豪雨で被災したこともあるけれど、全体にオーバーキャパシティーだったのでしょう。すっぽり脳裏から消えています。
 ただ、さすがに10周年ということで記念紙も編纂していますので、断片的なものは残ってます。

 時は平成12年5月3日。この日から1泊2日の日程で、名古屋市近郊の日進市五色園にてPBM同人誌「ぽすたる☆ている」のオフィシャルイベントが開催され、そのメインイベントとして「蓬莱学園10周年記念イベント」が企画されたのです。
 その日は水曜日でしたがGWの連休。連日35度を超える猛暑が続く名古屋のお隣の日進市は宗教公園「五色園」の宿坊に、全国津々浦々からおよそ40人ほどが集まってきました。
 企画としてはさまざまなオフィシャル刊行物や同人誌を並べての歓談、柳川房彦マスターのチャット・トークなどなど。その中の1つがバーチャルPBM『蓬莱学園の初恋!』。
 これは当時の企画の定番で、参加者がその気になって参加してもいない架空のメールゲームの内容について語り合うというもので、よく似た企画を読書会などという形でやっていると聞いたこともあります。
 とにかく、みんなそのゲームをプレイしたオフィシャル・イベント参加者という前提で、みんなウソやらホラやら語る語る。さすがPBMプレイヤーはツワモノ揃いと確信する一コマです。
 みんなの妄想爆発の体験談やら疑問への質問などが次々に寄せられ、それらをまとめていくとなんとなく全貌が見えてきます。
 なんでも「5人の美少女NPC」を中心にしたストーリーだったらしく、「有明晴海ちゃんの同人誌による世界征服」とか「箒を持った人造美少女が死のオカルト・トラップになる」とか「アフリカ美少女と格闘したあげく投げ槍がクリティカルヒットに」とか「永遠に図書館を整理し続ける魔女の先輩」とか……
 終わってみればなんとなく1年間遊んだ気になってしまうから不思議です。みんな本当に、見てきたようにウソを言い、他人のウソと自分のウソを絡めて練り上げていくんですよ……。でも、今となってはこのメモを見てさえ、どんな話だったか思い出せません……。

 このイベントでの配布物については資料庫に再録してあります。各マスターや著名プレイヤーの祝辞やら回想録やらあれこれ。やはり形にして残さないと、記憶なんてあてになりません。

 ただし、メイン・イベントであった柳川マスターとのチャットトークについては、五色園のある山中では電波がうまく届かず、あまり突っ込んだやりとりができなかったのが一生の不覚。
 今回のSF大会企画で、ツィッターを駆使して会場と全国が結ばれてわいわいと会話がかわされる光景をまるで未来図のように見てしまっていました。いいなあ……。

 ちなみに8月5日(土)~6日(日)の日程で開催された第39回日本SF大会Zero-CONでも、蓬莱学園10周年記念企画が開催されたそうですが、こちらは地元開催にもかかわらず不参加なのでどなたかの報告待ちです。

【蓬莱学園!!10周年記念イベント】【五色園】【ぽすたる☆ている】【はざましゅんいち】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ずっと、スタンド・バイ・ミー(下)」 賀東招二

2010-08-25 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「メキシコでの約束を覚えているか?」

 まだ20世紀だというのに二足歩行の巨大兵器とか超テクノロジーがばんばん出てきて、おかしいと思わなかった? 未来からの情報が過去に流れ込んで、正しい歴史が改変されてしまったんだ。それを元の流れに、いや、元よりもう少しマシな世界を創ろうと考えて、それの何がいけないというんだ?

 短編ネタまで回収しての大団円。
 初めて読んだのはドラゴンマガジンだったか、単行本が先だったか。いずれにしてもPBM『アルダイン』で頭角を現してきた四季童子さんのイラストに惹かれて手に取ったのは間違いなかったわけで……。
 12年間も愉しませてもらった小説が、広げた風呂敷をきちんと畳んで終わるのを読めるなんて、こんな嬉しいことはありません。
 できれば、後日譚を短編で読みたいなあと思います。

【フルメタル・パニック!・12】【ずっと、スタンド・バイ・ミー】【賀東招二】【四季童子】【実は生きていた】【白い虎】【卒業式】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「エリアル09」 笹本祐一

