付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件7」 七月隆文

2013-10-30 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 小学4年の冬に何が起きたのか、失われていた公人の記憶が蘇りはじめ、危険なツンデレと化した九条さんや恵理が告白するのだが……そんなことお構いなしに清華院女学院は夏休みへ突入。
 公人たちは有栖川家所有の無人島へとバカンスに向かう……。

 九条さんがデレて出番が増えた分、白亜さまの出番が減ったのではないかと疑う今日この頃。庶民の夏はいかがお過ごしでしょうか?
 ありきたりの庶民の少年と箱入りお嬢様の集団のカルチャーギャップ日常系コメディという、話のネタ的には1巻で終わっている気がしますが、『のうりん』などで見られる、本文とイラストのタッグマッチの巧さも特色の1つ。
 黙々と読んでいて、見開きでメインキャラが勢揃いした日には声を出して笑わずにはいられません。

【俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件】【七月隆文】【閏月戈】【一迅社文庫】【ハートフル学園ラブコメ】【義妹】【夏祭り】【親子丼推奨】【コギャル】【夏休み】【オイルマッサージ】
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「隠密部隊ファントム・フォース(上)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-29 | 架空戦記・仮想戦史
「日本人は美しい船を愛する」

 1万を超える島々と、100を超える民族と、300種類以上の言語が交錯するインドネシアで、民族対立や宗教による衝突がエスカレートしつつあった。状況を放置し続ければ、インドネシアの無政府状態は取り返しがつかなくなり、世界経済に与える影響は計り知れない。
 この状況を解決するには、すべての仕掛け人であるマカラ・ハーコナンを殺さねばならない。大貿易商であり海賊王でもある男だ……。

 アマンダ艦長シリーズの5作目で、今のところの最新刊。今回のアマンダ・ギャレットは各地から精鋭を招集して、文字通りの秘密戦隊で戦います。ひとことでいうと、アメリカ軍って、こわいなーという話。冗談めかして流しているけれど、「アブダクト体験」の真相っぽいくだりとか。
 ストーリー的には、秘密戦隊の必要性が指摘され、そのためのとっておきの資材や人材があちらこちらから極秘裏にかき集められるプロセスがメインイベント。懐かしいあの人やこの人、トンデモ(っぽい)兵器の数々が集まってくるのが愉しいです。

【隠密部隊ファントム・フォース】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【インドネシア海軍】【戦いの踊り】【複合式ヘリコプター】【スコポラミン】【Qシップ】【空飛ぶ円盤】
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「絶対城先輩の妖怪学講座(二)」 峰守ひろかず

2013-10-28 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「無知は罪ではないが、明示されるべき事実だからな」
 絶対城先輩はいつでも傍若無人で偉そうだ。

 “ユーレイ”こと湯ノ山礼音は絶対城先輩に頭が上がらず、毎日のように研究室に通っては詐欺の片棒を担いだりモルモットみたいに実験体にされたり、振り回される日々。
 そんな礼音が合気道教室で知り合った少年が「船幽霊をみた」と言い出して……。

 絶対城先輩とノッポな女学生のコンビが大学校内から僻地の寒村まで飛び回り、妖怪や幽霊といわれるものの正体を民俗学や博物学的に1つ1つ論理的に見極めていき、最後に残ったものが本物の妖怪……みたいな連作ミステリ集。
 最近はラノベに限らず美青年か美少女1人の肖像イラストを表紙にしたものが増えていて、これも御多分に洩れずそのパターンです。でも、売れる売れないを別にして内容とのマッチングだけを考えれば、星野之宣か諸星大二郎がベストなんだけどなあ。宗像教授の伝奇考とか稗田礼二郎のフィールドノートとかに挿入されても違和感のないエピソードがちらほらと。
 虚実入り交じって通説から異説までもっともらしい語りをしてくれる絶対城先輩にぞっこんです。

【絶対城先輩の妖怪学講座2】【峰守ひろかず】【水口十】【メディアワークス文庫】【伝奇ミステリ】【見越し入道】【船幽霊】【夜行さん】【大百足】【大蛇】【いくち】【出雲大社】【演劇部】
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「欠陥妖怪住宅」 はむばね

2013-10-27 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 徳間文庫にもラノベっぽい装丁と内容のものが増えてきましたが、同時刊行が警察小説だったり時代小説だったりレーベルとしての統一感がないのが特色ですね。

 堀生灯(ホリ・イクト)がついうっかり海岸で見つけてしまったのは、海で溺れてパースから流されてきた人魚のミィだった。
 人魚なのに泳げないミィは、行くあてもないのでちゃっかりイクトのワンルームマンションに居候しようとするのだが……。
「え、嫌だけど?」

