『リーグ・オブ・レジェンド』のような架空のヒーローの競演ではなく、歴史上の人物や偉人が(おそらくは史実の本人はしていないだろう)冒険のメインキャラクターとなっている作品の一覧。
SF小説とミステリがメインで、架空戦記はジャンルまるごと省きますし、『忠臣蔵』のように史実を脚色した文芸作品も別としますが、山田風太郎の忍法帖とか存在そのものが伝説化している柳生十兵衛はどうしよう……。
★知られざる逸話
偉人として知られている人物が、その有名になった事柄以外でも才能を発揮していた……というタイプの話で、歴史ミステリに多いかな。
『名探偵群像』シオドー・マシスン(1960)
歴史上の有名人が生涯に一度だけ名探偵として活躍した……というエピソードを集めた短編集で、この手の本で初めて読んだもの。
アレクサンダー大王、レオナルド・ダ・ヴィンチ、フローレンス・ナイチンゲール、ジェームズ・クック、デイヴィッド・リヴィングストン等々11名の探偵譚です。
『シートン(探偵)動物記』柳広司(2009)
今はどうだか知らないけれど、自分が小学生の頃は「シートン動物記」は図書館や児童文学の定番で、好き嫌いに関係なくよく目にしたものだけれど、これはそのアーネスト・シートンが新聞記者のインタビューに応えて、知られざるエピソードとして、動物にまつわる探偵話をしていく連作短編集。本編を補完するような狼王ロボのエピソードも良いけれど、「本当は怖い」リスのバナーというのも面白いかと。
『神秘結社アルカーヌム』トマス・ウィーラー(2004)
ウィンストン・チャーチルから怪事件の調査依頼を受けたコナン・ドイル卿が、怪奇作家H・P・ラヴクラフトや呪術師マリー・ラヴォー、脱出王フーディーニらと怪物に立ち向かうオカルト・アクション。老ドイルの旅立ちのシーンは泣けます。
『火星人類の逆襲』横田順彌(1988)
英国襲撃から13年後、今度は日本に襲来した火星人類をバンカラ集団天狗倶楽部の武侠作家・押川春浪、帝国陸軍の白瀬中尉や乃木大将らが迎え撃つ。
★偉人が転生したりクローニングされたり
『リバーワールド』フィリップ・ホセ・ファーマー(1971)
ネアンデルタール人の時代からから21世紀まで、360億人が死後に復活した世界での冒険譚。
探険家リチャード・バートン、アリス・リデル、作家サミュエル・クレメンズ、文豪シラノ・ド・ベルジュラック、国家元帥ヘルマン・ゲーリングなどが登場。
『スペースオペラ大戦争』豊田有恒(1978)
異星人の襲来に闘争本能を失った未来の地球人は壊滅寸前。そこでタイムマシンで過去の世界から死亡直後の戦争名人をかき集め、異星人の艦隊に立ち向かわせるという戦争活劇。彼我の国力の差を考えるにここは短期決戦しか無いと山本五十六が奇襲攻撃を提案、ロンメルが電撃戦を指揮して、要となる要塞にはテルモピュレからアラモまでの経験者が寄せ集められ……という平野耕太の『ドリフターズ』か青池保子の『イブの息子たち』かというスペースオペラ。
『R.O.D -READ OR DIE-』監督:舛成孝二(2001)
何者かによりクローンとして特殊能力を身につけて復活した平賀源内、オットー・リリエンタール、ジャン・ヘンリー=ファーブルら偉人軍団と戦う、大英図書館のエージェントの戦い。
すごく面白いけれど、OVAは尻つぼみ感が否めないし、小説版は2013年時点で(再開の噂は常にあれど)未完。
★パラレルワールドもの
実際の歴史と似ていたけれど、どこかで違ってしまった世界での偉人たちの活躍。
『ドラキュラ紀元』キム・ニューマン()
ドラキュラ伯爵がヴァン・ヘルシング教授を返り討ちにしたところから始まる歴史絵巻。虚実取り混ぜた著名人が有象無象のように登場。
『屍者の帝国』伊藤計劃×円城塔(2012)
医学生だったジョン・H・ワトスンは、ヴァン・ヘルシング博士の推挙により英国政府機関の秘密諜報員としてアフガニスタンへ赴くこととなった
『天のさだめを誰が知る』D・R・ベンセン(1978)
1908年地上に漂着した異星人の調査隊は、エジソンらと接触し地球の国際情勢を把握するや、イギリス国王エドワードやドイツ皇帝ウィルヘルムを煽って世界大戦を引き起こそうとするが……。
★殿堂入り
・柳生但馬守