「健全な肉体に健全な魂の宿った人間が実は一番危ない」
オバァちゃんはいつもそう言っていた。
部活の真っ最中の美術室で自殺未遂を起こした彼女は、そのときから感情を失った気がするし、そもそもどこにも友達なんか存在しないと気がついてしまった。
高校2年になって、A子と呼ばれることになった彼女はたった1人の化学部員として部活を再開することになるのだが、その彼女と部活を共にするのは人体模型の【トオル】で、彼は自分が彼女の友達だと言い張るのだ……。
人体模型と2人っきりで部活をすることになった少女が、学校内で連続する人体発火現象の容疑者と噂されてしまい、火の粉を振り払うために怪事件の謎に挑むことになる学園ミステリ話。
かわいいイラスト、シニカルな少女の軽妙な語り口、しゃべる人体模型というシチュエーションに誤魔化されそうになるけれど、いじめとか自殺とかテーマは重いし、展開はけっこうエグイし、結末は(良い意味で)すっきりしない。いろいろな意味で残酷。
ミステリとしての難易度は高くないけれど、総合で面白い作品。これより難易度の低い、ツッコミ処の多いミステリはいくらでもあります。ちゃんと科学部ネタで終始一貫しているのもポイント高し。
でも、こういう作品にも金賞を取らせることのできる電撃小説大賞は強いな。同系統の作品ばかりに片寄らせず、面白ければいろいろなジャンルを試していけるというあたり、少年ジャンプと同じく地力があるんだろうと思います。
【エーコと【トオル】と部活の時間。】【柳田狐狗狸】【MACCO】【電撃文庫】【ひねくれ少女のシニカルな学園ミステリー】【レッドブルマー】【いじめ】【消火器】【気球】【人がまるでゴミのようだ】【粉塵爆発】