 泳げない人魚が押しかけてきてはカップ麺をすすり、血を吸えない吸血鬼が出てきては肉まんにかぶりつき、育ちすぎた座敷童が出てきては……と、欠陥モンスターが登場しては軽妙でお馬鹿な会話を繰り返しながらメシを食うの繰り返しで、このパターンで行くかと思わせたところで、またクイクイッとひねって飽きさせない展開が上手い。 愉しく食事をするってのは、良いことです。
 ケラケラっと笑えて、ちょっとじんわりくる、ハートウォーミングな同居型コメディでした。

【欠陥妖怪住宅】【はむばね】【ばっじん】【徳間文庫】【ダメダメ妖怪たちの奇妙な生活ストーリー】【あざッス】【人魚】【吸血鬼】【座敷童】【口裂け女】【天の邪鬼】【魔女】
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「安達としまむら2」 入間人間

2013-10-26 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「気を遣わせるという迷惑は、一方的な親切から生まれるものだった」

 安達はしまむらのことが好きだし、しまむらも安達のことが好きだ。
 でも、最近、2人の「好き」が違い始めているような気がする。
 そしてクリスマス。2人はそろって遊びに出かけるが……。

 不良というよりちょっと不真面目な女子高生2人の物語。怪しげな自称“宇宙人”もちょろちょろ顔を出してはきらきら光る粉を振りまいていきますが、なぜ光るかは本人にもわかっていない様子。

【安達としまむら】【入間人間】【のん】【電撃文庫】【ショッピング】【カラオケ】【ブーメラン】【スポーツジム】
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「アリス・リローデッド3」 茜屋まつり

2013-10-25 | 時間SF・次元・平行宇宙
「永遠の場所なんて、どこにもない。おまえがどれほど大事にしようと、いつかはその人、その場所、その時間は思い出の中にしか存在しなくなる」
 失われないものはないと、カザル族の魔女ダズリリ。

 西部劇でリロードといえば銃弾の「装填」だけれど、この話では世界情報の「再読込」とのダブルミーニング。この巻ではそのダブルミーニングが本領発揮で、時間遡行を繰り返して歴史を改編し、世界を滅ぼそうという敵との戦いが描かれます。ちゃんとしたガンアクション主体の西部劇で、時間SFで、思わずまどかマギカになるのではとドキドキしながら読了。

【アリス・リローデッド3】【サクリファイス】【茜屋まつり】【蒲焼鰻】【電撃文庫】【マジック・ガンアクション】【西部劇】【装甲列車】【巨大ロボット】【灰色熊】【刻紋弾】【黒魔術】【女忍者】
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★歴史上の有名人・偉人の冒険譚

2013-10-24 | ランキング・カテゴリー
 『リーグ・オブ・レジェンド』のような架空のヒーローの競演ではなく、歴史上の人物や偉人が(おそらくは史実の本人はしていないだろう)冒険のメインキャラクターとなっている作品の一覧。
 SF小説とミステリがメインで、架空戦記はジャンルまるごと省きますし、『忠臣蔵』のように史実を脚色した文芸作品も別としますが、山田風太郎の忍法帖とか存在そのものが伝説化している柳生十兵衛はどうしよう……。

★知られざる逸話
 偉人として知られている人物が、その有名になった事柄以外でも才能を発揮していた……というタイプの話で、歴史ミステリに多いかな。

『名探偵群像』シオドー・マシスン(1960)
 歴史上の有名人が生涯に一度だけ名探偵として活躍した……というエピソードを集めた短編集で、この手の本で初めて読んだもの。
 アレクサンダー大王、レオナルド・ダ・ヴィンチ、フローレンス・ナイチンゲール、ジェームズ・クック、デイヴィッド・リヴィングストン等々11名の探偵譚です。

『シートン(探偵)動物記』柳広司(2009)
 今はどうだか知らないけれど、自分が小学生の頃は「シートン動物記」は図書館や児童文学の定番で、好き嫌いに関係なくよく目にしたものだけれど、これはそのアーネスト・シートンが新聞記者のインタビューに応えて、知られざるエピソードとして、動物にまつわる探偵話をしていく連作短編集。本編を補完するような狼王ロボのエピソードも良いけれど、「本当は怖い」リスのバナーというのも面白いかと。

『神秘結社アルカーヌム』トマス・ウィーラー(2004)
 ウィンストン・チャーチルから怪事件の調査依頼を受けたコナン・ドイル卿が、怪奇作家H・P・ラヴクラフトや呪術師マリー・ラヴォー、脱出王フーディーニらと怪物に立ち向かうオカルト・アクション。老ドイルの旅立ちのシーンは泣けます。

『火星人類の逆襲』横田順彌(1988)
 英国襲撃から13年後、今度は日本に襲来した火星人類をバンカラ集団天狗倶楽部の武侠作家・押川春浪、帝国陸軍の白瀬中尉や乃木大将らが迎え撃つ。

★偉人が転生したりクローニングされたり
『リバーワールド』フィリップ・ホセ・ファーマー(1971)
 ネアンデルタール人の時代からから21世紀まで、360億人が死後に復活した世界での冒険譚。
 探険家リチャード・バートン、アリス・リデル、作家サミュエル・クレメンズ、文豪シラノ・ド・ベルジュラック、国家元帥ヘルマン・ゲーリングなどが登場。

『スペースオペラ大戦争』豊田有恒(1978)
 異星人の襲来に闘争本能を失った未来の地球人は壊滅寸前。そこでタイムマシンで過去の世界から死亡直後の戦争名人をかき集め、異星人の艦隊に立ち向かわせるという戦争活劇。彼我の国力の差を考えるにここは短期決戦しか無いと山本五十六が奇襲攻撃を提案、ロンメルが電撃戦を指揮して、要となる要塞にはテルモピュレからアラモまでの経験者が寄せ集められ……という平野耕太の『ドリフターズ』か青池保子の『イブの息子たち』かというスペースオペラ。

『R.O.D -READ OR DIE-』監督:舛成孝二(2001)
 何者かによりクローンとして特殊能力を身につけて復活した平賀源内、オットー・リリエンタール、ジャン・ヘンリー=ファーブルら偉人軍団と戦う、大英図書館のエージェントの戦い。
 すごく面白いけれど、OVAは尻つぼみ感が否めないし、小説版は2013年時点で(再開の噂は常にあれど)未完。

★パラレルワールドもの
 実際の歴史と似ていたけれど、どこかで違ってしまった世界での偉人たちの活躍。

『ドラキュラ紀元』キム・ニューマン()
 ドラキュラ伯爵がヴァン・ヘルシング教授を返り討ちにしたところから始まる歴史絵巻。虚実取り混ぜた著名人が有象無象のように登場。

『屍者の帝国』伊藤計劃×円城塔(2012)
 医学生だったジョン・H・ワトスンは、ヴァン・ヘルシング博士の推挙により英国政府機関の秘密諜報員としてアフガニスタンへ赴くこととなった

『天のさだめを誰が知る』D・R・ベンセン(1978)
 1908年地上に漂着した異星人の調査隊は、エジソンらと接触し地球の国際情勢を把握するや、イギリス国王エドワードやドイツ皇帝ウィルヘルムを煽って世界大戦を引き起こそうとするが……。

★殿堂入り
 ・柳生但馬守
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「アンの想い出の日々(下)」 ルーシー・モード・モンゴメリ

2013-10-24 | その他フィクション
「馬鹿者をひとりも抱えていられないような家庭は、心貧しい家庭だよね」
 カナダ空軍飛行士、ジェリー・ソーントンの言葉。

 結婚式に集まった人々は、花嫁花婿について、両家の家柄や財産について、他の出席者や神父の説教について何を考えているのか。
 1人のありふれた老嬢が死を迎える夜、周囲や本人は何を思っていたのか。
 莫大な財産を信託された少年は誰に引き取られていくのか。
 第一次大戦後から第二次大戦まで、プリンス・エドワード島の人々それぞれの人生……。

 ブライス医師の言うように「人生は美しいばかり」ではない、シニカルな短編も混じった後半生。アンの家族が主な登場人物になるのは半分くらいですが、残り半分でもそこかしこに“ブライス先生”やその“奥さん”の話題がふりまかれています。そして話はおおよそ時系列順に流れますが、終盤は第二次世界大戦の頃のエピソードとなります。もう、アンとギルバートの孫の話が噂され、リラ・フォード夫人が笑顔がすてきと言われる時代。歳月が流れたなあと感じます。
 音信不通で長い歳月の後に再会し、お互いに気持ちが変わらずに結ばれることもあれば、その逆もあり……と、まさに人間の性根は変わらないのです。親しくなれる人はなれるし、なれない人は何をどうしても無理なのです。