2010-08-24 | 巨大ロボット
「損得勘定でしか計れない関係なぞ、たんなる交渉の相手でしかない」
 未開民族として最善のことをしているだけだと岸田博士の言葉。

 太陽系宙域にひしめきあった大艦隊は銀河帝国第三艦隊から侵略企業、商船まで種々雑多。そこにどこからともなく仕掛けられる電子戦。このままでは複数勢力による武力衝突は必至と思われたが……。

 地球は最後まで地球。
 銀河を渡るテクノロジーを備えた宇宙戦艦や艦載機を前にしては、地球レベルでは超テクノロジーの塊である(たった1機の)エリアルも玩具扱い。それでも口八丁手八丁で乗り切っていくところが面白さです。

 今回は45話から47話、ソノラマ文庫版の17~18巻分を収録し、書き下ろしは「終わりなき戦い」の前編。これがまた、外伝とか番外編とかではなく、なんというか「エリアルII」のプロローグにでもなりそうな話で、本当に前後編くらいで終わるのかどうか不明。全52話だから残り5話。合本で2冊分はあるから、中編・後編と来るのかな。ファンとしてはいちばん読みたかった話ではあります。

【エリアル】【ARIEL】【笹本祐一】【鈴木雅久】【Dr.モロー】【艦隊開放】【ファースト・コンタクト】【波動砲】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「道具屋殺人事件」 愛川晶

2010-08-23 | ミステリー・推理小説
 落語とミステリというと真っ先に北村薫の『空飛ぶ馬』が頭に浮かぶのだけれど、あちらは円紫師匠が“私”の語った話の謎を解くという形式であまり寄席とか落語と直接の関係はなかったりするのだけれど、こちらは落語そのものがテーマというあたりが特徴です。
 落語家・寿笑亭福の助の妻・亮子が出くわした事件の話を福の助の師匠である馬春に語り、それを聞いた馬春が福の助にキーワードのように一言二言伝えると、福の助がそこから謎の真相に気づくと同時に噺家としても一皮むけるというのが基本パターン。妻→師匠→噺家で解決という一方通行的な展開ですが、落語そのものや寄席や門下の仕組みなどにも言及し、それが全体の謎と密接に絡み合っていて無駄がありません。
 亮子さんがちょっとそそっかしいというか、先走ったりして失敗するのがイライラさせられますが、落語の世界に半可通な彼女が読書との橋渡しになっているわけで、失敗もやむを得ないところでしょうか(なにをエラそうに言ってる?)。

【神田紅梅亭寄席物帳】【道具屋殺人事件】【愛川晶】【黄金餅】【三題伽】【富久】【らくだ】【ねずみ穴】【こい瓶】【夢金】【壺算】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「「わらわし隊」の記録」 早坂隆

2010-08-22 | 戦記・戦史・軍事
『新聞というのは平時にいくら偉そうなことを言っていても、所詮は商業紙である』
 その方が売れると判断すれば(朝日新聞であろうと)紙面は強硬論一色になるし、寄付を募って戦闘機を軍に寄付したり前線へ慰問団を送り出したりするもので……。

 公式記録から日記や新聞記事までをつき合わせて、日中戦争時に朝日新聞が吉本興業と組んで大陸へ送り出した演芸慰問団の記録を可能な限り再現しようとしたもの。

 戦時中なのにお笑いとはけしからんという銃後の声もあったけれど、戦時だからこそ前線の兵士は笑いを求め、他愛のない落語や漫才に涙を流して拍手していたのでした。
 そんな前線の兵士たちの姿や当時の街並みに吉本興業の歴史や当時の演目などを交えながら語った1冊で、戦場ではなく笑いをメインに描いていますが、いろいろ考えさせられる部分も多く、夏に読んで良かったと思いました。

【戦時演芸慰問団】【「わらわし隊」の記録】【芸人たちが見た日中戦争】【早坂隆】【柳家金語楼】【笑い声】【蘆溝橋事件】【横山エンタツ】【花園愛子】【ミスワカナ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ほうかご百物語7」 峰守ひろかず

2010-08-21 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「人間、できることしかできないし、できないことは頑張ってできるようにするしかないの!」
 頼れる生徒会副会長、新井輝の言葉。
 そういえば、ちょうど今日、『絢爛舞踏祭』ドラマCD(武勇号ディスク)を聞いていたら、同じようなセリフがありました。やらなきゃいけないことがあるならやれ! あとは努力の問題、流した血の量だけだと。小さなトカゲが強くならなければいけないから竜になった……話と意味は同じですね。

