付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「人生 第2章」 川岸殴魚

2012-05-31 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「寝る子より 寝て食べ鍛えて めちゃ育つ」

 高校新聞部の人生相談コーナーの話の2巻。
 あいかわらず文系・理系・体育会系の3人の少女の回答が、紆余曲折したあげく紙面に掲載される段階ではすごくまともっぽい文章になっているのがツボ。前回と同じ感想だけれど、ここが大事なんだよ。
 今回は、ライバルである第一新聞部の部長が登場して人生相談コーナーをパクって挑んでくるのだけれど……お金持ちで軽薄でバカという絵に描いたような敵役なのでストーリーにさして影響するとも思えず、すなおに夏の合宿(温泉付)の右往左往と女性陣の主人公に対する感情の機微を楽しませてもらいました。
 今回はイラストも気合いが入っているような気がします。

【人生】【川岸殴魚】【ななせめるち】【ガガガ文庫】【兵馬俑】【合宿】【お風呂イベント】【人生相談対決】【うずら】
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「帝国護衛艦隊、太平洋を征く II~大和撫子紫電改2」 志真元

2012-05-30 | 架空戦記・仮想戦史
 すっかり山本長官が凡夫扱いされていて、GFが引き籠もりの『大和撫子紫電改』の最新刊。

 帝国海軍護衛艦隊はソロモン海に展開し、ラバウルを拠点にした貴子らは豪州空軍との戦いを繰り広げていた……。

「水雷屋なら突撃して死ね、だ」
 運命の皮肉を感じた、木村昌福の自嘲。

 日本は三国同盟を維持しつつアメリカやオーストラリア、自由フランス、オランダと戦い、ビルマに進攻する一方で、満州王国を通じて重戦車をイギリスやフランスに輸出し、ソ連へは日本の武器を装備したユダヤ人義勇部隊を送り込んでいて、ドイツはイギリス・アメリカと海戦を繰り広げ、アメリカはヨーロッパと太平洋に2つの戦線を抱え……まさに世界大戦。
 女性兵士たちの戦いとか紫電改の活躍よりも、この右手で殴り合っている相手と左手で握手しているような戦いを、外交的にどう収拾つけるつもりかの方が気になります。まさか白洲次郎無双ではあるまいが……。

【大和撫子紫電改2】【帝国護衛艦隊、太平洋を征く】【志真元】【長森佳容】【中村亮】【ジョイ・ノベルス】【風林火山】【降下挺身大隊】【南洋の新天地】
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「覚えてないけど、キミが好き」 比嘉智康

2012-05-29 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「人生、良いことも悪いこともある。どんな人間にも、良いところも悪いところもある。それら全てを受け止めて、ありのまま生きればいい」
 それが両親が自分の名前にこめたメッセージなのだと吉足は思う。

 高校2年生の小吉こと小衣吉足は高1の妹のひなたと二人暮らし。両親はいない。
 両親は3年前の旅先の火事で亡くなっていて、そのときのショックで自分も記憶を失った。
 そんな小吉の前に現れた転校生・浅海ゆららは美少女で、小吉の幼なじみで元カノで、わざわざ彼を追いかけて転校してきたというのだ。
「……あたしが……あなたを守るから」……。

 『神明解ろーどぐらす』とか『ギャルゴ!!!!!』で大好きな比嘉智康の新作。MF文庫J以外は初めてですね。ラバースーツのような乳袋付きセーラー服のイラストには馴染めませんし、高校生男女の同居ものというありがちな設定に大丈夫かと心配しましたが、いつも序盤は手堅く始まり、中盤以降変調してぶっ飛ぶ作風。登場するキャラクターの言動は、確かにいつもの比嘉作品そのままです。
 主人公が過去の記憶を失っている一方、妹と元カノは主人公がとっても好き!という態度をあからさまにしていながら、どうも二人して隠し事もしているらしく、これからどう転がるのかドキドキしながら続きを待ちたいと思います。

【覚えてないけど、キミが好き】【比嘉智康】【希望つばめ】【一迅社文庫】【記憶喪失ラブコメディ】【不幸体質】【ハグ】【160円】【ゲロ】【屋上で昼食】【関節キス】
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「子ひつじは迷わない~騒ぐひつじが5ひき」 玩具堂

2012-05-28 | 学園小説(ミステリ)
「(戦国時代に発生した)男同士の関係は、もはや戦いの一部。女性を護り庇うための『戦い』でございます。この夏、赤と黒のエクスタシーでございます。古き良き日本男児の心意気でございます」
 ならば大和撫子がそれを見守るのは義務なのだと宮野先輩の言葉。

 またまた会長の独断で生徒会執行部も文化祭に出店することに。
 それが“ひつじ”ならぬ“しつじ”喫茶なのはいいけれど、なぜか“なるたま”こと成田真一郎は執事服ではなくメイド服を着る羽目に陥り……。

 1冊丸ごと文化祭の話。正確には準備期間から1日目の終わりまで。次巻は2日目になるかというと、小旅行篇になりそうだけれども。
 文化祭で大わらわの中で、しっかり相談業務をおこなう「迷わない子ひつじの会」。小説の中に登場する伝説の必殺剣の正体を調べろとか、『 々人事件』なる奇妙な同人小説を読み解けとか、あいかわらずの事件に加えて貴腐人的発言ありの5冊目。
 悩み相談の本質で悩む会長に、すっぱり割り切るなるたまが格好良いです。こういう言動を繰り返していくと、へんたいハーレムになっちゃいそうですよ?

【子ひつじは迷わない】【騒ぐひつじが5ひき】【玩具堂】【籠目】【角川スニーカー文庫】【毒舌ツンダラ名探偵】【文化祭】【天と地と】
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「白翼のリンケージIII」 赤井紅介

2012-05-27 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 昏睡状態から覚めた銀狼が楓と明日香に告げたのは、隔離街の本当の意味。
 そこは獣人化した感染者を隔離するための場所ではなく、そこに封印されている“真なる祖”に対する第一にして最大の防波堤だというのだ……。

 パートナーとして、仲間として、師弟として、親子として、敵と味方として、さまざまな絆が提示された上で、隔離街に乗り込んでの最終決戦となります。
 刊行されているのを待って読んでいるとまどろっこしいというか、展開や人間関係にイライラすることがあったのだけれど、通して一気読みすると違和感なく面白かったのです。テレビシリーズではなく劇場版向けの話……って感覚でした。

【白翼のリンケージ】【赤井紅介】【IsII】【集英社スーパーダッシュ文庫】【伝奇剣戟アクション】【屋上で昼食】【ブラド】【繋がりの呪詛】【カーニヴァル】【人類のための防波堤】
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「ガンパレード・マーチ2K~新大陸編(2)」 榊涼介

2012-05-26 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
「勘と経験に頼るのは下士官ですよ。士官はそれに加えて、目的を達成するためのインテリジェンスを使わないと」
 デイヴィッド・プラッター大尉の言葉。

 アメリカ大陸に渡った5121は、海兵隊の支援部隊として幻獣の攻撃で孤立した都市の救出に向かう。
 戦いの中で、遠い島国から渡ってきた彼らの実戦能力への評価は次第に高まっていくが、一方で人型戦車の機密奪取を狙う国防長官派の作戦も着々と進んでいた……。

 海兵隊は味方だけれど、アメリカ軍すべてが味方とは限らないという、ガンパレ北米編の2。
 人が生き死にを賭けた戦いをしている傍らでおふざけな言動があると腹を立てることも多いのだけれど、ガンパレの場合はやるべきことをやっている人間が張り詰めた気持ちを和らげるためという前提があるので、むしろ心待ちにしていて、今回久々にパーッとはじけて一安心。謀略だの殺戮だの愚劣指揮官だの囚人と看守だのレイプ未遂だのにはそろそろ疲れました。北米にソックスハンターが暗躍する日も楽しみにしています。
 気になるのは、備品というかオモチャ扱いされている茜が、このところ着々と実績を積み上げてきていること。ちょっと役に立ちすぎなので、ここらで鼻っ柱を誰かに叩きつぶして欲しいところですが、やがて参謀総長として茜作戦の立案をすることになるかもしれないので、それを考えれば順当な成長なんでしょうか。ちょっと寂しいな……。

【ガンパレード・マーチ2K】【新大陸編】【榊涼介】【きむらじゅんこ】【電撃ゲーム文庫】【コック最強伝説】【囮】【ステルス爆撃機】【エクスカリバー】【バニーガール】
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「猫と妻と暮らす~蘆野原偲郷」 小路幸也

2012-05-25 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 大学で研究をしている和弥が帰宅したら、見知らぬ猫が玄関で出迎えた。どうやら妻の優美子が猫になってしまったらしい。
「お前、何故猫などに?」
 驚きはしたけれど、いつかは元に戻るのかしらと思いながら、とりあえず猫と2人で寝ることにして……。

 特に時代とか舞台は明言されていないのだけれど、文中で示唆されている出来事や住環境などから察するに、たぶん昭和初期の東京近郊といったところだろうか。内容紹介では「文明開化の移りゆく時代」とかあるけれど、紙芝居屋の数が減っているというから、明治ということはないような気がするのだけれど。
 ともかく、変わりつつある時代の中で語られる怪異譚。
 いきなり妻が猫になっていてもたいして驚かない淡泊な主人公なのだけれど、それは単に古より人に災いを為す厄や怪異を祓う能力者を輩出し、あっちの世界とこっちの世界の橋渡しをするのが存在意義……みたいな蘆野原という土地の長筋というだけではなく、格式とか伝統にこだわらない大ざっぱな性格によるものなんでしょう。榊がないならそこらの小枝で代用……とか。その上、祓うことは一流でも肝心の怪異を見る能力がないものだから、お祓いに迫力がまったくありません。バトルなんてありえない。
 猫になってしまう奥さんがこれまた昔風の絵に描いたような良妻賢母で、いつも控えめでいながら求められることについては常に怠りなく……というできすぎで、これには絶対裏がある!と読んでいて疑心暗鬼になるほど。まあ、いきなり猫になってしまって本人にその自覚とか記憶とかなさそうというのが十分に裏なんですが。

【猫と妻と暮らす】【蘆野原偲郷】【小路幸也】【徳間書店】【叙情的幻想小説】【憂旬】【屋鬼】【鬼女】【戦争】
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「世界ぐるっと朝食紀行」 西川治

2012-05-24 | 食・料理
 写真家でもある著者が、世界各地で食べてきた朝食を、豊富な写真と文章で回想していくもの。「モロッコ*ホテルと街で(1998年)」などと章ごとに、いつのどこかがわかりやすくまとめられているのも気軽に読む助けになって嬉しいです。

「朝食がドイツ人を作った」

 前後して読んでいた、アンソニー・ボーデインの『はみだしシェフのやけっぱち放浪記』で、世の中には安く簡単に手早く食べられて、しかも美味しい物がいくらでもあるのに、どうしてよりにもよって大量生産のハンバーガーとか食べなきゃいけないんだ!?と絶叫していましたけれど、こちらの本で紹介されているものの大半こそ、その“いくらでも安く簡単に手早く食べられて、しかも美味しい物”の代表格。
 ドイツで黒パンと食べるソーセージ、カプチーノと食べる甘い菓子パン、パンを浸しながら食べる牛骨スープ、ムール貝の中に詰め込んだ米料理、鶏肉たっぷりのフォー、白いチーズと食べる羊肉のソーセージ、二日酔いの朝に飲むソルロンタン(牛スープ)……こんな本を読むと、すぐに寝たくなります。早く朝が来て、美味しい朝食が食べられるように。パン焼き器で焼き立てパンにハムエッグを添えたり、炊きたてご飯に味噌汁だっていいじゃないですか。

「朝食を食べぬような男とは結婚するなと、イギリス人はいう」

 早く朝にならないかなあ……。

【世界ぐるっと朝食紀行】【西川治】【新潮文庫】【シュミット】【ハリラ】【グラチネ】【クロワッサン】【ブロート】【燻製ウナギ】【オープンサンドイッチ】【ベーコンエッグ】【パンケーキ】【ポーリッジ】【トルティーヤ】【ダロ芋】
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「ログ・ホライズン1~異世界のはじまり」 橙乃ままれ

2012-05-23 | VRMMO・ゲーム世界
 ちょうど瀬尾つかさの『スカイワールド』を読み終わったところで長男から薦められたのが、この『ログ・ホライズン』。これまたプレイしていた「ゲームの世界」に飛ばされたプレイヤーたちの物語です。

 老舗MMORPG「エルダーテイル」で新システムの更新直後、プレイ中だったゲーマー3万人がゲーム世界に閉じこめられてしまった。
 死んでしまってもホームで復活できるが、現実世界には戻れない。キャラクターとしての能力は高く、アイテムや装備は十分でも、いざ現実にモンスターを目の前にして戦うとなると楽勝のはずの戦闘もままならず、日本サーバー以外のゲームがどうなっているか、これからどうなるのかも分からない。
 呆然としたまま日々を過ごすのもムダだと判断したシロエは、旧友の直継や暗殺者アカツキらと共にゲームの拠点だった廃墟アキバを中心に、この世界に慣れようと動き出すのだが……。

 『スカイワールド』ではあえて言及されていなかった、ゲーム世界に放り出された直後の混乱期から丹念に描いています。そして、この世界でもいちばん厄介な敵はモンスターではなく、プレイヤー同士の対立でありPK。無防備に博愛主義を唱えてのたれ死ぬのは愚かだけれど、疑心暗鬼に角突き合わせたり、後先考えず暴れ回るのは愚の骨頂。
 キャラクターが面白い小説というのは、たいていキャラに2つ3つの顔があります。顔というかペルソナというか設定ですね。「一見××だけれど(1つ目)実は××(2つ目)。でも本当は……(3つ目)」みたいな感じで、単なる脇役ザコキャラは1つ目まで、2つめが出てくるとそこそこ重要な脇役、3つめ以上が出てくると主役級。
 現実世界では内省的な大学生に過ぎなかった<腹ぐろ眼鏡>なシロエが、いかに世界を変えていくのか、これからどのような姿を見せてくれるのか、これからの展開に期待です。
 でも、ローゼンバーグの『眠れる龍』には有った、「自分はこのゲーム世界に放り出されて幸せだ。なぜなら現実の自分は身体が不自由であり、この世界では人並みの肉体を手に入れているのだから。元の世界に戻って、また元の器に押し込められたいと願うものか」というキャラが見当たりません。そういう、現実に戻らない方が幸せだというキャラが出てくるのか出ないのか。自分は出てこなくても良いと思いますが、こんなときでも/こんなときだからこそPKに走る乱暴者やら出てきたりするので、存在しても不自然ではありませんね。
 で、長男に「続きは?」と訊いたら、これは長男が次男に読ませてやろうと買ったもので2巻目以降はまだ買ってないとのこと。ということは、わざわざ薦めてくれた理由って……?

【ログ・ホライズン】【異世界のはじまり】【橙乃ままれ】【ハラカズヒロ】【エンターブレイン】【MMORPG】【PK】【WEB小説】
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「凶鳥」 佐藤大輔

2012-05-22 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 1945年、敗色濃厚なナチス・ドイツ。
 アドルフ・ヒトラーは戦局打開のため、南東ドイツの上空でドイツ空軍が撃墜した正体不明機の回収を親衛隊に命じた。
 その正体不明機とは“フッケバイン”と呼ばれる幽霊戦闘機であり、戦争の勝敗のみならず人類の存亡がかかるものであった……。

 SS親衛隊の回収部隊に、その任務を阻止しようとする連合軍のスパイや事件に巻き込まれたユダヤ人科学者がからみ、さらに(当時の)最新兵器が続々投登場……というサービス精神満点の1作。
 絵に描いたような理想の軍人がいて、これまた型にはまった卑劣で姑息な人間がいて、お約束のパターンも組み合わせ次第でトンデモない傑作ができあがるという証明。
 これが実写映画化されたら、B級スペクタクル・ホラー・ミリタリーSF映画の傑作になると思います。

【凶鳥】【フッケバイン】【ヒトラー最終指令】【佐藤大輔】【ゾンビ】【エレファント】【ヤークト・キングタイガー】【マウス】【V2】【モスキート】【スターウォーズ計画】
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「雨乞い部っ!」 青柳碧人

2012-05-21 | スポーツ・武道
「奇跡を信じられない人間に、スポーツをする資格なんか、ねえんだよっ!」
 自衛大群馬、ジェネラル馬ノ背の言葉。

 雨乞いはまだまだマイナーだが、プロ競技もあるし、政治や経済も左右する神聖な競技だ。
 照島陽太は、憧れの柚香先輩のTシャツを雨で濡らして下着を透かせてみたいという邪な気持ちから入部してしまうが……。

 朝の情報番組で、キャスター役の女子アナの質がどんどん下がっていくのに爆笑。
 ふざけた設定の話はまじめにやればやるだけ面白くなります。これも「雨乞い」なんてものが「スポーツ」として普及しているというバカバカしい話を、踊りの役割分担とかツールの設定とか舞のバリエーションとか積み上げて設定に説得力を持たせようとしています。
 その上で競技内容で笑わせてくれるわけですが、「針小棒大」のくだりはそこに違和感があり、ネタとして中途半端で残念。「まじめにやる」さじ加減が、全体的に好みよりは軽めでした。
 多く出し過ぎたのか、女性陣の書き込みも不十分な感じ。読み終わって、いちばん魅力的で印象に残ったのは、体重100キロを超えるであろう巨漢、尾鷲先輩でした……。

【雨乞い部っ!】【青柳碧人】【KEI】【講談社ラノベ文庫】【異色の青春スポーツラブコメディ】【合宿】【紙芝居】【地区大会】

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「スカイ・ワールド#01」 瀬尾つかさ

2012-05-20 | VRMMO・ゲーム世界
「機会というものは、誰にでもやってくるものだと思う。大切なのはいかにして好機を逃さず、そこにしがみつくか、だ。決断するときに理屈は要らない。気づいたら無我夢中で飛びついていく。それしかないんだと思う」
 カイの言葉。

 空中に無数に浮かぶ島々を舞台としたMMORPG「スカイワールド」で、運営開始から1週間後、数万人ものプレイヤーがゲーム世界に閉じこめられるという事件が発生した。
 世界の天頂に浮かぶ、第一軌道「アイオーン」に到達し、そこでのイベントをクリアすればすべてが元に戻ると噂されているのだが、そもそも元の世界がどうなっているのか分からない。ゲームオーバーになってしまったらどうなるのか、本当に死んでしまうのか、元の世界に復帰しているのかも分からない。けれど、彼らはゲームの世界に冒険者として放り出されている。
 パーティーを組むことなく単独でクエスト攻略を続けていた凄腕ゲーマーの少年ジュンが、他の島と孤立しているアルタリア島で出会ったのは、まったくの初心者にして迷子の少女かすみだった……。

 単に「別世界」に飛ばされて冒険するファンタジーというのではなく、プレイしていた「ゲームの世界」に飛ばされる話というのはローゼンバーグの『眠れる龍』あたりから始まるとジャンルだと思うのだけれど、それ自体は既に珍しくはなくなったアイデア。
 でも、その設定を十分に活かして、熟練プレイヤーともともとゲームに興味の無かったビギナーを対比させることにより、一般的な異世界の冒険的な部分とゲームのシステムとして理解する部分をうまく組み合わせてストーリーに取り込んでいます……というか、読んで面白かった。すれたプレイヤーはこの世界の住人をAIのルーチンで行動するだけのNPCととらえがちだけれど、そもそもゲームに馴染みのないかすみは普通に人と人として付き合おうとするし、やりこみタイプのジュンは自分のコンソールをカスタマイズするし、システムの穴がないか常に考えているし……という感じ。
 この手のゲーム世界での冒険パターンの中でも面白い方ですし、この1冊でもまとまっているし、シリーズ物の1冊目としても愉しめます。カイやアリスの思惑もすべて分かったわけではありませんし、これからの展開が楽しみです。

【スカイ・ワールド】【瀬尾つかさ】【武藤此史】【ファンタジア文庫】【オンライン冒険ファンタジー】【MMORPG】【PK】
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「おおコウスケよ、えらべないとはなさけない!2」 竹岡葉月

2012-05-19 | 本屋・図書館・愛書家
「不可能を可能にするのが愛なんですヨ?」
 宮沢彗の言葉。

 シリーズ2冊目にして完結。
 せっかくの図書館を主な舞台とし、本を貸し借りしつつ友情を深めていく少年少女の物語だったので、体育祭がメインの2巻で終わってしまったために、そのあたりが少しあやふやになってしまって残念。
 その結果、せっかくの殿村クララ・アーベントロートのがんばりが単なる空回りになってしまい、主人公が単なる現状維持を望むばかりにクララに敵対するヘタレとしか思えなくなって失望。
 そもそも「おおコウスケよ、えらべないとはなさけない!」と言いつつ、むしろよく頑張ったよ! クララがかわいそうになるくらい一途な一択じゃん。最初から決め打ちで選ぶ余地はないのだから、情けないと言われるのは気の毒。
 やはり、せめてもう1冊欲しかったな。その「選ぶ」という視点で。

【おおコウスケよ、えらべないとはなさけない!2】【竹岡葉月】【奥村ひのき】【富士見ファンタジア文庫】【究極の選択ラブコメ】【しいたけ】
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「追放者の矜恃~ヴァルデマールの絆」 マーセデス・ラッキー

2012-05-18 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 中央公論のC.NOVELSファンタジアと創元推理文庫FTで、分担するように翻訳が進んでいるヴァルデマール年代記の新刊。
 複数の出版社で、さまざまな視点の、年代的にいろいろ前後する話が刊行されていると読んでいて混乱することが多いのだけれど、長めで複雑で続き物が多い創元に対し、中公は単発で読めるものが多いので手に取りやすいイメージがあります。横に話が広がるのは面白いのだけれど、縦に広がる話を追いかけるのはだんだん辛くなりました。そもそもヴァルデマール年代記って、2000年くらいの歴史を扱うという構想だし……。

 カースの軍人であるアルベリッヒには、ときおり断片的に未来が見える力があった。だが、その能力はカース国では「悪魔の力」だとされていた。
 辺境の村を盗賊の襲撃から守った際に、悪魔の力を使ったことが露見したアルベリッヒは火刑に処せられ、危ういところを白馬に助けられるが、その白馬は敵国ヴァルデマールの悪魔の獣だった。
 心ならずも紛争が続く敵国に逃れることとなったアルベリッヒに、ヴァルデマールの人々は「使者」となることを期待するのだが……。

 互いに邪悪な敵と認識して敵対している国に身を寄せることになった、戦うことしか知らない男が心に平穏をみつけるまでの物語。邪悪な敵国だったはずのヴァルデマールの地で、相手を信用し信頼されるようになるまでがおおよそ上巻。カース国が傭兵国家テドレルを抱え込んでヴァルデマールとの全面戦争に突入した顛末が下巻。他の話では、無骨で無愛想な武術師範として描かれることが多かったアルベリッヒ師の物語です。
 才能と意志がありながら閉鎖的な環境の中で抑圧されてきた主人公が、思わぬ事からまったく異なった環境に放り出され、出自からそこでも敵視されることもあるけれど、その才覚を認めた人たちに高く評価されていくことによって居場所を見つける物語……とまとめると、同じ年代記の<女王補佐>タリアの『ヴァルデマールの使者』やマキャフリィの『竪琴師ノ工舎』三部作などと同じですね。主人公は少女ではなく可愛げのないおっさんですが、こういうパターンの話は好きなので一気に読了して満足。

【追放者の矜恃】【ヴァルデマールの絆】【マーセデス・ラッキー】【竹井】【C.NOVELSファンタジア】【信仰心】【忠誠心】【傭兵国家】【武術師範】【抑圧からの解放】【秘められた才能の開花】【居場所の発見】
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「“朧月夜 ”~ヒカルが地球にいたころ……(4)」 野村美月

2012-05-17 | 学園小説(ミステリ)
 夭逝した希代のプレイボーイ、ヒカルの心残りを晴らして成仏させようと、遺された彼の恋人たちの後始末に奔走する是光だが、驚天動地の“葵”の申し出があり、式部帆夏の思わぬ告白もあり、是光までもがヒカルに影響されてきたのかという昨今、まだ小学4年生ながら“紫”こと紫織子の言動も怪しい。
 そんな是光の前に姿を現したのは、日舞研の月夜子。
「蜘蛛が月を隠したら、あの女が、現れる」
 そんな月夜子が是光にした頼みとは……。

 正体不明の相手から嫌がらせを受ける葵。葵を溺愛している頭条や朝衣会長は怒り心頭に達し、そのしわ寄せが是光に来ます。そして、兄嫁の“朧月夜”の登場。もちろん、その“兄”の一朱も登場し、頭条や朝衣の動きにも大きな変化が生じます。
 それぞれのキャラクターの役回りがやっと読み解けてきたような気がして、話がますます面白くなってきました。

【朧月夜】【ヒカルが地球にいたころ……】【野村美月】【竹岡美穂】【ファミ通文庫】【学園ロマンス】【日舞研】【花宴】【お兄ちゃん】【目つき悪い主人公】
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