【アンの想い出の日々(下)】【赤毛のアン】【ルーシー・モード・モンゴメリ】【村岡美枝】【新潮文庫】【遺産相続】【プロポーズ】【完全殺人】【誘拐】【政略結婚】
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「攻撃目標を殲滅せよ(下)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-23 | 架空戦記・仮想戦史
「蟹の爪を叩きつぶす強襲計画を用意しろ。諸君、この作戦にはいっさい条件をつけない。いっさい制限なしだ! どんなに汚い手でもかまわない。好きなように考え、戦え。お話にならないくらいひどいやつを思いついた場合は、UnODirで行こう。ワシントンの事務屋には、あとで報告すればいい!」
 話は面白くて痛快だし、作劇上そうなるしかないのは分かるのだけれど、こういう文民統制なんて知らないよ?みたいな台詞をアメリカ軍に堂々と言われると、ちょっと引きます。

 インドネシア各地の武装勢力を支援して、政府の崩壊を試みる大富豪との戦いで、ストーリー的にはジェームス・ボンドなんだけれど、やっていることは帆船時代の海賊と同じ。そこに敵との読みあいや駆け引きが絡んだ冒険小説なのだけれど、クライマックスは007と同じく敵の秘密要塞の攻略戦で海兵隊や海軍が大活躍。大富豪ハーコナンがどうして白猫を抱いていないのか、不思議でなりません。
 いろいろあったけれど、今回はアマンダがヒロインで、主役はクリスティーンだと思うよ?

【攻撃目標を殲滅せよ】【ステルス艦カニンガムIII】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【空中砲兵】【焼き討ち船】【ボーディング】【残留日本兵】【スタートレック】【自爆装置】【殿】
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「死神を食べた少女(下)」 七沢またり

2013-10-22 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「政治というのは取捨選択である」
 誰もが幸せになれる世界などない。

 兵の数でも練度でも王国軍に負ける要素はなかった。
 だが、強者の驕りが、内部の勢力争いが、長年の間に蓄積された腐敗が、反乱軍の工作を待つまでもなく軍を自壊させていく。
 しかし、死神と呼ばれるようになったシェラは、部下の騎兵部隊を率いて反乱軍に死をまき散らしていく。食べるものと殺す敵がいれば、彼女は幸せだった……。

 少女戦士を主人公にしたヒロイックファンタジーなのだけれど、これ、ホラー映画の文法だよね。
 魔法とかの理由付けもなく、ただひたすら強く、情け容赦なく死をばらまき、殺そうとしても死なないし、しかも増えるし……。

「“死神”は、約束を守る」

 エピローグまで含めて英雄神話の構成でありながら、徹頭徹尾「ホラー」でした。周囲では権謀術数が繰り広げられているのに、そんなことおかまいなしで、山下清みたいに「おなかがすいた」とか「みんなとごはんを食べると愉しいね」みたいなことを言う一方で、「皆殺しだ-」という、フレディーやジェイソンやTシリーズみたいに殺しても死なないヒロインが直感と本能だけで暴れ回る英雄譚でした。

【死神を食べた少女(下)】【七沢またり】【チョモラン】【エンターブレイン】【騎兵】【死霊使い】【攻城戦】【死兵】【異端審問官】
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「アンの想い出の日々(上)」 ルーシー・モード・モンゴメリ

2013-10-21 | その他フィクション
 子供の頃は『赤毛のアン』という話は、1人の少女が周囲すべての人の心を解きほぐしていく物語と理解していたのだけれど、しっかり読み込んでいくとぜんぜん違っていました。むしろホーガンの『断絶への航海』に近かったりします。
 確かにマリラとかバリー夫人とか、あるいはハリソン氏とか、気むずかしいと思われていた人たちにも愉しい心が秘められていて打ち解けていく……とか、誤解したままケンカ別れした男女が長い歳月を経て再会し和解する……というエピソードも多いのですが、どうしてもわかり合えない人もいるという現実はきっちり押さえられています。そういう人たちは疎遠になって退場していくだけです。
 そういう意味でちょっと怖い話、イヤなエピソードも交えつつの短編集というか、今まで作者が意図したようには構成されることのなく、未発表も多い作品集です。厳密に言えば、アンがメインキャラになっている話ばかりではないので「アンブックス」には区分されないらしいんですけれど、そこは気にしません。

 新任の神父がやってきた。
 独身なので下宿することになったのだが、前任者も含めて周囲はあまりいい顔をしない。口ごもるのを問い詰めてみると、その屋敷には幽霊が出るというのだ……。

 エピソード的には、炉辺荘あたりの話が多いですが、全般的に詩も多いです。あの「笛吹き」から始まり、一家団欒の場でブライス夫人が昔書いた詩などを朗読し、それを家族が論評するようなシーンが短編の合間合間に挟まっています。

