付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「不肖・宮嶋 戦場でメシ喰う!」 宮嶋茂樹

2008-05-31 | 食・料理
 一応は「軍用レーション(ミリメシ/戦闘糧食)」、つまり「兵士が食べる食事」の本です。
 でも、普通のミリメシ本だと、レーションの中身とか味が話題の中心になるのだけれど、筆者は「一度現場に入ってしまったら、食事は栄養補給できるビスケットとミネラルウォーターで十分」というフリーの報道カメラマン“不肖・宮嶋”ですから、ここは本当に「戦場でメシを食う」話が主体です。オークションで購入したレーションの試食話など出てくるわけもなく、彼が、カンボジアからイラク、ゴラン高原、南極まで、取材して回った戦地・紛争地・極地で食べた食事、食事を共にした兵士・自衛官たちの姿を書き込んでます。
 荒天の中、平底船でカンボジアまで2週間無寄港を押しつけられた輸送艦の航海。足の踏み場もない鈍足輸送機で4泊5日の旅。味付けが単調で早々に飽きてしまったけれど、決して欠席できないイラクの族長たちとの食事会。譲渡禁止の米軍レーションをどうやって入手して食いつないだか。砂漠で食べる寿司握り。野外炊具一号の大活躍。日本の戦闘糧食はやっぱりおにぎりだった……等。
 やはり、こういう食事は食べる人の姿があってこそのものだと思いました。内容は今までの本に書かれたネタから食事中心に抜き出して再構成し、それに写真等を追加したようなものなので目新しい部分は少ないですが、あらためて読んでも面白いです。PKOなどで派遣された自衛官たちの奮闘ぶりとか、口ばかりで危険な場所には出てこない官僚や大手マスコミとか立場が変わると言うことがころりと変わる政治家などを罵倒しているのもいつも通り。
 陸海空の食事はひととおり紹介しているんで、漏れているのは潜水艦部隊のミリメシくらいかもしれません。

【不肖・宮嶋 戦場でメシ喰う!】【宮嶋茂樹】【ミリメシ】【自衛隊】【軍隊】【PKO】
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「ご冗談でしょう、ファインマンさん」 R.P.ファインマン

2008-05-30 | 伝記・ノンフィクション
 「信念のために歴史を改変しました。あとは野となれ山となれ」という、アンダースン&ビースンの『臨界のパラドックス』に、金庫破りが趣味の変な科学者ファインマンが登場するのだけれど、本物のファインマンはへたな小説より面白いのです。
 リチャード・ファインマン(1918-1988)は、ノーベル物理学賞を受賞したアメリカの物理学者。マンハッタン計画にも携わって原爆開発にも参加していますし、晩年はスペースシャトル爆発の事故調査委員会に加わって物事の真実を突き止め、それを他人に判りやすく解説する能力を発揮しています。

 この『ご冗談でしょう、ファインマンさん』は、ファインマンの少年時代から戦後日本を訪問したあたりまでの回想録。最初、岩波書店のハードカバーを新古書店の投げ売りで購入し、あまりに面白かったので反省して、後に岩波現代文庫で復刊されたときにすべて買い直しました。
 知的好奇心が旺盛で、何事も自分の目で確かめ考え意味づけしないと気が済まないファインマンですが、なにより人生を愉しんでますね。だから、その回想を読んでいても面白いし、生半可なフィクションでは太刀打ちできません。

「ええ、僕がやりました」
「ふざけるなよ、ファインマン」

 犯人は自分だと名乗り出ても信用してもらえない悲劇。

 マンハッタン計画の舞台となったロスアラモス時代には、病床の妻と手紙を暗号文でやりとりしたりして検閲官をからかい続け、同僚の机の引き出しや金庫を片っ端から開け閉めして金庫破りの腕を磨き、ブラジルに大学教育のテコ入れで招聘されたときは詰め込みだけの教育を一蹴する一方で、太鼓の腕を磨いてサンバ・カーニバルに参加。ラスベガスでギャンブル修行をし、ナンパ術に磨きをかけ、絵画に凝ってマッサージ・パーラー用に飾る絵を描いたけれど納品前に経営者が監獄行き。トップレスクラブが公序良俗に反しているかの裁判では、クラブ側の証人として裁判に出席。博物館で手に入れたマヤ文字を眺めているうちにパターンを解読、解説書の誤りを発見し……。

 人事管理的には、ロスアラモス時代の計算センターの話が面白い。機密優先で、担当者たちに何も教えず計算だけさせていたときよりも、何のための作業なのか説明した後の方が「僕らは戦争に参加しているんだ!」と士気が上がり、作業手順の改善なども現場で考えてどんどん実行していったのだそうです。これは経営学のテキストにはないエピソードですねえ。

【ご冗談でしょう、ファインマンさん】【MIT】【メッキ】【金庫破り】【レーダー】【ディラック方程式】【ノーベル賞】【ドラッグ】
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「黎明への使徒 サイボーグ士官ジェニー・ケイシー(3)」 エリザベス・ベア

2008-05-29 | ミリタリーSF・未来戦記
「人はつねに誰かを信じ、身をまかせるものです。それが重要なのです」
 カナダ首相コンスタンス・ライエルの言葉。

 小惑星落下によってトロントが壊滅して9カ月。中国とカナダの対立は激化し続けているが、落下の影響による津波、原子炉の破壊、そして地球規模の気温低下による全地球凍結の兆しなど、小惑星落下の被害が何千万人になるか、いまだはっきりしていない。
 その一方、地球近辺に出現した2種類の異星船とのコンタクトのために世界各地から科学者たちが周回軌道の宇宙船<モントリオール>に集結してくるが、異星人たちとの接触は遅々として進んではいなかった……。

 ジェニー・ケイシーのシリーズもこれにて完結。
 面白い話ではあったけれど、煽り文句や表紙イラストから受けるイメージとは随分違いましたね。「女サイボーグの活躍する話」で検索に引っかかる本ではあるけれど、第1巻は未来世界を舞台にしたハードボイルド小説風に始まって、第2巻は新兵訓練と隕石落とし、そして3巻は地球規模のサイバーネット戦がメイン。壮絶な銃撃戦とかファーストコンタクトとかいろいろあるけれど、印象に残った1番目は<ファインマン>の電脳戦であり、2番目はライエル首相の政治外交戦かも。

「気象問題は簡単よ。できる限り被害を食い止め、できないことについては現状を受け入れるしかないわ」

 どうしようもない状況に追い込まれても、自暴自棄にならなければ理想論を追いかけることもなくシビアに問題を処理していこうとする政治家の姿はカッコイイです。でも、1巻だとどちらかといえば敵役のイヤなやつだと思ってました。

【黎明への使徒】【サイボーグ士官ジェニー・ケイシー】【エリザベス・ベア】【ファーストコンタクト】【核の冬】【電脳網】【人工知能】
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「地下宮殿の秘密~マーベラス・ツインズ(2)」 古龍 

2008-05-28 | スポーツ・武道
 藤田香のイラストの大ファンな私ですが、話を読み進めていくうちにキャラクターたちの容姿が勝手にモンキーパンチに脳内変換されてしまっています……。

 この『マーベラス・ツインズ』に限らず、古龍の小説は個性的なキャラクターが次々に登場しては消えていくものらしいのだけれど、このキャラクターの入れ替わりのすさまじさに最初は『封神演技』を連想しちゃったのだけれど、これは間違い。もっとテンポが良くて、物語にめりはりがある。どちらかというと、山田風太郎の諸作品に近いかも知れません。

 彼を殺そうとする美少女から逃れるために谷底へ転落した小魚児。
 転落したふりをして断崖絶壁に身を隠そうとしたところを猿に襲われ、連れ込まれた横穴には、宝を求めて侵入したものの帰れなくなり、10余年を憎み合いながら同居している2人の男がいた。
 脱出するための策をめぐらす小魚児だが、その結果、彼らの目の前には天下に名の轟く武勇の達人・武術の名人が何人も集結しているらしいという証拠が集まってくる。だが、最終的に彼らの前に姿を現したのは、十大悪人の一人、<色妖女>であった……。

 個性豊かなキャラクターが続々登場し、そして大半は主人公たちの前に姿も見せないまま次々に退場していきます。おーい!
 断崖絶壁に孤立無援から一転して地下宮殿へ、そして狡猾美少年・江玉郎と手鎖でつながれたままの大河の脱出口、そして武勇に優れた聖人とも崇められても所詮は江玉郎の父親だという江別鶴の登場と、ストーリーも二転三転。似たもの同士ともいえる江玉郎との逃亡劇、このままだとヒロインの座を占めそうな鉄心蘭の再登場など、ますます盛り上がったまま第一部完!といった感じの2巻でした。

【鎖でつながれたまま逃亡】【奥義書】【脱走】【宝の地図】【博奕】
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「謎の宝の地図~マーベラス・ツインズ(1)」 古龍 

2008-05-27 | 時代・歴史・武侠小説
 中国小説マニアには「古龍をラノベ扱いするなんて!」と不評だけれど、ぼくは中国小説マニアじゃないから平気。藤田香のイラストは好きだから、それだけでも買いよ。老若男女をきちんと描き分けた“イラスト”を描ける人だから、間口を広げるという意味では適任です。まあ、古龍はハードボイルドな雰囲気で人気を得ている作家なので、なおさら反発が大きいのかな。

 天下に轟く十大悪人のうちの5人が集まる崑崙山の悪人谷。そこで極悪人たちに育てられ、拳法から盗みの技まで叩き込まれた14歳の少年・小魚児が旅に出た。
 その小魚児が旅に出て早々に出会った少年・鉄心男は、小仙女という女に追われているらしい。好奇心を抑えきれずに関わってしまったことから、鉄心男の隠し持つ宝の地図の争奪戦に巻き込まれてしまうのだが……。

「あなたの心は……犬にでも食べられちゃったの?」
「大当たり」

 いきなりピカレスク・ロマン……いや、悪漢小説です。
 良くも悪くも人を引きつける魅力を持つ小魚児は、武術の腕も立つけれど、なにより世界一の天才を自称するだけあって、頭も良いし口も上手い。むしろ度胸と口先三寸で、敵を倒し、物を盗み、逃走し、相手が美少女だろうと何だろうと、容赦なく張り倒し、罠にかけていきます。
 そのせいか、彼の行く手には、さまざまな武術の達人や悪漢たちから、戦馬にまたがって鞭を振るう小仙女、暗器を自由自在に使いこなす一族の末娘・慕容九妹など、悲しみにくれたり逆に彼を殺そうとする美女・美少女まで続々と立ちふさがり、隠された財宝を巡って壮絶な殺しあいを繰り広げていきます。
 このテンポの良さと主人公の卑劣っぷりが好きですね。

【古龍】【マーベラス・ツインズ】【実は女】【実は双子】【十大悪人】【ツンデレ】
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「封神演技」 訳:安能務

2008-05-26 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 殷周革命を舞台にした、中国古来の大衆伝奇小説。それを安能務がかなり奔放なアレンジをして訳した日本語版……ということだけれども、どの程度のアレンジがされているのか、原文を読めないし、別訳もないので不明。

 崑崙に居をかまえる仙人たちには悩みがあった。
 いくら仙人といえども煩悩は溜まる。たとえわずかづつでも無限に生きていく内には積もりに積もる。早い話が、大暴れしたいという破壊衝動・殺人願望である。それをときどきは発散させてやらないと、とんでもないことになってしまうのだ。
 一方、一口に仙人といえども、動物や植物が力を持つようになって仙人と化した者もいるし、人間でありながら仙人に匹敵する能力を持つに至った者もいて、これがエリート仙人の気に入らない。
 ならば、まとめて解決しようと、人界で紂王の奢りから生じた争いを煽り立て、仙界と人界を巻き込んだ大戦争に仕立て上げてしまったのである。これを機会に半端な能力を持った仙人や人間を戦死させ、その魂を「封神台」に封じることにより新たに神界を作ってしまえば、仙人の闘争心も満足させられるし、世界の秩序も保たれるし一石二鳥!
 この大計画を実現すべく、崑崙の道士の1人であった姜子牙(後の太公望)を人界に派遣するのだが……。

 目標!365柱!
 さあ、戦争だとばかり、世界各地から集結する仙人、武人、道士たち。何千年かけて開発したり手に入れた秘密兵器「宝貝(パオペエ)」や必殺の技や術を披露するのはこのときぞ!と戦争に参加しては死んでいきます。まったく、なんだかなー、救いがたいなー。久米の仙人の方がかわいげがあるぞという話。
 これは原作のせいか、訳のせいかはしらないけれど、まとめて読むと疲れるし、かといって中断すると再開するのが難しくなります。戦隊ヒーロー物や仮面ライダーのあらすじだけを延々と文章で読まされるような感じです。
 雑兵が束になってもかなわない武人登場。それを倒さんと宝貝を持った仙人が登場して、あっさりやっつけます。そうすると、その宝貝の能力を封じる陣を組む道士が出現し、仙人を退治。そうすると、今度はその陣を打ち破る……以下繰り返し。
 血を吐きながら続ける悲しいリレー競争ですよ。

【封神】【宝貝】【仙人】【戦争】
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「BIOME~深緑の魔女」 伊東京一  

2008-05-25 | 破滅SF・侵略・新世界
 その時代、大地のほとんどが樹海に覆い尽くされてしまっていた。
 世界とは空が見えないほどに葉を多い茂らせた大樹であり、密林の闇を駆ける野獣であり、さまざまな種類の無数の虫のことを意味していた。人類は樹海の隙間にわずかばかりの大きさの街を作って国とし、その点在する都市国家のネットワークによって、かろうじて文明を維持していた。
 生態系のバランスを調整することで人間の棲息環境を守る森林保護者を生業とするライカは都市国家パドゥーラを訪れ、そこで虫の異常繁殖に遭遇する。他の同業者たちと共にその駆除を引き受けることとなった彼女は、そこに何者かの人為的な罠を感じ取るのだが……。


 生態系の輪を崩壊させ、街を滅ぼす罠をかいくぐった先にまた罠があり、それを解除することでさらに次のトラップが発動するという二重三重の罠にワクワク……しちゃいかんけれど、面白かったです。

【BIOME】【深緑の魔女】【伊東京一】【樹海】【被差別民】【罠】【虫】
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「ザ・マーチ 1977年世界の兵器」 編:西村多加志

2008-05-24 | 戦記・戦史・軍事
 30年前の最新兵器情報満載の1冊。何もかも、皆、懐かしい……。

 こういう雑誌は数年前のものだと情報が古くて役立たずになるものですが、ここまで古いと新旧ギャップを楽しめますね。もうすっかり消えて話題にも上らないもの、いまだ現役で頑張っているものとかあれこれ。
 まだソ連が東西対立で頑張っていた時代です。空軍の特集記事なんか、『ソ連の最新軍用機の虚実』。これなんか、ソ連崩壊後のデータと検証したらどれだけ読みが当たっていたか解るってもんです。まあ、それができるほどのマニアじゃありませんけど。
 その他の記事は、世界の最新機を無人機からテスト中の最新機まで。海軍は原潜特集で、陸軍は戦車とミサイル中心に。ミサイルは推進機関の構造や誘導方法から載っているから、もしかしたらどこかで参考にすることがあるかも知れないな。
 もう少し捨てずに取っておくことにしましょう。
 ちなみに写真は裏表紙の広告記事。「どんな高度でも、どんな速度でも……どんな脅威に対しても……」って、この煽り文句が格好良いよね。個人で買って使えるものなら使いたくなるコピーです。

【兵員輸送車】【ミサイル誘導】【無人機】
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「うらにわのかみさま(1)」 神野オキナ

2008-05-24 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「世の中は理不尽に出来ておる」
 自信たっぷりな虎神さまのお言葉。

 神無月というと日本中の神さまが出雲の国に集まって、他の場所に神さまがいなくなる月なのだけれど、年にもそういう「神無年」というものがあって、世界中から神さまが消える年があるのです。
 そういうときを狙って別の世界からこの世界に潜り込もうとする「神もどき」なる存在がいるものだから、そういう別世界とかの通路が開きそうな場所に当番役の神さまが派遣されるのだそうです。
 沖縄の女子高生・垣華ユウは裏庭の物置を整理していて、祠の奥からソフビ人形「とらたん」を見つけます。遠い昔に遊んでいた記憶がある人形です。
 実はとらたんこそ、今年の当番神さまである虎神さまの依代であり、ユウの母も祖母も、代々虎神さまの手伝いをして「神もどき」を鎮めていたというのですが……。

 神さまの力で、玩具の形態を取り込んで変身したヒロインが、神もどきを本物の神さまと入れ替わらせようとする猫神様のエージェントやかりそめの形を与えられた神もどきと戦ったりする話。変身形態はあくまで玩具とかフィギュアの形態に依存するので、女性が変身しても男キャラだったり、その逆もあったりと……ああ、そんなネタは『モルダイバー』にもあったなあ……。
 虎神さまの使いとなったユウと、猫神さまの使いとなった同じ高校の山内霧人の、変身後の対決と変身前の交流を軸に、なかなか楽しいファンタジック・コメディに仕上がっています。

【Uボート】【十二支】【なりそこない】
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「あっと驚く飛行機の話」 飯山幸伸

2008-05-23 | 戦記・戦史・軍事
 普通にミリタリーもので語られるのとはちょっと違った視点で語る飛行機の話。
 零戦と同時期の似た機体を集めてどれがどれを真似たのかとか、日本ではトンデモ兵器扱いされる風船爆弾が与えた影響のあれこれから構造まで、エピソードとか資料をあれこれと。
 いちばん気になったのは、というか、それが目的で買った記事は、フォン・ローセン伯の冒険の顛末。
 スウェーデン貴族のカール・グスタフ・フォン・ローゼン伯は、義を見てせざるは勇無きなりを地でいく家系。ソ連軍に隣国フィンランドが攻撃され冬戦争に突入するや、自腹で旅客機DC-2を買い入れ、それに機銃や爆弾を搭載して義勇兵として乗り込んだのだが……という話。
 旅客機をチャーターして空爆というと『男一匹ガキ大将』の石油危機編を思い出してしまいます。内容的には目新しいモノはなかったけれど、これだけまとまっているのは貴重かな。でも、そんなに「あっと!」とはいいませんでした。

【風船爆弾】【ムスタング】【ハンシン・ユッカ】
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「ペイルココーン」 板橋しゅうほう

2008-05-22 | 宇宙海賊・宇宙商人
 昔、『月刊OUT』という雑誌があって、創刊の頃はポップカルチャーとかロック音楽とかSFとかなんでもかんでも記事にしていて、やがてアニメ記事が増え始めて『月刊アウト』となり、今はもうない……。
 その最初期に連載していたのが、板橋しゅうほうによるアメコミ調SFコミック『ペイルココーン』。

 太陽系をパトロール中の国際防衛機構のアメリカ軍機が異星人の宇宙船と交戦。敵に対して4発の核ミサイルを叩き込むが自機も大破した。火野が指揮する大阪支局のパトロール機が救助に向かったが、異星人の巨大宇宙船はいまだ健在だった。
 火野はかろうじて助け出したクリフォード大佐らと共に脱出を試みるが、異星人の船内で暴れ回っていた怪獣ジアーラが火野機の前に出現。時空変異に巻き込まれてしまう……。

 人気最低で、打ち切られるならと開き直って、「ヤマト」だ「ライディーン」だ「鋼鉄ジーグ」だ「エイトマン」だと、一転ギャグにしたところ人気爆発。タイムスリップするわ、スターリング少年とラスカル小僧は出てくるわ、異星人ガーホンはクレオパトラとデートするわとなんでもありに。そしてOUT別冊の『ランデヴー』に出張したり、『アニメック』で番外編を連載したりと、あっちこっちでやり放題やった果てに東京三世社でのコミック化の際に大幅描き直しして無理矢理に元々の路線で集約。『幼年期の終り』と『デビルマン』を足して割ったようなクライマックスには唖然とするばかりでした。そう。地球は蒼ざめた繭だったのです。(2009/05/22)

 コミックにまとまったところで読み返してみても連載中のような興奮は無し。
 やはり、これは「なにが起きるか解らない」という雑誌連載でのライブ感覚あっての面白さ。たぶん「CDで聴くのと同じ曲なんだからどうしてわざわざライブやコンサートに行くの?」とアーティストやアイドルのコンサートに積極的に行く人に訊ねたときと同じ答のような気がします。(2009/06/19)

【ペイルココーン】【板橋しゅうほう】【タイムトラベル】【人類の覚醒】【アメコミ】【繭】【パロディ】【アトランティス】【タイムリサちゃん】
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「黎明に琥珀はきらめく~彩雲国物語」 雲野紗衣

2008-05-21 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 先月のとある経済誌で、いまさらながら「ライトノベル」について言及されていました。ネタ的には周回遅れですよね。今はむしろエクソダス(有望なラノベ作家を別ジャンルに売り込んで生き残りを図る)の季節でないの?とか思ってますし、それを今さらキーワードでピックアップしましたよ!などと最新情報みたいに言われて、「これまでは小中学生が主なターゲットだったが」などと解説されてもねえ?
 それはともかく、さほど紙幅を費やすわけでもなく紹介されていたライトノベルの代表は、男性向けは『フルメタルパニック!』で、女性向けがこの『彩雲国物語』でした。これはちょっとびっくり。
 女性向けのノベルといったら、『マリア様がみてる』とか『今日からマ王』あるいは『十二国記』……などと思っていたら、『彩雲国物語』ですものね。うーむ。女性官吏の物語ってところがビジネス誌向きなのかな。記事によれば、かなり高い年齢の女性にまで支持されているんだそうです。紀伊国屋の店頭調査では、4割が19~29歳、30~49歳が3割、それ以上も1割(正確には13.1%)なんだそうで、へえ。
 でも、この調査の紹介も「購読者の8割が女性で」と書いている時点で切り口がおかしいよ。だって、ビーンズ文庫だよ!? きれいな女の子がカッコイイ王子様に見初められてキャッキャウフフの文庫だよ? 2割が男性ってとこが問題でしょう!

「王様なんてねー、何したってみんなからいじめられるのが仕事なのよ。あっち立てればこっち立たず。殴られっぱなしなんだから」
 十三姫の言葉。

 ということで、たぶんこの巻で16冊目ですね。
 なんとなくほのぼのしてたり、コメディタッチだった物語も、もうかなりシビアな展開に突入してます。なんというか、「あの設定は話の流れでギャグということでスルーしちゃうんじゃなかったんですかっ!?」みたいな感じで、ただの宮廷コメディだったら笑って済まされるところも、様々な勢力が徹底的に突っつき回り、二重三重に罠を張り、みんな腹に一物も二物も持っていて、一見悪そうな人はやっぱり食えない人で、史上初の女性官吏となった秀麗と国王・劉輝は四面楚歌。防戦一方であちらこちらを突き崩されて崩壊寸前。孤立無援。政争まっただ中です。
 あー、読んでて胃が痛いわ。

【文鳥】【花菖蒲】【政治家と役人の違い】【王の官吏】
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「突撃彗少女」 吉田親司

2008-05-21 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「小娘一人が代償なら安いモノです。好きにしなさい」
 妹をあっさり売り飛ばした蓮蛇涼香の言葉。

 海から出現した海獣が日本を襲うようになって何年も過ぎていた。
 海棲生物を巨大化したような海獣に対して、通常兵器のほとんどは通用しなかった。唯一決定打となり得たのは熱核反応弾だけだったが、8年前の東海危機において伊勢エビ海獣に対して使用された名古屋撃ち(熱核反応弾乱れ撃ち)によって東海地方は無人の荒野と化していた。
 今や海獣対策は、ケプラー繊維のジャケットにミニスカートとニーソックスといういでたちで、機関砲を装備した彗にまたがる少女たちの使命となっていたのだが……。

 ちょっぴりクトゥルフ・テイストだけれども基本は魔女飛行隊が怪獣と戦う話……になりかけて、本筋はその彗乗りを育てるための学園ものかな。学園パートなしで、魔女飛行隊もので良かったと思いますが、女学生が出ないとダメですか? 女性政治家や転校生のアクが強すぎて苦手です。

【突撃彗少女】【吉田親司】【ガガガ文庫】【テケリリ】【女装】【助走】【彗放棄】
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「地獄の綱渡り」 アリステア・マクリーン

2008-05-19 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 この「地獄の綱渡り」ってタイトルだけで引いてしまいますね。どこの江戸川乱歩か藤田和日郎かというタイトルですが、まあ、内容は東西冷戦真っ直中の東欧を舞台にしたスパイ活劇。

 東欧の某国へ親善サーカス団が入国するが、それは研究施設から反物質の機密を奪取するためのカムフラージュであり、CIAから依頼を受けたエージェントとはサーカスの綱渡り芸人だった。彼の特技は綱渡りだけではなかったのだ……。

 ルイ・マル監督の『ビバ!マリア』とか、(当時はまだ影も形もなかったけれど)藤田和日郎の『からくりサーカス』とか、サーカスの芸人って戦うと意外に強敵なんだぜ!という設定は練り込めばすごく面白くなるんだよね。いや、これに限らず、本来は非戦闘員の職種なのに戦っても強いっていうギャップの面白さは好きなのですよ。朝松健の『ユニコーン作戦』とか菊地秀行の『妖神グルメ』じゃコックが強いし。
 もう1つ面白くなったと思うんだけれどなあ。マクリーン作品としては凡作。

【地獄の綱渡り】【CIRCUS】【アリステア・マクリーン】【ハヤカワ文庫NV】【サーカス】【反物質】【東西冷戦】【絶対記憶】【ダブルスパイ】
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「陸の海賊~ドイル傑作集4」 コナン・ドイル

2008-05-18 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 日本では……というか、本家イギリスでもシャーロック・ホームズの生みの親としてばかり有名で、あとは『失われた世界』のチャレンジャー教授くらいしか知られていない作家コナン・ドイル。でも、本人が本当に書きたかったのは歴史小説で、晩年はオカルトに傾倒していたというのも、そこそこ知られた話。
 そんなコナン・ドイルの諸作品を、ジャンルごとに集成した創元推理文庫の『ドイル傑作集』もやっと4巻。別の出版社でスタートした時みたいに、途中でぽしゃりはしないかとドキドキしていましたが、なんとかここまで辿り着きました。
 さて、今回は『陸の海賊』というタイトルからして海賊物か!?と思いきや、確かに海賊物も数編入っていますが「スポーツ・冒険編」。いきなりボクシングの懸賞試合から始まって、狐狩りやらクリケットやらあれこれ。実はスポーツ小説というとキンセラの『シューレス・ジョー』、ブラウンの『プレーボール!2002年』、大泉浩一の『杜の都のボールパーク』くらいと全部書名をあげられるくらいしか読んでいませんでしたが、みんな読めば面白いんですよねえ。
 こうしたスポーツ小説がさほど人気にならなかったというのは、ホームズが偉大すぎたのか、はたまた当時のスポーツ小説の水準がこれくらいだったのか。これも充分に楽しめました。

【陸の海賊】【ドイル傑作集4】【コナン・ドイル】【拳闘】【幽霊譚】【復讐譚】【魔球】【海賊】【勇将ジェラール】
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