付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「矢野徹の狂乱酒場1988」 矢野徹:編

2023-08-29 | 伝記・ノンフィクション
「だれか革命を起こしてこの腐った社会を解放してくれるというヒーローいないかなあ……」
「革命は選挙によるだけです。正しい選挙を守ろう!」


 インターネット以前。パソコンと電話回線を利用して楽しむパソコン通信上で開設された掲示板は「酒場」という設定。老若男女、北から南から、開店の噂を聞きつけた、お酒大好きのおしゃべり達、この新しいコミュニケーション・ツールの魅力にとりつかれた参加者たちとマスターこと矢野徹の投稿によるやりとりをまとめたもの。
 話題は政治談義からシモネタまで。刊行された当時は「パソコン通信のログをまとめた思い出アルバム」みたいなものだったけれど、今読むと昭和から平成のはざまの時事やら風俗やら技術がどうだったかの記録。自主流通米の位置づけとかワードプロセッサーの機能がどうとか、あるいはアメリカ旅行に必要なノウハウなど雑多な20世紀末のリアルな記録です。

【矢野徹の狂乱酒場1988】【矢野徹】【中野豪】【角川文庫】【コンプティークネット】【SF大会】【電話代】【戦争体験】【ディガンの魔石】【遠い海から来たCOO】【地震70年説】【ロジック爆弾】【P1EXE】【昭和天皇】【盛本康成】【加藤直之】【加藤みゆき】【深沢美潮】【高千穂遙+鷹見陸+瑞原芽理】
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「私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか?」 鷹鳥屋明

2023-05-24 | 伝記・ノンフィクション
 現代日本にニンジャやサムライがいないように、アラブにだって豪奢な石油王はいないのだ。
 ひょんなことから「中東」「アラブ」でビジネスをすることになり、ついイスラムの常識も知らずに、あるいはステレオタイプなイメージで進出しようとする企業へのアドバイスや仲介を生業としてしまった著者が、その発端から現状までを軽妙な語り口で描くアラブの日常。

 2021年刊行。
 「オレのボスであるサウジアラビアの王子が、あなたに会いたいと言っている」などという怪しげな1本のメールから、あれよあれよという間にチケットが送られてきて、空港にはリムジンが待ち構えていて……などというエピソードからうかがい知れるように、あちらではサウジアラビアの王族や中東有数の財閥子息たちに限らず、テレビ取材でも何でもいつでも突然なのだ。突然呼びだし、呼んでおいて待たせ、予定もないのに行事や取材を突っ込むのがスタイル。そんなスタイルに馴染めないと大変で、そんな社会だからこそコーディネイトの意味が生まれるのですね。

【私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか?】【鷹鳥屋明】【星海社新書】【“中東きっての有名日本人”の稀有な実体験から知る、私たちの知らないアラブ世界】【UFOロボ・グレンダイザー】【水木一郎】
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「1978年のまんが虫」 細野不二彦

2023-04-21 | 伝記・ノンフィクション
「面白い作品、いい作品ってのはねー、ハッとするシーンやセリフが必ずあるんだよ」
 少年サンデー編集部、米内デスクは細納青年にそう語った。マンガならそのコマ、小説ならそういうフレーズに辿り着く過程ができれば面白い作品になると。

 この覚え書きでもそういうセリフを書き出そうとしてますが、そういう言葉が印象に残る作品は面白いのです。

【1978年のまんが虫】【細野不二彦】【ビッグコミックス・スペリオル】【自伝的青春の軌跡】【スタジオぬえ】
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「人生で一番時給が高かったバイトの話」 とみながけい

2021-08-23 | 伝記・ノンフィクション
 まだ最低賃金が400円台の1980年代の日本で、バイト先が倒産して日々の生活費にも困った専門学校生が見つけたのは、新宿歌舞伎町の喫茶店のウェイター仕事。体格の良さが条件だけれど、時給がなんと1800円の日払い。交通費は1日1万円出るし、大入り袋も頻繁に出るし、とにかく金払いがいいのだけれど、喫茶店とは表の顔。気を抜けば客に刺されかねないヤクザの裏カジノだった……。

 完全アウトで竜の如くなヤクザ世界の片隅に足を踏み入れたカタギの学生のバイト物語。
 こういうアウトサイダーの話ってのも、たまに読む分には面白いのです。それも完全に腰まで使った人間ではなく、ちょっと足を踏み入れたら意外に深そう……くらいの人間の視点は、あっちの常識とこっちの常識がクロスオーバーする魅力があります。

 そういえば、前に違法カジノや海外カジノの話を聞いたことがありますが、常連さんになると電話一本で自宅までタクシーの送迎が来て、そのまま空港から海外のカジノまで飛行機で送ってくれたんだそうな。つまり、それだけ良いお客さんってことですね。ずらりと並べられた色とりどりの顔写真付き会員証が綺麗でした。
 裏カジノではないけれど、学生時代に通っていた喫茶店には麻雀ゲーム機がテーブル代わりに置いてあって、そこで勝ち続けてクレジットが貯まるとマスターがこっそり現金で払い戻してくれたって、先輩が言ってました。100円100ゲーム分を閉店時間過ぎて延々とやられるより、その分の現金を渡して帰ってもらって、また利用してもらえばいいということだったのかしら。これも常連の顔見知りとオーナーの間だけの話だったらしく、自分が役満あがってクレジットが跳ね上がったとき、ウェイトレスさんに「見てみて」と言ったら「スゴいですね~」と言われて終わりでした。

【人生で一番時給が高かったバイトの話】【とみながけい】【小説家になろう
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「歴史新聞」 歴史新聞編纂委員会

2020-04-19 | 伝記・ノンフィクション
『発言権増すポンパドゥール夫人』
『国王の権威を背景に政策に干渉』
『古代中国の二の舞/懸念する関係者』

 1741-1750年号、巻頭記事より。

 クフ王のピラミッド建設から屯田兵の入植まで、歴史上の事件を新聞の圧縮版形式で紹介する1冊。
 どこぞの外務大臣の死から大食い大会の開催までなんでもかんでもぎっしり詰め込み、眺めているだけでなんとなく歴史の流れが解ったような気になります。

【歴史新聞】【歴史新聞編纂委員会】【日本文芸社】【世紀の号外!】【歴史をスクープ】
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「前田建設ファンタジー営業部」 前田建設工業

2020-02-22 | 伝記・ノンフィクション
「地球の危機なんだよ!」

 ダム、トンネルなど数々の大プロジェクトに携わってきた前田建設の広報グループが、WEB企画の一貫として、現実には実現不可能に見えるマンガなどの空想世界の建造物を設計し、見積りを立てるというプロジェクトを開始。「アニメ『マジンガーZ』の出撃シーンに登場する地下格納庫を現状の技術と材料で建設したらどうなるのか?」を検証し、現代の技術で設計し、見積もりを出そうというのだ。
 しかし、ボランティアと言いつつ、実際はグループ長のアサガワに無理矢理引き込まれた若手メンバーのやる気は最低。周囲からも受注も見込めない事業に手間暇かけるのか、いい加減な設計や見積もりを出したら会社の恥だ不利益だと四面楚歌。
 その上、肝心のウェブコンテンツの閲覧者はほとんど増えなかった……。

 結論から言えば、「金さえあれば何とかなる」。
 実話を基にした映画で、「じょぼじょぼ」「こぽこぽ」の効果音がやたら多い作品。観に行こうとしていた某ヲタ映画のSNS上の評判が今イチだったので、代わりに評判の良かった別ヲタ映画を観に行った次第。期待以上に面白く、満足。ダムの開閉機構とかトンネルの掘削現場とか、リアルの方が大迫力な物作り映画で、MCU風味に走るより、「地上の星」でも流した方が似合いますね。馬鹿げた企画をどこまでも真面目に追求した物語です。「横移動!」から同業他社まで巻き込んでいく展開は胸熱で、「ここで泣いちゃいました」という感想も納得かな。
 でも、こんな20年近く前の話が映画化され、公開されていたなんて、某ヲタ映画の評判を調べるまで知りませんでした。当時確かにマジンガー編の後半から追いかけていたのだけれど、最初に何処でこのページを知ったのか思い出せません。雑誌の記事じゃなかったっけ?と夫婦で話していても分かりません。

【前田建設ファンタジー営業部】【英勉】【前田建設工業株式会社】【上田誠】【バンダイナムコアーツ】【東京テアトル】【坂本英城】【氣志團】【小木博明】【高杉真宙】【上地雄輔】【岸井ゆきの】【六角精児】【町田啓太】【鶴見辰吾】【濱田マリ】【高橋努】【鈴木拓】【山田純大】【水上剣星】【永井豪】
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「僕らを育てた声 中村正編」 中村正

2019-12-14 | 伝記・ノンフィクション
「声が似すぎて他の役ができない」
 声に特徴がありすぎて、すぐにバレるから二役三役ができない。

 まだ「声優」という職業がない時代、ラジオドラマから始まって海外ドラマの吹き替えなどで活躍した声優第一世代、中村正へのインタビュー記録。最初の頃は新劇の俳優がアルバイトでやっていたけれど、彼らは役者としてのプライドがあったので「声優」と呼ばれるのを忌み嫌っていた……とかの証言もあり、芝居仲間と娼館に行ったとかの逸話もありで、聞き手編者による脚注もたっぷりの同人誌。
 中村正というと、世間的には「テレビドラマ『チャーリーズ・エンジェル』でのチャーリー役や 『奥さまは魔女』のナレーションの人」。テレビでさんざん洋画を視ていた自分にとってはまずデヴィッド・ニーヴンの吹き替えの人。しゃれた髭が特徴の粋なロンドン紳士の姿に、あの声がよく合っていたんですよ。本人的にもはまり役だったとか。
 アニメファン的には諸葛孔明とか、「サマーウォーズ」の万作さんとか、直近では「未来のミライ」の新幹線役。

 2019年11月11日没。合掌。

【僕らを育てた声 中村正編】【唐沢俊一】【高倉一般】【開田裕治】【アンド・ナウの会】
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「ワッショイお祭り紀行」 宮川大輔&イッテQ!祭りチーム

2016-06-21 | 伝記・ノンフィクション
『変わり者とでもバカとでも呼べ! ただし、臆病者とは呼ばせない!』
 イギリスの全国紙での記事より。

 テレビ番組の本には、適当に人気に便乗した雑な作りのものと、番組の総集編的なものに視聴者からは見えない裏話とか加えた気合いの入ったものと2種類あって、これは後者。
 番組から8年分の放送から20篇をピックアップして、カラー写真やメンバー紹介、豊富に図解を交えながらの祭の再現と裏話や回想たっぷりの1冊でした。「番組的にはあおるけど、危険だから実際にはやるな」と言われて、それでもやっちゃうくだりとか、読んで視るドキュメンタリ。
 チーズ転がし祭りや乳牛祭り、ロケット花火戦争に牛追い祭りと特に面白かった祭りはほとんど収録されているのだけれど、タイの耕耘機祭りと豊橋手筒花火が漏れたことだけは残念。

【世界で一番盛り上がるのは何祭り?】【世界の果てまでイッテQ!】【宮川大輔のワッショイお祭り紀行】【宮川大輔&イッテQ!祭りチーム】【幻冬舎】【ヘルメットおじさん誕生秘話】
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「~シャフト40周年記念~MADOGATARI展」 シャフト

2016-06-18 | 伝記・ノンフィクション
 2015年9月に設立40周年を迎えた、アニメーションスタジオ「シャフト」の記念展示イベントが、東京、大阪、札幌に続いてやっとこさ名古屋でも開催。いつの間にか出かけていた末っ子が、嬉しそうに「見て見て」と図録を持ってやってきました。
 2枚看板の「魔法少女まどか☆マギカ」や「<物語>シリーズ」では意識してましたが、そういえば『ぱにぽにだっしゅ!』や『さよなら絶望先生』もシャフトだったなあ……とか、『ドッとKONIちゃん』なんか知らないよとか、原画や設定以前にあらためて認識したり発見することも多かったのです。
 『ぱにぽにだっしゅ!』は大好きだったなあ。

【~シャフト40周年記念~MADOGATARI展】【シャフト】【名古屋市中小企業振興会館】
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「田中角栄100の言葉」 別冊宝島

2016-05-06 | 伝記・ノンフィクション
「方針を示すのが政治家の仕事だ。役人は生きたコンピューターだ」

 現場の話とかときどき聞きますが、その中に「省庁の担当者は机の引き出しに幾つもプランを持っている。そして政治家が指示をするのを待っているんだよ」というものがありました。
 ぶっちゃけていえば、役人は政治家の道具。それを敵視していては政権とっても国は動きません。

 なぜか最近、田中角栄の本が書店に並びます。
 田中角栄という人は日本の高度経済成長を支え、日中国交正常化を果たした政治家ですが、一般には金権政治、土建政治の諸悪の権化的なイメージで、ロッキード事件で逮捕された時にはマスコミが鬼の首でも取ったかのごとくはしゃいでました。ロッキード事件の経緯についても今の視点で見るといろいろ面白い話が出てきますが、いろいろ功罪とか好き嫌いとかを抜きにしても、その語録は面白いのです。
 こういう人が現代日本の礎を作ったんだなあと思いつつ読みました。
 でも、なんで今なんだろう?

【田中角栄100の言葉】【日本人に贈る人生と仕事の心得】【秘蔵写真と読む「角さん」名語録】【別冊宝島編集部】【宝島社】
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「「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男」 牧村康正+山田哲久

2015-12-22 | 伝記・ノンフィクション
「ただし作品の評価と人間性の評価はまったく別。インチキ、ワンマン、傍若無人。おまけに疑心暗鬼のかたまりときている」
 西崎の人生は一人相撲だったと、オフィス・アカデミー時代からの盟友・長島正治のことば。

 「彼は悪党だった」の一文から始まる、カリスマ・プロデューサーの破天荒な生涯。他人を利用し、裏切り、恫喝しながらも、いつも弁舌巧みに資金を引き出してくる辣腕ぶりの栄光と凋落。ヤマトの話があくまで中心だけれど、ワンサくんや海のトリトンなど権利ビジネスなどトラブルの顛末も詳細に語られてます。
 うん、生み出したものの評価と、本人の評価は別物だよね。
 慣習とルーチンワークで停滞している業界に活気を持ち込むには、彼のようなバイタリティあふれる異端児が殻を破ることも1つの方法だろうけれど、その一方でこういう人とは仕事でも個人的にでもつきあいたくないなあと思います。
 ヤマトは完結をめぐって二転三転した、ゆうきまさみにそれは「愛」ではなく「受」だとネタにされてしまったけれど、この本を読めばそれらは必然だったことが分かるのです。

【「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男】【牧村康正+山田哲久】【講談社】【アニメ】【愛人】【覚醒剤】【銃刀法違反】【虫プロ】【宇宙空母ブルーノア】【オーディーン 光子帆船スターライト】
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「誰も書かなかったイラク自衛隊の真実」 産経新聞イラク取材班

2015-03-09 | 伝記・ノンフィクション
 自衛隊のイラク派遣については、その間、国内のマスコミがかなり端折った報道しかしていなかった形跡があります……というか、マスコミというのはそもそも報道の専門家かもしれないけれど、経済や外交、歴史や軍事の専門家ではなく、ちょっと詳しいかもしれない程度の素人です。
 たとえば税金のことなら税金相談の記事は税理士や弁護士のコラムだし、税制改正の内容紹介はどこの紙面も一律同じ(些末で省略して良いところか財務省に都合が悪い)部分が省略されたダイジェスト版が横並び、役人が議員に説明したと聞かされたのとほとんど同じ主旨の論説記事が載っていたりします。
 なので、ときどきはきちんと自分で意識して調べていかんとダメだよね……と自覚して、こういう本を読んだりします。それでも片寄るけれど、いろんな視点から確認するくせはつけたいと思います。

 自衛隊はイラク戦争初期の2003年12月から2009年2月まで、10次にわたってのべ5500人をイラク南部のサマーワへ派遣し、イラクの国家再建を支援するため「給水」「医療支援」「学校・道路の補修」に従事しました。
 これはその過程で起きた出来事や、刻々と移り変わる状況に対応して判断を下していった派遣された各群長や支援隊長らの視点を中心にまとめていったものです。

「メディア各社はきちんと正しい情報を日本に伝えていただきたい」

 とにかく新聞やテレビだと、きちんと仕事が動いているときはあまり報道しないけれど迫撃砲弾が数発落ちれば大ニュースだし、街の歓迎の声は無視するけれど非難する日本語の看板が1枚あれば大スクープというのは悲しいものです。

【誰も書かなかったイラク自衛隊の真実】【人道復興支援2年半の軌跡】【産経新聞イラク取材班】【産経新聞出版】【キャプテン翼】【ここにしか咲かない花】【郷に入れば郷に従え】【消防士論】
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「世界が感嘆する日本人」 別冊宝島編集部

2015-03-02 | 伝記・ノンフィクション
「火山の多いところに住んでいる人は、サマーセットの丘陵やババリアの緑の草原に住んでいる人たちとはいささか異なる人生観を持っていると思ってもおかしくない」
 デイリー・メール紙3/19付のイアン・ブルマのコラム。

 東日本大震災での日本人の姿を世界各国のメディアがいかに伝えたか、その内容についてまとめて比較したもの。
 ただ、表題に反して、単に世界がいかに日本人の言動を讃えたのかというような「感動の日本人論」ではなく、むしろ日本人の姿について伝えることで各国の国民性を浮き彫りにすることが目的のような本になっています。手放しで感嘆して感動してしまうようなアメリカに対して、少し斜に構えてうがった味方をするイギリスであるとか、複雑な感情がうずまく韓国や中国などなど、欧米からアジア諸国まで日本を語ることで自らをどう定義しているのかというあたりがポイントです。
 面白かったのはフランスでの記事。日本人は地震や台風などの自然災害も原発事故による災厄も同一視していて、その恐怖をひとくくりにしてエクソシストのように悪魔祓いしているかに見えると評したもの。そもそも映画『ゴジラ』からして核兵器も怪獣も台風も同じものと見ていましたが、あれからのあれこれ論議や科学的根拠のない風聞が流布しているさまを見ていると、そこから何も変わっていないようです。
 人間というのは他人から褒められると嬉しいもので、ただ直接褒められると照れくさいし、あるいは特別に褒められるような話はそうそう無くて、だからこそこうした「日本人として」ひとくくりに褒められる本が売れるのでしょうかね。

【世界が感嘆する日本人】【海外メディアが報じた大震災後の日本人】【別冊宝島編集部】【宝島SUGOI文庫】【感動の日本人論】【シカタガナイ】【ゴジラ】【東京ミュウミュウ】
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「アメリカのめっちゃスゴい女性たち」 町山智浩

2014-11-14 | 伝記・ノンフィクション
「コメディアンの多くは誰かの欠点を笑うけれど、それは一種のイジメよ。私は誰かを傷つけないで人を笑わせたい」
 国民的人気コメディアンにしてトーク番組司会者、エレン・デジェネレス。

 アメリカ在住の映画評論家が、日本人にはあまり馴染みがないけれど、アメリカを動かし世界を変えていく現代の女性55人を紹介したもの。雑誌「anan」に掲載されたコラム記事に加筆したもので1つ1つのエピソードは短いけれど、登場するのは政治家から料理研究家まで。

「やっていいかどうか許しを得るよりは、やっちゃってから赦してもらうほうが簡単なんだから」
 コンピュータの母にして「バグ」の最初の発見者、グレース・ホッパー海軍准将(最終)。
 このセリフは最近よく聞くけれど、この人からなのね。

 ペプシを立て直した天才経営者、インドラ・ヌーイ。「K-19」を監督し、骨太のアクション映画ばかり撮るキャスリン・ビグロー。女性初のビリオネラ、eBayを発展させたメグ・ホイットマン。その所有する遊園地ではキリストがパレードするという、キリスト教系メディアの帝国を築き上げたジャン・クラウチ。世界初の空軍司令官、マーガレット・ウッドワード。料理界のワンダーウーマン、アリス・ウォーターズ。電子出版で億万長者になったオタク作家、アマンダ・ホッキング。妊娠中ながらヤフーのCEOとして引き抜かれたGoogleの設立メンバー、マリッサ・メイヤー。難民キャンプ育ちの天文学者、ジェーン・ルー。歴代大統領11人に最前列から辛口の質問を続け、90歳になってイスラエル批判で記者協会を追放されたヘレン・トーマス……。
 著者が映画評論家のせいか、女優やライターなど映画関係者がやや目立ちますが、多くは貧困から一代で這い上がってきた人々。成功したまま現在に至る女性もいれば、戦いはまだこれからの人もいますが、どの女性の生き方も魅力的です(さすがにタイガー・マザーはいかがなものかと思いますが)。 

【アメリカのめっちゃスゴい女性たち】【55 Febulous Women in America】【町山智浩】【中村祐介】【マガジンハウス】【カイパー・ベルト】【アメリカの黒柳徹子】【牛歩戦術フィリバスター】【ハゲのマーメイド】【お金の女神様】【毒舌の女王】【タイガー・マザー】
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「アホウドリの糞でできた国」 古田靖

2014-11-13 | 伝記・ノンフィクション
 ナウル共和国は島の面積が21平方キロメートルという、太平洋の赤道付近の小さな島国。その国土の大半がアホウドリの糞が堆積してできた燐鉱石でできていて、燐鉱石は化学肥料や火薬の原料であることから、掘って売ったらそのまま利益。
 太平洋戦争後に独立して以来、国民は働かないでも暮らしていける国になったことで(一部で)有名。税金を払うどころか、教育費や医療費が無料な上に、逆に国から家や生活費を支給されるのですから、“なまけもの国家”になるのも当然です。
 ところが掘ったら無くなるのも当たり前で、島まるごと鉱脈みたいなものだった鉱石も枯渇する日が来ますが、今さら働くこともできず……という顛末を描いた本。単行本から文庫版発行までの9年の間の変化についても加筆されました。
 ナウル共和国と連絡が途絶!ってニュースが流れたのは何年前だったかな。とにかく「不動産や株式投資で挽回しようとした素人が海千山千にもてあそばれた」「難民ビジネスに失敗」「ペーパーカンパニーと脱税天国で荒稼ぎしようとして世界主要国から一斉に絞められた」等々、ライトノベルでときどき見かけるチート能力と現代知識で貧しい領地を大改革!……という話の逆張りの連続なのです。

【アホウドリの糞でできた国】【古田靖】【寄藤文平】【アスペクト文庫】【リン鉱石】【グアノ法】
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