付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ターザンの双生児」 エドガー・ライス・バロウズ

2010-09-30 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「ジャングルでは、勇気のある者しか生きられないのだ」
 分別は二の次。グレイストーク卿の言葉。

 イギリス生まれの少年ディックとアメリカ生まれの少年ドックは従兄弟同士で、母親が双子だったことから彼らも双子のようにそっくり。しかもターザンことグレイストーク卿の遠縁に当たることから、ついた渾名が「ターザンの双生児」。
 その「ターザンの双生児」がグレイストーク卿に招待されてアフリカに向かったが、乗り込んだ列車が脱線し……。

 世間知らずの少年2人が行ってはいけないと言われたジャングルに足を踏み入れたことから始まる災厄の物語。ちっとも懲りてない気がしますし、彼らが助けに行った少女グレートヘンの方がジャングルに詳しいというのも情けない。少しは進歩があったのでしょうか。
 主人公の少年2人が双子のようにそっくりだということにも物語上の必然性はありませんでした。このあたりになるとバロウズも思いつきだけで話を書いているなあと思いました。

【ターザンの双生児】【TARZAN BOOKS】【エドガー・ライス・バロウズ】【武部本一郎】【黄金都市オパル】【食人種】【ターザン用語の手引き】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「空軍大戦略」 リチャード・コリヤー

2010-09-29 | 戦記・戦史・軍事
「なあに戦争ってもなあ、探して歩きゃどっかで1つや2つは出くわすものさ」
 第609スピットファイア戦闘機中隊、ユージン・“レッド”・トビン少尉のの言葉。

 1940年夏、破竹の勢いでヨーロッパを席巻するナチスドイツは、ついにイギリス侵攻を決意する。そのシーライオン(海の獅子)作戦の前段階としてドイツは英国に激しい爆撃を開始した。
 ドイツ空軍2500機に対し、英国戦闘部隊はわずか600機。勝敗は明らかかと思われたが……。

 レーダー網が英国を勝利を導いた6週間の激戦!……と言い切れないのは、バトル・オブ・ブリテン(英国上空の戦い)をテーマにしたゲームを1度でもプレイした人間なら分かると思うけれど、直前に敵がどこからどれだけ来るかと分かっていても、600機の戦力をやりくりするのは並大抵の苦労じゃありません。パイロットだって休む暇なく戦い続けていれば、死傷しなくてもストレスはたいへんなものです。

「もうほかに予備機は残っとらんのかね」
「1機もございません」

 11集団司令部でチャーチルの質問に応えるパーク少将。

 まだ英軍機は撃墜されても不時着するのが地元なので、復帰が容易というとこがポイントですね。ドーバー海峡に落ちても敵味方関係なく救助用の船舶がゆらゆらしていたらしいですけれど。

【空軍大戦略】【英国の戦い】【リチャード・コリヤー】【鷲の日】【気まま狩】【ハムエッグ】【海の獅子作戦】【バトル・オブ・ブリテン】【ポーランド】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「お・り・が・み~外の姫」 林トモアキ

2010-09-28 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「さあ始めよう! 外の世界の、大祝賀会! 潰し合うだけのパーティーを! 完膚無きまでにわしを楽しませよ! 努々、死ぬでないぞ!!」

 たとえ穏健派であっても枢機卿は枢機卿。信仰の妨げになる相手は皆殺しだ。
 神殿協会の勇者である長谷部翔希は、世界を喰らう魔人を拾ってしまったことがきっかけで神殿教会に反旗を翻すことになってしまう……。

 「お・り・が・み」シリーズの3作目。続き物なのに通し番号を打たないで、サブタイトルだけで済ませるのは勘弁して欲しい。
 今回は正義と情の間で揺れ動く若き勇者の物語。勢いだけで突っ走っているような話ですが、勢いはあるので一気に読むのがよろしいようです。

【お・り・が・み】【外の姫】【林トモアキ】【2C=がろあ】【神殺しの一族】【フルバトルメイド】【エセックス級空母】【魔王】【神器】【預言者】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

働かないアリの法則

2010-09-27 | 雑談・覚え書き
 パレートの法則というものがあります。
 経済活動において「成果の大部分を生み出しているのは、全体の一部の要素にすぎない」という経験則。それで、全体の2割の商品が利益全体の8割を生み出しているというようなバリエーションが尾ひれ付けて出回っているわけです。
 「働きアリの法則」もその1つ。働きアリの2割は熱心に働き、6割は普通で、2割は怠け者というやつです。
 ただ、これも一般に言われているのは俗説。
 追跡可能な出典は、2003年10月30日に北海道大学で開催された、第22回動物行動学会のラウンドテーブル(分科会)で、長谷川英祐氏(北海道大院・農)が「仕事をしないアリがどの集団にも約1~2割いた」と報告したもの。
 ただ、俗説にいわれるように「働かないアリばかり集めたら、やはり2割が熱心に働き出し……」ということはなかったそうです。働かないアリはやっぱり働かないのだ。
 けれども、働かないアリが集団において何の意味もないかは不明。仕事をしないアリを除去すると、それまで良く働いていたアリの作業量が落ちたとかいう観察もされているそうなので、もしかしたら働いていないように見えたアリは、管理職だったり、単なる長期休暇中だったのかもしれません。
 この「働かないワーカー」は他の種類のアリやミツバチなどでも存在するらしく、今後の研究課題なのだとか。

【カドフシアリ】【日本動物行動学会「NEWSLETTER」No.43(2004.1.1)】【個体稼働率】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ファンダ・メンダ・マウス」 大間九郎

2010-09-27 | その他SF(スコシフシギとかも)
「奪うな。奪ったものはお前の手では有り余るものばかりだ」

 横浜港の倉庫でくそったれロボットを相棒に倉庫番をしているマウスは、雑誌を読みながら、ときどきボタンをポチンと押すだけのお仕事。どうしてマウスと呼ばれているかというと顔がネズミに似ているからで、高校時代は美人で頭がパープーな異母姉ネーネのためにケンカに明け暮れていた。
 そんなマウスにかつての恩師の娘から電話がかかってきた。困っている!助けてくれ!嫁にもらってくれ!というのだ……

 最初はすごく取っつきにくい。
 なんといってもスラングばんばんのパンクな主人公と、ひらがなでしか話せないオツムは小3以下のネーネを中心に、句読点が少なめの会話が進むので年寄りには読めねーよ!と泣き言を言い始める私。でも、読み出せば一気に行くよね。心に傷を抱えた多彩な登場人物が互いにこづき合いしながらマウスの周りに集まってくる。互いのことを信用していない。もしかしたら憎んでいるかも知れない。でも、この顔は貧相な男のことだけはみんな信じているのだ。殴り殴られ、刺し刺され、騙し欺され……。
 最初はラーメン屋に置いてある青年漫画誌みたいな話だなあと思ったけれど、読み終えてみると口の中に残るのはなんとなくハリイ・ハリスンっぽい香り。
 むふう。クセがあるからクセになるという感じ。 

【ファンダ・メンダ・マウス】【大間九郎】【ヤスダスズヒト】【このラノ文庫】【栗山千明賞】【人工知能】【原理主義者】【愛と狂気】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「女子高生=山本五十六 リローデッド2」 志真元

2010-09-26 | VRMMO・ゲーム世界
「自ら知識を吸収して己を向上させようと考える者に対して、人は寛容で協力的になるものよ」
 防衛大臣付情報担当補佐官・小松静香の言葉。

 独善的なゲーマー集団に振りまわされていた連合軍サイドだが、いつまでもやられっぱなしではいない。水面下で連絡を取り合い、マンチキンな幹部プレイヤーを1人1人と排除していく。

「ジャック・ヒギンズを知らないなんて、死ねば良い」

 あとは史実通り、アメリカの驚異的な生産力で枢軸サイドを呑み込んでいくだけだったのだが……。

 架空戦記なんかどうせ後知恵と開き直ったような話ですね。そこが面白い。とりあえず今回はガトー少佐、大暴れの巻。
 リアルに細部まで再現されたシミュレーション世界で繰り広げられる第二次世界大戦は、敵味方共に後知恵の塊。限界まで底上げされた日本の工業生産力、前倒しで投入される新兵器。しかし、そこは集団プレイであり、敵相手のみならず味方同士でも人間関係を間違えれば、あっという間に転落です。 

【女子高生=山本五十六 リローデッド】【熱闘!第二次ソロモン諸島戦】【志真元】【長森佳容】【鷲尾直広】【ベトナム戦争】【戦艦〔長門〕は俺の嫁】【アカギ】【プロファイリング】【腐女子】【軍事予算】【ジェネレーション・ギャップ】【抱き枕】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「野良猫オン・ザ・ラン」 早見裕司

2010-09-25 | 時代・歴史・武侠小説

「友だちってのはね、そいつの魂を、何より大事にする相手のことさ」

 水淵季里は27歳にして死に、その娘は陣内哲夫と美砂の夫婦に育てられることになった。そして2019年7月……。
 “野良猫”こと水淵讃は、見知らぬ少女を拉致しようとしていたヤクザを叩きのめしたことから、人間そっくりのアンドロイドをめぐる陰謀に巻き込まれる。


「平和でなきゃ、マッド・サイエンティストは存在できねえんだ」
 日本で一番目か二番目の天才科学者、陣内博士のぼやき。

 叙情的な都市幻想譚だった水淵季里の物語に対して、その娘の物語はSF武侠アクション。量子コンピューターを内蔵する美少女アンドロイドは出てくるし、人工知能を搭載したオートバイはビースト形態に変型するし、軍すら動かすステロタイプな“政界の黒幕”に悪のクンフー集団と外連味たっぷり。伊藤勢がコミック化したつもりになって読むとしっくり来るのが当然という作品。陣内美砂は伊藤勢のキャラというより錬金術のイズミ師匠という気がしないでもない。なんにせよ、そういうしっかりした線のコミックに登場したら面白いと思いますよ。
 SF大会の『水淵季里クロニクル』の部屋での、この作品の続きはどうなりますか?という問いに、季里の死ぬ理由というのも今となっては陳腐な気がするし、作者に拳法を教えてくれていた師匠はふらりと旅に出たまま音信不通だし、書きたくても続きは書けないという話でした。

 話の方はとりあえず敵は退け、新たに築いた要塞にいろいろ変わったメンツが集まって梁山泊の旗揚げ!みたいなところで幕。こいつも続きが読みたいな。
 でも、「オレヲヨンダカイ」は特殊能力だったのか!?

【少女武侠伝】【野良猫オン・ザ・ラン】【早見裕司】【水木圭】【高屋良樹】【ゴーヤーチャンプルー】【道】【政界の黒幕】【量子コンピューター】【超素材Z】【自爆装置】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「THE MARINE PAINTING OF CHRIS MAYGER」 クリス・メイジャー

2010-09-24 | エッセー・人文・科学
 ダグラス・リーマンらの海洋冒険小説でのイラストで知られるクリス・メイジャーの作品集。名古屋・鶴舞の古書店で表紙が傷んで捨て値だったものを購入。そこらはもう気にしません。
 人物のほとんど映り込まないイラスト1枚の中にいかに物語を折り込むか。そんなところに、クリス・メイジャーの本領が発揮されます。ツェルベルス作戦でブレスト港から脱出するドイツ艦隊とか、戦場に向かうトロール漁船とか、ティルピッツ撃沈とか、見ているだけで映画のワンシーンのように想像してわくわくしてしまいます。傾いた空母アークロイヤルなんか最高です。
 表紙は帆船ですけれども、収録されている作品の多くは第二次大戦ものですね。ブライ船長とか帆走船はそんなに多くありません。ちょっと残念。

【THE MARINE PAINTING OF CHRIS MAYGER】【クリス・メイジャー】【デヴィッド・ラーキン】【画集】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「地底旅行」 ジュール・ヴェルヌ

2010-09-23 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 中世の錬金術師がルーン文字で書き残した謎の古文書を発見したリデンブロック教授は、その記述を信じてアイスランドの死火山の噴火口から地球の中心部を目ざすのだが……。

 変わり者の鉱物学者と慎重派の甥アクセル、無口な人夫ハンスの13週間に及ぶ地球内部への旅は、古典中の古典であり秘境探検物語の基本。ただただ歩いて旅行する話です。人気アトラクション『センター・オブ・ジ・アース』の元となったお話といっても、地底を走るケーブルカーは出てきません……。
 あまりに大胆不敵なリデンブロック教授の行動選択に「計画的に行きましょうよ、計画的に」とニヤニヤ笑いながらひとこと口を挟みたくなります。

【地底旅行】【ジュール・ヴェルヌ】【地底海】【水棲は虫類】【週給】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ぼくは猟師になった」 千松信也

2010-09-22 | エッセー・人文・科学
「狩猟は残酷だと言う人がよくいますが、その動物に思いをはせず、お金だけ払い(誰かが命を奪って解体した肉を)買って食べることも、僕からしたら残酷だと思います」

 獣医学部志望を入試直前に断念。一浪して京都の大学に入り、途中休学してアジアを放浪したりNGO活動で東ティモールの選挙監視団に参加したりの果てに「ワナ猟」の猟師になった青年によるエッセイです。
 幼少時の思い出から猟師の資格取得や免許の種類、食肉への考え方を綴ったかと思えば、獲物の解体やワナの仕掛け方について図解付きで解説したり。

 著者のこれまでの人生をぎゅっと圧縮したような1冊でした。その分、焦点がまとまらない感じの部分もあるので一長一短。
 豆狸や河太郎が本当にいると家族や近所の人に言い聞かされて育ち、やがて柳田國男を読んで……と何歳の人かと思ったら、出版時で33歳。あ、ぼくより若い……。
 タヌキと同じく地方によっては「ムジナ」と呼ばれることもあるアナグマは意外に美味。焼き肉でも煮物でも美味しかったとのことで、昔話に出てくるムジナ汁というのはアナグマを使ったのだろうという話。別の本でタヌキを食べる話を読んだことがあったけれど、そのときは土に埋めたり何したり言い伝えやら何やらにしたがって工夫しても臭くてかなわなかったと書かれていた気がします。
 しかし、野生動物は硬くて臭いというイメージがありますが、牛でも鶏でも年老いた肉は硬いし、血抜きなどの処理をきちんとすれば鹿でも猪でも臭いなんてことはないそうです。そういえば、以前友人からもらった鹿肉も美味しかった。

【ぼくは猟師になった】【千松信也】【レシピ】【京都】【罠師】【ゴキブリ】【動物愛護】【狩猟行政】【鴨】【牡丹鍋】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「遠くからきた大リーガー」 ジョージ・プリンプトン

2010-09-21 | スポーツ・武道
「野球のフィールドって、どこかマンダラに似てるんです」
 シド・フィンチの言葉。

 ニューヨーク・メッツが獲得した新人投手はヒマラヤの寺院からやってきたという不思議な青年だった。彼の投げるボールは、なんと時速270キロ!
 ところがそんなボールを受けられるキャッチャーが……。

 巻末に40頁以上も野球人・野球小説列伝みたいな「訳注」がついている不思議な小説。中身としては、イギリスで生まれ、ヒマラヤの奥地の僧院で育った若者がメジャー・リーグを引っかき回す……ではなく、周囲が勝手に右往左往して慌てふためくけれど、本人はあくまで揺らがないのです。これも一種の、愚直な田舎者が自らの志を貫く話。
 王貞治と柿本実のエピソードがけっこう長くてびっくりしました。

【遠くからきた大リーガー】【シド・フィンチの奇妙な事件】【ジョージ・プリンプトン】【王貞治】【ラマ僧】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「図書館戦隊ビブリオン」 小松由加子

2010-09-20 | 本屋・図書館・愛書家
 面倒くさくて疲れるばかりの体育委員にはなりたくないと図書委員になってしまった仁科昭乃。でも、昼なお暗く来館者も少ない図書館の仕事は、面倒くさくて疲れることばかり。謎の書庫を守って悪の組織と戦う羽目になるなんて想定外だった……。

 内容的には、戦隊物のパロディに、『究極超人あ~る』と同じ系譜につらなりそうなダメ文化系部活話を図書館でやろうというもの。話的にはもうひとひねり欲しいとは思ったけれど、巨大図書館話はおさえておかねばならないだろう。たよりにならない小人さんが出てくる話としても。

 1998年夏にコバルト文庫から出たシリーズで、その年の冬に2巻が出て終わったままのシリーズでした。どマイナーな話だと思っていたのだけれど、2007年のワールドコンにて、日本SF図書館員協会による推薦図書に決定したってことは読んでいて、覚えていた人間がけっこういたってことですよね。『図書館戦争』と並ぶくらい……。

【図書館戦隊ビブリオン】【小松由加子】【たつねこ】【アレキサンダリア図書館】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「くいなパスファインダー」 瀬尾つかさ

2010-09-19 | 破滅SF・侵略・新世界
「まわりのみんなを助けることが,同時に自分の生存率を上げるんだ」
 白滝俊平の言葉。

 世界を無数の断片に分割され、さまざまな異世界人たちが群雄割拠する中に放り込まれた人類は瞬く間に9割が死滅した。
 けれど、さまざまな種族と共存するなり立ち向かうなりして勢力を維持し続ける地球人のグループもまだ幾つかあったのだ……。

 ということで、前作『円環のパラダイム』の続きではなく、同じ世界を舞台にした別の話。
 前回は学園を中心としたサバイバル譚だったけれど、今回は前作ほどシビアな感じはない冒険譚です。主役はパスファインダー。一般には情報収集ツールのことだけれど、ここでいうパスファインダーはエクスプローラー(探索者)とかトレジャーハンターと同じで、捜し求めるもののメインが「情報」なんですね。
 もうちょい「熱さ」があった方が好みかな。

【くいなパスファインダー】【瀬尾つかさ】【きくらげ】【寄生種】【ゲートワールド】【パッチワーク】【ロストテクノロジー】【妹】【熊】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「カーデュラ探偵社」 ジャック・リッチー

2010-09-18 | ミステリー・推理小説
 没落したヨーロッパの貴族がアメリカへと渡り、生活費稼ぎにボクシングを始めるのだが……というカーデュラ探偵社もの8編とそれ以外の短編5編を収録した短編集。
 夜間営業の探偵社など始めたものだから、依頼人は犯罪者ばかり……みたいなミステリー。探偵が官憲に頼らず、自ら正義の執行人になってしまうあたり古典回帰かもしれません。吸血鬼ハンターの話と、その他の「トニーのために歌おう」が場面の切替がスピーディーで面白かった。
 けれども、作者がさりげなくほのめかすにとどめていた大ネタを、表紙イラストと帯のあおり文句とあとがきで何度も何度もあからさまにほのめかすなんて、よほど読者を信用してませんね。
 こういう本をわざわざ買おうという人間はタイトルだけで十分にピンときますし、そうでない人間はこれだけほのめかされてもわかりませんってば。言うだけ野暮。

【カーデュラ探偵社】【ジャック・リッチー】【アナグラム】【吸血鬼ハンター】【正義は我にあり】【チェス】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ヴィークルエンド」 うえお久光

2010-09-17 | その他SF(スコシフシギとかも)
 発売前から書店に客注いれていて、やっと到着。地方書店をなめてんな。日販だかアスキー・メディアワークスだか知らないけどさ。

 舞台は異世界とか未来なのにそこに住む人間の考え方や行動は現代人のままという話が多いのに、うえお久光という作家は、ありふれた世界が舞台なのに登場人物の思考や行動がまったく異質という話が得意です。うちの嫁さんにいわせると「これこそセンス・オブ・ワンダーだよね」ということになります。この『ヴィークルエンド』もそんな話。

 感情を制御できない子供ばかりが生まれるようになって四半世紀。感情を抑制したり呼び起こしたりする補助剤(サプリ)の配合には個人差があり、さまざまなサプリの調合からさまざまな効果が発見されるようになっていた。
 そんなサプリ文化の副産物の1つが「ヴィークルレース」。サプリによって知覚を強化し、自分の肉体を乗り物を操るように制御しプログラムすることでおこなう非合法レースだ。指定されたチェックポイントを通過してゴールをめざすため、生身の肉体だけで民家の屋根を駆け抜け、ビルの壁を駆け登っていくのが彼らヴィークルレーサーだった……。

 あとがきにも書いてありましたが、これの元ネタはパリクールですね。フランス発祥の移動術で、目的地めざしてどこまでもまっしぐら……という、ドリンク剤のCMでもあったけれど、映画『K-20 怪人二十面相・伝』でも使われてました。あれをさらにスピーディーにしてサイバーパンク的な競技にしてしまったのです。
 ただ正式な試合は1回のみで、レースそのものがテーマというより、既に種として違って生まれてきた若い世代と旧人類との葛藤の物語、新人類テーマなのかもしれません。そこで笑いでオチをつけるあたりがうえお久光ですが、この表紙イラストにタイトルでは作者買いする人以外はなかなか手が出ないかも知れません。

「リターンがどうとかじゃなくって、単純に、なにかやれることがあるってだけでも楽しいもんだぜ?」
 望月ロクローの言葉。

 ところで、メインの登場人物が真田十勇士絡みのネーミングで、主人公だけハトリ、そのパートナーが徳姫ときて、なにかそれっぽい話になるかと思いましたらなりませんでしたね。

【ヴィークルエンド】【うえお久光】【redjuice】【パリクール】【ドラッグ】【もっこり】【ロックンロール】【すっぽんぽん】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする