付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「世界の戦車」 チェンバレン&クリス

2008-04-30 | 戦記・戦史・軍事
 資料という名の下に、あれこれ本が集まってきます。たいていはミステリー、SF、ミリタリーだったりするので、そうなんでもかんでもというわけじゃないけれど。昨年は、持っていた人が手放したのでということでシャーロック・ホームズ関係の研究書ばかりがダンボール2杯分届きました。誰かは知らないけれどありがとうございます。
 というか、みんな「自宅に置いておくと場所塞ぎorどこに仕舞ったかわからなくなるもの」を持ってきているだけじゃないかという疑念も。

 さて、ていとくが「これは必要ですよね!?」と大日本絵画の新刊案内を置いていきました。いや、必要でも何でもないです。でも、載っていたチェンバレン&クリスの『世界の戦車』をbk1に注文。ちょうど書評で稼いだポイントが買えるくらいたまっていたのも好都合。第一次大戦からの世界各国の戦車を図版を付けて、細かなバージョン違いまで解説した本。個々の文章はさほど詳しくないけれど、全体では膨大な種類になるので総体として詳細な本。
 さらに小林源文のイラストエッセイもおまけに収録って、そりゃ絶対にチェンバレン&クリスの原書にゃないよね。

【戦車】
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「宿縁の矢~ヴァルデマールの使者2」 マーセデス・ラッキー

2008-04-29 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「真実とうぬぼれを同じ光で照らしたらだめさ」
 <使者>ダークの言葉。

 セレネイ女王の娘エルスペスが<使者>として覚醒し、エルスペスの守り役であり、女王の補佐でもある新米<使者>タリアにも転機が訪れた。
 1年間の研修を終え、いよいよ任務へと派遣されることとなったのだ。
 赴くは、悲しみの森が広がる国境地帯。しかし、彼女の持つ<天恵>の能力が宮廷の貴族の間に悪意ある噂を生み出し、自分の力に自信を持ちきれないタリアは噂に引きずられ、次第に<天恵>をコントロールできなくなっていく……。

 創元の方のヴァルデマール年代記でおなじみの、<使者>タリアの駆け出し時代をテーマとした3部作の2作目。
 <使者>とは、馬の姿をした精霊のような存在<共に歩むもの>によって選ばれ、人馬一体のペアとなった王の使者にして代理人。国土を巡回して地方の村々の書類を監査することもあれば、裁判や婚姻も司り、時には密偵として、時には戦士としてあらゆる場面に投入される存在です。
 一歩間違えれば危険な特権階級にもなりかねない<使者>という存在が、貴族から庶民まで広く受け入れられている理由は、<共に歩むもの>によって選ばれる彼らは自己犠牲の精神が天性となっているため。
 かといって、そんな完璧な滅私奉公なだけの存在でもないよと、彼らの仲間思いで陽気なプライベートの部分の描写を積み重ねつつ、タリアという少女の成長を描いていきます。マキャフリィの竪琴師ノ工舎3部作でいうと『竜の歌い手』 あたり。
 わがまま娘だったエルスペスやいたずら小僧のスキッフらも成長し、いろいろ頼もしくなっているのが嬉しいですね。

【宿縁の矢】【ヴァルデマールの使者】【マーセデス・ラッキー】【竹井】【C.NOVELSファンタジア】【純潔の殿堂】【パートナー】【裁き】【疫病】【雪山で遭難】【暴走】
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「三千世界の星空~ヒーローは失業中!」 吉野匠

2008-04-28 | その他フィクション
「目の前で見たことを信じられなくなったら、人生終わりだよ」
 政府の秘密機関の一員らしい、影村のおっさんの言葉。

 学業に挫折し、仕事も見つからず、ハローワークへ毎日通うだけの生活を続ける遠野天人のもとへ1通のメールが届いた。
 差出人は随分昔に近所に住んでいた生意気な女の子。突然のメールの中身は「悪い人に命を狙われているの! 助けて!」……。
 なんで俺が!? おまえはピーチ姫か! バカも休み休み言えと思いつつも気になって、のこのこ出かけてみたならば本当に……本当に……襲ってくるやつらがいるではないか。ボディスーツ姿で剣を振り回す女やら、スーツ姿でサブマシンガンをぶっ放す連中やら……いったい誰の何が狙われてるというんだ……?

 むらかわみちおのイラストで買ってしまいましたが、昔遊んだきりのおにいちゃん以外は他人を信用できなくなってしまったゴスロリ少女に、ヒーローと頼られる青年は実はヘタレで失業中だった……という徳間書店のライトノベル。
 評判が良ければ続くのだろうけれど、読み終わってもいろいろすっきりしない部分が多すぎて気になります。あれだけの人があれであのままかよとか、あれのあれは結局あのままかよとか、あそこであれをいいだしたあいつらは結局何が目的だったんだ?……とか。
 あとでよくよく考えたら「あ、あの伏線は回収されてないじゃないか!」という話は良くあるけれど、あからさまに放置しっぱなしで終わられても困るなあ……。

【三千世界の星空~ヒーローは失業中!】【吉野匠】【むらかわみちお】【トクマ・ノベルズedge】【異世界と現実を繋ぐ橋を渡る新ファンタジー小説】【ゴスロリ】【チェンジリング】【異世界からの侵攻】【同一存在】
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「ダブルスター」 R・A・ハインライン

2008-04-27 | 宇宙・スペースオペラ
「人はだれでも、いつ、どのようにして破滅するかをみずから選ぶ権利がある」
 宇宙時代の「劇団ひとり」、ロレンゾ・スマイズの言葉。

 たとえそれが演技だったとしても、徹底的に演じたとすればそれはホンモノと何の相違があるだろう?
 佐藤大輔の『信長新記~家康謀反』において、秀吉は人間的余裕が出てきたように見える本能寺後の信長について「徳を装っている」と判断すると同時に、それは本当の徳と変わりないだろうと考えています。
 これもそんな話。

 パントマイム・模写アーティストとして一時は人気を勝ち得ていた俳優“偉大なるロレンゾ”ことローレンス・スミスも、今ではすっかり過去の人となって失業中の身。安酒場で飲んだくれる金にも不自由する始末。そんなロレンゾに持ち込まれた仕事は、行方不明中の政治家の替え玉だった。
 太陽系帝国の首相選挙の最中、最有力候補であった野党連合の盟主、ジョン・ジョージ・ボンホートが誘拐されてしまったのだ。犯人を見つけ、ボンホートを奪回するまでの間、身代わりを立てて乗り切ろうと選挙対策スタッフは考えたのだった。
 気軽に引き受けたロレンゾだったが、本物の奪還は予想以上に手間取り、彼は与えられたシナリオだけではなく、ボンホートならどう考え、どう行動するか、常に自分で判断して行動することを求められるようになっていく。そして……。

 『太陽系帝国の危機』で刊行されたものが原題準拠で『ダブルスター』として復刊したもの。
 これがSF!というような話ではなく、それは別に源平合戦当時の日本でも現代アメリカの大統領選挙でも通用するようなテーマではあるけれど、そんなことに関係なく面白いんですね。もしかしたらハインラインの作品の中でいちばん好きかも知れません。

「この(政治の)世界は荒っぽく、時には汚く、いつだって重労働と退屈な細部の連続ではある。それでも、これこそ大人のスポーツだ」
 <トム・ベイン号>の船長、ダリアス・K・ブロードベントの言葉。

 竹本泉のスペースオペラものに登場する火星人は、この作品の火星人の影響を強く受けてるんじゃないかな。もっともこちらは触手の生えた毒キノコ型、竹本版はタコだけれども。るー。

【ダブルスター】【R・A・ハインライン】【皇帝】【替え玉】【選挙戦】
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「ドイツの火砲~制圧兵器の徹底研究」 広田厚司

2008-04-26 | 戦記・戦史・軍事
 砲兵が活躍した最後の大戦争である第二次大戦時に、ドイツの火砲がいかに発達していったかをさまざまな砲の種類と共に紹介していった1冊。

 歩兵が近接戦闘に突入する前に敵火力を制圧するために使用する近接支援用の迫撃砲。歩兵と共に移動して直接火力支援を行う歩兵砲。これを戦車の車体に載せると自走砲。山岳地帯での支援用に分解容易な小型軽量砲として設計された山砲。対戦車砲に装甲列車に列車砲、対空砲に対空要塞とレーダー網。
 しかしソ連の火砲に比べてドイツの火砲は終始射程が短く、また戦況の悪化により開発した兵器も大量生産に至らなかった。主力は最後まで前大戦時の改良版であったという……。

 ここまで徹底的に追求して浮かび上がるトホホな実態。
 山砲はいろいろ試してみたけれど、いちばん評判が良かったのは第一次大戦前から輸出していたクルップ製の山砲だったとか。
 通常火砲より信頼性は劣るけれど発射装置が安価で製造も簡単なことから普及したロケット砲。でもいちばんのきっかけはそれまでに東部戦線でソ連軍からさんざんカチューシャ・ロケット砲の洗礼を受けていたため。
 強力だけれど、一箇所突破されると残りのほとんどが無用の長物となる沿岸砲や要塞砲、航空機の発達で時代遅れになっていた鈍重で金食い虫の列車砲。
 弾薬も足りなくてソ連軍の捕獲砲が火砲不足を補っていたということですし、装甲列車も先陣を切って配備し活用していたのはソ連軍と聞くとますますトホホ。

 こうしてみると、ドイツは決して兵器の先進国では無かったのですね。
 それでも頑張ったのは対空砲群。宮崎駿がマンガに描いた対空要塞フラック・トゥルムも大活躍(当社比)。何千門という対空砲や機関砲、そして夜間に接近する敵を捉えるサーチライト中隊、警戒レーダー、大型測距儀、聴音機を統括する指揮所。結局、複雑のシステムを動かすのが好きなだけだったんでないかいという気も。
 もちろん、ちらっとではあるけれど、風力砲や電磁砲にも言及。言及してあるだけだけれども。

【砲兵】【開発の無駄】【多様性】【生産性】
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「スターファイター」 ロバート・A.・ハインライン

2008-04-25 | 宇宙・スペースオペラ
「幸運は周到な準備のあとについてくる。不運はだらしなさからやってくる」
 カート・ライスフェルド教授の言葉。

 宇宙飛行士になることを夢見る主人公は、せめてできることから始めようと宇宙旅行が賞品の懸賞に応募。口の悪い同級生らには馬鹿にされながらも、バイト先のおじさんたちの協力で一等賞はのがしたものの入選。宇宙旅行の代わりに、中古ではあるが本物の宇宙服を手に入れた。
 彼はその壊れた宇宙服に手をかけて、無線機やエアタンクを修理したり消耗品を補給したりするが、それでも自分でも判っていた。バカにする同級生たちの言うとおり、そんな宇宙服を持っていたところで宇宙へ行けはしない。単なる自己満足に過ぎない。けれども宇宙服を売り払えば、少なくとも大学に進学する費用の足しにはなるのだ……。
 宇宙服に最後の別れを告げようと、修理した宇宙服を着用してこっそり深夜の散歩に出た彼の通信装置に着陸許可を求める声が入ってきた。誰かのイタズラか、それとも何かが本当にここに着陸しようとしているのか?
 石けんの広告から始まる少年の冒険は、やがて地球の運命を左右する大事件へとつながっていく……。

 始めて読んだのは『スターファイター』ではなく小学校図書館の抄訳版だったけれど、面白かったですね。あらためて創元の完訳を読んだけれど、SF的なアイデアと、少年の日常生活から話が広がっていくストーリーがうまく融合していて、何度でも読みたくなる名作です。

【スターファイター】【ハインライン】【異星人】【裁判】【広告】【宇宙旅行】【W3】
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「別冊図書館戦争1」 有川浩

2008-04-24 | 本屋・図書館・愛書家
 有川浩は『塩の街』からずっと読んでいたのだけれど、『図書館戦争』は「これはなんか違うな」と思って読まずに放置してました。そうしたら、いつの間にかシリーズ4冊に別冊1とかなっているし、複数誌でコミック化されているし、アニメ化までされてしまい、あとはゲームでも発売されたら昨今のメディアミックス路線としては完璧。そうなると、ますます読みたくなくなる私ですが、別冊の帯が「恋愛成分が苦手な方はご健康のために購入をお控えください」とあるもので、なら、読んでやろうか!といきなり別冊から……。

「触ってください! あたし堂上教官に触られたいんです!」

 2019年、公序良俗を乱し人権侵害する表現を取り締まるため「メディア良化法」が施行された。しかし、これに基づいて発足した「メディア良化委員会」とその実行組織『良化特務機関』は、超法規的な組織として強権的に言論弾圧をおこない、焚書を実行していく。
 これに対抗するため、地方公共団体の所管である図書館は、図書館法を改正し武装することでメディア良化機関と対決し、図書館の自由を守るために戦い続けることになる。
 やっとのことで一人前と認められるようになった図書士の笠原郁は、ひそかに堂上篤とのお付き合いを始めることになるのだが、不器用な2人の恋愛は周囲にはバレバレであった……。

 確かに甘甘。
 でも、まあ、恋愛小説としては普通の甘さなので、ベタベタ少女マンガあたりと比べれば十分に糖分控えめ。うん、平気だよ☆
 図書館を巡る銃撃戦で死屍累々という状況はファンタジーではあるけれど、昨今の情勢を見ていると「メディア良化法」そのものは普通に成立しそうな話なので、国が焚書を仕掛けてきたときに地方自治体レベルで対抗できるかってあたりが最大のファンタジーですね。
 それから、メディア良化法の規制には反していないのに、むちゃくちゃな差別的表現や反社会的な思想に満ちあふれた作品を発表し続けている木島ジンという作家の存在も面白く、これなら本編を読み始めても良いかと思いました。

【別冊図書館戦争1】【有川浩】【図書館】【銃撃戦】【ラブコメ】【家庭内暴力】
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「ようこそ無目的室へ!」 在原竹広 

2008-04-23 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「あたしの得意技は思考停止と丸投げなんだ」
 演劇部の脚本家、黄瓦公の言葉。

 その高校の部室棟には、何年も何年も何の用途にも使われていない部屋が1つあって、そこには放課後になると、とくに目的のない生徒が三々五々集まってくる。正式な部活ではなく、部長も顧問もいない少年少女の集まりに、ときおり持ち込まれる不可解な謎。
 教室から消えたクラスメイト、差出人不明の手紙、窓から見た幽霊……みんながあれこれ推理する中、いつも謎をきれいに解決するのは黙って本を読んでいた星垣一郎だった……。

 『ブライトレッド』がそこそこ面白かったので買ってみた、同じ作者の学園ミステリ。
 典型的な安楽椅子探偵ものといっても、謎は入門レベル。現実ならこれだけ的中させたら名探偵の資格有りだろうけれど、お話しの中なら「まあ、頭の良い子だね」くらいの感想かな。だいたいわかりますもの。
 連作短編ではあるけれど、1冊全体に仕掛けた謎が1つあるので、それはちょっと面白い。
 最大の謎は、正規の部活でもないのに、そんな何年も(最低でも5年以上)空き部室が放置されていること。少子化で生徒数が激減してるのかな。部室は取り合うものだよねえ。そこをもう少し追求したいぞ。続編あたりのネタになることを期待。
 それから一郎が黙々と読み続ける本が、ウェルズの『透明人間』とか『磯野家の謎』とか案外と普通のラインナップだったのでなんとなく安心。これでボルヘスとか読んでて、ラテン語で独白なんかしたらどうしようかと思いました。

【ようこそ無目的室へ!】【在原竹広】【安楽椅子探偵】【部室】【裏の顔/表の顔】
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「カラーで見る第二次世界大戦~ヨーロッパの戦い」

2008-04-22 | 戦記・戦史・軍事
 DVDで見る60年以上前の映像集で、ノルマンディ上陸からベルリン陥落まで。
 ノルマンディは上陸開始、戦闘後。防空気球の群れがきれい。アルデンヌの戦いはニュースのみ。ベルリンは瓦礫の山。連合軍はあいかわらず情け容赦のない市街地爆撃。確かにアルデンヌ以後、黒人兵の数が増えてます。当初は黒人兵は「前線で戦わせる価値/能力もない」とみなされていたのだとか。
 あっちこっちの収容所では文字通り死体の山。地面の中から人の残骸。見学させられる近隣市民の列。
 でもやっぱりイタリア戦線は無視され続け、一進一退が続いているうちに「欧州での戦い、終結宣言」。

 本当に、カラー映像が残ってるんだなあ。着色じゃないと思うけど……。
 ただ、報道とか軍の記録ならともかく、一兵士の家族団らんみたいなものまでフィルムがあるので、国全体が金持ちなんだなあと。まあ、大恐慌といいながら、農夫が「自家用車」で引っ越しする国ですから。

【第二次大戦】【カラーフィルム】
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「地の果てから来た怪物」 マレイ・ラインスター

2008-04-21 | 怪獣小説・怪獣映画
「世の中でいちばんむずかしいことは、信頼できるデータを掴むまで判断を保留することだ!」
 ガウ島の行政官ドレイクの言葉。これはたいていの場合は真理。ただしモンスターパニックものでは、信頼できるデータが集まるまでに何人食われるか?という展開になるんだけどね。

 ガウ島は南極との中継地になっている南海の孤島。訪れる者もほとんどない中継基地に、研究資料と乗客を南極から合衆国へ運ぶ輸送機が立ち寄るという知らせが届いた。乗員3人と乗客7人、それに採取したサンプルとペンギン5羽が立ち寄って一泊していくという。
 久々の来客に沸き立つ基地だったが、何か機内でのトラブルを思わせる通信を最後に連絡が途絶え、不時着した機体には乗っていたはずの乗員乗客の姿はなく、ただ操縦士が拳銃で自分の頭を撃ち抜いていただけだった。そして4羽のペンギン。
 機内で何が起こったのか。他の者はどこへ行ったのか?
 だが真相を究明する間もなく、不可解な事件が島に相次いだ。操縦士の遺体が消え、犬が消え、そして基地の隊員が消えていく。何かが闇の中にいるのだ!?

 はい、SFから恋愛小説までなんでもこなしたというラインスターの怪物小説です。キャンベルJr.の『影が行く』というか、カーペンターの『遊星からの物体X』を思わせる冒頭から二転三転のクライマックスまで、あっという間の240頁。
 孤島での事件なので無線で外部に連絡しても集団ヒステリーかなにかと思われて相手にされないところが悲しいですね。これもお約束ではありますが。

【地の果てから来た怪物】【マレイ・ラインスター】【創元推理文庫SF】【南極】【孤立した基地】【消えていく隊員】【怪物】
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「冥王と獣のダンス」 上遠野浩平

2008-04-20 | 超能力・超人・サイボーグ
 宇宙に進出した人類が、謎の敵によって宇宙から叩き出され、地上に張りつけられて何百年。人類は超文明の大半を失い、かつてのテクノロジーの遺産である自動兵器工場から吐き出される武器を利用して拡張し続ける枢機軍と、ごく少数の超能力者を核とする奇跡軍とに別れて争い続けていた。
 無能指揮官の突出によって味方を失った枢機軍のトモル・アド臨時少尉は、死者と残骸ばかりの戦場で1人の少女と出会うのだが、彼女こそ敵の奇跡使いだった……。

 ろくに言葉も交わさないまま瞬時に敵のエースである少女に一目惚れした少年兵が、彼女と再会するために独立遊撃隊となって各地を転戦していく話。「そんなのありかよ!?」と自分としてはいちばん信じられないタイプの話ですね。相手も一目惚れ状態なので良かったけれど、そうでなかったら単なる危ない人だもの。これこそファンタジーだね。
 それでも主人公に対して反感を抱かないのは、目的は少女と再会することだけれど、そのために仲間に犠牲を強いらず、やるべきことはきちんとやっているから。脇を固める人物も面白く、リスキィ兄妹なんかどう動くか解らない魅力的で危険なキャラですね。でも、よく見たら、カバー袖のあらすじはリスキィ兄のモノローグじゃないですか……。

【冥王と獣のダンス】【上遠野浩平】【封じられた世界】【その先は言わないで!】【ボーイ・ミーツ・ガール】
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『フロリダ旅行(5) ユニヴァーサルスタジオ』 1992.07/06

2008-04-19 | イベント・コンベンション
 先日、得意先の事務員さんとユニヴァーサルスタジオの話題で盛り上がりました。大阪は行ったことがないので、ファストパスがゼニで買えるとは知らなかったようでした。
「大阪は、なんでもゼニかいっ!」
「ゼニだよっ!」
 でも、大阪は行ったこと無いけど、フロリダはあるよ!とのことでまた盛り上がり。仕事中なのに。

 まあ、映画の世界を体験するところですよね。
 街並みの1つ1つが映画のシーンだったりするのを愉しみながら散策するのは、それだけでも楽しいものです。街角曲がって、ふと頭上を見上げたらAT-ATスノーウォーカーがいて、軍用ジープが並ぶ一角にブルーサンダーが転がっていたりしてね。で、わくわくする気分のまま、ゴーストバスターズの幽霊退治とか、ケーブルカーに乗っててキングコングに襲われたりするわけですよ。だから映画を観ていれば観ているだけ愉しい場所ですね。
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「マリア様がみてる/マーガレットにリボン」 今野緒雪 31

2008-04-19 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 『マーガレットにりぼんをかけたぶーけ』……ということで、ン十代男性でも安心して読むことのできる、私立リリアン女学園を舞台にした少女小説の31作目。前後編をいれると33冊目。

 下級生へのホワイトデーのお返しに悩む3人の少女の話を軸に、大学入学を契機にイメージチェンジを計った水野蓉子さまの話、交際相手の娘と会うことになった鳥居江利子さまの話、フィレンツェ煎餅を買いにイタリアへ行った佐藤聖さまの話、藤堂兄弟の別れの話、青い傘の話など、あれこれ気になっていた小ネタをまとめて語ってしまいましょうという1冊。

 読まなくても支障はないけれど、今まで読んでいたなら「このあたり、詳しく読みたいよね」と思っていたに違いない話があれこれと。

【マリア様がみてる】【マーガレットにリボン】【今野緒雪】【ローマ饅頭】【フィレンツェ煎餅】【青い傘】【お稲荷様】
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「幽霊狩人カーナッキの事件簿」 ウィリアム・ホープ・ホジスン

2008-04-18 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 20世紀初頭のイギリスを舞台にした、オカルト界のシャーロック・ホームズの異名を……あ、これはジュール・ド・グランダンか。えっと、英国の妖怪ハンターことカーナッキが解決する事件の数々

 面白いのは、本当に幽霊等の仕業による怪奇現象と、怪奇現象を装った人間の仕業な事件と、それらが混在している事件がいろいろ混ざっていること。お、これは本物か……と思っていると人間の仕業で、そうか、トリックかと思っていると説明できない現象も起こったりと、なかなか読んでいて飽きさせません。さすがホジスン。
 幽霊馬に襲われたり、裸の子供が壁を抜けたり、天井から血が滴ったり、船上で海の怪異に襲われたり。そんなときに活躍するのが、真空管で組み上げられた電気式魔法陣。叡智の光が異界のものから身を護る障壁になるぞ!

 でも「どこかで」「どういう方法かわからないが」「とにかくなんとかして」という言葉が、謎解きシーンに目立つのは正直なんですかね。オカルトものならともかく、ミステリーとしては許し難き☆ まあ「動機なんかに興味はない!」と言い切る探偵もいれば(森博嗣の作品にありましたね)、「犯人さえ分かればトリックなんかどうにでもなる」という探偵もいますから、「謎は解いた。だが、解らんもんは解らんっ!!」というのもアリなんでしょう。
 いや、実際にはそんなセリフはありませんが、そんな感じの話。もちろん語るときは怪しげな写本やら学説を振り回して語ってくれます。

【幽霊狩人カーナッキの事件簿】【ウィリアム・ホープ・ホジスン】【電気式五芒星】【幽霊】【指輪】【シグザンド写本】【サアアアアア典儀】
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「軌道上の戦い サイボーグ士官ジェニー・ケイシー(2)」 エリザベス・ベア

2008-04-17 | ミリタリーSF・未来戦記
「ゲームや社会問題や政治交渉の場面では、好きなだけズルをしていい。やっただけ、ランキングや獲得ポイントに反映するからな。だが、仕事に必要な勉強でズルをしちゃいかん」
 <リチャード・ファインマン>の幽霊。

「とほうもない目標の方が実現しやすいと。例外もありますけど」
 恒星船パイロット、二等准尉ジェニー・ケイシー。

「考えるのはわたしたちの仕事じゃないわ。ベストを尽くすこと--それがわたしたちの仕事よ」
 コネティカット州検死局長、ハートフォード市警本部長カイ・フア。

 印象的なセリフが幾つも簡単に見つかるというのは、面白い物語の証明みたいなものです。

 太古の火星に漂着した異星人のテクノロジーを利用して建造された、最新鋭宇宙船<モントリオール>の船内ネットワークに潜入することに成功したAI<リチャード>は、ナノマシンのコントロールを試みていくうちに外宇宙から接近しつつある存在を認識した。
 異星人が再び太陽系を訪れようとしているのだ。
 しかし、それを人間に知らせる状況ではなかった。餓えた狼となった中国は、ロシア国境を侵犯しての戦争を継続する一方、宇宙空間においても自らの覇権を獲得すべく、<モントリオール>に破壊工作を仕掛けてきたのだ。
 そして<モントリオール>破壊に失敗した中国は、次の目標を狙って宇宙船<黄帝>を動かした……。

 マーフィーの法則そのもののような作品。つまり「失敗する可能性があることは、必ず失敗する」って言葉をあちこちのエピソードで思い知らされるんですが、今回はさらにきついなあ……。
 どんどん魅力的な新キャラが登場しますが、終わってみると生き残ったキャラの数はほとんど変わっていないという話です。
 テイストとしては、ヒロインもののフリをした群像劇。未来の出来事を、さらに未来になってから当時の証言や日記などによって再構成した歴史小説という位置づけなので、本当にさくさくハラハラ話が進みます。こいつらどうなるのか、なかなか読み切れません。

【隕石落とし】【核の冬】【ナノマシン】【国連軍】【異星文明】【漢詩】
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