付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「まおゆう魔王勇者3」 橙乃ままれ

2011-07-31 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 忽鄰塔で開催された魔族の大会議にて蒼魔族の裏切りが露顕するが、魔王は暗殺者の毒に倒れ、魔王と勇者の関係が明らかとなる。
 そして魔族は新たな氏族・衛門族を迎えるが、一方で蒼魔族は人間界へと侵攻を開始し、教会も魔族への憎しみを煽り立て、人々を戦へと駆り立てるのだが……。

 まおゆうも3冊目。かなり売れているようで、つまりは田舎の本屋には予約してもなかなか入荷しないのです。
 今回は魔界での政治と人間界との戦争の話。新兵器のマスケット銃が剣と魔法の戦線に投入され、商人の戦いは新たなステージに入り、火竜公女は勇者を良いように扱うという感じで話が進みます。

「考えすぎるな、いいから書け」
 悩んで書けなくなる作家は多い。小説でメシ食うつもりなら、とにかく書き続けろと笹本祐一。

【まおゆう魔王勇者3】【聖鍵(せいけん)遠征軍】【橙乃ままれ】【toi8】【水玉螢乃丞】【戯曲小説】【桝田省治】【新城カズマ】【笹本祐一】【黒色火薬】【指輪物語】【ごきげん殺人事件】【余剰貨幣】【WEB小説】
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「お前のご奉仕はその程度か?」 森田季節

2011-07-30 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 時事のニュースにとんと疎かった朝霧良太は気づいてもいなかったのだが、日本の秋ノ宮市は吸血鬼によって制圧され、血族帝国となっていた。
 吸血鬼の存在も独立も公には認めない日本政府は自衛隊によって街を封鎖していたのだが、ハイキングコースからうっかり外れた良太はいつの間にか迷い込み、吸血鬼の少女によって奉仕者として拉致されてしまう……

 吸血鬼の帝国に紛れ込んでしまった少年の、スクールライフは危険と隣り合わせ。これもある種のハーレムもの。
 日本政府との政治的駆け引きには辣腕を振るいながらも、国内の貨幣制度や国歌に象徴される、吸血鬼帝国の妙なしょぼさがポイント。

【お前のご奉仕はその程度か?】【森田季節】【尾崎弘宜】【吸血鬼】【ミニオン】【ボーイ・ミーツ・ガール】
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「ライアー・ライセンス」 市原秋太

2011-07-29 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 “怪盗”が存在し、暗黙の内に社会システムの一部として受け入れられている世界。
 森ノ宮学院は表向きは単なるエリート校だが、実は現代の義賊ともいうべき「怪盗」の養成機関。そして入学には怪盗の素質である“機能(システマ)”が必要だった。
 杉崎渉は代々、大怪盗を輩出する杉崎家に生まれながら怪盗の能力が発現しなかったが、周囲を欺いて入学試験を突破したのだが……。

 『魔法の国ザンス』の1冊目が刊行されたのが1977年。『ジョジョの奇妙な冒険』の第3部が1989年のスタート。たぶん影響としてはジョジョの方が大きかったんだろうなと思いますが、とにかく昔は超能力といえばテレパス、サイコキネシス、テレポートと理屈づけして大別されていて、その使い方で個性を出していました。魔法といえば最初は万能の力で、それが理論づけているうちにSFの超能力と似通ってきて……という感じ。そして能力の強さが力の強さとイコールだったのが、サイコキネシスで相手の心臓を潰すのにそんなにパワーはいらないよね?というあたりから、出力=能力じゃないよねということになり、『パーミリオンのネコ』で空気レンズが出てきたり、『スレイヤーズ』で小技の活用法がアピールされたりというのが普通に出てくるようになってきましたが、そんなに正確に検証してないので思い違いはあるかもしれません。
 とにかくそんな感じだったのが、いつの間にか博物学的分類が困難な、1人1芸が一般的に。

