付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「本好きの下剋上 短編集Ⅲ」 香月美夜

2025-01-22 | 本屋・図書館・愛書家
 短編集の3冊目。本編はもっぱらローゼマイン視点で話が進むのに対し、サブキャラたちの視点から裏でどんなことが起きていたのか、他の人はなにを考えていたのかという話。ファンブックなどの短編を集めた拾遺ものなので、まだ序盤の下町の話から本編完結のその後までいろいろ収録されていてちょっと嬉しい。終盤はホント政争と戦争がぎっしりだったので、ほのぼの分が不足してたのだ。

【本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~短編集Ⅲ】【香月美夜】【椎名優】【TOブックス】【ビブリア・ファンタジー】【しいなゆう】【四コマ漫画】
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「八犬伝」 原作:山田風太郎

2024-12-14 | 本屋・図書館・愛書家
「悪も勝つこともあるこの世の中だからこそ、別の世界を読者には味わってもらいたい」
 勧善懲悪、善因善果、悪因悪果が曲亭馬琴の作品作りの根底なのだ。

 滝沢馬琴は人気絵師の葛飾北斎に構想中の新作について語った。第三者として北斎の率直な感想が聞きたかったのだ。
 北斎はこんな面白い話はなかろうと絶賛するが、その挿絵を担当することは拒否した。どうせ馬琴があれこれ注文つけたり文句を言うから面倒くさいというのだ。そして、話を聞き終えた勢いで描き上げた渾身の挿絵3枚を、馬琴にチラ見せするや破り捨てた。
 このやりとりが、以後の彼らの交流スタイルとなった……。

 夫婦2人で、山田風太郎原作、役所広司主演の『八犬伝』を観てきました。妻は「八犬伝」といったらNHKの人形劇『新八犬伝』がまず脳裏に浮かぶ世代で、自分は直近で読んだのが鎌田敏夫の『新・里見八犬伝』で、忍法帖が混ざってよく分からなくなっているありさまでしたが、とにかく堪能できました。馬琴と北斎のやりとりに魅入られながらの2時間半。虚実のいずれが真なるやという創作論を軸に、親子・家族のあり方が混じり合いながら、南総里見八犬伝の名シーンが映し出されていきます。いや、『南総里見八犬伝』は書籍もコミックも多けれど、抄訳と翻案もので頭がぐちゃぐちゃ。なので山田風太郎版の八犬伝がどこまで原作に忠実で、それを映画がどこまでなぞっているか分かりませんけど(少なくとも結末は違います)。
 本というのはイラストが大事とか、原稿は上がっていても出版社の都合で刊行が遅れるとか、最近イラストレイターの原稿が遅れているとか、今でもよく聞く話でございますね。現実と物語とどちらか虚か実かとか、創作者にとってのテーマはいかにあるべきかとか、しっかり調べても面白さ優先で史実とかに嘘を交えても赦されるとか、やはり読者の生の感想は嬉しいとか、創作論が語られる曲亭馬琴パートと、どちらかというと2.5次元ののりで派手なアクションが繰り広げられる八犬伝パートが交互に語られます。
 難点は犬とか船とか、ときどきCGの出来に甘さが見えること。いちばん怖かったのは、芝居と現実いずれが真なるやと頭上から語りかける鶴屋南北。正直、このシーンだけで来た甲斐は合ったと思いました。

【八犬伝】【曽利文彦】【役所広司】【山田風太郎】【キノフィルムズ】【[虚]と[実]が交錯する前代未聞のエンターテインメント超大作】【内野聖陽】【土屋太鳳】【渡邊圭祐】【鈴木仁】【板垣李光人】【水上恒司】【松岡広大】【佳久創】【藤岡真威人】【上杉柊平】【河合優実】【小木茂光】【丸山智己】【真飛聖】【忍成修吾】【塩野瑛久】【神尾佑】【栗山千明】【中村獅童】【尾上右近】【磯村勇斗】【立川談春】【黒木華】【寺島しのぶ】【鉄砲】【四谷怪談】【赤穂浪士】【渡辺崋山】【鶴屋南北】【あれは、絵になる】
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「小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている」 望公太

2024-06-21 | 本屋・図書館・愛書家
 漫画部員の月見里司は週刊コメットの漫画賞で最終選考まで残ったことで担当編集もつき、今日も部室で次回作の絵コンテを描いている。
 そのコンテは後輩の小鳥遊には好評でバカウケなのだが、月見里はちょっと喜べない。小鳥は筋金入りのクズ漫画好きなのだ。

「1話はまあまあなんだけど、2話から急激にアンケ取れなくなって、7話くらいでテコ入れの突飛な新キャラが出てきて、14話辺りで中編がスベるけど今更修正きかなくて、18話辺りで打ち切りが確定して、そこから温存していたネタを一気に放出したらちょっと評判よくなって、ネットで『最初からこれやれよ』って言われながら打ち切られて、単行本のオマケページで使わなかった設定集と自分語りが書き下ろされることを……!」

 先の先まで妄想しながら小島は語り続けている……。

 人気マンガ週刊誌での連載獲得をめざす高校3年生男子と、打ち切りマンガの続きを読みたい2年生女子の物語。放課後の部室とか本屋への道すがらとかで打ち切り漫画語りを繰り広げます。この2人の間に「メジャーな人気マンガしか読まない2年生女子」とか「マンガは読めないし、読むとバカになると言い切る顧問教師」などが加わってのマンガ語りです。架空のマンガ雑誌やそれらに掲載されているマンガについて、ただただダベり続けます。架空の物語を創出し、ひたすらにその顛末について語り続けるという、ちょっと(個人的に)昔懐かしい物語です。
 買う気はなかったけれど、店頭で落ち着いた色彩で物語の1シーンを切り抜いたような表紙イラストが描かれているのに惹かれて購入。

【小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている】【望公太】【桶乃かもく】【MF文庫J】【第2回MF文庫J evoで圧倒的PV数を誇り受賞した問題作!】【ジョジョ】【ワンピース】【土俵際の美学】【敗者の生き様】【携帯マンガ】【漫画アプリ】【タイムリープ】
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「素人本屋・経営奮戦記」 ㈲ヒロシゲ文庫

2024-06-09 | 本屋・図書館・愛書家
 書店事業に足を踏み入れた社長が、自分の経験・知識不足や出版社や取次とのやりとりで苦労しながら経営していった経緯を赤裸々かつ読みやすく語ったもの。明日香出版社の刊行になってますが、ISBNコードも頒価も記載がないので、本当に記念の配布用なのでしょうか。確か、出版社の営業の方からいただいた本だったはずです。
 本を売りたいのに売れる本が取次から届かない。取次から優先的に(というか必要分だけ)本が入荷するようになるには実績をつくらねばならない。実績を作るには本を売らなくてはいけないのに、売れる本は入荷しない。売れる本を配本してもらうためには実績が必要で……の無間地獄。
 そういえば、もう無くなった近所の本屋も電撃文庫が発売日に配本されるようになったときは、特約店になれましたと喜びの宣言を大書してアナウンスしてたっけか。売るものないのに売れなきゃ仕入できないって辛いよね。

「ただ『それならこうして実績を作りましょう』みたいな指導をあまりしていただいた記憶がないのです」
 返本もできるのだから、出すのは慎重にという理屈は分かるけど……。

 だいたい最初からたくさん売れると分かっている専門店や大型店にドカンと送りつけて、それが売れ残って返本され始めてから小規模店にちょろちょろ流れ始めるもんなんです。大規模店はポップ効果を兼ねて話題作1000冊集めてタワー積みするのに、小規模店は事前発注分の10冊が届かない現実なのでした。

【泣き笑い 素人本屋・経営奮戦記】【 ㈲ヒロシゲ文庫/三宅誠一】【明日香出版社39周年記念出版】【ウソも隠しもいたしません!】【宮脇書店】【笑売】
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「万葉と沙羅」 中江有里

2024-06-07 | 本屋・図書館・愛書家
「本は生ものなんだ。いつまでもあると思っちゃいけない。読みたい、と思ったらぼくはできるだけ買う。次に行った時にあるとは限らないから」
 万葉は目が合った本は買えと。

 中学時代に不登校だった一橋沙羅は通信制高校に進む事にしたが、その登校日に幼馴染みの近藤万葉と再会する。だが、万葉の方は知らないふりで素っ気ない。いつも本を読んでいる理由のひとつが「返事しなくていい理由になる」というくらい人付き合いが嫌いだ。
 そんな万葉につれなくされても積極的に話しかけ続ける沙羅だが、もともと彼女だって人付き合いは苦手だし、そもそも人間関係のトラブルが不登校の理由だ。着ている服もゴシックっぽいドール風のドレスにした沙羅は、万葉との再会に高校デビューのすべてをかけていたのだ……。

 本を通じて広がっていく人間関係の中で、自分は何者になるのか、何をしたら良いのか、どう生きたら良いのか試行錯誤を続ける2人の男女の青春ストーリー。明解な結論はないし、登場人物は最後まで迷い続けているけれど、もつれていた糸がほどけ始めて、なんとなく方向性が見えてきたかな……くらいの連作短編集。
 進路や人間関係に悩み続ける高校生向けに書いたというけれど、あまりそれっぽくないので初出を見たら「オール讀物」。確かに納得。「オール讀物」なら確かに載ってそうなカラーです。

【万葉と沙羅】【中江有里】【中田いくみ】【文春文庫】【大切な人と本でつながる瑞々しい青春小説】【傑作青春小説】【実は、まわり道は一番近いのだ。】【万葉集】【沙羅双樹】【知多半島】【失われた時を求めて】【やまなし】【銀河鉄道の夜】【わたしとあそんで】【草の花】【ハーモニー】【この道】【廃市】【猿の手】【平家物語】【こころの処方箋】【14歳からの哲学】
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「戦地の図書館」 モリー・グプティル・マニング

2024-06-01 | 本屋・図書館・愛書家
「軽視され、自我を傷つけられ、軍隊生活の中の不合理で退屈でくだらない物事に耐えなければならない兵士には、心を癒やしてくれるものが必要だ」
 ポール・ファッセルの言葉。

 ナチス・ドイツは自らの主義主張にそぐわない本を「反ドイツ主義」として発禁・焚書に指定し、「払い清め」として文字通り火にくべて燃やし尽くすなど世の中から消し去ろうとした。その数、第二次世界大戦終結までにおよそ1億冊。
 一方、アメリカは書物こそ前線に送られる兵士の心の支えであるとして、一般から寄付を募るなどして大量の本を前線基地に送り届けた。その数、およそ1億4千万冊……。

 古事記に「愛しいあがなせの命。かくせば、なが国の人草、一日に千頭絞り殺さむ」「愛しいあがなに妹もの命。なれしかば、あれ一日に千五百の産屋立てむ」のくだりがありますが、そんな感じの相対する存在の図書をめぐる国と国民の姿が描かれます。
 戦火が近づき、徴兵され動員される若者たちですが、軍は訓練施設から急ごしらえ。訓練用の武器どころか制服すらろくに届かない中で戦争準備が始まりますが、そんなものでとうてい士気が上がるはずもなく、それは実際に戦争が始まり戦地に送り込まれるようになればなおさらです。そんな中、本がなきゃ人間ではいられないよと全米の司書が奮起し、戦地へ送られる兵士たちに1000万冊の本を送ろうという運動が巻き起こります。そんな運動から始まった顛末を、戦地の兵士たちの記憶、従軍記者たちの記録、運動を支えた司書たちの報告、兵士たちと文通を続けた作家などの話をもとに語られていきます。いい話であると同時に思想戦でもあります。「我が闘争」が勝つか「大いなるギャツビー」や「ブルックリン横町」が勝つかという。
 ノルマンディー上陸作戦で重傷を負い、治療待ちで砂浜に放置されている兵士たちが暇つぶしに本を読んでいる光景って、ちょっと想像しにくいですが、なんとなく分かります。自分も手術後にカテーテルとかでがんじがらめにされ、切れた麻酔にイラつきながら、スマホでなろう読んでましたもの。
 そして、アメリカ軍は陸海軍とも寄付があり予算が付いてがんがん送られたけど、イギリスでは予算がなかったし、そもそも出版社が焼け落ちたりしてイギリス兵のもとには無料配布がなくてアメリカ兵からお裾分けがあったとか、これまたちょっといい話ですね。

【戦地の図書館~海を越えた一億四千万冊】【モリー・グプティル・マニング】【創元ライブラリ】【本のかたちを、そして社会を根底から変えた、史上最大の図書作戦の全貌とは?】【オマハビーチ】【兵隊文庫】【ブルックリン横町】
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「図書館の天才少女」 蒼井美紗

2024-05-11 | 本屋・図書館・愛書家
 今年王宮の官吏に登用された中に平民の少女がいた。貴族の子弟も平民も区別しないことになってはいるが、教育を受ける機会の少なさから平民が採用されるのは珍しい。
 その少女マルティナが官吏に応募したのは、単に王宮図書館の本が読めると知ったからだ。本好きのマルティナは平民が立ち入れる範囲、街中の本を全て読み尽くしてしまったのだ。しかも、彼女は読んだ本の内容を一言一句忘れない記憶力を持つだけでなく、その照合すら瞬時にできてしまう処理能力を持つ。高難易度の試験を満点で突破するのは難しいことではなかった。
 配属された政務部では、平民出身ということに疑念を持つ者がいないでもなかったが、その特殊な記憶力を存分に発揮することで瞬く間に頭角を現して、やがて便利に使われるようになっていく……。

 目にしたものを瞬時に記憶し、忘れず、しかも内容検索して関連事項を即座に提供できる検索能力と、まるで人間オープンチャットAI(スキャナー機能付き)。そりゃあ、よほどのボンクラでなければ国の頭脳として利用したおすというもんです。

【図書館の天才少女~本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!~】【蒼井美紗】【緋原ヨウ】【カドカワBOOKS】【最強の記憶力を持つ平民の少女は、王宮の本を読むため官吏になりました】【カクヨム
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「本好きの下剋上33」 香月美夜

2024-02-09 | 本屋・図書館・愛書家
 これにて本編完結!
 表紙イラストもアウブ・アレクサンドリアらしく、青い海と白い街並みを背景にしています。1巻の表紙では何もない中で集めたアイテムの中に座り込んでいた幼女が、ここまでに成長し、王族の去就すら左右できる立場となったのも、すべてこの図書館の街を手に入れるための一里塚……ということで、まさに下剋上の到達点といった姿です。
 内容的には神々の力で染め上げられた魔力に身体がついて行けずに死にかけているところからの回復、そして分かり易く言えば、神々が自分たちのデータをコピーしてダウンロードするのにマインのサーバーの容量が足りないので必要なさそうなデータを削除して詰め込んだけど、それこそが大事なのだと必死にサルベージして復旧していく顛末。あとの王族や貴族たちを押さえつける顛末は余技で、新しい領地へ連れて行く者、残す者を選別していく過程でのあれこれこそが後日譚みたいなもので、最後の最後、ウェブ版ままの家族そろってのエピローグで大団円となります。今回はカラー口絵が巻末に来ているのも良い仕事です。

【本好きの下剋上33~司書になるためには手段を選んでいられません~】【第五部 女神の化身XII】【香月美夜】【椎名優】【TOブックス】【ビブリア・ファンタジー】【しいなゆう】【ゆるっとふわっと日常家族】【小説家になろう】【婚約式】

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「椎名優画集 LiberStella〜本好きの下剋上 & Other Works〜」 椎名優

2024-02-08 | 本屋・図書館・愛書家
 今、本の挿絵として巧いイラストを描ける作家としてはベスト3に入ると思っている、椎名優のデビュー25周年の記念画集です。タイトルのラテン語は直訳すれば「本の星」。Google翻訳にかけたら「スターブック」とか出てきました。それはちょっとニュアンスが違うかな。
 2分冊になっていて、1冊目は『本好きの下剋上』関連一切合切、表紙イラストからアニメ特典のカットまでカラーイラストを収録。2冊目は2012年の画集『椎名優画集Ⅲ ガーネット』以降、ジュニア文庫の名作ものの表紙イラストからゲームのキャラクターデザインまでおよそ10年分がごっそりと。
 『スライムなダンジョンから天下をとろうと思う。』とか『男なら一国一城の主を目指さなきゃね』とかまで入っているのは嬉しかったけど、あれらまだ刊行から10年経ってなかったんだねえ。最近、「ちょっと前」と思っていたら四半世紀前だったとか、「かなり昔」のつもりが10年経っていないとか時間感覚がおかしくなってるみたい。

【椎名優画集 LiberStella〜本好きの下剋上 & Other Works〜】【椎名優】【TOブックス】【サクラダリセット】【Monochrome Myst】【カーリタースの風によせて】【拡散性ミリオンアーサー】
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「帝国第11前線基地魔導図書館、ただいま開館中」 佐伯庸介

2024-01-16 | 本屋・図書館・愛書家
「行けっ!我が図書館係たちよ!!ボンクラ利用者どもを根絶やしにしろ!」

 無一文無職のカリア=アレクサンドルは学生時代の知人でもある、クレーオスター皇女の紹介した「帝立図書館」の司書の仕事に飛びついた。しかし、そこは図書館は図書館でも《連合軍》と《魔王軍》との戦いが続く最前線にあった。
 最前線こそ娯楽は必要。さもなくば兵の士気は下がりっぱなしだ。そして、もしかしたら読書こそもっともコストパフォーマンスに優れた娯楽では無いのかと皇女の肝いりで、最前線基地の1つに蔵書3万冊という図書館が設けられたのだが、カリアにはもう1つ極秘の仕事が与えられていた……。

 眼鏡で八重歯で巨乳にソバカスというマニア好みの属性盛り合わせの魔導司書が、銃を与えられた兵士や勇者に魔導具が乱れ飛ぶ戦争という現実に立ち向かう英雄譚。書架の整理、貸し出し業務、延滞図書の回収、傷んだ本の修復、リクエストに応えての本の取り寄せ、レファレンスまで、図書館の仕事がそのまま最前線で起きるさまざまなエピソードと絡み合います。

『凄惨なる光景、残忍な行為。だが自分は本を読んでいるからまだ人間なのだ』
 戦場へ最初に本を持ち込んだケンドラー将軍の言葉。

 筋金入りの司書の活躍で基地の空気が変わっていきますが、戦線は激化するばかり。そして、すべてを破壊し尽くす魔王雷が基地を狙って発動し始めます。魔王軍はさまざまな種族の連合体、人間とはまったく違う文化の持ち主。それゆえに起きる読み違い。
 魔王軍との戦いの帰趨、そして戦場の図書館の運命やいかに!?

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「キャノン先生トばしすぎ」 ゴージャス宝田

2023-10-19 | 本屋・図書館・愛書家
「皆情熱で描いてんだよっ。素人同然のヘタッピが、どうしようもねぇ情熱でマンガ家になってくんだっ」
 マンガの才能なんかには出会ったことがないと「♀」編集長。

 当時を知らない人には信じてもらえないけど、高校生にもなってマンガやアニメが好きだなんて周囲に知られたら、「オタク」のレッテルを貼られて虐め殺されてしまう……そんな時代を生き抜いてきた、「エロマンガ家になるのが夢だった」というルンペン貧太の創作道。

【キャノン先生トばしすぎ】【ゴージャス宝田】【XO COMICS】
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「本好きの下剋上32」 香月美夜

2023-07-23 | 本屋・図書館・愛書家
「この非常時に君は本当に馬鹿ではないか?」
「……フェルディナンド様こそ、この非常時に今更わかりきったことを言わないでくださいませ」

 フェルディナンドとローゼマインは、エグランティーヌを伴ってユルゲンシュミットの礎と向かった。

 ランツェナーヴェの侵入は撃退され、中央騎士団の反乱は鎮圧された。しかし、ここまで事態を悪化させたツェントの責任は問われるべきだし、グルトリスハイトを与えられる次のツェントも決めねばならない。それをおこなうのは、他ならぬ女神の化身ローゼマインだが、もはや微塵の遠慮もなく王族に言いたい放題。その一方ですごく甘くなる面もあり、フェルディナンドも舵取りに四苦八苦。
 英知の女神メスティオノーラに助力を求めた代償に、心の内に入り込んでいる記憶の一部が絶たれているのだ。今のマインには、ルネッサンスの称号を与えた職人達の記憶がない……。

 29巻で本編完結かなと思っていたら、もう32巻。いよいよ「第5部完結目前」のアナウンスが。ウェブでは読み続けていたけれど、記憶にあるよりクライマックスが長かったです。でも、白の塔に幽閉されても1日2食に本1冊付き!を破格の好待遇だと考えているローゼマインは相変わらずでちょっと安心。もっとも、エグランティーヌに言わせればローゼマインは(本のことに関しては)自己中心的で周囲の者のことを考えもしない怖い為政者という評価みたいですが、それこそこの作品における神の有り様ですね。だからこそ、下町の家族や仲間の存在が重要なのですが。
 さて、TO通販の同梱SS「別れの女神に祈りを」は、ウェブではその意図が見えにくかったアドルフィーネ視点。だいたい、庶民育ちで(本のこと以外は)深く考えないローゼマイン以外の視点から見る話は重いのです。

【本好きの下剋上32~司書になるためには手段を選んでいられません~】【第五部 女神の化身XI】【閑話 継承の儀式】【始まりの庭と誓い】【新しいアウブのすげぇ魔術】【香月美夜】【椎名優】【TOブックス】【ビブリア・ファンタジー】【しいなゆう】【ゆるっとふわっと日常家族】【小説家になろう】【全図書館制覇は人類の夢】【抜き打ち試験】
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「美人の姉が嫌がったのでどう見ても姿絵が白豚の次期伯爵に嫁ぎましたところ」 真波潜

2023-07-04 | 本屋・図書館・愛書家
 ノートン子爵家の次女であるミモザは、読書と手芸が趣味で地味な引きこもりで人見知り。家庭内での発言権もなく、姉のカサブランカに来た結婚話も豚みたいな相手が気に入らないとごねたことから身代わり同然で伯爵家に嫁ぐことになった。
 ところが結婚相手の次期伯爵は絵姿とは似ても似つかぬ美形で、しかも美人の姉の身代わりの地味な妹なのになんだか大歓迎されていて……。

 ウェブ小説は作家が好き勝手に書ける、読者の反応がダイレクトに伝わりやすいせいなのか、面白いと思ったところや評判の良いところにいくらでも筆を費やしたがる傾向があって、ときには過ぎたるは……って思うことはあります。追放ものの「ざまぁ展開」が増量されがちなのがその典型。痛快なのはいいけれど、それだけで終わりという話も少なくなく、たとえるなら、水戸黄門の印籠シーンとか遠山桜とか大岡騒ぎとか必殺シーンで40分って感じの展開。やはりほどほどのバランスというものがあるんじゃないかな。
 そういう意味で、この話は良い塩梅にバランスが取れている良作。
 「本来の能力や成果を不当に低く評価されている主人公が、それまで所属していた組織から離れることで正当な評価を受けて幸せになり、主人公を貶めていた相手は因果応報で報いを受ける」というパターンを、テンポ良く、バランス良く、面白く読ませてくれます。

【美人の姉が嫌がったのでどう見ても姿絵が白豚の次期伯爵に嫁ぎましたところ1~からくり仕掛けの幸せウェディング~】【真波潜】【結川カズノ】【SQEXノベル】【気弱根暗令嬢とイメチェン次期伯爵騎士の、新婚から始めるラブストーリー】【小説家になろう】【カクヨム】【人気小説家】【画家】
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「本好きの下剋上31」 香月美夜

2023-05-06 | 本屋・図書館・愛書家
 ランツェナーヴェからの侵略者を撃退し、アーレンスバッハを掌握したローゼマインだったが、それで「本物のディッター」は終わりではなかった。中央騎士団の造反もあり、王宮が王座を得んとするジェルヴァージオに掌握されていたのだ。
 決着をつけんと深夜の貴族院からアダルジーザの離宮の制圧に向かったフェルディナンドだったが、そこに神族ジェルヴァージオが介入するのだが……。

 神々にとっては、人間同士の諍いなど瞬時に流れ去る些細な問題であって、安定して礎に魔力を奉納してくれるなら正直誰でも良いのだ。ある意味、物語における神の正しい在り方かも。誰が正しいとか悪いとか、そんなことはどうでもいいのだ。
 29巻でほとんど終わりだよなと思っていたけれど、さまざまな別の視点から本編を語る書き下ろし短編ががんがん挿入されてはや31巻。今回なんか閑話集の書き下ろしが100ページ超ですよ。

【本好きの下剋上31~司書になるためには手段を選んでいられません~】【第五部 女神の化身X】【中央の戦い】【香月美夜】【椎名優】【TOブックス】【ビブリア・ファンタジー】【しいなゆう】【ゆるっとふわっと日常家族】【小説家になろう】
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「15歳でも俺の嫁!」 庵田定夏

2023-01-20 | 本屋・図書館・愛書家
「確かに書店がA&G一社になれば取次は要らなくなる……。他の業界もだが……」
 インターネット通販を軸に成長した超巨大企業A&Gは強くなりすぎた、確かに早くて便利だが、A&Gが売らないと言えば在庫があっても売れなくなってしまうのだ。

 大手出版取次に勤務している27歳の火野坂賢一は、ある日、初対面の少女に求婚される。怪しすぎる状況にも拘わらず、「わかった。結婚しよう」と応えてしまい、そのまま家族のもとに連れて行かれて婚姻届に署名捺印からの大宴会。
 けれど、少女・君坂アリサは告白した。理由あって結婚したフリをしなくてはいけないのだが、結婚できないから大丈夫というのだ。
「だってわたし15歳の現役女子中学生だから、法律上結婚できないんだ」
 もっとダメだった。しかも、彼女はカリスマJCモデルのMARIAだった。露見したら炎上必至である……。

 27歳サラリーマンが15歳の女子中学生たちに振り回される、誰も街の本屋で本を買わなくなったことへの危機感から始まる、業界再編小説。

【15歳でも俺の嫁!~交際0日結婚から始める書店戦争】【庵田定夏】【はまけん。】【MF文庫J】【禁断のお仕事ラブコメ】【企画本】
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