付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

私的年間ベスト2012

2012-12-31 | ランキング・カテゴリー
 今年も今夜で終わりです。
 いろいろ体調管理に気をつけつつも仕事が忙しく、思うように本が読めなくてかなり溜めてしまいました。余裕が無くて、分厚い本、緻密な情景描写や登場人物の心理描写がねちっこいまでに書き込まれた本も読めなくなりました。
 それでも1日1冊ペースは維持してますが、ライトノベル系が増えましたね。

『豚は飛んでもただの豚』 涼木行
 昨年12月に刊行され、手に入れたのは年が変わってからなので、こちらでカウント。
 元不良のボクサー志望の純情高校生と、美人三姉妹が繰り広げる青春ストーリー。
 姉妹の幼なじみのデブ男が出番少ないながらも印象的。タイトルも彼が「飛べねえ豚はただの豚だ」の言葉に発憤して努力したことから。出番が多いと主人公を食うこと確実。 


『俺はまだ恋に落ちていない』 高木幸一
 友人からの紹介で、彼の2人の妹とつきあうことになった高校生の戸惑いと決意の物語。まっとうな青春小説。全4巻。
 『豚は飛んでもただの豚』と同じ方向性の作品。大きな事件はないけれど、登場人物を絞り、人間関係をしっかり語っているから面白い話になってます。これもまた良し。


『魔法科高校の劣等生』 佐島勤
 20世紀末に超能力の存在が社会に認められ、その制御技能として魔法が世の表舞台に登場し、その魔法を効率よく使うために科学技術が使われるようになって100余年。
 魔法科高校に主席合格した妹と劣等生であるはずの兄が(顕してはいけない)頭角を現していく学園活劇。2011年夏スタート。専門用語の説明も多いので、ハードSFは理解できないしする気もないとか、スポーツものはルールがわからないし覚える気もないから読まない……というような人にはお薦めできません。細かい用語もしっかり頭に入るとか、逆にわからないところはとりあえずスルーできると面白いと思います(私は後者)。


『侵略教師星人ユーマ』 エドワード・スミス
 人類と意思疎通する気配の全くない、宇宙人の宇宙船が地球に居座って10年。そんな宇宙人に喧嘩を売る国語教師がやってきた。彼、ユーマは海に鎮座する宇宙船に向かって叫ぶ。「俺が侵略する星に手を出すな」と。
 自称・侵略宇宙人の変人だが教師としては優秀で、生徒や同僚たちからの信頼も厚い男とその美少年な弟を取り巻く人々の物語。
 平凡な日常から始まる、熱血学園青春侵略小説。


『マージナル・オペレーション』 芝村裕吏
 働こうと思ったら、いつの間にか戦場でオペレーターとして年端もいかない少年少女の兵士たちの生殺与奪に責任を持つことになってしまっていたニート青年の物語。
 今年は、交通事故で箱だけの身体になってしまった少女と医師のラブストーリー『キュビズム・ラブ』や電脳空間での祖国防衛戦『この空のまもり』など芝村作品が豊作の年でした。


『憑き物おとします ~死者たちが騒ぐので』 佐々木禎子
 幽霊の存在が普通に認知された社会で、保険会社にむりやり就職させられ、迷惑な幽霊を成仏させる仕事を引き受けるはめになったロック・ミュージシャンと、彼のゴスロリ守護天使、天然な死神たちによる除霊譚。


『銀のプロゲーマー』 岡崎裕信
 賞金付きゲームがあたりまえになった世界で、プロゲーマー養成のエリート校に合格してしまった、マインスイーパーだけが取り柄の高校生の学園バトル小説。
 ゲームを楽しむ高校生の物語は増えてきたけれど、この熱さはその中でも上位クラスだと思いました。


『アルカナオンライン』 猿野十三
 仮想現実体験型のMMORPGの世界に妹ともども取り込まれた青年が、ゲーマー初心者なので開き直り、クエスト攻略を無視してひたすら海で泳いで魚と戦い続けていくうちに、すっかり世の中の流れとズレてしまい……。
 最近目立って多い、ゲームの仮想現実世界から帰還できなくなるケースの物語。主人公のやっていることはズレているんだけれど、単なる悪ふざけとか自暴自棄とかではなく、本人はあくまで真摯で真面目だから面白いんだよね。


