付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

私的年間ベスト2009

2009-12-31 | その他フィクション
 まあ、大晦日でもありますし、今年刊行された本の中で面白かったものを選んでみましょう。シリーズものの場合は2009年中に新刊が出ているものを対象として、とりあえず12作品です。以下順不同。

「ガンパレード・マーチ 九州奪還」 榊涼介
 ガンパレも「九州奪還」編は今年完結。ゲームの枠を超えた激戦が繰り広げられました。キャラが活きていて、戦術から政略までまんべんなく押さえていてと文句がつけられません。

「鬼切り夜鳥子」 桝田省治
 女子高生陰陽師、鬼切り夜鳥子も今年で完結。駒子と愉快な仲間たちの冒険は好きなシリーズなだけに、短編集の形でも良いので後日談が出ることを期待しています。

「“文学少女”見習いの、初戀。」 野村美月
 これは高校生の長男から勧められたシリーズ。読書ガイド+日常系ミステリの文学少女シリーズも本編は完結し、この後日談と短編集がぽつぽつ出ています。

「サマーウォーズ」 岩井恭平
 映画のノベライズだけれど、原作に寄りかからずに小説として面白いです。小説は映像じゃないということを熟知して、斬り捨てるところは捨て、加えるところは加えて完成度を上げつつ、あくまでもサマーウォーズなのです。

「ベン・トー4~花火ちらし寿司305円」 アサウラ
 なんで安売り弁当の取り合いを、ここまで熱く語らねばならないのでしょうか!島本和彦がコミック化してもおかしくない、馬鹿馬鹿しくも熱い狼たちの戦いを描いた熱血青春活劇。

「紫色のクオリア」 うえお久光
 ラノベの文法で書かれた、認識と時間移動と平行宇宙を扱ったハードSF。今年のベストSFを選ぶなら、これをベスト10にいれることを検討しないのは見識が足りないというものです。

「宇宙をかける少女」 瀬尾つかさ
 人工知能を搭載した移動型スペースコロニーのどつき合いなのに、古き良き「センス・オブ・ワンダー」を堪能できる正統派スペオペ。TVアニメのノベライズだけれど、本編とはかなり違います。

「マジカルパンプキン44キロ」 木村航
 別作品の外伝だけれど単独の作品として愉しめる、悪魔も勧めるとっても健康的なダイエット・ファンタジー。木村航の陽の面が凝縮した1冊。

「さよならの次にくる」 似鳥鶏
 学校の内外で起きる不可解な事件に挑む連作短編集で、日常系学園ミステリの佳作。構成とキャラ造型が巧いと思います。大きな謎と小さな謎、正面から挑む謎と伏線としてこっそり提示された謎のバランスも良いですね。

「15×24」 新城カズマ
 15人の少年少女の群像劇で海外ドラマ『24』みたいな話をやろうとした意欲作。最後まで予測できないハラハラ展開。

「ほうかごのロケッティア」 大樹連司
 ロケット打ち上げ小説。これで「あれは良い思い出だったよな」で終わると普通の小説。つかーーんと突き抜けたから面白い。

「阪急電車」 有川浩
 これもグランドホテル形式というんでしょうか。電車を軸に人間模様を描いた連作短編集。元気の出る良い話。自衛官が出てこない話だなあと思って読んでいたら、ミリオタは出てくるのでちょっと笑いました。

 次点は「ラ・のべつまくなし」「翼の帰る処」「武士道シックスティーン」といったところかな。

 こうやってみると国産ライトノベルが目立ちますね……。
 ハードカバーは重くて持ち歩きしにくいし、分厚い本はじっくり読んでいる暇がないのです。最近紹介される海外SFあたりに顕著な傾向ですが、とにかく分厚い上にすぐシリーズ化します。そういうのはキライなんですよね。そんなに枚数を費やさないと語れない話なのかと。いくら活字のポイント数が大きくなって行間が開いたとしても、最近の本って軒並み70年代80年代の倍の厚みじゃないですか。じゃあ、中身が倍になっているかといえば、そうとも言い切れない気がします。
 そういうわけで、ついつい奔放なアイデアがコンパクトにまとめられていて、バリエーション豊かなライトノベル中心になるのも自然な流れです。アガサ・クリスティだって、コナン・ドイルだって、コードウェイナー・スミスだって、A・B・チャンドラーだって、ハリイ・ハリスンだって、キース・ローマーだって、ジョン・ウィンダムだって、今のラノベ並みの枚数で面白かったじゃないですか。キャンベルの「彷徨える艦隊」やウェーバーの「反逆者の月」も面白かったけれど分厚くて読むのに気合いが必要です。同じ面白さならコンパクト優先というのが今年の私です。
 さて、来年はどんな作品に巡り会えるでしょうか?

 皆さま、良いお年をお迎え下さい。
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「青空の卵」 坂木司

2009-12-31 | ミステリー・推理小説
「どこか俺たちが知らない山の中で木が倒れた。誰も聞かなかったその音は果たして無かったのか? 違うよな。
「痛みだって同じなんだ。誰かの痛みと自分の痛みは違うし、どのくらい痛いかなんてわかりようがない。でも、痛みがあることは確かだ。そして痛みが存在する以上、そこには原因がある。俺はそれを無視できない気がするのさ」

 見えないからといってそれを無いものとは扱えないという鳥井真一。

 生保会社の外交員である坂木司には、ひきこもりの友人がいる。コンピュータ・プログラマーの鳥井真一という男だ。
 ひきこもりといっても近くに買い物に出るくらいはできるけれど、坂木が連れ出さなくてはすべて通信販売で済ませかねない鳥井だが、その料理の腕はそこらの料理屋に負けないくらいのレベルだ。そして、鳥井にはもう1つ本職に負けないくらいの才能があった。
 わずかな手がかりから事件の真相を見抜く観察眼と推理力だった……。

「ブランドは、他人のものさしだ」
 他人の評価を気にするのは、自分に自信のないやつだと鳥井真一。

 「日常の謎」系な連作短編集ですが、それぞれの事件の核心となるのは、人と人とのつながりを求めながらも歩み寄れない人間関係の歪さです。そして、そのもつれた糸を解く鳥井と彼に謎を持ち込む坂木の関係こそ、純粋でありながらも歪そのものです。坂木を通じてでしか世間と関われなくなってしまった鳥井と、鳥井が自分に頼り切っていることで満足感を覚える自分を嫌悪するしかない坂木。一見さわやかな友情物語の中に、実は腐女子が喜びそうな屈折した感情が渦巻いているのです。
 ただ、それが本当に殷々鬱々とした雰囲気にならないのは、坂木という人間が過去の反省を元に、せめて自分の周りの人、自分が見かけた人だけでも困っていると思ったら助けてあげよう。それで迷惑だと怒られても、助けが必要な人を無視してしまうよりはマシだという考えが根本にあるからです。
 あとがきに、この続巻に出てくるセリフが転載されていましたが、それも読んでいると「なんか芝村っぽいなあ」と思いました。その言葉に傲慢さを軽く振りかけると、あら、芝村舞の名台詞にもなってしまいそうです。世界を救うのも、小さなことの積み重ねなんですね。

 「夏の終わりの三重奏」はストーカー被害の話。
 「秋の足音」は視覚障害者をつけ回す謎の人物の話。
 「冬の贈りもの」は歌舞伎役者に届けられる奇妙な差入の謎。
 「春の子供」は素性不明の子供を拾ってしまう話。
 そして「初夏のひよこ」は前の4編の締めくくりとささやかな推理について。

 結婚した男女の正月の過ごし方については同感。わが家では大晦日から正月朝までは男の実家で過ごし、昼に車を走らせて正月夜から翌朝までを女の実家で過ごします。これが政治ってもんです。

【青空の卵】【坂木司】【創元推理文庫】【ひきこもり】【歌舞伎】【黒豆】【雑煮】【ストーカー】【ルチャリブレ】【カレーライス】【ミントティー】【保険外交】
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「ほうかごのロケッティア」 大樹連司

2009-12-31 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
「ここでやめたらオレたちゃなんだ、ただの馬鹿じゃないか」
 王立宇宙軍シロツグ・ラーダット大佐の言葉……それ、作品違うって。

 表紙イラストは残念。下手な人ではないけれど、どうも何かが気にいらなくて、ずーっとずーっと理由を考えていて(というのは内容の感想は「面白い!」のひとことで決まりだったから)、ハタと気がついたのは「主人公2人が空を見ていない」ということ。
 いつのどんなシーンなのか?なんてのはどうでもいい。ただ、あそこまで頑張って紆余曲折して人を殺しかけたり死にかけたり人生を棒に振る覚悟までして目差したロケットの打ち上げを、たとえ試作品の何本めかにしても最後まで見送らずに振り向かせたらいかんだろ?……という感想をいだいてしまうくらい熱い思いが詰め込まれた1冊。

 中学時代はイジメを受けながら電波の飛びまくったハガキをラジオ番組に投稿し続けていた褐葉貴人も、遙か太平洋上の孤島で高校デビュー。大財閥・那須霞グループ創始者の孫娘である翠の手下となり、クラスの安定と進学率の向上をめざして陰からクラスを動かしている。
 ところが、時季外れの転校生としてやって来た美少女・久遠かぐやが、何故か褐葉の過去を知っていたことから、衛星軌道に届くロケットを開発しなければいけなくなり……。

 とにかく冒頭で予想した以上のテンポで話が進み、期待した以上に話が二転三転し、それでも登場人物にはきっちり存在する意味が与えられ、迷走しながらもお約束の結末に持っていき、そこで「良い思い出」で終わらせたら単なる青春小説、なにもかもあからさまに説明してしまったら「それなんていうケータイ捜査官?」という安易な展開になるところをあえて踏みとどまり、終わった終わったでエピローグを向かえたところでさらにくるくる1回転半くらいするストーリー運び。『魔竜院光牙最後の闘い』かと思えばそうならず、ならば『ロケット・ボーイズ』かと思えば『なつのロケット』(あさりよしとお)のテイストも漂いだし……。

「なんでもかんでも自分のせいだ、なんて思いたがるのは、ただの自己愛よ!」
 久遠かぐやの言葉。

 でも、確かに「雑用係」というと単なる下働きだけれど、その役割の本質は「総務」であり、それをテーマに合わせて言い換えると「プロジェクト・マネージャー」になるんだよなと『星虫年代記』を思い起こしながら頷きました。読んでいて良いように転がされましたが、今年を締めくくるのにふさわしい作品でした。
 あの最後の6月からの50頁をへたにいじらず、そのままの勢いで映像化してくれるなら、あのヒロインかぐやのオヤジ感性の口の悪いセリフをそのまま喋ってくれるなら、邦画だろうとOVAだろうと観てみたいよ。

【ほうかごのロケッティア】【大樹連司】【しずまよしのり】【ミッション・スペシャリスト】【南の島】【スクール・カーストごっこ】【ケータイ】【ロケット部】【オタク】【高校デビュー】【王立宇宙軍】【龍勢】【プラネテス】【ブラジル国債】【ネネカ隊】【ツンデレ】【太平洋戦争】【ロケットとはシグルイなり】【トトロ】【黒人霊歌】
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「歯と爪」 B・S・バリンジャー

2009-12-30 | ミステリー・推理小説
 奇術師リュウ・マウンテンはフーディニのような名人ですらやらなかった一大奇術をやってのけた。
 まず第一に、ある殺人者に対して復讐をなし遂げた。第二に、自分も殺人者となった。そして第三に、自分自身も謀略工作の中で殺されたのである……。

 305ページの本の233ページ以降が袋とじになっていて、ここで読了できたら返金しますという趣向が凝らされてました。

『意外な結末が待っていますが、あなたはここで、おやめになることができますか? もしやめられたら代金をお返しいたします』

 発売当時の値段で290円。それくらいだったらと、つい袋とじを開けてしまいますね。女は福袋に、男は袋とじに弱いのです……。

【歯と爪】【B・S・バリンジャー】【返金保証】【贋造紙幣】
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「マリア様がみてる/私の巣(マイネスト)」 今野緒雪 35

2009-12-30 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「ヒナはヒナらしく、エサちょうだいって口をパクパク開けてればいいってこと」
 子どもは子どもで良いんだよと環さま。

 やたら生活臭漂う1年生の朝倉百さんと、漆黒の巻き毛が引き立つ2年生の筒井環さんという2人の少女の1年の物語を語った連作短編集。
いつものレギュラーメンバーがほとんど出てこない代わりに、これだけ読んでも、ここしばらく読んでいなくてもしっかり愉しめる1冊。いつもの面々以外を追ってもしっかり愉しめるのですね。でも、ときどき出てくる懐かしい姿には口元がゆるみますが。
 とにかく、おにぎりと漬け物がやたらと美味しそうな1冊で、これを読むと炊きたてご飯でおにぎりを作りたくなります。でも太鼓型は無理だなあ。我が家では普通に三角。具は入れるより、単純に米と塩と海苔の味が愉しめる塩むすびが好まれますが。

【マリア様がみてる】【私の巣(マイネスト)】【今野緒雪】【再婚】【ぬか漬け】【おにぎり】【修学旅行】【生徒会選挙】【姉妹制度】
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「そして誰もいなくなった」 アガサ・クリスティー

2009-12-29 | ミステリー・推理小説
 孤島に集められた10人の男女が、マザーグースの詩をなぞるように1人ずつ殺されていく。この中に犯人がいる!?
 疑心暗鬼が高まる中、ついに誰もいなくなったのだが……。

 アガサ・クリスティーの代表作『TEN LITTLE NIGGERS』が刊行されたのは第二次大戦が勃発した1939年。翌年にアメリカ版が出たときに『TEN LITTLE INDIANS』に改題されることとなります。戦争によって国内労働力が不足し、女性や黒人の労働力があてにされるようになったため、差別表現ととられることに過敏になっていたようです。この場合の『INDIANS』はインド人ではなくネイティブアメリカンですが、こういう形で言い換えられるところに当時のヒエラルキーが感じられますね。

【そして誰もいなくなった】【アガサ・クリスティー】【童謡殺人】
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「オペレーション・アーク1」 デイヴィッド・ウェーバー

2009-12-29 | ミリタリーSF・未来戦記
 帯に「超弩級戦争SF巨編」と書いてあるのを見て「超弩級」と「巨編」で意味がかぶってねえ?と思ったり、そもそもセーフホールド戦史とあるけど戦争起きてないじゃんと思って「そういや冒頭に壮絶な宇宙戦争があったなあ。負け戦だったし、あそこセーフホールドじゃないけど」と突っ込んでみたり。表紙イラストも大好きなウスダヒロのイラストですが、今回は誰がこのレイアウトを指示したんだろう?という感じで、どうせなら宇宙艦の本人とPICAの背中合わせにでもすれば良かったのに……。
 最近のハヤカワはなんでもかんでも「ミリタリーSF」と言いたがりです。わたしの文句は言いがかりみたいなもんですが。

 異星文明から殲滅戦を仕掛けられ、滅亡の危機に瀕した地球文明は、最後の植民計画を発動。そこでは敵に察知されないため、高度な文明を放棄することとされていた。
 しかし、計画中枢メンバーが暴走し、過去の記録をすべて抹消した上で、技術発展を全否定した宗教を擦り込んだ世界として植民地を構築してしまう。この歪な構造を正すべくPICA(全人格統合型サイバネティック擬体)として覚醒させられたニミュエ・アルバン准佐は……。

 偽りの歴史を植えつけられ、およそ9世紀の間、中世的な世界観のもとに生きてきた人々の間に送り込まれた“不死身の忠告者”が、国家間紛争に飛び込んでいく話です。しかし、この状況からのスタートで、果たして異星人ヶババの再登場があるのか、どこに落ちつくか見えません。まさか、この中世社会が健全に発展するようになりました、めでたしめでたしでもなかろうし、狂信者の天罰装置も生きているし、いったいどこへ向かうのでしょうか?
 ペリー・ローダンっぽく始まった『反逆者の月』が二転三転して2巻ではレンズマンっぽくなり、最終巻ではまさしくこの作品と同じく「神様みたいな知識を持つ文明人が中世世界に助言者として降臨」というのをやっているので、今度はどう転がしてくれるのか期待しているのです。

【オペレーション・アーク】【セーフホールド戦史】【デイヴィッド・ウェーバー】【ウスダヒロ】【義体】【植民惑星】
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「逆撃の巨竜」 内田弘樹

2009-12-28 | 架空戦記・仮想戦史
 インフルエンザにやられてしまったらしく、しばらく死んでました。熱で体がだるくて本を読む気力もありません。ただただ寝続け、ヘンな寝方で筋肉痛になり、ただでさえ忙しい年末進行が大混乱です。

 鹵獲した米最強新鋭戦艦を大改造、13番目の巨竜、戦艦「尾張」が誕生。
 米同型戦艦を相手に史上最大の夜戦に挑む!

 表紙裏表共に文字がびっしり。まるで週刊誌のようですが、裏表紙には大きくオチまで書かれていて大丈夫なのか、これ!?……と思ったことは秘密でも何でもありません。まあ、こういうジャンルは大筋が解っている方が読者も買いやすいのでしょうか?
 病床でも読めたし、面白かった。意外と活躍しているのは三式戦車。主役であるサウスダコタ級以上に出番をもらっている気がしないでもありません。

【逆撃の巨竜】【最強戦艦決戦】【ブーゲンビル1944】【内田弘樹】【尾張】【三式中戦車】【東京ローズ】
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「知多半島殺人事件」 西村京太郎

2009-12-28 | ミステリー・推理小説
 三重県桑名市長島町にある長島温泉で発見された他殺死体は、連続殺人事件の始まりに過ぎなかった……。

 昔好きだった西村京太郎の十津川警部ものです。いつ物語が知多半島に来るかと思いきや、結局、何も起こらず……。おれが怒るよ?
 何も考えてないタイトルですね。なら「ギンヌンガガップ殺人事件」でも良かったと思う……。

【知多半島殺人事件】【西村京太郎】【十津川警部】【連続殺人】【長島温泉】
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「新任少尉、出撃!」 マイク・シェパード

2009-12-28 | ミリタリーSF・未来戦記
「女の子。銃を持ってる。なるべくデカい銃を」
 著者はカバーイラストの内容についてこう指示するらしい……。

 ロングナイフといえば辺境星域では名門の一族であり、故郷のウォードヘブンでは歴代首相を務め、祖父は財界の支配者という一族。しかし、その令嬢として生まれたクリスは幼少時の誘拐事件の影響で社交界だの政略結婚だのには興味が持てず、母親の反対を振り切って海軍へと入隊してしまう。
 そして配属されたカミカゼ級戦闘宇宙艦<タイフーン>での初めての任務は、誘拐された地元有力者の娘の救出。しかし、待ちかまえていたのはまだ軍にも行き渡っていない最新装備で武装した集団だった……。

 ここ最近のハヤカワSFはミリタリーSFか名作の復刻ばかりが目立ちます。手に入りづらかった名作が新装で手にはいるというのは嬉しいですが、新作はどいつもこいつも分厚くてかないません。
 この話も高名すぎる家名にうんざりな若き女性がでかい銃を持って戦うというものです。いろいろ陰謀やら戦闘やらあって面白い話ですが、別に舞台はナポレオン戦争でもスターリングラードでも良い気がします。ベトナムでもアフガニスタンでも通用する、スペースオペラ的な話ですね。70年代80年代はこうした作品の合間にハリイ・ハリスンやキース・ローマーみたいな(SF的なアイデアを軽快なアクションでまとめた)話が挟まってアクセントになっていましたが、今はそういった役割はライトノベルのレーベルに求めるのがベストでしょう。(2009/12/14)

「やはり最後は自分の判断だ。両親からの贈り物は全部がガラクタではないんだから」
「でも大事なものとガラクタを区別するのは一生かかる仕事よ」

 ヘンリー・スマイズ-ピーターウォルド十三世とクリス・ロングナイフの言葉。

 さて、ミリタリーSFの重鎮パーネルが書いて創元SFから出ていた《ファルケンバーグ大佐》サーガは途中で翻訳が止まってしまいましたが、大佐が美少女なら良かったのでしょうか? これも《ファルケンバーグ大佐》的な世界。数十年前に異星人との戦いがあり膨張が止まった人類世界では、複数勢力に分裂の危機にあっり、そんな時代のまっただ中に任官した新任少尉がさまざまな勢力の思惑に翻弄されながら、目の前の任務をこなしつつ自分が何のために戦うのか見出していくという話。話のクライマックスはあそこではあれでもなく、「連隊付き最先任曹長の言葉」が語られるシーンにあった気がします。《ファルケンバーグ大佐》でも語られた構図の事件もあれば艦隊戦もあり、やはり構成は帆船小説。
 最初は主人公が海兵隊を指揮したり艦を指揮したりという展開に何となく違和感があったのだけれど、よく考えてみたら海軍と海兵隊が別組織になっている時代の話に慣れすぎていただけでした。

 いろいろ波瀾万丈で面白かったです。エナミカツミのイラストに惹かれて手にとって正解。
 単にキャラが巧い人、カラーイラストが上手い人は多いけれど、エナミカツミのイラストは人物がちゃんと地に足が付いていて、単にキャラクターのポーズ絵を描いていても「そこにいるけれど次の瞬間には別の場所に向かって動き出す」みたいな動きが内包されているんです。(2009/12/28)

【新任少尉、出撃!】【海軍士官クリス・ロングナイフ】【マイク・シェパード】【エナミカツミ】【地雷原】【誘拐】【バグパイプ】【流行病】【飢饉】【基金】
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「鋼の錬金術師 (24)」 荒川弘

2009-12-28 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「これからこの世を背負っていく若者に、今この世を背負っている大人の、我らの生き様を見せんでなんとする!」
 オリヴィエ・ミラ・アームストロング少将の言葉。

【鋼の錬金術師】【荒川弘】【フラスコの中の小人】【中央司令部攻防戦】
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「“文学少女”見習いの傷心。~DVD付特装版」 野村美月

2009-12-27 | 本屋・図書館・愛書家
 インフルエンザでへろへろになっているところにフラッとメール便にて到着。何かと思えば、もう随分前に予約していたっけ。
 限定DVDは短編「“文学少女”今日のおやつ~はつ恋~」と劇場版予告編。あれこれ感想はさておいて、遠子先輩が本を食べる描写は結局“味皇さま”と同じになるんですね。そうかー。ライバル作品は「ミスター味っ子」か……。
 本編の方は、日坂さんには自分が普通でないという自覚が足りないという意見には同感です。

「怪物なんて、いない。人が怪物になるんじゃないか」
 あたりまえの人間が、ふいに得体の知れないものになって理解を超えたことをするから怖いのだと井上心葉。シリーズを総括する一言でした。(2009/12/27)

【“文学少女”見習いの傷心。】【野村美月】【竹岡美穂】【みずうみ】【フランケンシュタイン】【夜長姫と耳男】
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「マリア様がみてる/キラキラまわる」 今野緒雪 30

2009-12-27 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 イベントは色々あったわけだけれど、ひとことで言ってしまうと「蔦子さんが毛布を手放す」話なんでしょう。

 中途半端に終わってしまった祥子と祐巳の遊園地デートのリベンジとばかり、東京近郊の某巨大有名遊園地に集合する山百合会とそのお友だちの少女たち。
 ところがどういうわけか、みんな遅刻してくるし、誰も彼もがなにやら考え込んで浮かない顔。すれ違い有り行き違い有りの遊園地デートは無事に終了するのでしょうか?

 誰でもちょっとしたことで不機嫌になったり落ち込んだりするけれど、またちょっとしたきっかけで気分が良くなり明るくなれるわけで、そのきっかけをくれるのが「ともだち」というやつなんでしょう。

【マリア様がみてる】【キラキラまわる】 【今野緒雪】【羊羹】【ジェットコースター】【花火】【ツンデレ】【リベンジ】【ライナスの毛布】
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「ケルベロス 壱」 古橋秀之

2009-12-27 | 時代・歴史・武侠小説
「めでたいぞ、めでたいぞ! 今日はめでたい日だ!」

 天下を取ると豪語しながら逃げ出した男がいた。どこにもない鐘を突き続ける男がいた。亡国の皇姫を自称する餓鬼がいた。
 この3人の半端者が、どこの国にも属さない街で出会ったとき、“怪物を殺す怪物”が産声をあげた……。

 古橋秀之と秋山瑞人が中華風ファンタジーでシェアードワールドをやろうといって始めたのが「龍盤七朝」。秋山瑞人の「DRAGON BUSTER01」が第1弾として登場して1年半。やっとこさ第2弾の登場ですが、これまた破壊力バツグンの話です。
 武侠小説ってのは、たいてい人間離れした超人が出てくる話なんですが、これはすでにヒトとしての理を超えてしまってます。ラオウかと思っていたらゴジラだったという話ですね。サシの勝負ならゴジラに勝てるかもしれんな、こいつなら……。歩くだけで敵も味方も死屍累々。入浴介助は命がけ。
 上げて落とすのが上手いので、あっという間に読了。すごく面白いけれど、まだまだ序章。続きを楽しみに待ちたいと思います。

【ケルベロス】【龍盤七朝】【古橋秀之】【証文】
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「マリア様がみてる/あなたを探しに」 今野緒雪 27

2009-12-26 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「さっさとロザリオ渡して、イチャイチャとかイチャイチャとかイチャイチャとかイチャイチャとかしなさいよ、このっ」
 お宝探し大会も終了し、勝者へのご褒美半日デート。3組それぞれ思い思いのコースに出発するのだが……。

 最初はちょい役だったキャラクターが少しずつ成長していくのを見るのは愉しいもんですが、その筆頭が田沼ちさとさんですね。由乃-ちさと組のデートはなかなか波乱に富んでいて愉しいですわ。そうかあ。ちらほらかいま見える部分以外でも努力してたんだなあ。それもまた由乃が自身で言うところの、知らない人との新たな関係を築いていくってやつですね。「一年前の私」という言葉は好きです。
 志摩子組もいろいろ謎めいていて面白うございました。才媛と思われつつも抜けているところの多い彼女ですが、今回はちゃんと真相に気がついて良かった良かった。

『意味もなくただ、ということも確かにある。でも何となく心に引っかかっていたものたちの中に、重要な理由が隠されていることは少なくない。それらのサインを見逃すな、ということなのだ』

 祐巳組はあいかわらずゆっくりとした旅路です。瞳子は「私は怪獣に押しつぶされまいと必死で逃げまどう市民でした」と吐露しますが、焦らないで一歩一歩確かめながら進んでいってくれればよいと思います。

【マリア様がみてる】【あなたを探しに】【今野緒雪】【逆指名】【ドロドロ】
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