シンクタンクのサブカルチャー調査でライトノベルファンが年間に消費する金額が1万2千円とかいう話を聞くと「それ、1週間の金額ですか?」と言いたくなります。月1冊買うか買わないかでマニアとかオタクとか、どこからデータをピックアップしてるんでしょうか?
それはともかく、選んで買って読んでいるつもりでも当たり外れとか好き嫌いはあるもので、大昔に読んでも場面の1つ1つが脳裏に浮かび、決めゼリフがするりと出てくる作品もあれば、自分がブログにあらすじや感想をメモしているのに読んだことすら覚えていないものもあり……不思議だなあ。この話、本当に読んだのかなあ?
そんな記憶の残滓にまた1冊。
『転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております』 森下りんご
ここ数年やたらに多いTS転生で、定番の殖産・内政チートものなんだけれど、キャラが面白く、テンポが良いのですね。お約束の部分は途中過程を大きく端折ってジャンプ。起業編や諸国漫遊編は最初からなかった。気がついたらマリア様が見てた……。
主人公の目的と立ち位置が最初にしっかり決まっていると、あちこちぶっ飛んでも話がぶれないという見本ですね。この場合は「男×男は無理!」ということなんですが、最初からトップスピードでぶっ飛んでいきます。
『城主と蜘蛛娘の戦国ダンジョン』 朽木外記
光と闇の戦いの最前線に遅滞戦闘用の陣地としてポンと捨て置かれた迷宮を、なんとか無事に完成させて人間・エルフ・ドワーフ連合軍から守り抜かんとするダンジョンコアの化身こと拠点精霊のおっさんの奮闘記。ひとことでいうと「迷宮は完成するまでが面白い」。
戦国小説を彷彿とさせる古めかしい登場人物たちの語り口で古い言葉と新しい軍事用語が入り交じって語られ、ひたすら真面目に迷宮の建設と防衛が行われているのに何故か読後感はユーモラスです。
『魔王殺しの《死に狂い》』 草薙刃
戦国ダンジョンと同様「まぜるなキケン」な時代小説+ファンタジーな剣豪もの。
魔王討伐の勇者パーティーに大陸の東のはずれの島国から送り込まれたサムライが勇者からクビを宣告されてしまうが、勇者たちの旅を、なんでわざわざ遠回りしなくちゃいけないのだ?「とりあえず、魔王城でも落としてみるか」と単身まっすぐ殴り込んで勝手に魔王を討伐してしまったサムライの物語。
大陸の文明国からは辺境の蛮族と侮られがちな小さな島国「八洲」だけれど、その実態は魔王をあっさり倒したユキムラを上回るサムライがごろごろいるのだ。舐められたら殺す!のサムライがファンタジー世界を闊歩して、魔王やら不死の王やら邪竜らと斬った張ったするサムライ・ファンタジー。
『亡びの国の征服者』 不手折家
ニートだった青年は、川に落ちた少女を救って死に、見知らぬ世界に、耳の少しとがった民の息子ユーリとして転生した。田舎の牧場の跡継ぎになるのだと思っていたユーリだったが、父親の実家の事情から都の騎士院へと進学することになる。
異世界転生して前世知識と思い切りの良い判断でのし上がっていく立身出世譚だけれど、タイトルにあるようにやがて国は亡び、主人公は魔王と呼ばれるようになって世界征服に乗り出すことになります……というか、平和な生活のためには自分が魔王になってでも攻める気満々、こちらを滅ぼす気ありありな周辺諸国をすべて平らげるしかないし、やるなら徹底的にやらないとこっちは後がないんだ!……という最終決戦。序盤から上げては落とす、緩急自在の展開と主人公を取り巻くキャラクターが魅力です。
『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』 之貫紀