 イタチさんから妖力が消えた!?
 そんな状態で美術部は合宿に突入して肝試しをするのだが……。

 えっと、今回のポイントは「神主は神さまを祀る人」「巫女は神さまを降ろされる人」というとこ。ここ重要。応用も効くので赤ペンで二重線。
 いつの間にか生徒会の下請けで妖怪退治をするのが仕事になってしまった美術部の物語も7冊目。美術部員でも生徒会でもなく、妖怪のことなど何にも知らないはずの市目ハルカさんが良い感じにキャラが立ってます。脇役2にとどまっているのが惜しいですね。

【ほうかご百物語7】【峰守ひろかず】【京極しん】【機尋】【手杵返し】【シタガラゴンボコ】【ゴールデンウィーク】【合宿】【肝試し】【トイレの青い手】【目競】【八面王】【先触】【生徒会選挙】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「彼女(アイドル)はつっこまれるのが好き!」 サイトーマサト

2010-08-20 | アイドル・声優・芸能
 人違いから拉致同然にラジオ局に連れ込まれてしまった高校生・常村良人。誤解は解けたものの、成り行きでパーソナリティーを務めることになってしまった。
 あまりの展開に呆然としながら帰宅してみれば、隣に引っ越してきたのはそのラジオ番組のもう1人のパーソナリティーでアイドル声優の音無まどか。しかも……。


「初対面であたしのボケにあれだけツッコんだの、あんたが初めてだったわ」

 なんか、あさのあつこの『The MANZAI』みたいな展開ですが、漫才には行かないでウェブラジオのDJでがんばる話です。テンポいいよね。あのカーテン閉めてからピンポンダッシュまでのくだりはアニメ向き。
 ただボケとツッコミの会話を愉しむ話なので、最初くらいはその会話をとことん愉しみたかった気がします。なんというか、サブキャラが最初からワキャワキャと前面に出てイベントが起き過ぎている気がします。それは続刊のお楽しみにしておけばいいのに。
 特に妹、最初から壊れすぎ、キャラ作りすぎ……と、やけに反発してしまう理由をよく考えてみれば、親の立場から読んでるからかも。

【彼女はつっこまれるのが好き!】【サイトーマサト】【魚】【吊り橋効果】【人違い】【偽メガネっ娘】【早起きは三文の得】【公開録音】【パンくわえて曲がり角で】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「クドリャフカの順番」 米澤穂信

2010-08-19 | 学園小説(ミステリ)
 いよいよ待望の文化祭が開幕。だが、古典部の面々は思わぬ大問題に頭を抱えていた。20部印刷予定の文集「氷菓」を印刷所が200部納品してきたのだ……。

 そもそも20部の本を印刷に出そうと思うのが間違いで、それくらい青とはいわないけれどコピー製本すれば良かったのに、なまじ同人誌即売会慣れしたメンバーがいたばかりに……という古典部シリーズの3冊目。
 ぼくの大学時代は湿式コピーの青焼きが主流で、ゼミとかサークルで「卒論を書くときの練習だ」とかいわれて泣きながらコピーしてました。乾式コピーと比較して、原稿と感光紙を挟んでコピー機械に通さないと行けない分面倒くさかったんだ。しかも、卒論を書く頃には簡単な白焼き(いわゆる普通のコピーです)が普及しちゃってたし。
 でも、今でも手軽な同人冊子としてコピー同人誌は現役。10部や20部の本はコンビニやキンコーズで作るものなのです。自分でそんなものを作らなくなってから、もう何年でしょうか……。

「絶望的な差からは、期待が生まれる。だけどその期待にまるで応えてもらえないとしたら、行き着く先は失望だ」

 隠しテーマとしては前作と同じでしょうか。凡人が努力に努力を積み重ねても手の届かない高みにまであっさり到達しておきながら、そんなことはたいした価値のあることじゃないと簡単に斬り捨ててしまう天才を前にした凡人はどうすべきか……どうしようもないんです。それは人それぞれのものであって無理強いはできないから。

【クドリャフカの順番】【米澤穂信】【古典部】【連続盗難事件】【ABC殺人事件】【わらしべプロトコル】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする