付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「麻雀漫画50年史」 V林田

2024-06-27 | エッセー・人文・科学
 特定のジャンルに絞ったマンガ専門誌というのは面白いもので、ゴルフでも料理でも釣りでもエロでも、それさえやっていれば他のことはなんでもいいと許される事が多く、その代表がマージャン漫画です。それこそ麻雀牌が誌面に出ていれば、そこでオカルトやっていようが巨大ロボットバトルしていようが政治してようがフリーというのが面白いところです。
 ただ、そんななんでもかんでもありの玉石混淆の世界を総括した論はなかった。もしくはあるにはあったけれど、狭い範囲の観測で大局を語るような不十分なものしかなかったので、ここで阿佐田哲也の小説『麻雀放浪記』のヒットに象徴される麻雀ブームの発生の中から生まれた麻雀漫画の変遷について、単行本にならなかった作品まで含め、掲載誌の興亡までの50年分を語っています。
 時代ごとの代表作の紹介を軸に、漫画家・原作者・編集者へのインタビューや列伝なども含めた読み応えたっぷりの1冊。麻雀漫画が誕生したと思われる70年代前後の話から始まって各出版社の事情まで、「哭きの竜」から「咲」「ゲッターロボ牌」「一八先生」までフォローして図版付きで解説してます。「一八先生」では元ネタと比較したり、「牌」を「ゲッター線指数がかなり高い」と評したり、ツボを突いた語り口が魅力です。単にコミックを集めて飛ばし読みしたようなものではなく、当時の掲載誌から雑誌の傾向までしっかり網羅してます。
 こういうジャンルごとの通史はもっと読みたいなあ。料理マンガとか大変そうだけど。

【麻雀漫画50年史】【V林田】【Ritz Kobayashi/SQUARE ENIX】【文学通信】【これも麻雀漫画、これが麻雀漫画。だから楽しい!】【麻雀漫画黎明期(70年代)】【麻雀漫画誌戦国時代(80年代)】【竹書房麻雀漫画の黄金時代(90年代)】【下り坂の専門誌と一般誌掲載作の台頭(00~10年代)】【麻雀漫画のこれから(20年代)】【平成ライダー】【ゲームブック】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「邦キチ!映子さん11」 服部昇大

2024-06-06 | エッセー・人文・科学
「魔法で何でもできちゃうけれど…人生に本当に大事な事は魔法じゃどうにもならんのが…女児アニメのテーゼやろがい!!」
 人生の大事な事を教えてくれるのが「おジャ魔女」や女児アニメというコンテンツなのだとトロピかる部。

【邦画プレゼンツ女子高生~邦キチ!映子さん11】【服部昇大】【ホーム社】【実写版ワンピース】【ハリウッド版北斗の拳】【ハリウッド版】【シン・仮面ライダー】【実写版耳をすませば】【Winny】【魔女見習いをさがして】【奈落のマイホーム】【ゴジラ-1.0】【犬鳴村】【実写版ストリートファイター】【ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー】【トイレのピエタ】【トイレット】【CUBE一度入ったら、最後】【ゴールデンカムイ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「赤と青のガウン」 彬子女王

2024-05-07 | エッセー・人文・科学
「展示されたことのある作品は全収蔵品のおよそ10%で、残りの90%は一度も展示されずに収蔵庫に眠ったままだと言われている」
 法隆寺金堂壁画の「弥勒浄土図」もその1つで、複製なので作品番号も与えられず、棚に放り込まれたまま忘れられていた。

 英国のオックスフォード大学は複数のコレッジの集合体。その1つであるマートン・コレッジに留学した彬子女王だが、たった1年ではチュートリアルをクリアして言葉と生活に慣れるのが精一杯。きちんと研究して成果を出したいと改めて修士課程に臨むつもりだったのだが、気がつけば博士論文を提出することになっていた……。