『宇宙軍士官学校』 鷹見一幸
 銀河文明から与えられた技術によって世界が統一され、繁栄の時代を迎えた地球。技術供与の見返りに、そろそろ宇宙戦争に人を出してもいいなんじゃないかな?という宇宙人たちのタンスターフルを断れなかった地球人は、あらたに士官学校を設立。そこで教官を勤めるべく送り込まれた候補生たちの物語。


『友達からお願いします。』 清水マリコ
 小学校時代のトラブルから目立たず地味に生きていくことを選択した少年が、生真面目でまっすぐなクラスメイトの美少女と行動をともにすることになり、その自分と正反対の生き方に興味を引かれるのだけれど、その少しズレた行動に翻弄される話。


 2009年に書籍化が始まった『ソードアート・オンライン』のテレビアニメ化、『ゲート』のコミック刊行など、今年は全体的にMMORPGというかバーチャル・オンラインゲームの世界を舞台にしたファンタジー小説が多角展開で隆盛の年。正統派の『ログ・ホライズン』が巻を重ねる一方で、『オーバーロード』や『アルカナオンライン』、『勇者互助組合交流型掲示板』のような変化球もばんばん登場しています。
 シリーズ新作が着々と刊行されて『犬とハサミは使いよう』や『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』も好調。『化物語』もアニメ化が続き、新作『憑物語』が登場しましたが、こちらは『猫物語』『傷物語』までで読むのをやめといた方がすっきりして良かったかもしれないと思っているところ。読みますけどね。

 皆さん、良いお年を。
 そして来年も面白い本に巡り会えますように。
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「マツリカ・マジョルカ」 相沢沙呼

2012-12-31 | 学園小説(ミステリ)
 高校に入っても今ひとつクラスに馴染めなかった柴山が偶然知り合ったのは、学校近くの廃ビルに住み込んでいるという謎の少女マツリカ。
 彼女に弱みを握られ、また不得手な勉強を教えてくれることを交換条件に、使い走りとなった柴山の最初の仕事は、放課後の校舎裏に出没するという原始人の調査だった……。

 学校にも行かないで学校の怪談を調べて回る少女と、彼女の犬になった少年のミステリー。それにカメラ少女が少々。
 前作『午前零時のサンドリヨン』より好きだし面白いと思うけれど、謎は解かれるけれど事件は解決しません。なるたま君が後始末しない「子ひつじは迷わない」、あるいはひかげが動かない「生徒会探偵キリカ」みたいな話です。
 謎解きと事件解決は別物なんですね。そういう比較をする意味でも、この3冊は平行して読みたいですね。

【マツリカ・マジョルカ】【Matsulica Majorca】【相沢沙呼】【moka】【角川書店】【学校の怪談】【原始人】【手すり女】【肝試し】【ゴキブリ男】【文化祭】【メイド喫茶】【卒業式】
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「バッカーノ!1935-B」 成田良悟

2012-12-30 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 禁酒法が終わった後のニューヨークを舞台に、闇カジノで生き残りを図るマフィアやカモッラたちの抗争に錬金術による不老不死者らの陰謀が加わり……という1935のB。
 葡萄酒はあいかわらずで……というか、登場人物のほとんどすべてが今までと同じように馬鹿だったり気が触れていたり人間の心がなかったり悪意に満ちていたり迷い続けていたり愚かなまま、それまですれ違うことはあっても直接的に絡むことのなかった者たちが出会い、悲鳴をあげて逃げ惑ったり殺し合ったり殺されかけたり殺し損なったりする2冊目。何十人ものキャラが入り乱れる馬鹿騒ぎ。顔イラスト入りの相関図を毎回封入してください……。
 前回、「A」というのでA面B面で2冊完結かと思ったらそうではなく、そういえばレコードやLDと違ってCDやDVDにはA面もB面も無いなあと思い出した次第。なにせ、まだ闇カジノへの招待が始まってません。

【バッカーノ!】【1935-B】【Dr.Feelgreed】【成田良悟】【エナミカツミ】【電撃文庫】
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「アレクサンドライト(7)」 成田美名子 

2012-12-29 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「どんなに真剣に考えて出した答でも、やっぱり後悔するぞ」
 人間、先のことはわからないと、アレクサンドロス・セフェリス。

【ALEXANDRITE】【アレクサンドライト】【成田美名子】【花とゆめCOMICS】【空手】【ギリシア】【クーデター】【パリカリ】
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「ぶたぶた図書館」 矢崎在美

2012-12-29 | 本屋・図書館・愛書家
「何もかも解決してしまえば終わるものばかりではないってことですよ」
 山崎ぶたぶたさん

 「ぬいぐるみおとまり会」の実現に奔走する中学生の雪音と司書の寿美子。
プレゼン用に良い写真を撮ってくれるという人に出会ったが、その人はみるからにピンクのぶたのぬいぐるみ、山崎ぶたぶたさんだった……。

 見た目はぬいぐるみのぶただけど、中身は妻子ありの中年男性、山崎ぶたぶたさんを軸に話が進む連作短編集です。
 弟の死を心から悲しめなかった自分、娘をかわいがることのできない自分、なんとなく人とは違う自分、これではいけないと自分でも自覚する部分がありながら、どうにも克服できなかった人々が、ぶたぶたさんとともに「ぬいぐるみおとまり会」の企画にかかわっていくことで、自分を見つめ直して一歩前進するまでの物語。
 「ぬいぐるみの図書館おとまり会」は以前にも聞いたことがあったけれど、調べてみると世界各国、日本でも小さいこどもに図書館に親しんでもらうための企画としておこなわれているようです。さっと検索しただけでも、日本各地のいろんな図書館のレポートが上がっていて、愉しそうだなあとうらやましく思いました。

【ぶたぶた図書館】【矢崎在美】【手塚リサ】【光文社文庫】【こんとあき】【トマシーナ】【ぐりとぐら】【いやいやえん】【月長石】【うろんな客】【謎は謎のまま】
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「アウトブレイク・カンパニー~萌える侵略者5」 榊一郎

2012-12-28 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
 慎一が敵国バハイラム王国に誘拐された。
 しかし、全面戦争の危険があるため帝国はうかつには動けず、自衛隊も干渉できない。というか、むしろ日本国政府としては、言うことは聞かないくせに皇帝陛下の覚えもめでたい慎一は手駒として使いにくく、むしろ彼を排除するためにバハイラムと通じた可能性もないではない。
 かくしてメイド少女ミュセルは、慎一を独力で救出するしかないと腹をくくるのだが……。

 バハイラム王国のいかがわしさがもう少し出てると良かったかな。
 でも、既にうさんくさい国父とかポルポトっぽいとか言われているので、これ以上は無理かもしれないけれど、もう少しなぜここで戦争再開の危険を冒してまで誘拐しなければならなかったのかにまで触れて欲しかった。ここは次巻以後の話になるのかもしれませんが。

【アウトブレイク・カンパニー】【萌える侵略者5】【榊一郎】【ゆーげん】【講談社ラノベ文庫】【「旦那様」救出大作戦】【超獣機神ダンクーガ】【ミニミM249分隊支援火器】【交尾】【文化侵略】【思想誘導宣伝】【フェイドラ】
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「妖怪アパートの幽雅な日常(8)」 香月日輪

2012-12-27 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「自分の悲運や不幸を嘆くばっかりの者のところへは、幸福なんて絶対にやってこない」
 本人が不幸のフィルターでまわりを見てるから世の中が歪んでしまうのだと一色黎明。

 遠回りだけれど、大学へ行ってみたい。
 早く就職したい、一人前になって社会人として独り立ちしたいと思っていた稲葉夕士も、さまざまな経験を通じていつしかそう思うようになっていた。
 時が流れないとわからないこと、別の場所からでないと見えないものがあることに気づいたからだ……。

 夕士が覚悟完了する回。
 人生は長いし、世界は広い。学校の中だけが世界のすべてじゃない。その気になれば自分の周囲にいくらでも不思議なことや愉しいこと見つけられるんだよと教えてくれるシリーズの8冊目。
 ぜひとも中高生のうちに読んで欲しいですね。

【妖怪アパートの幽雅な日常】【香月日輪】【講談社文庫】【進路相談】【遠足】【禁煙】【籠城】【シトロエン】
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「イース トリビュート」 原案:日本ファルコム

2012-12-26 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 アクションRPG『イース』が今年でシリーズ開幕25周年を迎えるのを記念して刊行された、5人の作家によるアンソロジー集。

「人間は--俺も含めて、善意で行動しているときにこそ熟慮を欠く」
 アドル・クリスティンの足跡を追い続けた男の述懐。

 9世紀の中頃に活躍したとされる赤毛の「冒険家」、アドル・クリスティンはその覚え書きと記憶をもとに100余冊の冒険日誌を残したという。しかし、それはさまざまな英雄歌や武勲詩としてアレンジされたり民間伝承となるなど西洋文学における一大ジャンルとなったが、それゆえにオリジナルの底本、原本の内容がいかなるものであったかは、今まさに研究が進められているところである。
 本書では、アドル・クリスティンの生涯を歴史の虚構と史実のはざまから汲み出そうとする試みによる、5つの文献が紹介される……。

 本家のゲームの方はプレイできる環境はあったものの、アクションが苦手な夫婦であったため、まともにプレイしたことはないのです。なので、思い入れはまったくないのだけれど、1冊の短編集として面白く読めました。
 もちろんゲームのお約束とか内容を前提にした話をされると「はあ……」となってしまいますが、神出鬼没の巻き込まれヒロイン、エレナ・ストダートの正体を語った断章は納得しながら読んでしまいました。こういう「なぜ、ここにいるかわからない」人って、他のゲームでもちらほらいますものね。これに匹敵する解説は『アラビアの夜の種族』のあれくらい。
 自分がいちばん面白かったのは、アドル63歳の物語。遭難して装備0からというお約束(らしい)から始まり、最後の最後までパターンで攻めつつも、食えない老冒険者の退場シーンの余韻が良い感じに残りました。

【イース トリビュート】【日本ファルコム】【田上俊介】【橘ぱん】【森瀬繚】【海法紀光】【小太刀右京】【芝村裕吏】【星海社FICTIONS】【新たなるアドルの冒険】【じっとしていれば体力は回復するもの】【死者の国】
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「友達からお願いします。」 清水マリコ

2012-12-25 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 清水マリコは作家買いしているのだけれど、最近イラストレイターがいろいろ替わっているので、清水マリコ=toi8のイラストという刷り込みができてしまっている自分は危うく見逃すところでした。というより、前作『ハートレスハートフル』を既に買い逃しているよ!

 目立たず地味に生きることを選んだ少年が、美人で真面目でまっすぐだけれど話してみると実はド天然な少女と知り合ったことから、平凡な毎日が少しずつ変わっていく

 ボーイ・ミーツ・ガールの高校生活。良いこともあれば悪いこともあるし、謎は謎のままだったりするけれど、それが結果的に2人の世界を広げていくことになります。
 比嘉智康が『神明解ろーどぐらす』『覚えてないけど、キミが好き』で描くところの、変に古風で堅苦しくて真面目でズレていて一生懸命なヒロインが好きなので、この田中木蓮というキャラもツボ。そう思っていたら、あとがきに名前が出てきて「あれ?」と。しんくろにてぃ。
 今までの清水マリコの作品よりも、少し明るくて、不条理な部分・人間の心の闇に関する部分が減り、ヒロインの直球ぶりからか、いつも以上に面白く、話がぽんぽん進んで快感。今までのヒロインがねじ曲がりすぎていただけかな。
 イラストが慣れ親しんだtoi8さんでないのだけは残念。

【友達からお願いします。】【清水マリコ】【熊虎たつみ】【MF文庫J】【植物系男子とまっすぐ女子の青春ラブ(?)コメディ】【ぼくの地球を守って】【モノレール】【体育祭】【サムライ言葉】
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「サクソンの司教冠」 ピーター・トレメイン

2012-12-24 | ミステリー・推理小説
 才色兼備の修道女を名探偵とした、歴史ミステリの長編2作目。

「敵を見れば、当人がどういう人間か、わかります。私は、むしろ、どういう友を持っているかではなく、どういう敵を持っているかで、私という人間を評価してもらいたいと思いますわ」264
 アイルランド王国キルデアの修道女、フィデルマの言葉

 664年夏のローマ。
 フィデルマはアード・マハの大司教から教皇宛の信書を携えて、この街を訪れていた。
 歴史ある大都市にすら虚飾と欺瞞を感じるだけのフィデルマであったが、ここまでの旅に同行していた大司教指名者が殺されてしまう……。

 ミステリとしては並。明白と思われる結論に飛びつかず、順番に現場を調べて証人と話をしていくうちに1つずつ新たな証拠証言が発見されていき、それを順番に積み上げていくことで真相に辿り着くタイプ。歴史小説として読むのが良いかな。

【サクソンの司教冠】【ピーター・トレメイン】【創元推理文庫】【アレクサンドリア図書館】【連続殺人】【ムスリム】
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「彼女がフラグをおられたら(4)」 竹井10日

2012-12-23 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 臨海林間学校も終わり、いよいよ夏休み本番。
 しかし、帰省する場所がない旗立颯太をクエスト寮メンバーが過保護なまでに心配する。結局、女性陣の実家を転々とすることになり、ついには飛行機で一路、菜波の国・ブレードフィールド公国へ……。

 重い女こと第14公女も登場し、颯太の宿命的な出会いとか、暗殺者が跋扈する公国内部に蠢く謀略とか、ストーリーも本格的に動き出しました。しかし、自家用遊園地とか自家用動物園とか花火大会とか露天風呂でドッキリとかのバカ話に、会話だけでなく地の文でも際限なく繰り広げられるボケとツッコミの前には影が薄いような気がします。

【彼女がフラグをおられたら】【ここは俺に任せて、お前は夏休みを満喫しろ】【竹井10日】【CUTEG】【講談社ラノベ文庫】【イチャコメ】【ラッキースケベフラグ】【東京メード学園】【重い女】【暗殺者】【囚人】【颯太くんとの夏休み】
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「竜とイルカたち~パーンの竜騎士9」 アン・マキャフリイ

2012-12-22 | その他SF(スコシフシギとかも)
 南ノ大陸への入植は着々と進んでいる。しかし、その陰でサザン城砦のトリク太守は、おのれの勢力をさらに拡大すべく、ひそかに策謀している。
 その頃、パラダイス・リバー城砦の太守ジェイジの息子リーディスと漁夫ノ頭アレミは、突然の暴風に巻き込まれて遭難しかけたところを舟魚の群に助けられていた。
 それが長い間交流を絶やしていた、知性をもつイルカたちと人間の再会であった……。

 辺境の星パーンで孤立して機械文明の大半を失い、遺伝子改良した竜をパートナーとして生き残りを図っていた人々の物語の9冊目で、シリーズ全体の流れ的には枝編というか『竜の挑戦』の裏話で変換期のはじまり。物語の裏で赤ノ星攻略とかレギュラー・キャラクターの退場とか大事件が相次いで起きていますが、この話の本題はあくまでイルカたちとの交流の再開とそれによる社会の変化であり、1人の少年の自立の物語なのです。
 長く「竪琴師ノ工舎」三部作ばかり読み返していると、メノリがいつの間にか竪琴師ノ長になっていたりして思わずにやにや。そういや、そういうことになっていたっけ。
 人間たちから忘れ去られていても、じっと待ち続けていたイルカたちは、けなげというより脳天気だと思います。

【竜とイルカたち】【パーンの竜騎士】【竪琴師ノ工舎】【アン・マキャフリイ】【マキャフリー】【ハヤカワ文庫SF】【約束】【言語の純粋性】【アクアラング】【海水浴療法】【ソナー】【無線通信】
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「復興の書店」 稲泉連

2012-12-21 | 本屋・図書館・愛書家
「自分たちにはこの社会で果たすべき役割がある」

 大震災以前から、街の本屋は郊外型の大規模店やネット通販によって駆逐されつつあった。書店はあいついで閉店していた。
 そして大震災。岩手・宮城・福島の3県で被災した書店は、全体の9割にあたる391店。
 だが、仙台の一部の書店は3月22日には営業を再開していた。流通は止まったままで商品は震災以前の在庫に過ぎない。それでも、開店前から長蛇の列が連なり、あらゆるジャンルの本が買い求められていた。
 本はただの「情報」ではない。人々にとって「生活必需品」だったのだ。
 多くの書店が店舗や従業員の被害を乗り越え、物流が止まって届かない新刊の確保に奔走しながら復興を模索していた……。

 書店やそれを支援する取次の姿を中心に、震災とそれ以後の書店の姿を追い続けた週刊誌のルポルタージュをまとめ、追録したもの。
 人はパンのみに……という言葉を実感する1冊。人は誰でも自分にできることで頑張るしかないのです。

【復興の書店】【稲泉連】【小学館】【東日本大震災】【中古車情報誌】【絵本】【パズル雑誌】【少年ジャンプ】
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「お釈迦様もみてる/潔き一票」 今野緒雪 08

2012-12-20 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 花寺学院高校では、柏木優が生徒会長を引退する日が近づき、選挙管理委員が招集された。
 次の生徒会にも自分たちの居場所をどうにか確保したい祐麒たちは、現生徒会役員の2年生の誰が会長に立候補するのか探りを入れるが、誰もこのまま生徒会に留まるつもりがなさそうで……。

 もうすっかり年1回、冬に刊行されるのが恒例になってしまっていますが、サブタイトルと表紙イラストままの話で、結末は既に本編で語られているとおり。内容はしっかり明治基準で硬派なものに。おいおい。
 みんなそれぞれに考え、自分の居場所というか存在価値を見いだそうとして足掻くところに好感がもてますが、登場人物もストーリーも本編で語られた範囲をほとんど逸脱しないところが物足りなくもあり。

【お釈迦様もみてる】【潔き一票】【今野緒雪】【コバルト文庫】【生徒会選挙】【放送部】
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「影の王国(上)(下)」 ロイス・マクマスター・ビジョルド

2012-12-19 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 『チャリオンの影』『影の棲む城』に続く、五神教シリーズの3冊目ということだけれど、登場人物が共通していた前2作に対して、こちらは舞台も登場人物も共通点が無く、3冊目って前の2冊は何だった?と思わず調べてしまいました。

 そうだ、そうだ。「ビジョルドの異世界ファンタジー三部作!」とかいって始まったんだ。
 でも、この3冊目は今までの総決算というわけでもなければ続きでもないし、あおり文句に完結とも書かずに「第三弾」となっているから、もしかしたら、「もうちっとだけ続くんじゃ」というやつかも。

 幼少時に狼の精霊に憑かれて追放され、今は戦士となっているイングレイに与えられた任務は、殺害された王子の遺体引き取りとその殺害犯を都まで連行すること。
 だが、殺人者だという侍女イジャダを見たイングレイは、彼女が豹の精霊を宿していることに気づく。王子は禁断の魔術に手を染め、その生け贄にイジャダを使おうとしていたらしいのだが……。

「人は生まれ、死ぬ。わたしはとうの昔に、時がその流れとともに運び去るだろう問題について無駄な努力をはらうことをやめたのだよ」
 選帝卿ウェンセル・キン・ホースリヴァの言葉。

 誰が味方か最後まで分からないスリリングな展開と、女性陣のひたむきなタフさが印象的な話でした。表紙イラストはオーランド・ブルームを彷彿とさせるね。

【影の王国】【五神教シリーズ】【ロイス・マクマスター・ビジョルド】【浅田隆】【創元推理文庫】【精霊】【不死】【転生による魂の永続】【エマノン】【幻視】
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