 この話もそんな異能バトルの流れ。重力制御とか、肉体分裂とか、アメコミだったら何かの科学実験か宇宙の果てで放射線を受けてミュータント化しないと手に入れられない異能を持った子供がぞろぞろと。
 よくわからないけれど、それぞれ違う異能を生まれながらに持っている人がいて、そういう人は義賊をめざすものらしいけど、そんな志の立派な人ばかりじゃなくて……という話。
 タイトル通り、異能をこれっぽっちも持たない人間が嘘とハッタリだけで勝ち抜けていく話を期待していたので残念。

【ライアー・ライセンス】【市原秋太】【モフ】【タイムトラベル】【二つ名】
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「日本沈没」 小松左京

2011-07-28 | 破滅SF・侵略・新世界
 2011年7月28日午後3時過ぎ。作家・小松左京の訃報が一斉にネットで流れる。80歳。身内による葬儀が済んで情報解禁ということのようでした。

 実を言えば『日本沈没』はきちんと本を読んでいないのです。
 映画は観たし、テレビ版も楽しみにしていたけれど、原作は下巻のラストを立ち読みしたくらい。ただ、小松左京の名前を知ったのは『日本沈没』であり、同じように喜んで観ていた『空中都市008』や『猿の軍団』ではありません。
 平成23年の3月11日に東北で大震災があり、原子炉がむちゃくちゃになり、余震がいつまでも続き、なのに政治は何をやっているのかよく分からない。でも、そんなとき、ツバメが飛んでいるのを見かけると、少し元気が出てくるのでした。
 ツバメはちゃんと戻ってきましたよ、田所博士。

 なんで『日本沈没』を読まなかったかというと、どうやらその直前に読んだ『果しなき流れの果に』という作品の影響のようだ。
 こちらは恐竜時代から遥か未来までを網羅したSF大河小説だけれども、この中に「ニップ」と呼ばれる人々が登場します。昔、アジアの東の果ての島に住んでいた人々の子孫で、国土が海中に没して滅びた後、世界各地を放浪し、今、その生き残りが宇宙移民として旅立とうとしている。彼らの口ずさむ歌は、原曲の片鱗をかすかに残す程度に変質し、陰鬱で怪しげなメロディーになっていたけれど……と、どうしようもなく悲しい顛末。結局、こういう結末になるんだったら、『日本沈没』なんか読まないよ! そんな気持ちだったのかな……。

 落ち着いたら、今度こそ『日本沈没』を読んでみようかなと思います。まだ読んでない小松左京作品があるというのは、本当にありがたいことですから。

『さよならジュピター』

『復活の日』

『首都消失』

『エスパイ』

『SF魂』

『SF入門』

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「花咲けるエリアルフォース」 杉井光

2011-07-28 | ミリタリーSF・未来戦記
 日本列島は箱根の関を境界に東西分断されていた。そして4月8日。西側を支配している民国による皇国への奇襲によって内戦が始まった。
 その日、少年は戦火によって焼け落ちる桜の樹を見ていた……。

 時代はおよそ現代、舞台は日本、主役となるのは中学生。そういう条件で本気のミリタリー小説をラノベでやればこうなる、という見本のような作品。近衛の役立たずぶりをギャグで流して良いのか分からないけれど、話は巧い。面白い。
 でも、日本の国土を戦場にしてますから、ラフィールとジントのようなボーイ・ミーツ・ガールから始まるものの、勝っても負けても周囲は焼け野原。同級生も先生も家族も炎と瓦礫の下。主人公たちの操る超兵器でも戦況を覆すまでには至らず……というあたりがなんともストレスがたまります。戦争なんて、そんなものですけれど。

【花咲けるエリアルフォース】【杉井光】【るろお】【ソメイヨシノ】【空中空母】【へーか】【桜花】【避妊具】【花見】【多脚砲台】【皇室】【日本分断】
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「君がいない夜のごはん」 穂村弘

2011-07-27 | 食・料理
「あれ(ベーグル)は、どこがおいしいのですか。普通のパンとはやっぱり違うんですか」

 ものを食べる人には関心があるけれど、味そのものにもあまり興味が無さそうで、自分ではまったく料理とか家事とかしない詩人が、料理雑誌などに書いたエッセーをまとめたもの。スパゲティはわかるけど、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノとかいわれてもわからないと開き直ったり、コンビニおにぎりは進化したけれど共感してもらえそうにないとか、その独自のセンスというか、ものの見方やその表現が面白く、ついつい読んで手が止まらない本。
 ただ「ホラーだ!」と嫁さんが指摘するようなデザインの装幀は、作者がこだわらず、編集者もそれで良しとしたんだろうけれど、美味しい話はないと思わせるようなセンス。
 花見の話で、会社員時代に上司から買い出しを任されたときに「酒を買ってこい」としか指示されなかった(つまみなんか要らない派)の話がありましたが、この人も似たようなもので、本当に食べる口には興味があっても、食べるものには熱意のない人だなあと思いました。
 そこが面白いんですけどね。

【君がいない夜のごはん】【穂村弘】【にんにくラーメン、チャーシュー抜き】【電子レンジ】【月刊ベターホーム】【きょうの料理ビギナーズ】【肉食女子】【シャーロック・ホームズばりの推理】
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「プラチナ・ジャズ~アニメ・スタンダード Vol.2」 

2011-07-26 | その他フィクション
 北欧の一流ジャズメンが結集し、日本のアニメソングをよってたかってジャズアレンジしたアルバムの第2弾。
 アニソンのジャズ・アレンジというのはディズニー作品とかで昔からあるのだけれど、このシリーズは選曲が本気だし、演奏は巧いし、アレンジはありとあらゆるバリエーションを網羅しているかのようで、聞いていて飽きません。いろいろ購入したり試聴で聞きましたが、その中でもトップクラスの出来の良さです。
 その媒体も時代も対象も超越した選曲を見れば、本気度が分かる気がします。

1.はじめてのチュウ
2.冒険でしょでしょ?
3.Adesso e Fortuna ~炎と永遠~
4.プレパレード
5.Skies Of Love
6.愛の輪郭
7.人生のメリーゴーランド
8.暁の車
9.約束はいらない
10.HELLO, VIFAM
11.そばかす
12.Forフルーツバスケット
13.yume no tamago
14.Voyage
15.アイモ~鳥のひと
16.魂のルフラン
17.キグルミ惑星
18.愛・おぼえていますか

 予想以上の出来だったのが、すごくスタンダードナンバーっぽくなっている「はじめてのチュウ」。洒落た感じに仕上がった「HELLO, VIFAM」、軽快な「プレパレード」とかもいいねー。

【プラチナ・ジャズ】【アニメ・スタンダード Vol.2】【ラスマス・フェイバー・プレゼンツ・プラチナ・ジャズ】【キテレツ大百科】【涼宮ハルヒの憂鬱】【ロードス島戦記】【とらドラ!】【銀河英雄伝説】【ブレンパワード】【ハウルの動く城】【機動戦士ガンダムSEED】【天空のエスカフローネ】【銀河漂流バイファム】【るろうに剣心】【フルーツバスケット】【ラーゼフォン】【ファンタジックチルドレン】【マクロス Frontier】【新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生】【はなまる幼稚園】【超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか】
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「O/A【オー・エー】」 根岸和哉

2011-07-26 | アイドル・声優・芸能
 事務所のトラブルで凋落したアイドル・ゆたかは、唯一残されたラジオDJの仕事に再起をかけるが、体調不良で第1回の放送から脱落。そんな彼女の影武者として代役を務めたのは、彼女と全く同じ声を持つ新人女芸人のはるみだった。
 そのときから、ゆたかとはるみの二人三脚で放送が続き、それを知らないリスナーはゆたかの人格変貌ぶりに一喜一憂……。

 コミックがあって、そのノベライズということのようで、最初は知らなかったけれど、読んでいくうちにそもそもの発端を軽く端折り、全体の構成を無視したごった煮のストーリーに、「なんかノベライズっぽい……」と思ったら、本当にそうだったという話。
 2人の人間が同一人物を演じることから来るドタバタはもっと面白くなると思うけれど、とりあえずトーク部分がそんなに面白くないです。

【O/A】【オー・エー】【ラジオから生まれたアイドル!?】【渡会けいじ】【根岸和哉】
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「トカゲの王(Ⅰ)」 入間人間

2011-07-25 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 見た目はありふれた中学生、五十川石竜子(とかげ)には秘密があった。
 彼には他の人にはない能力があったのだ。自分の意志で自由に瞳の色を変えられるという……。
 たいした能力じゃない。まがいものだ。だからこそ、これが能力の全てではなく、もっと別の、もっと強い力が秘められているのだと彼は信じていた。
 能力者がいて、夜な夜なしのぎを削る裏の世界なんて現代ファンタジーこそ彼の憧れだった。
 実際に出くわしてしまうまでは……。

 入間人間が書くと、異能バトルもこうなるのです。虚飾のない、身も蓋もない殺し合いだけが続き、それ以外には嘘と無思考があるだけ。凄惨だけれど、ちっとも派手でないし格好良くもない。ただ意志の問題。
 覚醒したトカゲの王が、これからどう動くのか、気になる結末でした。

【トカゲの王】【SDC、覚醒】【入間人間】【ブリキ】【スクール水着】【らっきースケベ】【邪眼】【叙述トリック】【殺し屋】【ストーンドラゴンチルドレン】【自己暗示】
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「妖怪アパートの幽雅な日常(6)」 香月日輪

2011-07-24 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「才能や力は、天から与えられるものかもしれない。運命は神が決めるものかもしれない。でもそれを宿して生きてゆくのは、生身の人間だ」
 自分が生身で等身大の人間であることを忘れてはいけないと長谷泉貴の言葉。

 ナマハゲたちに囲まれて鍋をつついて年を越し、いずことも知れぬ世界の夜明けで新年を迎え、稲葉夕士の妖怪アパート暮らしも板についてきたが、新学期になると早々に修学旅行。
 実質的にはスキー合宿なのだが、行った先のホテルにはイヤな空気が満ちていて……。

 妖怪たちとかかわっていくことで、少しずつ成長していく公務員志望の高校生の物語も6冊目。もう完結しているんだから、文庫化のペースももうちょい早くても良いのに、と思わないでもありませんが、これで完結したら「もう少しゆっくり刊行していれば」とか思うんでしょうね。
 でもなんとなくBL臭が漂っているのは、気のせいでしょうか?

【妖怪アパートの幽雅な日常】【香月日輪】【大祓え】【正月】【修学旅行】【聖護院大根】【深山和香】【寒ブリの刺身】
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「ベン・トー7.5 箸休め」 アサウラ

2011-07-23 | 食・料理
『大人は子供の前では常に格好良く、立派であらねばならないのだ』
 企業戦士サラリーマン、レッドの矜恃。

 半額弁当を奪い合って死闘を繰り広げるのが生き甲斐の者もいれば、そんな行為の何が面白いか理解できない者もいる。人の趣味嗜好なんてそんなものだ。
 茉莉花のおねだりを断り切れず、鎗水は佐藤と白粉を連れて一泊二日の小旅行に出かけることになったが、企画を立てた著莪は予定が合わず見送るはめになり……。

 書き下ろしの中編と、ウェブやジャンプSQで発表されていた短編をまとめた外伝集。HP同好会が繰り広げる温泉旅行の顛末は、佐藤洋の地獄極楽丸。この立場、替わって欲しいヤツ、いくらでもいるよね!?
 レトロゲームへの熱い思いと、思わずお腹が減ってしまうほど料理の味についての描写がみっちり詰まった青春小説。アニメ化で、この熱い情熱がどこまで再現されるか気になるところです。

【ベン・トー】【箸休め】【Wolves, be ambitious!】【アサウラ】【柴乃櫂人】【スーパーダッシュ文庫】【企業戦士サラリーマン】【大衆律動体操】【うなぎ茶漬け弁当】【特別事象調査係】【心霊現象調査研究部】【パンツァードラグーン】【脂汗】【赤いランドセル】【お好み焼きサンド】【バレンタインデー】
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「荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論」 荒木飛呂彦

2011-07-22 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 ホラー映画は何よりもまず恐怖を追求するものであって欲しいし、子供にもホラー映画を見せて、人生の暗い面や醜い面に向き合い、恐怖を相対化する予行演習にしてもらいたいという著者が、1970年代以後の作品を中心に、ホラー映画をゾンビ映画、『田舎に行ったら襲われた』系、SFホラー、不条理などに区分し、その成立の過程を、原点となった作品からその発展系から模倣まで含めて語る映画論。

「死ぬ時は死ぬんだからさ」

 ホラー映画論としても面白いし、著者の作品にどんな影響を与えたかも語られて、愉しく読了。ただし、あくまで自分が劇場で見た作品を中心に語っていますので、それ以前のドラキュラだのフランケンシュタインだの古典作品については考察外となっています。

【荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論】【荒木飛呂彦】【ゾンビ】【アイ・アム・レジェンド】【オーメン】【キューブ】【呪怨】【エイリアン】【シャイニング】【バタリアン】【スティーブン・キング】
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「芝浜謎噺」 愛川晶

2011-07-21 | ミステリー・推理小説
 落語家・寿笑亭福の助とその妻・亮子、そして身体の自由が利かなくなって引退した馬春師匠が、さまざまな日常の謎を解き、落語の筋立てを考えていく落語系ミステリの2作目。

 かつての弟弟子が初めての独演を開くことになったのだが、演目は何が無くても「芝浜」でなくてはいけないと言い出した。
 「芝浜」は演じるのが難しく、駆け出しの噺家では失敗確実。本人も無理と分かっているだろうに、なにがなんでもと泣きついてきたために、福の助はなんとかしようとしてみるが、真に「芝浜」は難物だった……。

 基本的に日常系で落語界の話なので、窃盗くらいはあるけれど人の生き死ににかかわるような犯罪はなく、どちらかというと人情伽の世界。イヤなやつでも親戚だからそれなりに付き合わなくちゃいけないけれど……という話が今回は多かったかな。それに、「この話を辻褄合わせて演じるにはどうしたらいいか」などと落語の内容の解釈をめぐって福の助らが頭を悩ます話と表裏一体。
 今回は、いかに「芝浜」が説得力のない話かというのが大テーマでした。
 小学、中学、高校時代はラジオで寄席を聴き、大学時代は古谷三敏の『寄席芸人伝』などを読んでいたので話そのものは覚えているのだけれど、演者によってこれだけ解釈が異なり表現が異なるものかと、あらためてびっくり(表紙イラストを古谷三敏に描いてもらうと面白いのに)。芝居も落語も、原典があるものは解釈によって幾らでも変わりますね。

【神田紅梅亭寄席物帳】【芝浜謎噺】【愛川晶】【朝倉めぐみ】【どんぶり勘定】【ガンダム】【野ざらし】【春風亭小朝】【抜け雀】【がまの油】【骨釣り】【唐茄子屋政談】【試し酒】
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「蒼海の世紀(1)」 野上武志

2011-07-21 | 架空戦記・仮想戦史
「真の豪傑はの、常によか女のケツば追いかけとうもんじゃ」
 海軍護衛総隊総司令官・東郷平八郎の言葉。

 坂本龍馬が暗殺されなかった、もう1つの20世紀。
 日本は英国との距離を狭めた状態で明治維新を乗り越え、海援隊の名を継いだ女子海軍が誕生していた……。

 同人誌で展開していた架空戦記コミックがJIVEから商業刊行。でも、活字がはっきりしていて読みやすくなってます。同人誌版を買って、総集編を買って、こいつも買う。それだけの価値はありますよね。

【蒼海の世紀】【王子と乙女と海援隊】【野上武志】【鈴木貴昭】【ボッケモン】【三笠】【アユタヤ王朝】
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「旅する少女と灼熱の国」 藤原征矢

2011-07-20 | その他フィクション
 内戦が続く灼熱のガザッソニカに、異様な装束の少女の姿が見受けられた。
 少女の名はエリノア=ベイカー。見たとおりのメイドである。
 大きなスーツケースを引きずりながら、この国で行方不明になった「マーガレットお嬢さま」を探しながら、彼女は旅を続けるのだが……。

 やたら強いメイドさんが場違いな内戦の熱帯を旅するロード・ストーリー。
 護衛メイドというより『ブラック・ラグーン』のファビオラ、ドラエさんあたりのイメージかも。

【旅する少女と灼熱の国】【藤原征矢】【田上俊介】【内戦】【メイド】【リチャード・バートン】【メイド術】【傭兵】
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