
著名な作家にして俳優の草野辰彦の言葉。
2011年10月に創刊された三笠書房のf-Clan文庫の第一陣。
並ぶ表紙から女性向けのレーベルかと思っていましたが、特にそんなことはないんですね。全部読まないと断言できないし、レーベルの傾向なんてどんどん変わっていくものですけれど。
作家の水守響呼は自分の左目に、この世に存在しないはずのモノが映ったり言葉が聞こえてくるのを信じない。そんなものは幻覚、幻聴だ。もしそれを信じるなら、自分が他人を幸福にする祝福と、愛する人たちを不幸にする呪いの両方を受け継いだ娘の末裔だという、母親が語って聞かせてくれたおとぎ話まで信用しなければいけなくなる。
そんな彼女が路頭に迷った。住んでいたアパートが突然崩壊したのだ。
雨の中で途方に暮れる彼女を、編集者の錦織寅彦は自分の父親が経営しているというホテルへと誘った。古い建物を復元している途中だというそのホテルは、今はアパートとして利用されているのだという……。
地下に天然温泉があって、人も幽霊が入り混じっているアパートというと、なんか妖怪アパートみたいですが、主人公が多感な少年ではなく若い女性というだけで、なんか雰囲気が変わります。
ひょんなことから、すごく条件が良くて、不思議な人たちと出会えてしまうアパートの生活に馴染んでしまい、その過程で今まで否定的だった自分の生き方や家族との対峙に前向きになるまでの話です。肝心の祝福と呪いが本当にあるのか、あるとしたらそれがどう周囲に影響するのかされるのか、そのあたりはまだ十分に語られてはいませんが、すべて物事には裏表があり、考えようで幾らでも変わるという寅彦のポジティブ発言でとりあえず善しとしましょう。
もちろん、続きが出るなら読みますし、そのときは響呼とひなぎくの物語をもう少し読みたいなと思います。
【竜宮ホテル】【迷い猫】【村山早紀】【遠田志帆】【f-Clan文庫】【アイルランド】【くだぎつね】【妖精の輪】【タイムマシン】【禍福はあざなえる縄のごとし】