 皇族である彬子女王が公務にも就かず都合6年間も留学していたのなら、その内容について世間に報告する義務があるという父宮様・寬仁親王の言葉に従い、マートン・コレッジでの2001年9月から1年間、そして2004年9月から5年間の留学生活の日々に何があり、何を思ったかを綴った記事をまとめたもの。
 なぜ研究テーマを「19世紀末から20世紀にかけて、西洋人が日本美術をどのようにみていたかを、大英博物館所蔵の日本美術コレクションを中心に明らかにする」にしたか……のくだりから、厳しすぎる指導教授らとのやりとりや学生たちとの日常。アフタヌーン・ティーにバッキンガム宮殿へお招きされたかと思えば、格安チケットを使ったせいで一人見知らぬ街の空港にたたずむはめに陥っていたりと波瀾万丈。大変だけれど、やりがいのある日々だったことが伝わってきますが、それだけに博士号を取得できることが決まった後の宮内庁とのやりとりに心底ぐったりしているのが伝わってきます。まさにお役所仕事。
 こういう話ですぐに気になる「留学中に護衛はついてるのかな」という疑問は、比較的早めに解説されてます。「つかない」と。日本の側衛官は2週間以上の滞在にはつかないし、英国側は王族貴族の子弟はいっぱいいるのでつけきれないからつけませんとのこと。
 エピソード的には、警備の機動隊員に不審者扱いされている「ヒゲの殿下」のくだりが好き。

【赤と青のガウン~オックスフォード留学記~】【彬子女王】【PHP文庫】【女性皇族として初めて海外で博士号を取得された彬子女王殿下による英国留学記】【フォーマル・ディナー】【英国の食】【法隆寺金堂壁画】【スコーン】【お雑煮】【博士論文性胃炎】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「建築知識2024年4月号」 エクスナレッジ

2024-04-18 | エッセー・人文・科学
 『建築知識』4月号買いました。開いて思わず「世界史かよ」とつぶやく、副教材みたいな年代別(4~15世紀)のヨーロッパ地図に年表が巻頭に鎮座。特集末尾には服飾の特徴とかキリスト教とユダヤ教の解説などの基礎知識が1~2頁で簡潔にまとめられ、それらに挟まるように西欧から東欧まで中世ヨーロッパの聖堂や宮殿から住宅、街並みや個々の建物など増改築の変遷やらアーチの建築様式までイラストで解説しています。
 もちろん中世ヨーロッパ20都市ちょいの紹介ですから、あくまでさわり部分の解説。入門としてはベストの構成です。
 特集以外にも「加門七海の風水探見」とか「金田一耕助の間取り」とか読み応えのある小記事も多数。でも、横溝正史のミステリ作品の舞台となった建物を図面と共に解説する「金田一耕助の間取り」の初回テーマが「八つ墓村」の田治見家なのに、アイコンが犬神家のスケキヨなのは、誤解を招きますよね。今後もチェックポイントのアイコンに利用するのかな?

【建築知識2024年4月号】【エクスナレッジ】【中世ヨーロッパの建物と街並み詳説絵巻】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「じょうずなワニのつかまえ方」 ダイヤグラムグループ

2023-12-07 | エッセー・人文・科学
 「じょうずなワニのつかまえ方」から「ファラオの見分け方」「錬金術の処方箋を読み解く法」「カイコの飼育法」など、普通に生きていれば大半は無用の知識がたっぷり500以上。編纂したのは、イギリスのリサーチャーグループの「Diagram Group」。ありとあらゆるスポーツ競技のルールをまとめた1974年の「Rules of the Game」以来、いろんなデータをまとめた本を送り出しています。各項目ごとにレイアウトとフォントが違っていて、書体見本帳にもなってます。
 異世界とか戦国時代に転生した場合の生き抜くための知識をどこで得たかと言えば、考古学マニアだった、食品を扱う商社にいた、城郭マニア、大学の教授がマニアックで、テレビでアイドルがやっていた等々、前世知識のネタ元はいろいろ。やや多いのは「ブラック企業だったので、担当外の仕事まであれこれやらされて」というものかな。ただ、まだ「『じょうずなワニのつかまえ方』を読み込んでいて」というのは見つけていません。新紀元社のF‐Filesシリーズも読み込んで記憶していれば異世界転生か何かした時に役立ちそう。ここらで「ローマンコンクリートの作り方」とか「有機肥料の作り方」とかまとめたムダ知識本とか並んでいても良さそうです。 

【じょうずなワニのつかまえ方】【ダイヤグラムグループ】【バベル・インターナショナル】【主婦の友社】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「江口寿史扉絵大全集」

2023-11-06 | エッセー・人文・科学
 「江口寿史扉絵大全集」到着。世田谷文学館で開催される「江口寿史展」に合わせて刊行された、『すすめ!!パイレーツ』から『イレギュラー』までの(ほとんど)すべてのマンガ作品の扉絵だけを収録した原画集です。
 代表作『ストップ!!ひばりくん!』から始まって各作品の最初の1ページ(もしくは続く数ページ)が作品ごとに並んでいくわけですが、締めは『すすめ!!パイレーツ』。いろいろ懐かしいとか思いながら見ていたけど、やっぱり自分はパイレーツ直撃世代。
 『すすめ!!パイレーツ』の扉絵は全体の4割前後。やはり初連載が最長連載だったのです。『すすめ!!パイレーツ』の扉絵の特徴って、ひんぱんにマンガとは関係ない内容の、おしゃれなタッチのイラストが描かれていたこと。洋楽が好きなやつに言わせると、内外のアーティストのアルバムカバーにインスパイアされたのが多いよとかいう話で、当時は『すすめ!!パイレーツ』のおしゃれな表紙イラストを、B5サイズのプラスチックケースに挟んで下敷きにするのが流行っていたのです。248pのやつとか。プラスチックケースって、今のクリアファイルの材質がハードなやつで、厚さが2ミリとか3ミリとかになって下敷きとしては使いにくいけれど、オリジナリティをそれで主張していたのです。女子はアイドルの切り抜きが多かったかな。はみだしっ子のグレアムペンギンとかの娘もいました。

【江口寿史扉絵大全集:COVER ART COLLECTION OF EGUCHI HISASHI】【江口寿史】【 ‎ 小学館】【江口寿史の「絵の歴史」が一望できるイラストレーション集】【世界初の〈マンガの扉絵全集〉】【ストップ!!ひばりくん!】【パパリンコ物語】【エイジ】【寿五郎ショー】【江口寿史の日の丸劇場】【マークⅡ】【ラブ&ピース】【寿五郎の正直日記】【日焼け注意報】【江口寿史のなんとかなるでショ!】【恋はガッツで】【江口寿史の爆発ディナーショー】【理想の息子】【KV-201XR】【エリカの星】【COMIC CUE】【ラッキーストライク】【うなじ】【HOMERUN CATHER】【平成大江戸巷談イレギュラー】【ひのまる劇場】【2100年宇宙ベースボール】【名探偵はいつもスランプ】【桜ノ花サイタ?】【GO AHEAD!】【SPACE PIRATES】【POCKY】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「クラッシイ 2023.10月号」 CLASSY.編集部

2023-10-16 | エッセー・人文・科学
 女性ファッション誌を買ったのは学生時代以来。「日本沈没まであと1ヶ月…防災女子の9月着回しDiary」が読みたくて。
 内閣府の防災アドバイザーに着任した女性が、東奔西走しながら着回しで最後までオシャレは忘れないというドラマ仕立て。そこはもう防災服一択だろ?とか言うのは忘れること。

【CLASSY.(クラッシィ) 2023年 10 月号】【CLASSY.編集部】【光文社】【ホテルも鮨もスニーカーでいきたい!】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「〈戦い〉と〈トラウマ〉のアニメ表象史」 森茂起・川口茂雄:編

2023-08-26 | エッセー・人文・科学
 日本のアニメにおいて「戦い」がどう描かれてきたか、制作者がその闘争として現実のどのような戦いをイメージに持っていたかなどを追求した論文集。物語を生み出すとき、暗黙の前提として創作者が意識しているのかいないのか、その時代ごとの世相や文化や歴史のイベントなど何がどのように影響しているのか、鉄腕アトムやガンダム・ヤマトからゴールデンカムイ・SAO・グリッドマンまで複数の論者それぞれの切り込み方が面白いのですね。
 特に興味深かったのは、ガンダムやヤマト周辺。最初の『宇宙戦艦ヤマト』は1974年作品、『機動戦士ガンダム』は1979年作品。今となっては現在から作品が公開された年までより、太平洋戦争から作品が公開された年の方が近いのですね。なので、当然のように「戦争」を描いた作品として、どちらも太平洋戦争の影響を色濃く受けています。ぶっちゃけて言えば、昨今の仮想史的作品に見られる「太平洋戦争での敗戦を回避するには最初から枢軸ではなく連合側につく状況を設定しよう」という流れの先駆けといえなくもないですね。けれども、ヤマトと違ってあまりガンダムは(それを指摘する論は多々あれど)一般的にはあまり太平洋戦争をモチーフにしたようには受け取られていないのはなぜだろう?……という謎を論理的に考察していきます。
 あるいは、『サイボーグ009』と『まどか☆マギカ』におけるテーマの継承とか、「宇宙よりも遠い場所」に見られるSNSの普及による世界の矮小化等々、さまざまな視点からアニメ作品を考察していきます。

【〈戦い〉と〈トラウマ〉のアニメ表象史~「アトム」から「まどか☆マギカ」以後へ】【森茂起】【川口茂雄】【藤津亮太】【小島伸之】【雪村まゆみ】【西岡亜紀】【東園子】【上尾真道】【木下雅博】【森年恵】【佐野明子】【アルト・ヨアヒム】【荒木菜穂】【上尾真道】【加藤之敬】【植朗子】【 ‎日本評論社】【鉄腕アトム】【サイボーグ009】【さらば宇宙戦艦ヤマト】【機動戦士ガンダム】【ポール・グリモー】【火垂るの墓】【美少女戦士セーラームーン】【魔法少女まどか☆マギカ】【千と千尋の神隠し】【幼女戦記】【グリッドマン】【宇宙よりも遠い場所】【ケムリクサ】【桃太郎 海の神兵】【機動警察パトレイバー】【新世紀エヴァンゲリオン】【ソードアート・オンライン】【ゴールデンカムイ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「少女小説を知るための100冊」 嵯峨景子

2023-05-30 | エッセー・人文・科学
 少女小説を「少女を主たる読者層と想定されて執筆された作品」と定義しつつも、その「読者層となる少女」が20代以上にまで拡大している時代の変化を前提に、古今東西の古典から最新作までおよそ10年刻みに代表的な作品をピックアップした読書ガイドです。
 ただ、明治から令和まで「少女小説」の形は変わってきていますので、半端にジャンルを狭く限定することなく、「少女向きに書かれた主な読者層が少女」なものから「少年向きに書かれた主な読者層が少女」「少女向きに書かれた主な読者層が少年」のものまで柔軟にリストアップしています。
 多分、このやり方が正解なんだと思います。もともとがはっきりしなくなっている領域です。校庭に100メートルの直線を引けと言われたときに、15センチの三角定規と物差しでちまちま測っていくよりも、大雑把に歩測で測った方がまっすぐになるように、おおよそのラインを広くとっておいた方がその中心線を観測しやすくなる……と中学の時に教わりました。
 そういう意図があったかどうかはともかく、紹介されているのは20世紀初頭の『小公女』や『若草物語』から『作家令嬢と書庫の姫』まで、児童文学からハーレクインまで幅広いものとなっています。中には「これを少女小説と言って良いのか」というものもありますが、結局「少女を何歳から何歳までと定義するのか」「少女小説のレーベルだよね」「主人公が少女だよね」などと指摘していけば、ちゃんとクリアしちゃうんですね。ボーイズラブとかガイズラブまで含めて。 
 とりあえず、コバルト文庫の筆頭に若桜木虔の『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が来ている時点で、このセレクトは信用できると確信したのです。少女小説レーベルの代表格であったコバルト文庫の隆盛期におけるノベライズ作品の重要性、ヤマトのファン層における女性の多さを無視していないという選書なんです。

【少女小説を知るための100冊】【嵯峨景子】【星海社新書】【少女小説の歴史を100の名作で辿る入門ガイド】【コバルト文庫】【ティーンズハート】【ケータイ小説】【ウェブ小説】【ライトノベル】【ライト文芸】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「妹がグレブナー基底に興味を持ち始めたのだが。」 グレブナー基底大好きbot

2022-09-26 | エッセー・人文・科学
「実数は、まだ人類には早すぎる」

 卒業を前に留年してしまった理系の大学生、本条圭介はこれ幸いと浮いた時間で計算機代数学を勉強する日々。そんなある日、普段あまり話もしない女子高生の妹が部屋に訪ねてきた。
「お兄ちゃん! グレブナー基底って、知ってる?」
 なぜか数式処理の解法に興味を持った妹に教えようとしても当然のことながらちんぷんかんぷん。そこで1+1からコンピュータと数について話すことにしたのだが……。

 大学生の兄が高校二年生の妹にグレブナー基底の使い方を教えるだけの小説。帯には「新感覚ラノベ」とありますが、図表を交えた対話形式で、10年以上前に女子高生がドラッカー理論で野球部を立て直す話があったけれど、あれよりは教科書的。対話によって相手を高みに導こうというのはソクラテスの時代から教育の定番手法なのだ。
 Twitterでグレブナー基底の啓蒙かたがた書き始められたのが電子書籍となり、それが加筆修正されて書籍に。今ではカクヨムでも読めますが、AmazonではKindle版しか売っていなかったので買っていなかったけど、気がついたら5年前くらいに書籍版が出ていたので書泉で購入。薄手のソフトカバー……というより教科書サイズの横書き。ひとことでいうと「超高速!算数から数学理論まで」。自分は80頁あたりでついていけなくなりました。

【妹がグレブナー基底に興味を持ち始めたのだが。】【グレブナー基底大好きbot 】【ぴーす】【p進大好きbot】【シルフ・インスティテュート】【数学×ラノベ=?】【新感覚数学ラノベ】【Twitter】【カクヨム
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ウェブ小説30年史」 飯田一史

2022-08-04 | エッセー・人文・科学
  ウェブ小説というと世間的には「なろうで連載された異世界転生ものがラノベとして刊行されている」くらいに思われがちだけれど、ラノベとくくられているだけで一般文芸の4割、くくりを外せば5割はウェブ発だという前提で、タイトル通り「日本の文芸の半分」になったウェブ小説の歴史について語ったもの。
 一般的な新書が250ページで1000円前後の値段なのに、厚さも値段もほぼ倍という大作。個人サイトからLINEノベルまで作品の傾向の変遷から媒体の興亡までびっしり。ウェブ小説を語る上で必読の基礎資料です。ウェブで公開されている目次だけでも、「2000年代前半のウェブ小説書籍化―自費出版・掲示板文化・ガラケーサイト」「2000年代後半―第二次ケータイ小説ブーム」「2010年―初の異世界転生書籍化と「ウェブから書籍へ」の流行の波及」と、ウェブ小説の略史になってます。
 ウェブ小説は1990年代に個人のサイトで創作を発表したところから始まり、ネットの特色を活かしたハイパーリンク小説や一般読者からの投稿を活かした合作的なものなども生まれていきます。賞への応募を前提にオンライン小説として書きためられていた〈古典部〉シリーズなど、よく知られたものから意外なものまでウェブが初出という作品は多いのですね。
 ただ、インターネットの特性上、データが元からすっぱり消えてしまうのがざらなので、どうしても書籍化されたものが基準となります。本は残るけれどネット上のデータはサービス終了とかシステム更新とかで簡単に消えちゃいます。そういう意味で、今だから書けた本、今書かなくてはいけない本なのです。
 著者が書いているように、これが完璧というわけではないけれど、ウェブから始まった小説について語るときに前提とすべき本でした。

【ウェブ小説30年史~日本の文芸の「半分」~】【飯田一史】【星海社新書】【ウェブ小説の歴史】【ネットビジネス史】【出版産業史】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「図説 船の歴史」 庄司邦昭

2022-05-31 | エッセー・人文・科学
 丸木舟から潜水艦、サンタマリアからタイタニックまで、船の発達史と航海の歴史について概論と図解で語る1冊。船の本は見かけるとつい買ってしまうんですよね。もう、資料に使うこととかないのに。
 タイタニック号の衝突当日のディナーメニューとか興味深かったり。
 あと、和船と洋船の違いで「和船は竜骨がなくて耐久性が悪いので外洋航海に向かない」みたいな話もあるけれど、ここでは和船は意外と頑丈。事故率も比率で見るとさほど大きくないけど、漂流する最大の原因は舵を流されたこと……とあるのを見て「あ~」と納得。これは完全に構造的欠陥だよね。

【図説 船の歴史】【庄司邦昭】【ふくろうの本~世界の歴史】【アルタの岩絵】【サラミスの海戦】【三段櫂船】【植民地】【世界一周】【カティ・サーク】【グレート・ブリテン】【イザンバード・キングダム・ブルネル】【ぐろーばるはいうえい】【鳳翔】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「図説 宮中晩餐会」 松平乗昌

