付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

私的年間ベスト2010

2010-12-31 | その他フィクション
 今年もこの1年に刊行された本の中で面白かったものを個人的に選んでみました。シリーズものの場合は2010年中に新刊が出ているものを対象として、とりあえず10作品です。以下順不同。

「僕は友達が少ない」 平坂読
 今年は4冊出たかな。最近はこういう高校サークル系ウダ話的な作品が多いけれど、このシリーズはその筆頭。手抜きのないイラストも魅力。

「六百六十円の事情」 入間人間
 カツ丼というキーワードで巡り会う人たちの物語。連鎖して広がっていく人間関係が面白かった。

「うちのメイドは不定形」 静川龍宗・森瀬繚
 クトゥルフ系萌え小説。原典の設定を無視することなく、こういう話を仕立てられてしまうのが日本文化なんだと思います。

「舞面真面とお面の女」 野崎まど
 伝奇ミステリっぽい、一種のボーイ・ミーツ・ガール。ガールといっていいかどうかは確信が持てないけれど。

「さくら荘のペットな彼女」 鴨志田一
 一つ屋根の下に住む男女の群像劇として面白いかな。完結したらあらためて評価したいです。

「放課後探偵団」 似鳥鶏 他
 青春ミステリのアンソロジー。お試し的な意味で非常にお得。

「空色パンデミック」 本田誠
 アイデアといいキャラクターといい文句はないけれど、2作目3作目となるとマンネリが辛くなるタイプの話。かといってまったく変えてしまっては、この作品のポイントがブレちゃうし。

「傾物語」 西尾維新
 今年いちばん面白かった『化物語』シリーズの新章1冊め……になるのかな。西尾維新は近所の中高生にも人気で、うちの次男は塾で一緒になる女の子から西尾維新の話を振られてるんだとか。

「変態王子と笑わない猫。」 さがら総 
 変態も極めればモテるという、パターンを手堅く押さえて仕上げた佳作。この主人公はいかがなものかと思わないでもなかったけれど、よく考えたら『化物語』もこんな感じだったなと。

「もろこし紅游録」 秋梨惟喬
 武侠小説で歴史物でミステリを軽く読ませてくれました。

 今年は忙しくて読書量が減り、手軽に読める作品ばかり読んでいたなあと反省。でも、やっぱりラノベだろうと古典文学だろうと、あまり大差ないなあと思います。読みやすい文体とか手に取りやすいパッケージとかあれこれ要因はありますけど、面白いものは面白いし、つまらないものはつまらない。
 自分の面白いものを、来年もたくさん見つけられると良いですね。
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「電波女と青春男(7)」 入間人間

2010-12-31 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「地球人が持つ宇宙への希望というのはきっと、蚕の夢のようなものなのだ。全ての蚕が空を飛ぶことを願うわけじゃない。飛んだから、なにかがあるわけでもない。だが生き続けているからには、途方もない世界を夢見るのが必然ということだ」
 ヤシロの言葉。

 電波女は青春ロケットで飛び立つ。
 マコトとヤシロが中心となって完成させたロケットに乗り込み、エリオは往復40年の旅に出る。
 この物語はどこへ行き着くのか。

 主人公がどの女性との結びつきを深くしたかで分岐する7つのエンディング……って、この巻で完結していても良い気がしてきました。
 マコトが誰とくっつこうと、それによって今まで築き上げてきた人間関係は壊れてしまう……そんなエンディングをメインキャラ分だけ提示してしまったら、あとはハーレムエンドしか残ってないんじゃありません?

【電波女と青春男】【入間人間】【ブリキ】【ウラシマ効果】【コスプレ】【UFOキャッチャー】【もうちっとだけ続くんじゃ】【バカップル】【エロ本】【宇宙人探し】【助けてモルダー!】
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「海軍食グルメ物語」 高森直史

2010-12-30 | 食・料理
 今年1月にいつもの名古屋駅前三省堂書店に立ち寄ったら、たまたまミリタリーフェアの真っ最中。洋書の東部戦線写真集から、NF文庫やM文庫、満州写真集「大陸の機甲戦闘演習」、「戦艦大和 設計と建造」、「飛行服発達史」まで。なんでこの時期に?と思わないでもないけれど、どんなジャンルでも同じテーマの本が集まると壮観。
 ついいつもは買わないような本に手が出てしまうけれど、さすがに重すぎる本、高すぎる本は自重し、文庫はいつでも買えるということで『海軍食グルメ物語』を購入。こういう、適当にどこからでもつまみ食いして読める本は重宝します。

 海上自衛隊を退役した著者が、在職中に出会った帝国海軍出身者から聞いた話や文献を元に構成した、海軍の食事に関するエピソードやレシピなど。真珠湾攻撃当日の朝食メニューとか、海軍式マカロニナポリタンのレシピとか、潜水艦食の新旧比較とか。給糧艦間宮はもなかなら1日6万個の生産能力が……。

『アメリカ兵はうまくもないレトルト食でもあまりクレームがないが、日本人は緊迫したときでも食事についての注文が伝統的に多い』
 なので戦闘食の献立は艦長の決裁事項。でも、握り飯とたくあんがあれば文句は出ないというのも真実なんだとか。

【海軍食グルメ物語】【帝国海軍料理アラカルト】【高森直史】【肉ジャガ】【ヨーソロ】【潜水艦航海食】【沢庵】【航空弁当】【青ざかな】【病人食】【赤坂のおみき婆さん事件】【生卵は投下に強い】【間宮】【梨】【海軍漢字】
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「断髪のモダンガール」 森まゆみ

2010-12-29 | 伝記・ノンフィクション
「宗教は自分だけが正しい、他人もその中に入れて勢力を拡大しようとする。これはエゴイズムです」
 アナーキストな新聞記者、望月百合子の言葉。

 大正時代、断髪洋装の女たちはモダンガールと呼ばれ、女性の社会進出の象徴でもあった……。

 黒々と伸ばした髪を切り、旧来の女性像と決別した女たち42人の人物伝。
 とはいえ、尊敬すべき人物として後世に影響を与えた者もいれば、男にたかっては吸い尽くすだけの者もおり、教育者もいればレズビアンもいるという、実に多彩な女性たちの生きた記録。

【断髪のモダンガール】【42人の大正快女伝】【森まゆみ】【望月百合子】【ささきふさ】【武林文子】【野溝七生子】
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「傾物語」 西尾維新

2010-12-28 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「目の前の女の子は救ったほうがいい」
 世界滅亡を前に忍野メメの書き置き。

「僕はのび太くんかよ!」
 夏休みが今日で終わりだというのに、宿題がまったく手つかずの阿良々木暦。ミスドのドーナツと引き替えになんとかしてやろうという忍の口車に乗せられて、北白蛇神社の鳥居をくぐったのだが……。

 どうしてこうなった!!
 ダメ高校生と金髪幼女の恐るべきツーマンセルの破壊力! 八九寺はどこへいった?

 化物語シリーズのシーズン2的な展開が繰り広げられますが、『猫物語(白)』の裏で何が繰り広げられていたのか、全貌はまだまだ全然見えていません。
 今回は八九寺真宵の物語である以上に、暦と忍の絆を確認する物語になっていましたね。期待通りの1冊でした。

【傾物語】【カブキモノガタリ】【まよいキョンシー】【西尾維新】【夜歩く】【マウンテンのいちごスパ】【セカイ系】【ハートキャッチプリキュア】【とめはね】【タイムワープ】【嘘雑学】【ゴーストスイーパー美神】【諸星あたる】【どくさいスイッチ】【トランクス】【忍野扇】
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「変態王子と笑わない猫。」 さがら総

2010-12-27 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「言葉を持った人間は、たとえ言葉に真実以外のなにかが混ざっているとしても、そうすることでしか前に進めないのです」
 相手が本音で話しているか建前の言葉なのかわからないとしても声を出していくしかないと、筒隠月子。

 “笑わない猫像”に祈った御利益で、うそやごまかしを言えなくなった横寺陽人には、瞬く間に「変態王子」の二つ名が。水着と巨乳が大好きとかスパッツに着替えろとか、心の中で思う分には自由だけれど、みんなの前で口から出してはいけない。
 同じ理由で喜怒哀楽を失った下級生、筒隠月子と協力して、なんとか本音と建て前を取り戻そうとするのだが、ものの弾みでお金持ちのお嬢さまらしいと言う小豆梓にペット志願してしまい……。

 煩悩まみれの主人公が本音ダダ漏れで村八分になり、無表情できつい言葉しか言えなくなった年下の少女とコンビを組んで、タカピーなお嬢さまや“鋼鉄の王”を相手に奮戦する話。
 MF文庫の新人賞で最優秀賞をとった作品。タイトルとあらすじに「?」ではあったけれど、読んでみると期待以上に面白い。あれこれ手を広げず、物語の焦点を絞ってツンデレ3連発。主人公は真面目だけれど、煩悩の塊で、見当違いな言動が多く、他人からの好意にぜんぜん気づかないのもお約束。なぜ、こんなにモテる?
 1つ1つのイベントとかキャラ造型とかは、ある意味、この手の学園小説やギャルゲーのパターンみたいなものが多いし、イラストも誰の路線を狙っているか一目瞭然だけれど、巧いから良いよね。パーツを組み上げるバランス感覚が良いので、安心して読めます。
 2作目にどういう話を持ってくるのか、期待して待ちたいです。 

【変態王子と笑わない猫。】【さがら総】【カントク】【アニマル喫茶】【スパッツ】【肉まん】【ボーイ・ミーツ・カール】【爽やか変態】【冷ややか少女】【更衣室】
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「幻獣戦記」 朝松健

2010-12-26 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「料理人ってのはリアリストじゃなくっちゃ勤まらないんだ」
 夢幻は調理できないのだと島千尋。

 『幻獣戦記』は、大戦末期にドイツからUボートで日本へ運び込まれ、現在は国会議事堂に封じられているユニコーンの争奪戦(80年代の日本の繁栄もユニコーンのおかげだそうだ)で、東欧のアカシャ公国から来たお姫さまを守って凄腕コックが大暴れという話。あえて分類するなら、バイオレンス・ファンタジーといったところか。魔術あり、白人至上主義の秘密結社あり、銃撃戦あり、フライパンあり。
 世界最強シェフを決めるとしたら内原富手夫、スティーブン・セガールと決勝トーナメントで対決だな。

【幻獣戦記】【ユニコーン作戦】【朝松健】【渡辺ぶんや】【永田町】【納豆】【ドラコニア騎士団】【エースのジョー】【歓喜の園】
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「永遠に生きる男」 ミラー&ハンガー

2010-12-25 | 超能力・超人・サイボーグ
「だれにも負けたくないと思うものはいずれは勝つのだよ」
 無名の科学者エヴァーリングの言葉。

 西暦3097年、地球は<マスター>と呼ばれる不老不死の男によって統治され、繁栄していた。しかし、突如発生した疫病は地球全土に蔓延して多くの人々を死に追いやり、ついには<マスター>の妻までが感染してしまう。
 そこに現れた無名の科学者エヴァーリングは、自分が発見した治療法を教えるのと引き替えに、不老不死の秘密を明らかにせよと迫ってきた……。

 個人的には生化学者ロンディング博士の行動にポイントを絞った方が面白そうに思えるのだけれど、1956年の作品なのでロマンスとか野望の方がメインとなります。

【永遠に生きる男】【リチャード・デウィット・ミラー】【アンナ・ハンガー】【斉藤寿夫】【テラ市】【疫病】【不死人】
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「もろこし紅游録」 秋梨惟喬

2010-12-24 | 時代・歴史・武侠小説
「“常に正しい”ことを、“当たり前”というんだ」
 風水師・関維の言葉。

 『もろこし銀侠伝』に始まる銀牌侠列伝の第2弾。戦国時代から中華民国の時代まで、中国大陸を舞台に、弱きを助けて世界の秩序を守る武侠たちの物語。
 1作ごとに舞台が変わり時代も変わるので、共通した登場人物はほとんどいませんが、いずれも歴史ミステリでもあれば武侠小説でもあり、飄々とした人物たちが活躍する短編ばかりです。
 唯一、前作でおなじみとなった“若様”と“じい”が登場するのが、外界から孤立した場所で殺人事件が発生する、いわゆる「嵐の山荘」パターンの作品。各地で武芸の達人や有力者たちの暗殺が続発します。唯一、犯行グループの手がかりをつかんでいるらしい武当山の破剣道人はなぜ何も語らないのか? 雨の道観に奇しくも集ったのは、少林寺の悟慶和尚や破剣道人など名だたる武芸の達人たち。そこに折悪しく足を踏み入れてしまった、武者修行中の青年・許静の運命は……。

【もろこし紅游録】【秋梨惟喬】【三木謙次】【少林寺】【戦車】【殷】【連続殺人】
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「東京創元社 文庫解説総目録」 高橋良平+東京創元社編集部

2010-12-23 | エッセー・人文・科学
 目録の方は1000頁を超えるけれど、要は毎年刊行されていた文庫解説目録の総集編と著者名索引。絶版などで普段は外されているものまでカバーされているので大変な分量。普段の目録があれば要らない気がしないでもないけど、考えちゃいけない。
 別冊の資料編の方はカラーの表紙絵コレクションとか対談とかコメントとか書誌学的資料とかエッセイとか新旧どんどん詰め込んだり。中島梓が武部本一郎の挿絵について熱く語っていたり、江戸川乱歩や中島河太郎がたちが西洋怪談について語り合っていたり……。
 ちょうど今、某団体の40周年記念誌を編纂しているのでそっち系の思考になっているけれど、いかにも創刊50周年記念誌的な作りです。ただ、文庫サイズの本が2冊セットで5250円というのは、引くよね……。

【東京創元社】【文庫解説総目録】【1959.4-2010.3】【高橋良平】【紀田順一郎】【鏡明】【杉みき子】【厚木淳】【ロゴデザイン】【著作権】
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「朝顔はまだ咲かない」 柴田よしき

2010-12-22 | ミステリー・推理小説
「恋には逆らえないんだよ、誰も。絶対君主だから。しかも暴君だし」 
 宮前秋の言葉。

 高校時代にいじめから引きこもりになった小夏と、彼女のところにこまめに遊びに来る秋。真面目な小夏と元気な秋が見つける不思議な謎。
 ひまわりの花を踏みにじる男の正体は? 天気も良いのに雨傘を差しているのは? 公園の電車に出る幽霊? そして……。

 日常系ミステリの連作短編集。
 謎解きそのものよりも、自分はなぜ引きこもるのか、引きこもっていてはいけないのか、自分はどうすればいいのか……と、小夏が自分自身と向き合っていく過程の方がメインかな。結局、「普通って何?」というところに突き当たると思うんだ。
 面白く一気に読了。

【朝顔はまだ咲かない】【小夏と秋の絵日記】【柴田よしき】【遠田志帆】【ひきこもり探偵】【性交を祈る】【早見裕司】
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「NOVA3」 編:大森望

2010-12-21 | その他SF(スコシフシギとかも)
 アンソロジー集なのに東浩紀は読み切り連載を始めちゃいましたよ? 「クリュセの魚」の続きです。
 続編の導入部というかなんというか、駆け足で「クリュセの魚」の後の15年間の人生と火星の政治を語ってしまいました。独立して読める作品だけれど、そう思うと話としてはちょっと物足りないかな。
 前回は純文学的だったり幻想小説っぽかったりするのが多かったけれど、今回は「いかにもSF」という作品で占められています。1本だけ何がSFなのかわからない喫茶店話が混じっていますが、これは仕様なようです。
 電脳インフラと人間を扱った話も何作かあって、そのうちの1つは『電脳コイル』は観ていないそうだけれど、いかにもそんな感じの世界観の話でした。それからギリシア文字の成立を神話ポルノにしてしまった浅暮三文は反則だと思います。その他にもSFの定義の話とか、いろいろありましたが、小川一水のバイク話がやはりいちばん印象に残りました。
 近未来、バイクにAIが搭載されて、メーカーにデータをフィードバックさせたりマシンの制御を補助したりするようになった時代。1台のバイクに搭載されたAIと本社サーバのAIのやりとりだけで語られる「ろーどそうるず」は名作。AIだから外部の情報は車体の傾斜角とか加速度とか搭載重量の変化みたいな形でしかわからない。そんなデータから導き出される1台のバイクの物語は、『攻殻機動隊』のタチコマとかが好きな人間にはたまらない。バイクのことはわからないという人でも一読の価値はあります。

【NOVA】【書き下ろし日本SFコレクション】【東浩紀】【浅暮三文】【東浩紀】【円城塔】【小川一水】【瀬名秀明】【谷甲州】【とり・みき】【長谷敏司】【森岡浩之】
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「放課後探偵団」 似鳥鶏 他

2010-12-20 | 学園小説(ミステリ)
「答えというのは、いつだって一番単純なんだよ」
 支倉春美の言葉。

 老舗の看板にあぐらをかかず、新規読者の開拓に余念がない創元推理文庫が、高校生らが主役の日常系ミステリーを(うち3人はまだ著作が刊行前という)若手作家に書かせたアンソロジー集。なので放課後探偵団。そういうタイトルの作品は収録されておりません。タイトルイラストがそれぞれについていて、既に著作が刊行されている作家についてはちゃんと同じイラストレイターを引っ張ってきているのは嬉しいよね。

 似鳥鶏は『理由あって冬に出る』シリーズの番外編。「シリーズ中最高の人気を誇る“あのひと”は登場しません」って、もしかして人気最高ってあの人?
 相沢沙呼も『午前零時のサンドリヨン』のバレンタインデー話。
 甘酸っぱかったり、ほろ苦かったり、高校生あたりの嬉し恥ずかし心の機微が描かれていて、きちんとした謎解きはあっても血生臭かったり複雑怪奇ということはない、日常系青春ミステリが5編。「聴き屋」シリーズとか他の作者の作品も刊行されたら買おうと思いました。それくらいハズレなしの作品集。

【放課後探偵団】【青春ミステリ】【似鳥鶏】【toi8】【鵜林伸也】【平沢下戸】【相沢沙呼】【加藤木麻莉】【市井豊】【スカイエマ】【梓崎優】【片山若子】【自主制作映画】【タイムカプセル】【野球部】【バレンタインデー】
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「さくら荘のペットな彼女4」 鴨志田一

2010-12-19 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「成功の仕方は、成功から学ぶしかないんだよ」
 失敗からでは学べない、勝ってる奴は勝ち続けていると三鷹仁。そんな戦国武将を引き合いに出してばかりのビジネス誌みたいなコトを……。
 私の周囲では「成功体験は状況が千差万別だから他人には精神しか学べない。柳の下にドジョウは2匹いないよ」ということになってます。ただ、成功体験は誰もが周囲に吹聴したがるのに、失敗談はなかなか他人に話せないから学びにくいだけなのですよね。
 端から見ていても他人が今やっている仕事が成功するかどうかはなかなか見当つきませんが、「これは失敗するな」と思うやつはたいてい失敗します。客のいる前でいつまでも従業員を怒鳴りつける店主とか、公私混同が直らない社長とか……。

 文化祭突入!……しかし、インタラクティブな観客参加型アニメ「銀河猫にゃぼろん」は、制作スタッフのこだわりから未だ完成していなかった……。

 疾風怒濤の文化祭編から涙のクリスマスイブまで、自らの才能を持て余し、あるいは才能の限界に悩み、他人に嫉妬し羨望する高校生たちの物語……という、一歩間違えるとドロドロぐちょぐちょな話になりそうなテーマを、「他人からの好意に鈍感な主人公」と「無垢で無自覚に赤裸々な言動を繰り返すヒロイン」という、ちょっとあざとくないかというキャラクター配置で処理すると、不思議とするするっといただける作品に。こういう綱渡りな話は好き。みんな才能はあるのだけれど、上には上がいて、才能があるのと成功するかどうかは別の話で、みんな明るくのーてんきな言動の一方でトラウマも抱え込んでいるのです。でも、ラストの方の主人公のモノローグは、いかにもなミスリーディングなので、これはちょっといただけませんでした。
 伏線も張っているので、この進み具合だとたぶん次巻は年末年始の帰郷編。あの妹さんが登場するかもと思うと、ちょっとどきどきわくわくですね。ああいう、普通にかわいい妹キャラって最近見てませんもの。

【さくら荘のペットな彼女4】【鴨志田一】【溝口ケージ】【文化祭】【オムライス】【着ぐるみ】【手料理】【クリスマスイブ】
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「彼女はつっこまれるのが好き!2」 サイトーマサト

2010-12-18 | アイドル・声優・芸能
 テンポーの良いボケとツッコミの会話を愉しむシリーズ。なので、あのタコを出して誰が喜ぶのかわからない。今のところストーリーの進行にも貢献してないしね。

 人気声優・音無まどかのファンクラブイベントに参加するため、秋葉原へやってきた常村良人は、路上でマジックを披露しているゴスロリ少女と出くわすのだが……。

 ラジオ番組で人気声優のパートナーに抜擢されてしまった高校生の日常話の2冊目はライバル登場編。あいかわらず話は進展してませんが、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』だって結局は恋に悩んだガリ勉が自殺するだけの話で、ヴェルヌの『海底二万里』やメルヴィルの『白鯨』も大半は海の描写。そんなにさくさく話が進む小説って多くないのかも……という気になってしまいます。
 そして、妹はあいかわらず常軌を逸しているカワイソウな子のままで、新聞部の部長といい、会話のテンポの良さに対してサブキャラの設定が荒削りな気がします。

【彼女はつっこまれるのが好き!2】【サイトーマサト】【魚】【アイドル声優】【握手会】【遊園地】【マジシャン】
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