付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「はじめてのゾンビ生活」 不破有紀

2024-07-10 | 破滅SF・侵略・新世界
※2519年6月20日「新人類憲章」の成立により、長年差別的であるとされてきた「ゾンビ」という呼称は廃止されました。本書では当時の時代背景と本書の資料的意義を考慮し、一部表現をそのまま掲載しています。

 もはや人類は新人類であるゾンビに圧され、滅びつつあるが、そのことを旧人類側がむしろ歓迎している風潮にある。
「おめでとうございます! ゾンビの陽性反応が出ました」
 人間がゾンビになるというのはもはや珍しいことではなく、むしろめでたいことなのだ。家族だってみんなゾンビだし、ゾンビになったことが確認されると役場からリーフレットがもらえる。
 そして、酸素や新鮮な食料を必要としないゾンビによって宇宙開発は一気に進み、星の海へと乗り出しつつあった……。

 ある日突然、人間がゾンビと化すようになってから、それが当たり前になりつつある時代、むしろ家族にゾンビの1人もいないと恥ずかしい時代を経由して、旧人類がすべて死に絶えて、ゾンビとロボットだけの時代になったその先まで、高校生から人形師の老人、宇宙飛行士、弁当屋まで、さまざまな時代のさまざまな立場の人々の人生のパッチワークで組み上げられた千年ばかりの人類史です。
 『地球最後の男』とか『流血鬼』とか人類滅亡における価値の逆転の発想の物語はそこそこあれど、ここに極端に陽気かつポジティブに語るところから始まる作品はありませんでした。ゾンビになったって怖いことはない。日常生活は普通に過ごせるし、むしろ人間の時より身体は元気。ポジティブ・シンキング!! とはいえ、差別もあります。差別する側とされる側が入れ替わる事だってあります。そんな歴史の表も裏も描ききった物語でした。
 電撃文庫ですが挿絵イラストはありません。『ミミズクと夜の王』とかと同じです。そして表紙イラストは『同志少女よ、敵を撃て』の雪下まゆ。

【はじめてのゾンビ生活】【不破有紀】【雪下まゆ】【電撃文庫】【ゾンビ誕生から「歴史完成」に至る、人間とゾンビの宇宙興亡千年史】【バレンタインデー】【宇宙飛行士】【チェコの人形劇】【宇宙海賊】【末期医療】【冷凍睡眠】【テラフォーミング】
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「戦地から帰ってきたタカシ君。普通に高校生活を送りたい1」 安い芸

2024-06-17 | 破滅SF・侵略・新世界
「今度からちゃんと事前に相談しよう。あと、お言葉に甘えて、甘えさせてもらおう。たぶんそれが、一番の親孝行になりそうな気がする」
 咽び泣く母を見てタカシは反省した。

 宇宙人デブリの侵略戦争の勃発から3年。世界中が戦場となり被害も甚大なものとなったが、日本は戦場から遠かった事もあり、金は出したものは人はほとんど派遣せず、他人事みたいな空気が蔓延している。ただ、徴兵の名目で家族を軍に取られた者以外は。
 終戦の知らせと共に四分咲家に帰還した四分咲タカシを、両親も姉も近所の友達も涙ながらに迎え入れた。何の理由か中学1年で徴兵されたタカシが五体満足に戻ってきたのだ。だが、彼こそは人類の最終兵器、人類の最終点(アライバルポイント)。彼の存在がなければ人類は滅びていただろう。そんな彼について来た金髪美少女ナタリーも、タカシと同じ生体兵で仲間内からはゴリラと怖れられている存在だった……。

 最強の帰還兵と美少女たちとの共同生活&バトル。宇宙人による侵略戦争に勝つために、人権なんて知らないよと機械化から謎の薬品投与までやりまくって改造した生体兵を投入していた軍から退役した少年兵が、高校に入学してこれから平穏な生活を送るために障害を排除していく物語。
 せっかく宇宙戦争から生還したのに嫁姑戦争に連戦……は回避したものの、彼のことを大好きでヤンデレ化している少女たちに翻弄されることなりますが、本人はあんな美少女が自分の事を好きになんかならないよとド級鈍感ぶりを発揮してやり過ごそうとします。

【戦地から帰ってきたタカシ君。普通に高校生活を送りたい1】【安い芸】【千種みのり】【PASH!文庫】【平凡を愛する無双戦士のタフでハードな日常ラブコメ】
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「インベーダー・サマー」 菊地秀行

2023-12-28 | 破滅SF・侵略・新世界
「10年以上、おれは青い山と空を見ながら暮らしていた。で、ようやくこのごろわかってきたのさ。おれたちは、万古不易のものがあるからこそ、世の中を変えようと意気込んでいたんじゃないかなって」
 人間の心など山脈ひとつに及ばない尻軽女だとかつての革命の闘士、夕笛日報の大友記者。

 北アルプスを望む信州の夕笛市、その夏の日。幽霊屋敷と呼ばれている住宅街の一軒家に不思議な美少女、東やよいが住み着くようになって町は変わっていった。
 男子生徒の描く風景画の空はこの世のものではない色彩を帯び、校長のあいさつの言葉が奇怪な言葉に変わり、他の男性教師や男子生徒の言葉も変貌していく。そして、それに合わせて周囲の風景も少しずつ変化していった。
 自分たちの存在が不確かなものとなり、血と肉と記憶があやふやになっていく者が増えていく中、同じ男性でも日本剣道界の至宝とも呼ばれる片桐学だけは不思議と影響を受けていなかった……。

 美しい少女への愛慕が引き起こす、静かなる侵略の顛末。
 菊地秀行が『妖神グルメ』や『風の名はアムネジア』など、伝奇ホラーからポストアポカリプスまでさまざまなタイプの作品を書きまくっていた時期の代表作。結局「魔界都市」とか「闇ガード」などの伝奇バイオレンスアクションが主流となるわけですが、このあたりの静かに迫る恐怖とノスタルジーとロマンスの融合というのも面白いのですよ。

【インベーダー・サマー】【菊地秀行】【天野喜孝】【ソノラマ文庫】【当代きってのストーリーテラーがリリカルに謳い上げる、あるひと夏の侵略】【初源的人間】【金髪のジェニー】
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「風の名はアムネジア」 菊地秀行

2023-06-05 | 破滅SF・侵略・新世界
 ある日突然、一陣の風が吹き、そして人々はすべてを忘れ去った。世界中の人々が言語や知識を含めたすべての記憶を一斉に喪失したことで、現代文明はあっさり崩壊。人間は野獣同然となり、廃墟と化した都市には対暴徒鎮圧用に作られたロボットが徘徊している。
 日本人の少年ワタルが記憶の一部を取り戻したのは、生体研究所で頭の手術を受けた結果、記憶を失わずに済んだジョニーの助けがあったからだが、彼の死後、その願いを叶えるべくアメリカ大陸を横断の旅に出た……。

 文化や文明が崩壊した中でアメリカを旅する少年の物語。
 1982年『魔界都市〈新宿〉』で作家デビューした菊地秀行が、「トレジャー・ハンター八頭大(エイリアン)」シリーズや「吸血鬼ハンターD」シリーズを経て『インベーダー・サマー』『風の名はアムネジア』と読み切り系の、ちょっと毛色の違った作品も発表して器の広さを見せてくれました。
 でも、謎の女と言いつつ、ソフィアの正体ってば言わずもがなだった気がします。そこがいいの?

【風の名はアムネジア】【菊地秀行】【天野喜孝】【ソノラマ文庫】
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「SFマンガ傑作選」 福井健太・編

2022-01-01 | 破滅SF・侵略・新世界
 少年マンガも少女マンガも全部ひっくるめて、70年代を中心にしたSFマンガの傑作14編を収録。みんな一度は読んだことのある作品ばかりだけれど、ここに傑作選としてまとまって提示できたことに意義があります。『樹魔』なんか「少年少女SFマンガ競作大全集」からぶーけコミック(2冊)、ハヤカワ文庫と手持ちに4冊ありますが、ここに創元文庫が加わったわけです。
 願わくば80年代をテーマにした2が出ますように。
 巻末の「SFマンガ史概説」を読んでいると10年代以降は未読の作品が多いけど、それ以外はみんな読んでいて、その中だと高橋留美子とか柴田昌弘、聖悠紀、寺沢武一、竹本泉とか、シリーズ化した有名作のパイロット版的な読み切り以外にも面白い話があるんだよね。

【SFマンガ傑作選】【福井健太・編】【創元SF文庫】【手塚治虫】【アトムの最後】【松本零士】【ヤマビコ13号】【筒井康隆】【急流】【萩尾望都】【あそび玉】【石ノ森章太郎】【胎児の世紀】【諸星大二郎】【生物都市】【竹宮惠子】【ジルベスターの星から】【山田ミネコ】【冬の円盤】【横山光輝】【昆虫惑星】【佐藤史生】【金星樹】【佐々木淳子】【リディアの住む時に…】【高橋葉介】【ミルクがねじを回す時】【水樹和佳子】【樹魔】【星野之宣】【残像 AN AFTER IMAGE】【SFマンガ史概説】
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「死霊狩り」 平井和正

2021-12-18 | 破滅SF・侵略・新世界
 冷戦のさなか、宇宙からの侵略者に対して国家間の枠を超えた秘密機関が結成された。世界中から選び抜かれ、鍛えられた殺人専門家達で結成された《ゾンビー・ハンター》だったが、人体に寄生する敵との戦いは熾烈を極めた。
 大事故に遭ったレーサー田村俊夫は、再起に必要な大金と引き換えに、国際秘密機関《ゾンビー・ハンター》に身売りしたが、その訓練は実戦さながらの地獄だった……。

 最初ハヤカワで文庫化されて、すぐにごちゃごちゃして角川文庫で続いて、最終的にはハヤカワ文庫JAで合本版になった『死霊狩り』。ゾンビではなくゾンビーです。
 呪術的なファンタジーの敵ではなく、仲間内にすら潜伏する寄生体が敵なので侵略SFの範疇ですが、気がつくと信頼していた仲間が敵になっていた、しかも殺しても殺しても斃れない……というイヤな話。1冊目の終わり方が気に入らなくて2巻以降は買ってないのです。いかにもホラー的な結末ではありますね。
 ホラーでオカルトでアクションなわけですが、こういうすっきりしない話は70年代特有の空気なんじゃないかと思ってます。

【死霊狩り】【ゾンビー・ハンター】【平井和正】【生頼範義】【ハヤカワ文庫JA】
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「死なないセレンの昼と夜」 早見慎司

2021-12-08 | 破滅SF・侵略・新世界
「人間面をするのなら、人間の生き方をしなさい」
 さもなくばヒトデナシだと、化け物と呼ばれるヴァンパイア。

 気がつけば大洋から水が消えていた。飲料水から原発の冷却水まで水が豊富にあることが前提の文明が崩壊するのに、さほどの時間は必要なかった。
 人類が黄昏の季節となり、わずかに生き残った人々が細々と文明を維持している西暦2500何年かのこと。
 ほぼ無人の荒野を走るサイドカーがあった。それはオールドファッションなコーヒー屋台を引っ張る吸血鬼(ノスフェラトゥ)の少女、セレン・メソニュクティウム・カエルレウス・インモルターリス・ソリトゥス・ウェーナートルだった……。

 ヒトの文明が最後の残り香を残すのみとなった世界を旅する、不死の少女による出会いと別れの旅行記。いわゆる終末世界の旅行ものと言えるジャンルかな。人間の優しさと醜さ、強さと弱さが語られます。
 読んで思ったのは「木枯らし紋次郎と親和性が高いな」。自分には関係ないことよと部外者、第三者の立場をとり続けようとしながら、ついつい余計な口を挟み、手を出してしまうあたり。

【死なないセレンの昼と夜~世界の終わり、旅する吸血鬼~】【早見慎司】【尾崎ドミノ】【電撃文庫】【ご機嫌でお気楽な、ヒトの終わりの物語】【デンスケ】【コーヒー屋台】
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「12歳のロボット」 リー・ベーコン

2021-06-24 | 破滅SF・侵略・新世界
「友情は、ぼくみたいなロボットには複雑すぎる」

 もう30年前に人類は滅亡した。社会の隅々にまで普及したロボットたちが人間の危険性に気づき、排除してしまったからだ。そして完璧な世界、豊かな自然を守って全ては計算通りに進むロボットだけの社会が生まれた。
 XR935は最新型の第9世代型ロボット。稼働し始めて今年で12年。指導者プレジデントの言葉に従って、この世界を維持するため、毎日きちんとソーラーパネル設置に励んでいる。ところが、そのXR935が、いるはずのない人間を見つけてしまった。それはシェルターに隠れ住んでいた人間の生き残り、両親を失ったばかりの12歳の少女エマだった……。

 テーマ的にはRobert Anson Heinleinの「Have Space Suit—Will Trevel」の再話で、早川書房が始めた小・中学生向けSFレーベル《ハヤカワ・ジュニア・SF》の一冊目。一昔前の岩崎書店が進めていた、SF名作コレクションとか冒険ファンタジー名作選のラインですね。
 人類滅亡後の世界に発見された生き残りの少女と、完璧な社会にとってのイレギュラーであるロボットとの交流の物語でロードムービー。ロボットがあくまでロジカルに考えて行動した結果、人間を見つけ次第処分するというコマンドに反することを正当化するのがポイント。

【12歳のロボット~ぼくとエマの希望の旅~】【リー・ベーコン】【朝日川日和】【ハヤカワ・ジュニア・SF】【12歳のロボットと少女が繰り広げる冒険と友情のものがたり】【パラドックス】【ホットドッグ早食いコンテスト】【アップグレード】
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「培養カプセルを抜けだしたら、出迎えてくれたのは僕を溺愛する先輩だった」 冴吹稔

2021-03-21 | 破滅SF・侵略・新世界
 超絶美少女にして大富豪のお嬢さまで才媛中の才媛という先輩とつきあい始めて早々に死んでしまった。彼女を狙ったテロで身代わりになって死んだのだ……と思ったら目が覚めたけれど、そこはなにかどろどろした溶液の詰まったカプセルの中だった。今度は成功したわと喜ぶ先輩。
 先輩は単なる才媛ではなく、むしろマッドサイエンティストだったらしい。生前の記憶を承継したクローンを生み出さんと研究に研究を重ねて240年。先輩も何代目かの先輩らしいし、その間に世界には災害やらなにやらイロイロあったらしく、文明は崩壊したそうだ。ただ、この研究施設がシェルターとして機能していたからこその復活だったのだ……。

 ガールフレンドは、マッドサイエンティストでした。
 終末世界のサバイバル。なんとか秩序を保って再建しようとしている人たちと協力し、無法にひゃっほーとなっている連中を撃退するお仕事です。
 みんなたくましくて前向きな、ラブコメ×ポスト・アポカリプス小説。

【培養カプセルを抜けだしたら、出迎えてくれたのは僕を溺愛する先輩だった】【冴吹稔】【西陽ミツバ】【ファンタジア文庫】【SF青春小説】【終末世界の青春小説】【青春と性春】
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「錆喰いビスコ2」 瘤久保慎司

2020-12-07 | 破滅SF・侵略・新世界
「……きっと僕ら、地獄行きだよ……。」
「なら、針の山を越えていこう。何だって越えていける。俺達なら……」

 このとき、ミロの台詞だけ、台詞末に読点がつくんだよね。

 すべてを喰らい尽くす赤錆によって秩序が崩壊した日本列島で、赤星ビスコと猫柳ミロは全国指名手配のお尋ね者となっている。そんな2人と大蟹が向かうのは、ほぼ独立国家状態にありながら、内部ではさまざまな宗派が争い合う宗教県の島根。
 あちらこちらに沸いて出ている、ニセ赤星を吹っ飛ばしながら島根にたどり着いたビスコとミロは、行き倒れの老人を助けるのだが……。

 前回の埼玉とか関東圏から東北圏も酷かったけど、今回は魔境島根です。出雲六塔を舞台に奇々怪々な魔錆天言宗の、不死僧正ケルシンハの逆襲。腐れジジイが大暴れです。

【錆喰いビスコ2】【血迫!超仙力ケルシンハ】【瘤久保慎司】【赤岸K】【mocha】【電撃文庫】【疾風無頼の冒険譚】【不死僧正】【不老不死】【仙医】


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「錆喰いビスコ」 瘤久保慎司

2020-10-31 | 破滅SF・侵略・新世界
「俺が矢で、お前が弓だ。俺達は弓矢だ! そういう、二人だった!」
 いいバディ小説でした。

 東京が謎の爆発で消し飛び、それとともに日本中に広がった《錆び風》は、人を生きながら錆びさせるだけではなく、すべてを砂と化し砂漠を広げていく。
 赤星ビスコはキノコ守りだ。土でも鉄でも、寺でも神社でも、その菌術でキノコを生やし蔓延させ、残された人間の領域を侵していく敵として追われ弾圧されているキノコ守りだが、ビスコに言わせればキノコが《錆び風》を食い止め、砂漠をよみがえらせる力となるのだ。
 自警団に追われ、県庁の手先に狙われるビスコだったが、彼には霊薬キノコ《錆喰い》を探し求める使命があった。姉を錆び風にやられた美貌の少年医師・猫柳ミロを相棒に、ビスコは埼玉県を突破しようとするのだが……。

 変わり果ててしまった(少なくともスラムダンクのコミックが残っているくらい)近未来の日本を舞台に、「人喰い茸」の異名を持つ少年が幻の茸を求めて関所を破り、砂漠を渡り、カバ兵やカタツムリ爆撃機と戦い続ける中で、頼りになる相棒を見つける話。あらすじだけ説明しても分からないけど、補足したらますます分からなくなった気がします。
 ひとことで言うと、熱血ロードムービー系バディ小説。ビスコもミロも元気で強くなるよう願いを込められた名前なのです。大学生の息子のお薦め。話はまだまだ続くけど、1巻だけでもちゃんとまとまっていて面白いです。

【錆喰いビスコ】【瘤久保慎司】【赤岸K】【mocha】【電撃文庫】【疾風無頼の冒険譚】【このライトノベルがすごい!2019】【強弓が撃ち抜く冒険ファンタジー】【地下鉄の廃線】【必中のキノコ矢】【邪悪な県知事】【タキシード仮面】【天元突破グレンラガン】【生まれたての鹿】【人食いパンダ】【軍用スナカバ】【空カタツムリ】【トビフグ】
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「U.W.W.」 月刊タクテクス増刊

2020-09-08 | 破滅SF・侵略・新世界
「ZATメカの考察をやれるものならやってみろってんだな」

 特撮テレビ番組「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」が同じ世界、同じ時間線で起きていた事件だという前提のもとで、それぞれの世界に出てきた地球防衛のための組織の改組変遷、超兵器の開発プロセスや運用戦術などを追求した雑誌連載をまとめたもの。
 1991年時点で公開されている情報を集めて、整合性を求めて組み上げたものなので、放映順に組織や兵器ができていたことにはなっていません。順番でいくと、80年代頃から怪獣が出現したり宇宙人が襲来するようになり、それまで各国の軍隊やICPOが個々に対応していたものが、米ソ協力によって90年代にWDO(地球防衛機構)が発足、その一部門としてMAT(怪獣攻撃チーム)も動き出します。やや遅れてICPOなど警察関連の組織として国際科学警察機構も発足。SSS(科学特捜隊)などの戦闘力を強化した捜査部隊も編成されます。それが2000年代になってMATが解散し、一部国際科学警察機構の業務も移管された上でTDF(地球防衛軍)が誕生する……という流れになっていますが、重要なことは巻末に記されている「この本に資料的価値はありません」の一文。
 「怪奇大作戦」とかまで含めてあれこれもっともらしく、精緻に設定されていますが、どれだけもっともらしくても公式設定でもなんでもないよということです。

 この時期って、作品本編では言及のなかった部分まで考察していろいろ設定を補完するものが刊行されていました。古くは海外の「スタートレック」関連の研究本があり、今ではオンラインでクリンゴン語の学習ができたりしちゃうわけですが、日本だとヤマトではなくガンダムあたりから目につき始めます。
 1979年にガンダムFC「GUN SIGHT」がガンダム世界の設定を勝手に作り始め、それをベースにOUT編集部が監督以下オフィシャルまで巻き込んで『ガンダムセンチュリー』を発刊したのが1981年。ここから生まれて公式設定になったものも数知れず。
 84年にはマクロスFC「SKY ANGELS」が『マクロスジャーナル』誌上で統合軍の兵器開発史を発表し、85年にはOUTのみのり書房が今度は「装甲騎兵ボトムズ」の世界をミリタリームックの体裁でまとめた『ボトムズ・オデッセイ』を刊行。
 そんな感じで、いろいろ設定の考え甲斐のある作品が出そろい、かつまだ版権的には扱いがユルくていろいろ外部が勝手なことができた最後の作品……かな?

【ウルトラシリーズ・超兵器の世界】【ULTRA WEAPON WORLD】【月刊タクテクス増刊】【ホビージャパン】【青井邦夫】【長谷川正治】【田中精美】【吉田穣】【小林伸光】【女美由寿】【山本直樹】【一戸寛】【成田亨】【河森正治】【小林誠】【幡池裕行】【小林治】【増尾隆幸】【小泉和明】【居村眞二】【円谷プロダクション】【高橋昭彦】【捕獲恐竜戦車】【SRI】
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「デンキネコ~日本列島改造計画」 監督:中村犬蔵

2020-06-07 | 破滅SF・侵略・新世界
 90年代に始まって一部の特撮マニア層に絶大な人気を博した自主製作CGアニメ「デンキネコ」シリーズ。出てくる登場人物すべてがほぼ同じぞんざいなデザインのロボットネコで、老若男女すべて「なーなー」「うななー」しか喋らないという雑なアニメなのに、その60年代から70年代テイストがみっちり詰まったパロディが面白かったのですが、その「一部のマニア層」がどのくらいかというと上映会が満席になったり深夜のテレビで放送されたりウルトラマンシリーズの看板に登場するくらい。
 そして、あちこちの上映会やコンベンションくらいでしか見られなかった作品が、いつの間にかポンッとDVDで市販されちゃったのが2003年。しかも、いつもの「なーなー」ネコ語版に加えて日本語吹き替えも収録されており、主役がなんと森川智之、ヒロインが井上喜久子という豪華な顔ぶれですが、キャラはいつものとおり「みんな同じ顔」です。

 衛星軌道上のデンキネコ宇宙ステーションが突如爆発、藻屑と消えた。地球に向かって進んでくる粗大隕石と衝突したのだ。
「このままでは半年後には地球は消滅だ!」
 なにもせんほーがえーという意見がないでもなかったが、地球を救うため、デンキネコたちは2つの作戦を決定する。二本立て興業の1つめは、新型爆弾で隕石を吹き飛ばしてしまおうというB(バクダン)計画であったが見事に失敗。残る方策はA(アタミ)計画のみとなった……。

 マニアックなSF映画ネタ満載で、試しにレトロ特撮番組もYoutubeで熱心に視聴している小学生男子に見せたが、見事に最初の5分で飽きられた。親には大ウケだったのに……。

【デンキネコ~日本列島改造計画】【中村犬蔵】【映像温泉芸社】【愛とロマンと根性と。】【黒澤秀一】【自主製作CGアニメ】【森川智之】【井上喜久子】【檜山修之】【堀内賢雄】【藤原泰浩】【望月健一】【増田淳】【藤田圭宣】【飯田浩志】【猿の惑星】【七人の侍】【日本沈没】【妖精ゴラス】
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「こわれたせかいのむこうがわ~少女たちのディストピア生存術~」 陸道烈夏

2020-06-04 | 破滅SF・侵略・新世界
「これでまた私は昨日の私より賢くなれる」
 知識は命にもなり金にもなると、ラジオの電池を交換したサクマ・フウ。
 貧しい底辺の人間は教育も受けられない。ただ、録音された戦前の教育番組を流し続けるラジオだけが知識の源だ。

 チオウ第五管轄区に住む少女フウは天涯孤独の身となった。教育を受けずに育ったフウは、病気の母親には「こーせーぶっしつ」よりもまずは水と塩が必要だということを知らなかったのだ。
 大昔の戦争でこの国以外はすべて「みさいる」とかで消えてしまい、周囲には危険な生き物が棲息する砂漠ばかり。街の中ですら、噛まれると水を恐れながら死んでしまう呪いを持った野犬が群れている。そんな世界で1人生きていくフウは、ある時、ジャンク屋で古いラジオを手に入れた。
 誰かが酔狂にも録音データを流し続ける大戦前の教育番組は、最初は砂漠を何時間も歩いている間の暇つぶしであったが、やがてそれが《生きる知識》を教えてくれるものだということに気づくのだが……。

 かろうじて高度な文明を維持してはいるけれど、機械兵士なんてものが犯罪取り締まりの第一線に投入されている一方で、満足な医療や教育を受けられないままどん底を這い回る貧困層は多く、指導者が王として崇められているディストピアを舞台に、学び考えることを知った少女が不思議な押しかけ少女と繰り広げる逃走劇。
 ポスト・アポカリプス的な世界でのディストピアものだけれど、希望が残り、前向きに道が続く終わり方なので読後感はさわやか。末っ子のおすすめだけれど、おもしろく読めました。曲がりなりにも電撃小説大賞の銀賞作品なのですが、事前情報がなかったので個人的に拾いものでした。電撃文庫は懐が広いよね。

【こわれたせかいの むこうがわ】【少女たちのディストピア生存術】【陸道烈夏】【カ ーミン@よどみない】【電撃文庫】【世界一ヘビィな脱出劇】【風の名を持つ、二人の少女の物語】【流星群】【ラジオ】【地上空母】【人造人間】
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「なまこ×どりる」 Gyo¥0-

2020-05-16 | 破滅SF・侵略・新世界
 魔界との接触で現代文明が崩壊し、魔法を基盤として再生し、人類が魔と戦い続ける未来。
 魔術師の卵として魔術学校に通う伯爵令嬢アレクサンドラ・フラウ・ポートラッシュが召喚術の試験で呼び出した使い魔は……なまこだった。

 天然脳筋系のドリルヘアーな令嬢と、使い魔のなまこが繰り広げる、バトルあり婚約破棄ありの学園モノなので「なまこ×どりる」。ハリー・ポッターのホグワーツみたいな雰囲気で始まった魔法学園ものは、いきなり魁!男塾みたいな展開に陥ります。それでいて物語の舞台はポストアポカリプス。
 いろいろカオスな作品。今後の展開が楽しみです。

なまこ×どりる】【Gyo¥0-】【小説家になろう】
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