世界に突如としてダンジョンが現れて3年。たまたま、偶然から、出会い頭に経験値を稼いでしまった芳村は、無責任な上司に見切りをつけてダンジョン・エクスプローラとして生計を立てることにした……というところから始まる現代ダンジョン攻略譚。いきなり強くなってダンジョン攻略という話は多いのだけれど、この話の面白いところはなんでも「なんとなく」では済ませないところ。どうして、出てくるモンスターが地球の神話伝説や創作物まんまなの? どうして、モンスターを倒すとドロップアイテムが出てくるの? ダンジョンができて、モンスターからアイテムがポップするようになった社会の政治とか経済とか軍事とか文化とかどうなっちゃうの?というあたりまで丹念に、そして面白おかしく読ませちゃうのです。なんとなく神様が日本のゲームをパクりましたとか、ダンジョンにモンスターが出てくるのに日常生活はそれ以前とは変わりませんとか、おかしいよね?とツッコみたくなる人を納得させる作品です。
『ホラー女優が天才子役に転生しました』 鉄箱
ホラー女優が自動車事故で死に、お金持ち夫婦の一人娘として転生。一般的知名度はなかったけれど共演者やスタッフなどに高く評価された演技力を駆使して天才美少女子役としてハリウッドデビューをめざす演劇小説。
物語そのものは彼女を取り巻く人々の悩みや葛藤を演技を通じて昇華させていく正統派の話なんだけれど、特撮なしでホラー映画の恐怖シーンを演じられる女優の変態的な演技力そのまま受け継いだ主人公とのギャップが楽しく、若干の百合テイスト。
『俺は星間国家の悪徳領主!』 三嶋与夢
周囲の者に裏切られ続けて死んだ男が、星間国家で領主の息子として転生。もう人に利用されるだけの人生はごめんだ、今度の人生は弱い者を踏みにじり贅沢三昧で生きてやるんだと悪徳領主としての道を邁進するものの、根が小市民。自分では好き放題に生きているつもりが周囲からは真面目、質実剛健、有能と本人の希望と正反対の評価をされていく立身出世譚。
この壮大さとバカバカしさが同居する世界こそ、まさにスペースオペラの正当な後継者です。
『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す』 Schuld
TRPGにおいてルールを隅々まで読み込んで、その裏を読み、最適解を導き出し、あくまでルールで認められた範囲内で強力なキャラクターを作るプレイヤーをデータ・マンチキンとかパワープレイヤーなどと呼称するわけですが、そのマンチが異世界に転生したところから始まる異世界冒険譚。
効率的にキャラクターを育てていこうというのは異世界転生ものの定石ですが、ストーリーそのものに個性があり、展開が巧く、合間合間にはさまるコラムやIF展開がセッションぽくて面白いのです。
『オールラウンダーズ!!』 サエトミユウ
前世の記憶を取り戻した5歳児が、ネグレクトをはねつけ、肉弾戦でも魔法戦でもS級冒険者と互角以上に渡り合う能力を身につけ、不思議な魔導具を開発したり、酒や料理で他人をうならせながら、好き勝手に冒険していく異世界転生譚。
人づきあいが苦手で不器用なベテラン冒険者のおっさんと、人嫌いで不信感の塊に育った幼女との二人三脚のバディ小説です。会話のかけあいとストーリー展開がどちらもテンポ良く、一気に読めます。
『ボクは再生数、ボクは死』 石川博品
ビジネスから教育、レジャーまでVRを利用するのが普通になった時代、FPSゲームにのめり込んだ男が、TS百合にはまり、ネカマの動画配信者としての稼ぎを風俗嬢につぎ込んでいくという、VRTS百合バイオレンス小説。動画再生数を伸ばすために、次第に過激な方向に走り始め、血を血で洗う抗争劇の真っ只中でカメラを止めるな!という話で、結論は「戦いは数だよ!」に。そして、あれだけ凄惨な殺し合いをした後に平然とオフ会をしちゃうあたりが、虚実の切り分けができるベテランぽいっというより、こいつら「壊れてるよね」という感じになっちゃいます。
『地球さんはレベルアップしました!』 浦之瀬開
現代社会にダンジョンが出現し、たまたま最初のダンジョン創成に巻き込まれた少女が、人より少しだけ強くなって生還。みんなを引っ張ってダンジョンに挑む……という、ある意味定番の話なんだけれど、まずダンジョンが出現した理由を「地球さんはレベルアップしました!」ですべて説明したことにして、その上でダンジョンものでありがちなPKとか犯罪的なあれこれを地球さんが用意したカルマシステムが排除してしまうもので、緊迫していてもどこかほのぼのとして雰囲気でまとめてしまいます。命懸けではあっても、あくまでダンジョンとの勝負であり、PKとか政府の思惑とか裏のごちゃごちゃした枝葉は無視して良いのです。
こうなると、単なるルーチンで強くなって、主人公がみんなに認められていくというありきたりな話になりがちですが、そこを主人公の性格と言動でひっくり返します。
これはダンジョンが出現するようになった世界で、より強くなろう、強くなってみんなを護ろうと頑張る話であると同時に、これからの世界は力がないと危険だとみんなの自覚を促し、感化し、みんなで強くなろうと頑張る話。自分が強くなった秘訣を隠匿して一人勝ちを目指す話じゃないというところが、まさに良きジュブナイル百合小説なのです。
以上、今年発売のお薦め11選。とりあえず筆頭は『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』、それから『城主と蜘蛛娘の戦国ダンジョン』、『ボクは再生数、ボクは死』あたりが続きます。一般的な売れ筋ではなく、いわゆるSFとかファンタジーとか時代小説とか、山田風太郎とかホーガンとかさんざん読みふけってきた大人(年寄り)向けのセレクションです。
最近は、検索アピール対策とかあれやこれやで内容概要や序盤展開をまとめたタイトルが目立ちますが、結果として「似たり寄ったりの話ばかりと最初から分かっちゃってると読む気が失せるなあ」と息子が言ってます。確かに内容まとめたものに、あまり個性が見られませんね。もう、「追放」とか「今さら遅い」とか「ハーレム」とか「成り上がり」とか、タイトルにするのはやめませんか? 読めばそれなりに工夫していて個性もあるけど、タイトルで読む気が失せるので、そこをあえて「とりあえず序盤だけでも読んでみよう」と行動に移すにはなかなかエネルギーが必要なのです。
あと、なんとかかんとかオンライン……みたいなサブタイトルをつけるのはやめましょう。検索していてもアルファベットの長い羅列が途中で表示窓からはみ出してしまって認識できないのです。毎日何十本とウェブ小説を読んでいると、タイトル不明の更新表示が出てくるのはストレスなのです。
ああ、今年ももう終わり。早いなあ。新型コロナ対策で右往左往しているうちに1年終わっちゃいました。
来年は明るい年になりますように。
それはともかく、選んで買って読んでいるつもりでも当たり外れとか好き嫌いはあるもので、大昔に読んでも場面の1つ1つが脳裏に浮かび、決めゼリフがするりと出てくる作品もあれば、自分がブログにあらすじや感想をメモしているのに読んだことすら覚えていないものもあり……不思議だなあ。この話、本当に読んだのかなあ?
そんな記憶の残滓にまた1冊。
『転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております』 森下りんご
ここ数年やたらに多いTS転生で、定番の殖産・内政チートものなんだけれど、キャラが面白く、テンポが良いのですね。お約束の部分は途中過程を大きく端折ってジャンプ。起業編や諸国漫遊編は最初からなかった。気がついたらマリア様が見てた……。
主人公の目的と立ち位置が最初にしっかり決まっていると、あちこちぶっ飛んでも話がぶれないという見本ですね。この場合は「男×男は無理!」ということなんですが、最初からトップスピードでぶっ飛んでいきます。
『城主と蜘蛛娘の戦国ダンジョン』 朽木外記
光と闇の戦いの最前線に遅滞戦闘用の陣地としてポンと捨て置かれた迷宮を、なんとか無事に完成させて人間・エルフ・ドワーフ連合軍から守り抜かんとするダンジョンコアの化身こと拠点精霊のおっさんの奮闘記。ひとことでいうと「迷宮は完成するまでが面白い」。
戦国小説を彷彿とさせる古めかしい登場人物たちの語り口で古い言葉と新しい軍事用語が入り交じって語られ、ひたすら真面目に迷宮の建設と防衛が行われているのに何故か読後感はユーモラスです。
『魔王殺しの《死に狂い》』 草薙刃
戦国ダンジョンと同様「まぜるなキケン」な時代小説+ファンタジーな剣豪もの。
魔王討伐の勇者パーティーに大陸の東のはずれの島国から送り込まれたサムライが勇者からクビを宣告されてしまうが、勇者たちの旅を、なんでわざわざ遠回りしなくちゃいけないのだ?「とりあえず、魔王城でも落としてみるか」と単身まっすぐ殴り込んで勝手に魔王を討伐してしまったサムライの物語。
大陸の文明国からは辺境の蛮族と侮られがちな小さな島国「八洲」だけれど、その実態は魔王をあっさり倒したユキムラを上回るサムライがごろごろいるのだ。舐められたら殺す!のサムライがファンタジー世界を闊歩して、魔王やら不死の王やら邪竜らと斬った張ったするサムライ・ファンタジー。
『亡びの国の征服者』 不手折家
ニートだった青年は、川に落ちた少女を救って死に、見知らぬ世界に、耳の少しとがった民の息子ユーリとして転生した。田舎の牧場の跡継ぎになるのだと思っていたユーリだったが、父親の実家の事情から都の騎士院へと進学することになる。
異世界転生して前世知識と思い切りの良い判断でのし上がっていく立身出世譚だけれど、タイトルにあるようにやがて国は亡び、主人公は魔王と呼ばれるようになって世界征服に乗り出すことになります……というか、平和な生活のためには自分が魔王になってでも攻める気満々、こちらを滅ぼす気ありありな周辺諸国をすべて平らげるしかないし、やるなら徹底的にやらないとこっちは後がないんだ!……という最終決戦。序盤から上げては落とす、緩急自在の展開と主人公を取り巻くキャラクターが魅力です。
『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』 之貫紀
世界に突如としてダンジョンが現れて3年。たまたま、偶然から、出会い頭に経験値を稼いでしまった芳村は、無責任な上司に見切りをつけてダンジョン・エクスプローラとして生計を立てることにした……というところから始まる現代ダンジョン攻略譚。いきなり強くなってダンジョン攻略という話は多いのだけれど、この話の面白いところはなんでも「なんとなく」では済ませないところ。どうして、出てくるモンスターが地球の神話伝説や創作物まんまなの? どうして、モンスターを倒すとドロップアイテムが出てくるの? ダンジョンができて、モンスターからアイテムがポップするようになった社会の政治とか経済とか軍事とか文化とかどうなっちゃうの?というあたりまで丹念に、そして面白おかしく読ませちゃうのです。なんとなく神様が日本のゲームをパクりましたとか、ダンジョンにモンスターが出てくるのに日常生活はそれ以前とは変わりませんとか、おかしいよね?とツッコみたくなる人を納得させる作品です。
『ホラー女優が天才子役に転生しました』 鉄箱
ホラー女優が自動車事故で死に、お金持ち夫婦の一人娘として転生。一般的知名度はなかったけれど共演者やスタッフなどに高く評価された演技力を駆使して天才美少女子役としてハリウッドデビューをめざす演劇小説。
物語そのものは彼女を取り巻く人々の悩みや葛藤を演技を通じて昇華させていく正統派の話なんだけれど、特撮なしでホラー映画の恐怖シーンを演じられる女優の変態的な演技力そのまま受け継いだ主人公とのギャップが楽しく、若干の百合テイスト。
『俺は星間国家の悪徳領主!』 三嶋与夢
周囲の者に裏切られ続けて死んだ男が、星間国家で領主の息子として転生。もう人に利用されるだけの人生はごめんだ、今度の人生は弱い者を踏みにじり贅沢三昧で生きてやるんだと悪徳領主としての道を邁進するものの、根が小市民。自分では好き放題に生きているつもりが周囲からは真面目、質実剛健、有能と本人の希望と正反対の評価をされていく立身出世譚。
この壮大さとバカバカしさが同居する世界こそ、まさにスペースオペラの正当な後継者です。
『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す』 Schuld
TRPGにおいてルールを隅々まで読み込んで、その裏を読み、最適解を導き出し、あくまでルールで認められた範囲内で強力なキャラクターを作るプレイヤーをデータ・マンチキンとかパワープレイヤーなどと呼称するわけですが、そのマンチが異世界に転生したところから始まる異世界冒険譚。
効率的にキャラクターを育てていこうというのは異世界転生ものの定石ですが、ストーリーそのものに個性があり、展開が巧く、合間合間にはさまるコラムやIF展開がセッションぽくて面白いのです。
『オールラウンダーズ!!』 サエトミユウ
前世の記憶を取り戻した5歳児が、ネグレクトをはねつけ、肉弾戦でも魔法戦でもS級冒険者と互角以上に渡り合う能力を身につけ、不思議な魔導具を開発したり、酒や料理で他人をうならせながら、好き勝手に冒険していく異世界転生譚。
人づきあいが苦手で不器用なベテラン冒険者のおっさんと、人嫌いで不信感の塊に育った幼女との二人三脚のバディ小説です。会話のかけあいとストーリー展開がどちらもテンポ良く、一気に読めます。
『ボクは再生数、ボクは死』 石川博品
ビジネスから教育、レジャーまでVRを利用するのが普通になった時代、FPSゲームにのめり込んだ男が、TS百合にはまり、ネカマの動画配信者としての稼ぎを風俗嬢につぎ込んでいくという、VRTS百合バイオレンス小説。動画再生数を伸ばすために、次第に過激な方向に走り始め、血を血で洗う抗争劇の真っ只中でカメラを止めるな!という話で、結論は「戦いは数だよ!」に。そして、あれだけ凄惨な殺し合いをした後に平然とオフ会をしちゃうあたりが、虚実の切り分けができるベテランぽいっというより、こいつら「壊れてるよね」という感じになっちゃいます。
『地球さんはレベルアップしました!』 浦之瀬開
現代社会にダンジョンが出現し、たまたま最初のダンジョン創成に巻き込まれた少女が、人より少しだけ強くなって生還。みんなを引っ張ってダンジョンに挑む……という、ある意味定番の話なんだけれど、まずダンジョンが出現した理由を「地球さんはレベルアップしました!」ですべて説明したことにして、その上でダンジョンものでありがちなPKとか犯罪的なあれこれを地球さんが用意したカルマシステムが排除してしまうもので、緊迫していてもどこかほのぼのとして雰囲気でまとめてしまいます。命懸けではあっても、あくまでダンジョンとの勝負であり、PKとか政府の思惑とか裏のごちゃごちゃした枝葉は無視して良いのです。
こうなると、単なるルーチンで強くなって、主人公がみんなに認められていくというありきたりな話になりがちですが、そこを主人公の性格と言動でひっくり返します。
これはダンジョンが出現するようになった世界で、より強くなろう、強くなってみんなを護ろうと頑張る話であると同時に、これからの世界は力がないと危険だとみんなの自覚を促し、感化し、みんなで強くなろうと頑張る話。自分が強くなった秘訣を隠匿して一人勝ちを目指す話じゃないというところが、まさに良きジュブナイル百合小説なのです。
以上、今年発売のお薦め11選。とりあえず筆頭は『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』、それから『城主と蜘蛛娘の戦国ダンジョン』、『ボクは再生数、ボクは死』あたりが続きます。一般的な売れ筋ではなく、いわゆるSFとかファンタジーとか時代小説とか、山田風太郎とかホーガンとかさんざん読みふけってきた大人(年寄り)向けのセレクションです。
最近は、検索アピール対策とかあれやこれやで内容概要や序盤展開をまとめたタイトルが目立ちますが、結果として「似たり寄ったりの話ばかりと最初から分かっちゃってると読む気が失せるなあ」と息子が言ってます。確かに内容まとめたものに、あまり個性が見られませんね。もう、「追放」とか「今さら遅い」とか「ハーレム」とか「成り上がり」とか、タイトルにするのはやめませんか? 読めばそれなりに工夫していて個性もあるけど、タイトルで読む気が失せるので、そこをあえて「とりあえず序盤だけでも読んでみよう」と行動に移すにはなかなかエネルギーが必要なのです。
あと、なんとかかんとかオンライン……みたいなサブタイトルをつけるのはやめましょう。検索していてもアルファベットの長い羅列が途中で表示窓からはみ出してしまって認識できないのです。毎日何十本とウェブ小説を読んでいると、タイトル不明の更新表示が出てくるのはストレスなのです。
ああ、今年ももう終わり。早いなあ。新型コロナ対策で右往左往しているうちに1年終わっちゃいました。
来年は明るい年になりますように。