【アンの想い出の日々(上)】【赤毛のアン(11)】【ルーシー・モード・モンゴメリ】【村岡美枝】【新潮文庫】
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「攻撃目標を殲滅せよ(上)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-20 | 架空戦記・仮想戦史
 副題は『ステルス艦カニンガムIII』だけれど、シリーズ的には4作目。もう、分かってはいたけれど、巻頭の謝辞の最後は「カワモリ・ショウジ、ミキモト・ハルヒコ、ハヤセ・ミサ」に捧げられて締められています……。

 宇宙実験室を回収した回収船<スターキャッチャー>が南太平洋上で海賊に襲撃され、人工衛星が強奪された。
 事件の背後に大がかりな海賊カルテルの存在があると推測したアメリカ国務省は、地中海で作戦行動中のシーファイター任務群に出動を命じるが、その動きは既に察知されていた……。

 軍隊相手の戦いが3作続きましたが、今回の敵は海賊。舞台はインドネシア近海。
 でも、単なる現代の海賊というだけではなく、国際的なネットワークを持つ大企業によって組織化された武装集団であり、仮想戦記とか海洋冒険小説というより007みたいなスパイ小説の雰囲気です。主人公が女性で、戦闘シーンが少し大がかりなだけです。
 そして、今回も敵は有能なカリスマ指導者です。まともに正面からぶつかれば質量共に圧倒的な上に諸兵科合同で包囲網を敷くアメリカ軍に勝てる敵なんてそうそういませんので、逆算的に知謀と指導力に優れた強敵とならざるを得ません。

【攻撃目標を殲滅せよ】【ステルス艦カニンガムIII】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【インドネシア海軍】【世界海戦記】【駆逐艦キーリング】
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「死神を食べた少女(上)」 七沢またり

2013-10-19 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 いつもおなかを空かせた痩せた少女が血まみれで大鎌を振りかざしながら戦場を駆けるファンタジー戦記。

「物事は単純に考えないと駄目よ」
 王国軍少佐シェラ・ザードはこう語る。
 彼女は何も考えない。そもそも基本的な教育も訓練も受けていない。ただ、直感と本能のままに戦い、そして美味しく食事をするのだ。
 みんなで食べるご飯は美味しい。

 魔術師は存在しているけれど、もっぱら剣と弓と槍で戦う世界で、たいていの小説だと敵役にしかならない、七つの大罪のホムンクルスのようなヒロインが主人公の話。
 なんとなく枕元に転がっていた本を手にとって読み始めたら止まらなくなり、気がついたら下巻がどこにもないことに気がついて絶望しました。なんでセットで買ってないんだよ?
 敵は皆殺し。味方だろうと食事の邪魔をしたやつは殺すと、シェラの人格の壊れた無双っぷりがステキな話でした。
 
【死神を食べた少女(上)】【七沢またり】【チョモラン】【エンターブレイン】
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「のうりん7」 白鳥士郎

2013-10-18 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「何でもかんでも『愛』で済まされるんならストーカー規制法はいらないんだよ!」
 草壁ゆか不在の芸能界でトップアイドルな、群雲りくの叫び。

 修学旅行で田茂農林の2年生はセントレアから一路沖縄へ向かうのだが……。

 今回は農業ネタは若干控え目ながら、そのぶんラピュタから中日ドラゴンズまで小ネタ満載で、大浴場から旅のしおりまであるあるネタを残らずぶち込んだような濃厚な修学旅行ストーリーでした。もちろん男女どちらにもサービス満点。
 沖縄ばんざい。

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「シーファイター全艇発進(下)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-17 | 架空戦記・仮想戦史
「誇りはすくなすぎるとかありすぎるというものではないわ。問題はそれをどう使うかよ」
 すべてを投げ捨てる気が無ければ、時間のかかる、困難な道を選べとアマンダ・ギャレット大佐。

 西アフリカ連邦を経済封鎖して兵糧攻めを試みる国連軍だったが、その前に記録的なハリケーンが襲いかかってくる……。

 たとえ装備で劣り、補給もままならなかろうと、連邦軍は一方的にやられてはいません。それぞれの誇りを賭け、めざすもののために戦う好敵手。でも、掛け金は部下たちの命なのです。
 そして、戦隊司令になりながら、戦闘は司令室で起きているのではなく最前線で起きているのだとばかり、ここぞというときには陣頭指揮を執りたがるギャレット大佐に「アマンダ、きみはカーク船長ではないんだ!」と渋い表情の提督ですが、それでもいつの間にか染まってきているのにまだ気がついていないようですが……。

【シーファイター全艇発進】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【経済封鎖】【少年兵】【港湾封鎖】


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