付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「素敵なラブリーボーイ」 伊藤伸平

2007-10-31 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「たいがい物事はハッキリさせたほうがいいに決まってる。だがハッキリさせないのもひとつのあり方だと僕は思う」
 はあー?
 卒業する西条生徒会長からの手向けの言葉。まあ、世の中、ケース・バイ・ケースなのだ。

 高校演劇部を舞台に、黒一点の少年が女子部員たちに使いっ走りにされながら、まあそれなりに頑張っています、という話。
 伊藤伸平という作家は好きなマンガ家ではあるけれど、なにかと連載雑誌が廃刊休刊してしまうので未完が多く、追いかけるのもタイヘンな人。でも、その価値はあると思います。
 ちなみに写真は初期作品の「ファイアーガール」。【元気少女】【銃撃戦】【アイドル】っていうのが3本柱だよねー。

「素敵なラブリーボーイ」★★★★

【演劇部】【バレンタインデー】【生徒会】【幼なじみ】
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「ぼくと魔女式アポカリプス」 水瀬葉月

2007-10-31 | 超能力・超人・サイボーグ
 1人目は魔女。黒いとんがり帽子をかぶって、さまざまな魔術を駆使する。
 2人目はエルフ。テンガロンハットに拳銃のガンマン・スタイルで魔術を行使する。
 3人目は天使。4人目はドルイド。
 彼らは失われた魔術種の代行者として命と力を授かり、代理戦争で殺し合う。代行者たる代替魔術師たちは、他のものを倒し、その魔力の源を奪うことによってのみ存在でき、またそれによって失われし種族を復活させることを使命としているのだ。

 という、まあ、変身魔女っ子もの。聖杯を奪い合うわけじゃないけれど、まあ、命がけ椅子取り合戦って感じ。こういうバトルロイヤルものってのが、いつの間にか確立しちゃった感じはあるな。そのうち、まとめてみよう。
 まあ、話は面白いし、やや類型的ながらキャラクターも魅力的。(背景はほとんど入らないけど)イラストもそれなりにきちんと描ける人のようなので安心して読めますが、まあ死屍累々なので、キャラに思い入れはしちゃいけないタイプの話だねー。

【ぼくと魔女式アポカリプス】【水瀬葉月】【代理戦争】【変身】【魔女っ子】【共生】【バトルロイヤル】
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「火星ノンストップ」 編:山本弘

2007-10-31 | その他SF(スコシフシギとかも)
「シャアル! シャアル・イダニス……シャアル・モル・ラロール……」
 シャンブロウを目にした金星人ヤロールの祈りの言葉。

 今読んでも面白いクラシックSFのアンソロジー。収録作品は、レシプロ機が大活躍の『火星ノンストップ』、怪物SFで有名なマレイ・ラインスターの次元SF『時の脇道』、野田昌宏による新訳『シャンブロウ』他……。
 読みかえして、あらためて思うのは、成田美名子ってSF好きだったんだよなあということ。今は知らない。少なくとも作品中でSFやアニメ絡みのお遊びはしなくなったから(当然だろうけど)。成田美名子の代表作『エイリアン通り』の主人公のフルネームは、シャール・イダニス・モルラロールなんですよね……。

【火星ノンストップ】【ジャック・ウィリアムスン】【マレイ・ラインスター】【C・L・ムーア】【ポール・アンダースン】【A・E・ヴァン・ヴォクト】【アラン・E・ナース】【コリン・キャップ】【火星】【平行世界】【魔女】【大嵐】
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「料理人誕生」 マイケル・ルールマン

2007-10-31 | 食・料理
 副題は「米国料理学院の秘密」とあるように、もともとジャーナリストである著者が、全米最大の料理学校に入学し本物のシェフになってしまうまで綴ったノンフィクション。
 この著者が学んだCIAという料理学校は、『キッチン・コンフィデンシャル』の記述からは、かつてはあまりパッとしなかったようですが、現時点ではかなり高い評価を得ているのでしょうか。

 なんとなくアメリカ料理っていうと、大雑把で大味で量だけ多く、健康のためにといってダイエット・コークを飲んでいる……みたいな印象があるのですけど、この本を読んでみるとイメージが変わります。少なくとも10年後のアメリカ料理は自分が知っているアメリカ料理じゃなくなるかもしれないという気にはなりますね。
 さまざまなプロフェッショナルな料理人である教師たちに、基本の調理技術から経営学、ウェイターの実習まで料理とレストラン経営に必要なすべてを叩き込まれていく話ですが、それだけに出てくる言葉も格好良い。

「プロ意識ってやつは物質じゃない。自然に身につくってもんじゃない。所有できるものでもない。そこに向かって常に努力するものなんだ」
 セントアンドルーズ・キッチン デ・サンティス料理長。

「自分がどれだけすばやく動けるか知っているか。動ける速度に限界はない。上達に限界はない。すばやさに限界はない」
 アメリカンバウンティ・レストラン ダニエル・タージョン料理長。

 技を突き詰めていくと、料理界の絢爛舞踏になっちゃいそうです。カッコイイぞ。

【料理人誕生】【米国料理学院の秘密】【マイケル・ルールマン】【CIA】
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「戦う司書と恋する爆弾」 山形石雄

2007-10-30 | 本屋・図書館・愛書家
「あの人は、戦い、立ち向かうわたしに恋をした。あの人が戦ったように、わたしも戦わなくてはあの人はきっとわたしのことなんて愛さない」
 常笑いの魔女、シロン=ブーユコーニッシュの言葉。『滅びのマヤウェル』と同時に大賞を取ってデビューというので様子見で購入。

 人は死んで本になり、その生前を物語るという世界。書物はすべて図書館の管理となり、司書は神の代理人として絶大な権力と大きな戦闘力を兼ね備えている。
 その武装司書に対抗するかのように、本を採掘する街トアットに何人もの人間爆弾が送り込まれるのだが……。


 ちょっとバランスが悪いかな。司書と爆弾と世界のすべてを語ろうとして語り尽くせない感じ。もう少しテーマを絞った方が面白くなったかも。ランクとしてAに化ける可能性のあるBだけれど、まだB+の評価も出せないあたり。
 そういうわけで自分としては以後手を出していないけれど、世間的な評判は上々で続刊も続々。自分の周囲では中学生が喜んで読んでますね。

【戦う司書と恋する爆弾】【山形石雄】【武装司書】【人間爆弾】【秘密結社】
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「天のさだめを誰が知る」 D・R・ベンセン

2007-10-30 | 時間SF・次元・平行宇宙
「どこで見出そうとパターンはパターンだ。どんなに小さなものも無視するのはほめたことじゃない」
 統合員ヴァルミスの言葉。地図上に配置された軍隊も、血液中のタンパク質の配列も、どちらもパターンとして認識できるのだ。そこに乱れがあり、それを認識できるなら、適切に配置し直すこともできるはずだ。

 D.R.ベンスンの『天のさだめを誰が知る』はファーストコンタクトものであり、文明批評であり、歴史改変もの。

 4人の異星人の乗った宇宙船が事故で地球に漂着した。
 時は1908年。地球の科学は未成熟であり、宇宙船を修理するための技術水準にはとうてい達していなかった。
 彼らが故郷へ帰るには地球の科学技術を底上げするしかなく、科学技術の発達を促すためには戦争をおこさせるのが最短距離だと、傍迷惑にも宇宙人一行はイギリス国王エドワードやドイツ皇帝ウィルヘルムらのもとを訪問しては戦争を起こす必要性について説いて回るのだが……。


 宇宙人たちの旅に同行したH.G.ウェルズは、もし南北戦争で南軍が勝利していれば中西部の植民地化も大陸横断鉄道もなく、アメリカはせいぜいカナダやメキシコに告ぐ中小国になっていただろうと語りますが、ちょっとした小石1つを動かすことで歴史はどう変わっていくのだろうかという、歴史改変SFの王道テーマを、ときにはコミカルに、ときにはシニカルに描いた1冊。

【天のさだめを誰が知る】【D・R・ベンセン】【歴史改変】【戦争】【タイタニック】【エジソン】【「ただのランチなんてものはない」】
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「キッチン・コンフィデンシャル」 アンソニー・ボーデイン

2007-10-30 | 食・料理
 NYの有名シェフが自身の幼少時の話から料理人となった経緯、さらにはかけだし時代に点々とした店の話など、遠慮会釈なしに書き飛ばした料理界の楽屋裏。
 料理が美味いからといって調理している人間が素晴らしいわけではないとか、魚料理を頼んでいけない曜日のことやランチメニューの選択の仕方とか裏話の数々は、こんなことまで書いてしまったらよほど自信がなければこの先この業界ではやっていけないだろうと思わせるもの。テンポよく一気に読ませます。

 これを読むと、シェフやコックなんか人間のクズに違いないと思いこんでしまうし、もうレストランのランチとか食いたくなくなるという本。最終章でちょっと救われて、日本での1週間で「食いまくってるなあ」と笑うのだけれど。罵詈雑言、スラングを拾うにはちょうど良いかも。

【キッチン・コンフィデンシャル】【アンソニー・ボーデイン】【料理人の遍歴】【麻薬】【横流し】
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「サインをつかめ!」 長谷川昌史

2007-10-30 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「そこはいっちゃえよ」

 チェーンメールで届く[サイン]の指示に従うと願いがかなうという。それもメールはピンチのときに届くらしい。
 朝のテレビの占いと謎のチェーンメールを軸に展開する4人の男女高校生の1日。ミステリーっぽくしたメルヘン。

 一応、青春ミステリーっぽいけれど、ミステリーというにはツッコミどころが多いなあ。一見、緻密な計算と人間観察に裏付けられているように見えながら、ちょっと考えれば「そりゃあ、あまりに幸運な偶然に支えられていませんか。何か1つ狂ったら全部パアじゃん」ということばかり。まるでぴたごらすいっち。そもそも最後のアレはあんな風にはならんでしょ。
 ファンタジーにして、実は世界の動きすべてを計算できますとか未来日記を持ってますというなら納得するけど。(2023/11/15改稿)

【サインをつかめ!】【長谷川昌史】【桜井熾竜】【電撃文庫】【恋と謎とピンチが交差する青春ストーリー】【先読み】【予言】【イジメ】
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「チャーリーとチョコレート工場」 監督:ティム・バートン

2007-10-30 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 レイト・ショーでティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』を見に行って、あまりに気に入ったのでDVDを買って、ついでにサントラもアマゾンで輸入盤を購入。

 スパイにレシピを盗まれたことから人間不信に陥り、チョコレート工場に閉じこもってしまった天才的チョコレート職人ウォンカ。しかし誰も働いていないはずなのに、彼の工場は日々チョコレートを出荷し、それは世界中で大ヒットしているのだ。彼はどうやってチョコレートを作っているのだろう?
 長年の沈黙を破り、ある日ウォンカは世界中に発表した。今、世界中で発売されている板チョコの中に5枚のゴールデン・チケットが封入されている。それを手に入れた子供と保護者を5組、工場へ招待すると!


 原作は児童文学のロングセラー。プロットはほとんどそのままに、ただ原作で言及されていない部分については監督らしさを十二分に発揮した解釈で映像化した作品。でも悪趣味で残酷で笑える上にパロディ満載なので、絶対に児童向けじゃないですね。
 サイケな画面で繰り広げられるウンパ・ルンパ族の踊りは、『水着の女王』のような黄金期ハリウッドのミュージカル映画やザ・フーやクイーンといった60~70年代のロックバンドのパロディと化しているし、他にも『2001年宇宙の旅』みたいに「なんかの映画でこんなシーンを見たことあるなあ」という箇所があちこちに。サントラが欲しくなるけど、これを聞いていると映像も欲しくなるんだろうなあ……。
 基本的に「家族がいちばん」という心温ま……るかなあ……でも映画として面白かったし、登場する老人たちが皆いい味を出しているので(クリストファー・リーよ、あんたはどこで営業してるんだ?)、損はなかったですよ。

「チャーリーとチョコレート工場」★★★★★

【貧乏】【残酷】【悪趣味】【ガキ】
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「ルーンウルフは逃さない!」 新井輝

2007-10-29 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 ひとことで言って『エルフを狩るモノたち』。

 エッチが取り柄のスチャラカ・アクションでキャラ描写の手抜きしすぎ。
 それなりの描写もなしに「裸の女の群」みたいな記号を羅列されても面白くなければ興奮もしないわな。もともとライトノベルにおいてキャラ描写はイラストに頼るところが大きいのではあるけれど、それでももうちょっと仕事しようよ。
 序盤のイラストで眼鏡かけている女性キャラなんか、本文読んでもメガネの描写が無いもんね。かなり後半の変装シーンではじめて1カ所メガネをかけている描写があるんだけれども……。一事が万事。イラストレイターともっと打ち合わせしてく欲しい。
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「小惑星諸島独立す」 エリック・コタニ&ジョン・ロバーツ

2007-10-29 | ミリタリーSF・未来戦記
 昔、読む清涼飲料水というキャッチフレーズがあって、光文社文庫から天文学者のエリック・コタニとグリーン・ベレーあがりのジョン・ロバーツによる近未来SF4部作が刊行されていました。宇宙開発が始まりつつある20世紀末、ソ連の彗星観測船が地球への隕石落としでアメリカを壊滅させようとする『彗星爆弾地球直撃す』は、ソ連が西側のタブロイト紙に情報を流すことで逆に信憑性を無くさせようとするところがミソ。続く『小惑星諸島独立す』は、21世紀後半の地球と宇宙植民地群との対立を描いたもので、シチュエーション的には遊演体の『星空まで何マイル?』そのままの話。前作のメインキャラが伝説の存在になっているのも見所かな。
 ところが日本では売れなかったのか2巻で終わり。大人向けに軍事色の強いポリティカル・フィクションとして売り出そうとしたのが失敗の原因だったんじゃないかな。タイトルも日本版は架空戦記を彷彿とさせる仰々しいやつだし……。今からでも、デュアル文庫やハルキ文庫みたいに、今風のアニメ絵のイラストを付けて再販したら売れるような気がするんだけど……。

 ワールドコン「Nippon2007」にゲストで参加されていた近藤陽次博士って、エリック・コタニじゃありませんか! うーん。ゲスト紹介のパネルは展示ホールの方にも欲しいし、企画変更のアナウンスとか別棟企画への案内板も足りないねえ。ああいうのは設置許可が出なかったりもするんだけれど、なんとかして欲しいものです。

【彗星爆弾地球直撃す】【小惑星諸島独立す】【エリック・コタニ】【ジョン・ロバーツ】【近藤陽次】【独立戦争】【宇宙開発】
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「アシャワンの乙女たち」 牧野修

2007-10-29 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 ソノラマ文庫の『アシャワンの乙女たち』を読む。ひとことでいうと、異色の戦闘美少女学園トンデモ小説。

 大宇宙の誕生以来、戦い続ける2つの力があった。
 1つは、平和と正義の力であるアシャ、もう一つは、悪と呪いの力であるドゥルジである。激しく永い戦いの果てにドゥルジは地球に到達し、人類滅亡に向けての活動を開始する。絶対善でも絶対悪でもない存在、人間こそがこの戦いに終止符を打つのだ。
 地下深くに潜んだドゥルジは人間を腐敗させ、邪悪な超能力を引き出し、悪のエージェントとして人類滅亡を実行させる。しかしアシャもまた、慈愛と信頼によって人類を繁栄に導こうとしていた。アシャの存在を知った人々は秘密結社ウォフ・マナフを結成し、正義の戦士を育成してドゥルジのエージェントと戦い続けることを使命とした。
 私立第4ボロヴィア学園中等部2年の美弥が白鳥と出会ったとき、この善と悪との全面戦争の、最後の歯車が動き出した。ボロヴィア学園こそアシャワンの戦士を養成する学舎であり、美弥と白鳥が互いの腕を交差して「バアル・オーム」の真言を唱えたとき、2人はドゥルジの魔人に対抗する正義のエージェント、バアル・オームの戦士に合体変身するのだ!


 面白いつまらない以前にトンデモでした(いや、面白いとは思うけど)。
 あのね、実はその女学園は世界創世から続く善と悪の戦いに決着をつけるため、優れた資質のある少女たちを育成するための組織だったのです……という設定そのものはライトノベルでも良く聞く話の王道パターン。でもそのアシャワンの乙女の中でも最良の者はバアル・オームの戦士となる。
 オームはヒンドゥー教の聖なる呪文、バアルはセム語で「王」を意味する言葉。つまりバアル・オームの戦士とは強力な真言の使い手……って、なんでそこでもっともらしくヒンドゥー教とセム語の言葉が1つになりますか? まあ、メインキャラが木戸猛(みゃう)と白鳥健(すこやか)という時点で確信犯なのはバレバレなのですが、つまりは「知らなきゃただの学園伝奇アクションだけれど、その正体は美少女版『超人バロム1』」というわけで……。
 クライマックスなんか魔人大襲来!といった感じで、超能力SFとも善悪の対立するファンタジーとも言い切れません。

【アシャワンの乙女たち】【牧野修】【光と闇】【超少女】【怪人】【超人バロム1】
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「SF名作コレクション」 岩崎書店

2007-10-29 | その他SF(スコシフシギとかも)
 いろいろ絶版本とか資料本を探して定期的にサーチエンジンをいじっているのだけれど、先日、トム・ゴドウィンで検索したら『宇宙のサバイバル戦争』なんていう、ダグラス・アダムスみたいなタイトルが引っかかりました。
 トム・ゴドウィンでは岩崎書店から刊行されていた『宇宙の漂流者』という本を長いこと求めていたのだけれど……これかなあ……いや、そもそもトム・ゴドウィンが生涯に執筆した長編は3本しかないのだから間違いあるまいと調べ直したら、岩崎書店が2005年9月から旧全集の復刻を始めているじゃないですか。
 ……あれ? 復刻後1年も気づきませんでしたか? アマゾン・ドットコムも岩崎書店もその他書店情報も昨年の刊行っていってるのに、気づかなかったのね? 復刊ドットコムで投票までしているのに……。
 まあ、bk1の出版社レビューが2006.8だし、岩崎書店のサイトだって2006年度新刊に入れているくらいだから、仕方ないよね。タイトルも改悪されてるし。

 さて、『SF名作コレクション』は旧版『SF少年文庫』全30巻から10冊ずつ復刻してるようで現在20冊。
 第1期のラインナップは、1.アーサー王とあった男/2.タイムマシン/3.わすれられた惑星/4.宇宙怪獣ラモックス/5.なぞの第九惑星/6.宇宙のサバイバル戦争/7.夢見る宇宙人/8.作戦NACL/9.百万の太陽/10.時間と空間の冒険。
http://www.iwasakishoten.co.jp/shop/book/4-265-10381-2.html

 第2期は11.宇宙飛行士ビッグスの冒険/12.木星のラッキー・スター/13.宇宙の密航少年/14.凍った宇宙/15.宇宙の勝利者/16.タイム・カプセルの秘密/17.惑星オピカスに輝く聖火/18.迷宮世界/19.アルファCの反乱/20.超世界への旅~日本のSF短編集。
http://www.iwasakishoten.co.jp/shop/book/4-265-10403-7.html

 イラストは今井修司、若菜等+Ki、山田卓司、赤石沢貴士、福地孝次、ヤマグチアキラ、寺澤昭、御米椎、D.N.ベアード他。
 表紙だけをざっとながめたところ、この前の『冒険ファンタジー名作選』と同じ路線なんだけれど、こちらは全般に「燃え/萌え」分が不足している。前回、コナン・ドイルに竹本泉を使ったり、バロウズに山本貴嗣を使ったりと最高のラインナップを揃えてきたのに対し、今回は児童文学路線にもライトノベル路線にもたどり着けない半端なイメージです。あまりマンガっぽいと学校図書で購入してもらえないんでしょうか☆

 文句はともかく、『宇宙のサバイバル戦争』をポチッとオンラインで注文。良い世の中になったね。昔なら本屋を何十軒もハシゴするか地元書店に注文出して3ヶ月後……の世界だったもの。 ビバ!21世紀。

「SF名作コレクション」★★★★

【児童向け】
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「ニューヨークの魔法使い」 シャンナ・スウェンドソン

2007-10-29 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「女性にデザートを食べさせないようなやつはろくな男じゃないわ」
 コニーの言葉。

 予備知識もなく、書店で見かけてパッと買ったもののしばらくは積ん読状態だった『ニューヨークの魔法使い』。ひまつぶしに何気なく読んだら意外に面白く儲けモノ気分。エライぞ、オレ。

 テキサスの田舎からニューヨークに出てきたケイティ・チャンドラーは、無能な上司に頭を痛めながらも、なんとかマーケティングの会社に勤め続けている。彼女がニューヨークに出てきて思うのは、本当に噂通りの変わった街だということ。街には服飾学校の生徒だかなんだか知らないけれど背中から羽を生やした女の子たちが飛び歩いているし、中つ国のコスプレみたいな格好をした人は多いし……。
 そんな彼女がいきなりヘッドハンティングされた。報酬を1000ドルアップに社会保険や医療費は会社負担、乗り放題のメトロカードも付くという!
 単なるマーケティングの秘書にすぎなかった彼女を引き抜いたのはMS&I。開発した魔法を魔法使いたちに販売する会社だ。「大都会って変なコスプレした人間が多いなあ」と思っていたらみんなホンモノだったというわけで、魔法による目眩ましが効かない彼女は契約のごまかしやインチキを見破るのに格好の存在だったのだ……。

 何を提案しても無視され、気分次第で言うことが変わる上司に苦労していたOLの、転職サクセス・ストーリー。魔法を悪用して商売をしようとする競争相手が出現! 打つ手がない! このままでは魔法戦争に突入してしまう!?……というときに、彼女が提案してみたプランとは?
 なんかねえ、おしゃれな映画とかイラストじゃなくて、秋月りすの絵柄が脳裏に浮かんでしまいましたよ。ひらのあゆでも可。

【ニューヨークの魔法使い】【(株)魔法製作所】【シャンナ・スウェンドソン】【創元推理文庫】【ビジネス】【魔法】【産業スパイ】
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「暗号名スイス・アカウント」 ポール・アードマン

2007-10-29 | 戦記・戦史・軍事
「スイス500年の平和と民主主義が生んだものは、鳩時計だけにすぎない」

 それはオヨヨ大統領が剽窃したオーソン・ウェルズの映画『第三の男』の名セリフ。
 でも、スイスが500年も平和を維持するために、どれだけ血を流し、汚い所業にまで手を染めていたかを考えると恐ろしくなります。古くはスイス人傭兵が敵味方に分かれて殺し合ったり、第二次大戦ではナチスにマネー・ロンダリングの場となったり、「そこまでしないと平和は守れないんだなあ」としみじみと考えさせられますが、『暗号名スイス・アカウント』もそういう視点からの本。国土に戦争を持ち込まないためにどれだけえげつないことが必要かという教本でもあります。
 別に鳩時計を作りたくて平和になったんじゃなくて、平和そのものが目的で、そのために手段を選ばなかった国なのです。そこまで考えなければ机上の空論ってことです。

【暗号名スイス・アカウント】【ポール・アードマン】【貿易】【協定】
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