2022-05-03 | エッセー・人文・科学
 天皇の料理番を務めた秋山徳蔵が蒐集した宮中晩餐会や午餐会のメニューから日本の食文化の変遷を語ろうというもの。少なくとも食文化に関しては、西洋料理が宮中から一般に広まっていく流れだったそうな。そりゃ、食材から調理法まで庶民では一から調べて揃えるのは困難でしょう。
 明治8年の9月30日に太政大臣らを集めた午餐会からで、出席者は太政大臣の三条実美から陸軍少輔の大山巌まで。まだ洋食文化が馴染んでいないのでメニューに「牛羹タツピョーカ」とか書いてあっても何のことか分かりにくく、外国人を招いての食事で来賓用のドイツ語や英語のメニューが出てきて初めて分かることもしばしば。もう少しカジュアルな食事会になると、カレーを使ったメニューもちらほら出てくるらしく、インド植民地時代のイギリス料理の流れも入っているかもだとか。
 そして、昭和20年10月15日の午餐あたりになると、そのメニューの書き方からも世相を読み取れるものとなります。魚料理で「鮮魚」としか書かれなくなって何の魚か指定が無くなるのです。

【図説 船の歴史】【松平乗昌】【ふくろうの本~日本の文化】【河出書房新社】【饗宴の歴史とその時代】【憲法発布大宴会】【昭和の大礼】【溥儀】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「前近代の医家たちとその学び」 武田科学振興財団

2022-04-16 | エッセー・人文・科学
 鈍器サイズの2冊組の1冊目。曲直瀬流の勃興による近代医学の始まりから古方派を経て、漢蘭折衷派のシーボルトの影響あたりまで、一次資料を中心にまとめて考察を加えた論文集。肖像画1つから専門家が読み取れる情報の多さとか、素直にスゴいなと思いました。
 松永久秀の求めに応じて曲直瀬道三が翻訳脚註を加えたという房中術の手引きとか、物語では何かというと秘伝書みたいに扱われるし、当時のレベルからしたらそうかも知れないけれど、今となってはたいした中身じゃない気がします。少女痛の処置方とかあるのは独特だけれど、「をんなあふのきにふさしめ、そのまたをひらかしめ、なんしそのもゝのあひたにより、はらのうえにかゝりまし」くらいの話ですよ。
 あと、門人録とかしっかり掲載してあるのも特色。誰が誰の門人で、どこ出身でいつ入門したとかばっちり記録に残っているの。追っていくのも楽しそうだけれど、それは泥沼……。

【前近代の医家たちとその学び~日本近世医学史論考Ⅰ~】【町泉寿郎】【武田科学振興財団 杏雨書屋】【房中術】【門人録】【黄素妙論】【素女妙論】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「南仏プロヴァンスの12か月」 ピーター・メイル

2022-04-11 | エッセー・人文・科学
 引退した元広告マンがロンドンから南仏プロヴァンスに移住し、その田舎暮らしの日々での人々との交流や自然、料理店での美食などを書き綴ったエッセイ。
 1989年刊行。当時、大ヒットしてイギリス紀行文学賞受賞。日本でも93年ハードカバー、96年文庫化。そのおしゃれな装丁も流行りました。

 前にも書いたけれど、ライトノベルで「スローライフ」ものというジャンルが言われ始めた時に調べたら、そもそも厳密に定義された言葉じゃないと知ってびっくり。表だって言われるようになったのが2001年頃というタイミングもあり、個人的にはバブルで良い思いをした金持ち老人が自分たちの老後の暮らしを言い繕うのと、景気が落ち込んだままの若い世代への言い訳にしたんじゃないかと穿った見方をしているんだけど、そもそもスローライフな暮らしはあくせく働く必要がないからこそ成立するんだよ? 単なる田舎暮らしはのんびりしてる暇がないから!
……ともかく、この『南仏プロヴァンスの12か月』は、定義のない「スローライフ」という生活様式のサンプルみたいなものです。手に入れたマイホームに手をかけ住みやすくし、地元の人々と交流しながら日々の暮らしを楽しみ、農作業はあっても天候や出荷価格を気にしてせわしない労働に明け暮れることもなく、家庭料理やレストランで現地の食材を使った美食を楽しむ生活ってやつです。

【南仏プロヴァンスの12か月】【ピーター・メイル】【河出文庫】【至福の体験を綴った珠玉のエッセイ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする