付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ななぱっぱ~パパは15歳」 岡崎裕信

2010-01-31 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 鎌田市役所勤務の公務員、鶴谷天馬は目が覚めたら15歳の身体になっていた。7人の娘の父なのに15歳以降の記憶を失い、すっぽんぽんのまま目覚めた天馬は……。

 スーパーダッシュ文庫11冊目の作品はかなり路線を変えてきました。『KLAN』の方向に走ってくれると良かったのに、なんか最大公約数的なラインを狙ってきましたよ……。
 岡崎裕信はメインキャラの数が少ない方が面白いと思うんだ。これはこれで悪くないけれど、岡崎裕信らしさが足りないと思いました。

【ななぱっぱ】【パパは15歳】【岡崎裕信】【Show】【ハーレム】【勃起】【昭和】【式神】【妖怪】【神格】【風水算術士】
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「朧村正~鳥籠姫と指切りノ太刀」 海法紀光

2010-01-30 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 妖刀村正の回収に送り込まれた公儀隠密・鬼助は、その太刀を手に取った瞬間に抜け忍となった。仲間を斬り、追っ手を討ち、村正が打ちし“指切りノ太刀”に導かれるように鬼助は結界に守られし隠れ里へと辿り着く。
 抜け忍・鬼助と結界に守られし隠れ里の主、蛟姫との対決。そこに立ち塞がるのは、やはり剣に魅入られし飯綱陣九朗にして百姫! そして、隠れ里に姿を見せる柳生雪乃丞の目的は!?

 みのり文庫と聞いてみのり書房が文庫を出したのか!?と一瞬思った私は大バカモノです。
 山田風太郎で育った身には、エロもグロもちいとばかし物足りなかったけれど、基本的にゲームなどのノベライズがメインの文庫のようですから、これ以上は読者に受け入れられないかも知れません。ただ、もうちょっとエロチックでもバチが当たらないと思うなあ……。
 二振りの妖刀の物語はまだまだ続くようなので、ここは続きに期待しましょう。

【朧村正】【鳥籠姫と指切りノ太刀】【海法紀光】【藤ちょこ】【裏柳生】【妖刀】【生け贄】【温泉】
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「十三番目のアリス(4)」 伏見つかさ

2010-01-29 | 超能力・超人・サイボーグ
 金髪碧眼の大和撫子、ツンデレのツンがひどすぎな九条院アリスの物語も4巻ですが、話はここで中断し、電撃以外にも書きつつ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』が好調に巻を重ねてもう4巻。もう2冊くらいあれば、完結させることもできそうな展開なんだけどなあ。

「自信がないだなんていうのは、怠けものの言い訳でしかありません。やることをやらないで堕落している生ごみ以下の人間が、口癖のようにのたまう台詞です」
 自分のことさえ信じられない人間に生きている価値はないと九条院アリス。

 南海の人工島に建設された姉妹校に短期留学……といっても、今は夏休み。留学というよりバカンス気分のアリスや三月たちだが、そこが組織の拠点の1つであることを知っているリリスの前に七番目のノエルが立ちふさがる……。

 キャッチコピーは「ハイ・ゴシックストーリー」だけれど、それは間違っているでしょ? いくら「ハイ」を付けても中世っぽいわけでもないし、そんなに神秘的でも幻想的でもないし……。
 確かに、心臓に古代遺跡から発見したオーパーツを埋め込んだ少女が、同じ運命の少女たちと死闘を繰り広げる……という基本ラインだけを抜き取ればゴシック小説っぽいといえないでもありませんが、美少年に女装させてお買い物とか、ドタバタ倒錯的ソフトSM学園小説な部分の方が目立つので、あまりそんな雰囲気にはなりません。まあ、それでシリアスなストーリー部分を切り取ってしまうと『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』になってしまうのでしょうが……。

【十三番目のアリス】【伏見つかさ】【シコルスキー】【水着コンテスト】【ぬいぐるみ】【秘密基地】【メガフロート】【女装】【毒舌】
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「キケン」 有川浩

2010-01-29 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 最近、有川浩がぽんぽんと出て、いちばん面白かったのは『シアター』だけど、これもなかなか。ブログ「さて次の企画は」で乙木一史が「リアリティの範疇に収まる学園変人モノ」≠「学園超人活劇」と分類していたタイプの作品で、あまりにはまっていたので引用させていただきました。

「勝たんまでも負けん!」

 成南電気工科大学の機械制御研究部だから通称「キケン」。単なる語呂合わせの略称みたいなものだけれど、2回生に<ユナ・ボマー>上野と<大魔神>大神の2人が居座るこのキケンは、頭数では弱小ながら怒らせたら危険な相手として学内に知れ渡っていた……。

 新入生勧誘からロボット相撲大会まで、1回生<お店の子>元山が体験するキケンのキケンな1年ちょいの物語。学校モノって、別に悪の組織とか異能力者とか魔法とか出てこなくても十分に楽しいのだけれど、そういう普通の学園生活の話を読んで愉しめるのは、自分が普通の学園生活とは縁がなくなってからかも知れません。
 「今」を認識するラストが良かったです。自分にも思い当たるふしはあるから、なおさらかな。
 こういう話が「電撃文庫MAGAZINE」とか「ドラゴンマガジン」とかではなく、「小説新潮」で連載されていたってあたりは重要です。

【キケン】【有川浩】【徒花スクモ】【犯罪】【ラーメン】【ロボット相撲】【学園祭】【新歓】【自爆禁止】【ゴールドライタン】
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「空耳アワワ」 阿川佐和子

2010-01-28 | エッセー・人文・科学
「今どきの若い女の子は、すっごいすっごいを連発して、あいつら、バカか、死ね!」
 作家・阿川弘之の言葉。

 初出を調べようと思ったら、オンライン系書店でそこまで記載してある本屋が少なく苦労しましたがbk1にて発見。『婦人公論』に「ああだこうだ」のタイトルで連載されたエッセイからのより抜きだそうです。でも、考えてみれば、本が手元にあるんだから、開いた方が早かったよね。
 タレント阿川佐和子がアニサキスにやられたことから納豆の食べ方まで、日常のあれこれを思いつくままに書きつづったエッセイ集。『タモリ倶楽部』の「空耳アワー」をもじっただろうタイトルだろうけれど、もとが「ああだこうだ」ということを考えると案外とテキトーに決めている気がします。

 単行本が2005年で、この文庫が2008年。この人のエッセイを意識して読み始めたのは雑誌『LEE』に連載していた、檀ふみとの往復エッセイ『ああ言えばこう食う』から。この頃は「結婚適齢期をかなり過ぎてしまったけれど、やっぱり結婚したいよねえ~?」という雰囲気が漂っていたのに、この頃は「あれこれ困ったことが多いけれど、これってやっぱり老化なのかしら」という話が多いのでしょぼん。

【空耳アワワ】【阿川佐和子】【空耳】【胃カメラ】【下着】【老化現象】【摺り足に美人なし】【スッポンポン】【えっ?】【納豆】
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「ベン・トー5~北海道産炭火焼き秋鮭弁当285円」 アサウラ

2010-01-28 | 食・料理
『エロい女性を軽蔑する男がこの世のどこにいようか』

 スーパーマーケットの半額弁当を巡って夜ごと戦いを繰り広げる狼たちの物語、熱血武闘派弁当小説「ベン・トー」も5巻。超能力も拳法の奥義も出てこないのに、ここまで熱い闘いが繰り広げられるというのは不思議。『私闘学園』が好きで、メシの美味そうな話が好きな人には二重丸でお奨め。
 今回は合宿直後の帰省した実家での顛末から、動き始めた<ダンドーと猟犬群>との激闘、そしてあやめと洋の幼馴染みにして妹系アイドルの鬼灯ランの出現まで。名も分からない茶髪少女はあいかわらず強いなあ。こういう名も知らぬ男女がときには戦い、ときには協力する物語は好き。<氷結の魔女>と<オルトロス>沢桔姉妹のタックも熱い。エースのジョーとか普通に出てきそうです。
 しかし、カラー口絵のツインテールの美少女に「佐藤洋(主人公)」とか書いてあってびっくりしたけど、主人公が女装したとか性転換したとかではなく、単に写植ミスだった模様。これ、鬼灯ランでしょ?

【ベン・トー】【北海道産炭火焼き秋鮭弁当285円】【アサウラ】【柴乃櫂人】【スーパーダッシュ文庫】【ダンドーと猟犬群】【ホブヤー】【ホッケ弁当】【肉詰めピーマン弁当】【暗闇でドッキリ】【交換学生】【暗黒太極拳】【JoJo】
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「鬼がつくった国・日本」 小松和彦&内藤正敏

2010-01-27 | エッセー・人文・科学
 この本を誰にいつ薦められたかは定かじゃありません。手元にあるのは91年刊行の文庫だけれど、ハードカバーは85年だから88のときかもしれませんね。ちょうど夢枕獏や笠井潔が売れ始め、栗本薫が『魔界水滸伝』、西村寿行が『鬼』を発表していた頃の話です。とにかく「日本の伝奇について語るというのであれば、これは最初に抑えておけ」という薦められ方をしたのだと思います。

「いつの時代の権力者も、権力・権威を支えるために最先端の技術を欲しがるわけですよ」
 九鬼水軍もそうであったと小松和彦の言葉。

 「鬼」とは単に悪を象徴する伝説の妖怪ではありません。
 定住者である支配者に敗北した者、排斥された者であり、山に逃げた一部の宗教者であるというのが著者らの意見です。そして権力者たちにしてみれば、こうした反権力集団、非定住グループというのは滅ぼさなければならない集団であると同時に、その技術を利用しなければならない存在だったのです。
 八岐大蛇が製鉄技術者たちの暗喩だという説もあります。式神を紙で作るといっても、当時は紙そのものが貴重品でした。そこに定住者=農耕民+支配者と製鉄、製紙、製塩といった技術を有する非定住者との対立なり依存関係があるわけです。
 いちばん興味深かったのは、徳川家康は寛永寺や日光東照宮とセットで東海道五十三次を整備しましたが、53人の普賢菩薩の十大願を聞いて阿弥陀浄土に移りたいと願ったという善財童子の故事に習うことで、終点である京を阿弥陀浄土=この世ではない世界とし、それによって天皇と政治を呪的にも切り離したのだという説です。

【鬼がつくった国・日本】【歴史を動かしてきた「闇」の力とは】【小松和彦】【内藤正敏】【言霊】【鬼ごっこ】【役行者】【京都】【陰陽師】【空海】【琵琶法師】【紙=神】
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「オオカミさんとおかしな家の住人たち」 沖田雅

2010-01-27 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「その人のキャラクターなんて、包装紙みたいなもので、なにをかぶってようが、中身は変わらない……」
 魔女先輩の言葉。

 今回はオオカミさんたちの下宿の住人を中心にした物語。親に捨てられたも同然で兄妹の絆が固くなりすぎてしまったグレーテルさんが魔女を追いかけ回す話とか、男性不信の白鳥さんと阿比留さんの話とか、テーマは重い話が多いけれど無理やりにでもハッピーエンドにしているので読後感は良いのです。亮士くんとオオカミさんの恋も匍匐前進しているようなので、よかった、よかった……。
 TVアニメ化も決定らしいけど、深夜枠だろうなあ。

【オオカミさんとおかしな家の住人たち】【沖田雅】【ヘンゼルとグレーテル】【みにくいアヒルの子】【雪の女王】【ボーイ・ミーツ・ガール】【発情】【女握り】【ぽかぽか】
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「KGBの世界都市ガイド」 訳:小川政邦

2010-01-26 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「止まれ! ばか者、止まれ! 敵に信号を送っていると思われるぞ!」
 海辺で走り出した妻に向かって叫んだイギリスの作家D・H・ロレンスの悲鳴。コーンウォールに移り住んだロレンスだが、ドイツ人女性と結婚したこと、彼が作家であるということから、夫婦は常に周辺住人すべてから監視され、洗濯物を干すことさえままならなかった。

 KGBといえばソ連の国家保安委員会であり、冷戦時代には共産陣営のスパイ網の中核としてさまざまな工作活動をおこなってきた巨大な権力機構です。かつてはスパイ映画や小説における敵の親玉の代名詞でもありました。
 それがソビエト社会主義共和国連邦が解体され、KGBも改組され、核戦争で人類絶滅もありうるといわれていた東西冷戦も今は昔。戦争の危険性としては東西対立で構図がはっきりしていた当時より混沌としてしまった今の方が危ないともいわれていますが、それはともかくとしてKGBのエージェントがどのように採用され、世界各国に派遣されてはどのような活動をしていたかとか、彼らから見た世界の主要国の姿はどうなのかとか、気軽に読める時代が来てしまいました。
 60年代に日本に赴任した新米エージェントの回顧やらリオのシュラスカリアで24種類の肉を堪能した話、ボリショイのバレリーナを連れてティファニーを訪れたときのことなど、11人の退役した諜報部員たちが語るKGBとしての日々。

【KGBの世界都市ガイド】【小川政邦】【ユーリイ・センケヴィチ】【娼婦】【愛国者】【イギリス人】【ランデヴー】【切手収集家】【ジャーナリスト】【動物園】【情報提供者】
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「少年テングサのしょっぱい呪文」 牧野修

2010-01-26 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 可愛く巧いイラストに乗せられ手に取り、いかにもおバカっぽい学園ストーリーのような帯に騙され購入し、途中まで読んで思ったのは「この作者の牧野修って『黎明コンビニ血祭り実話SP』の牧野修? 『三人のゴーストハンター』の牧野修!?」という絶望感。だから、ホラーミステリーとか、人間のどす黒い部分をひねくりだしてこね回す話って基本的に苦手なんだってば……。

 学校をさぼって喫茶店『不眠症』でバカ話に興じている高校生三人組の前に姿を現したのは、幽霊では無かろうかという怪しげな中年女性。彼女は三人組のリーダー格にして熱血漢のテングサに向かって「人を殺してほしい」と依頼してきた……。

 邪神というものが存在している世界。実在が判明して右往左往したあげく人類は、その邪神を憑依させた人間に法人格を与えて認知することにしてしまった。これまでの宗教法人よりはちょいと確率の高い神頼みである。邪神は気まぐれで邪悪なのが本質だからあまり頼りにしてはいけないけれど、無視してしまうには強大な力を持ちすぎている。だから呪殺だなんだというお願いに対しては、厳密に書類審査を審議会で行った上で許可するようにしているし、許可を得てお願いしたところで本当に願いが叶うかわからない。
 そんな世界で、邪神を宿らせてしまったテングサと仲間たちが大好きな先輩を守ってドタバタじたばたする話です。
 面白いけれど、けっこうグロいし、救いがないところには救いはないし、人死にが出てしまえば何もなかったことにはできないわけで、すっきりさわやかな話ではありません。表紙に騙された……。

【少年テングサのしょっぱい呪文】【牧野修】【すめらぎ琥珀】【バカ三人組】【コスプレ姐さん】【美少女殺し屋】【時間】【邪神】
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「アルサラスの贖罪(3)~善と悪の決戦」 ディヴィッド&リー・エディングス

2010-01-25 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 エディングス最後の未訳長編もこれにて完結。
 大傑作ではないけれど、面白かったと満足させてもらいました。といっても「ベルガリアード&マロリオン物語」や「エレニア&タムール記」をしのぐには至らなかったのは残念というか、あの4シリーズが偉大だったというべきか。
 日本語の副題は「善と悪の決戦」だけれど、壮大な戦いが話に決着をつけはしません。大きな戦は方々で起きますが、なんといっても盗賊にして詐欺師で殺し屋というアルサラスの物語ですから、最後までコン・ゲームみたいなものです。そこがこのゲームのポイントですよね。
 単なる英雄譚ではなく、嘘と殺しと盗みで生きてきた男と愛と正義の女神が互いに影響を与え合う二人三脚の物語なのです。

【アルサラスの贖罪】【善と悪の決戦】【ディヴィッド&リー・エディングス】【碧風羽】
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「作家のおやつ」 コロナブックス

2010-01-25 | 食・料理
 「作家」と呼ばれる人たちの食卓や愛犬などを追いつづけるコロナブックスの作家シリーズで、これもむしゅさんの置き土産(取りに来る気はあるんだよね?)。三島由紀夫から池波正太郎や川端康成までを対象にその愛したおやつや書斎風景などの写真と日記や随筆からの抜粋などをまとめた1冊。
 おやつというのは日常の象徴です。
 書斎の様子などと共に紹介されるおやつによって、その人たちが創作活動をおこなっていた日々の光景も映し出されていくのですね。

「……一番のおやつはヒロポンとアドルムということになるが、薬をおやつとは言わないから、まねしてはいけません」
 嵐山光三郎が坂口安吾のおやつについて語った一文より。

 純粋な作家以外にも食べた食事やおやつを手帳に書き込み続けた小津安二郎もいるし、書斎に置かれた球体関節人形の裸身と栗の実のコントラストが異様な渋澤龍彦もいる。「チョコレートがないと描けない」と言い張る手塚治虫だっています。
 たかがおやつといっても千差万別。綺麗な菓子と色褪せた紙の山との対比が素敵な本でした。

【作家のおやつ】【コロナブックス】【シュークリーム】【みつ豆】【文士】
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「幾千の夜を超えて」 神月摩由璃

2010-01-24 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 「スペースオペラじゃないけれど、面白いから読んでごらん。」というSF作家野田昌宏の推薦文が載っているけれど、この野田昌宏の「スペオペは面白い!」という自信たっぷりの姿勢がすばらしい。
 で、これはエルフと出会った魔導士のまどろみを描いた『緑なす夢』、森に隠された館の呪いと戦う『リュスリナの剣』、氷の城への道が開かれる『幾千の夜を超えて』の3本収録。
 日本的なRPGなどの影響を受けたのではない、正統派エピック・ファンタジー短編集。マキリップとかタニス・リーの系統ですね。加藤直之による表紙イラストも、御本人はファンタジーはあまり好きではないとのことでしたが、いちばん好きな作品です。

【幾千の夜を超えて】【神月摩由璃】【加藤直之】【森川珠衣】【合わせ鏡】【時の旅】【詩】【神の剣】
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「シャーロック・ホームズ健在なり」 長沼弘毅

2010-01-23 | ミステリー・推理小説
 ホームズ・マニアのことをシャーロキアンと呼び、ホームズを実在の人物としてその足取りを辿り年表を作成していく学問をシャーロッキアーナというそうです。その「シャーロッキアーナの権威による力作」というので、そういう本かと思ったら、アーサー・コナン・ドイルの評伝でした。
 しかも、ホームズを実在の人物として取り扱い、事件は実際にあったこととする……はずのシャーロキアンなのに、ドイルの執筆内容のミスは徹底的に追求しています。特に銀星号(シルヴァー・ブレイズ)の事件では、競馬のことを全然知らないまま執筆してしまったドイルに対して、騎手の色分けがいい加減だとか事前チェックがデタラメとかさらにはオッズが……と、厳しい非難を浴びせています。
 さすがにちょっとおかしいなと思って略歴を調べてみれば、この長沼弘毅という人は1960年代には公営競技調査会会長だったのですね。つまり、戦後の競輪競馬などはどうあるべきかという方針を決めた人です。そりゃあ、厳しくもなりますね。
 翻訳家であり、江戸川乱歩賞選考委員であり、日本のシャーロキアンの草分けであり、講道館七段の柔道家であり、日本コロムビアの会長であり、税務署長経験者であり、大蔵省事務次官にまで上り詰めたという、むしろ著者自身が興味深いものでした。

【シャーロック・ホームズ健在なり】【長沼弘毅】【シルヴァー・ブレイズ】【ボヘミア国王の正体】【共同経営者】
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「三千世界の鴉を殺し(15)」 津守時生

2010-01-23 | 超能力・超人・サイボーグ
「個人的な記念日は、時々人生における時限爆弾に変わるね」
 見知らぬ少佐の言葉。

 宇宙軍を部隊にしたホームコメディと思えば間違いない気がしてきました。それも古いアメリカ製の、わざとらしい笑い声が挿入されるやつ。脳内では『奥様は魔女』と差し替えられようとしています。
 今回は、男と女が別れるだとかよりを戻すだとか、殺す殺されるの一幕。ちょうど1時間ドラマ分くらいの話でした。
 面白かったけれど、本筋をすっかり忘れてしまった気がします。

【三千世界の鴉を殺し】【津守時生】【麻々原絵里依】【離縁】【復縁】【贈収賄】【ドブネズミ】【男の嫁】【カクテル】【結婚詐欺】
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