最近はファンタジー世界に現代日本のオタク文化が持ち込まれて人気になるパターンの話が目立つので、そこまでの系譜を目に付く範囲でピックアップ。
具体的な出典を覚えていないので要チェックなのだけれど、もともと「宇宙人が地球の放送電波をキャッチしていて、地球の言葉や文化に詳しい」というパターンはあるし、よくよく考えてみれば伝道師やヨーロッパの人間が未開地を冒険し、現地の人間にキリストの教えや文明の利器を伝えるエピソードはごく普通ですよね。
そうか。これは伝道物語の類型なのか……。
『山椒魚戦争』 カレル・チャペック
知能が高い山椒魚に道具を与え、言葉を教え、安価な労働者として使役したあげく、逆に人間が滅びそうになる話。
1935年の作品ですし、同じ作者のロボットとかを見ていると、文化流入による混乱をテーマにしているのではなく、植民地批判であり文明批評ですね。文化や技術が流入しても、誰も喜んでないし、面白くもない。
『天翔ける十字軍』 ポール・アンダーソン
空飛ぶ円盤で地球侵略にやってきた宇宙人を中世騎士の集団が撃退し、返す刀でキリスト教に基づいた封建社会を銀河系に構築してしまう話。こちらは無理矢理な武力侵攻による教化で、従来の物語の延長線上に皮肉を効かせたオチを用意したものではあるけれど「地球文化」の布教ではあります。
『異世界の帝王』 H・B・パイパー
こちらで持ち込まれたのは「戦争の技術」と「火薬の製造法」であって、娯楽方面は特になし。
『地球人のお荷物』 アンダースン&ディクスン
惑星トーカの現住生物ホーカは熊のぬいぐるみに似た姿と高度な知能を持っているが、モノマネが天性の資質。
輸入された地球の書物や映画から自分たちの文明を書き替えて究極のモノマネ社会を構築してしまい、街にはシャーロック・ホームズや三銃士が闊歩するはめになり……。
このあたりが、自分のイメージする「異文明は地球の文化が好き!」話の原点だな。
『超時空要塞マクロス』
銀河の深淵から侵攻してきた異星人の艦隊は、戦争しか知らない戦闘種族。正面からぶつかれば地球にとうてい勝ち目はなかったが、彼らにはアイドルソングやら男女の恋愛というものにまったく免疫を持っていなかった……。
戦闘に特化した男ばかりの集団に「美味い食事」という文化が流入して禁欲的なグループが崩壊するのは和田慎二の『明日香ふたたび』。男ばかりの世界に女が出現して政変が起きてしまうのがA・B・チャンドラーの『惑星スパルタの反乱』。
『A君(17)の戦争』 豪屋大介
人間と魔族が全面戦争に突入している裏で、蚊帳の外に置かれた国王と魔王は同人誌作りに日夜いそしんでいた……。
異世界に流入した日本文化がしっかり根付き、最初は義務的だった国王付きのメイドさんたちが徐々に腐っていくさまは壮観。
『這いよれ!!ニャル子さん』 逢空万太
地球が宇宙文明から保護されているのは、オタク的なサブカルチャーが貴重だからだと言い切ってしまったエポック・メイキング的な作品。
でも、こんなに続いてヒットするとは思ってませんでした。
『ゲート』 柳内たくみ
これは自衛隊と接触した異世界の文明が、コスプレをファッションの主流と思い込んだり、王族がBLを「芸術」だと言い張る話だという印象が強いけれど、ストーリー的には文化ではなく武力で決着がついてます。
『アウトブレイク・カンパニー』
シチュエーション的には『ゲート』に近いけれど、こちらは正反対に日本政府が武力ではなく文化で異世界を傘下に収めようとする文化侵略話。
拾い方のせいなのだけれど、だんだん片寄っていくよね。