付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「白銀の弾丸~スレイヤーズすぺしゃる30」 神坂一

2008-01-31 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 「スレイヤーズ」の短編集も、この『白銀の弾丸』で30巻。長く続いてるなー、ネタがよく持つなー、と感心しつつ早幾とせ。
 今回は迷宮探検の「踊る迷宮」前後編、敵はカナブン!の「G・B伝説」前後編、愉しい雪合戦の「白銀の弾丸」前後編に、書き下ろしで「踊る迷宮」の後日談で地獄の処刑メイドが暴れ回る「失われた支度金を求めて」を収録。
 いや、ほんとに巧いよね。パワーに溺れぬ魔法戦、お約束パターンのひねり方、そして予想の斜め下を行くオチ。単なるノリと勢いだけでは、こんなバカ話は書けません。

【迷宮競技】【群体】
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「からくりの闘姫」 九品田直樹

2008-01-31 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 社から盗み出された荼吉尼天を模った人形は、人の心と妖かしの技を身につけた。
 人傀儡の術で人間を操り人形のように操るダキニは秋葉原の街中に身を潜め、人の心の澱みを吸収しながら力を蓄えていく。
 それを狩るのはひな。ダキニを追っては来たものの返り討ちに遭い、朽ち果てるにまかされようとしていたひなは、フィギュア造型士でもある高校生、播磨神護によって拾われ修理されたのだ。そう。彼女もまた人形だった。そして彼女も人の心を手に入れてしまっていた……。


 高校生モデラーが拾ってきた人形が、直してみるとなんとびっくり! 人間の女の子になっていたじゃないかーっ!? メイドカフェに勤めるおねえちゃんもびっくりだ★という、「からくりの闘姫」というタイトルままな話。
 まあ、普通に楽しめました。ただ構成にまだ難ありかな。一気に読みたいところで何度も何度も話が戻ってテンポが乱れます。

【からくりの闘姫】【九品田直樹】【高木信孝】【集英社スーパーダッシュ文庫】【秋葉原】【人形】【意志を持つ人形】【アキバ】【神社】
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「戦う民間船~語られざる勇気と忍耐の記録」 大内建二

2008-01-30 | 戦記・戦史・軍事
 太平洋戦争において軍は民間漁船や商船を徴用しては、輸送や監視任務を与えて千島からソロモン諸島までに送り出していた。捨て駒となって次々と海の藻屑となっていった商船及び漁船の乗組員の数は最低でも6万名。陸海軍全将兵の犠牲率19%(187万名)に対し、商船乗組員の犠牲率は44%である。
 輸送任務に狩り出されソロモン海に沈んだ商船団、特設監視艇として日本に接近する敵編隊を報告したまま消えた漁船団。けれども、こうした民間船に対して、海軍省が与えたものは、「船員ニ告グ」とした精神論を振りかざした檄文だけであった。
 しかも日本政府は戦後になってもこれら徴用船員の犠牲をほとんど無視し続け、戦没船員追悼式が開催されたのは1971年になってからのことであった。民間海員の犠牲に対して国家をあげて戦没者の追悼と補償をおこなった海洋国イギリスとは対照的な対応であった。
 一方、アメリカでは戦時標準設計のリパティ級貨物船が1日2隻のペースで完成し、しかも能力を落とすことで生産性を高めようとする日本の急造船に対し、輸送船としての機能を充分に満たしたものであった……。

 戦争に狩り出された民間船の姿を、悲惨な日本の輸送船団から別の意味で悲惨だった英国商船団、そして輸送船として活躍した豪華客船クイーン・メリー、あるいは各国で戦時に建造された急造輸送船などの話題を交えながら綴っています。戦時の輸送船団の話はどこも悲惨には違いないのだけれど、日本は送り出される時点で悲惨で無責任なものになっているあたりが泣かせます。
 それに国力の違いも涙をそそられます。上陸作戦時は海岸での物資積みおろし時が無防備となります。それは日米とも同じ話だったのですが、結局最後まで人力でのたのた作業をするしかなかった日本に対し、「ならトラックに荷物を載せたまま船に載せ、そのまま上陸させちゃれ」と考えて実行できるアメリカの国力がうらやましいです。
 そして補則としてちょろっと記されているけれど、日本の輸送船に乗り込んだ将兵の食事メニューはご飯、味噌汁、漬け物、ヒジキと切り干し大根の煮物、干物のエンドレス。それに対してクイーン・メリー号では牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉、ジャガイモ、シリアル、バター、卵、フルーツ缶詰、ハム、ベーコン、ジャム。さらに酒保ではタバコ、ソフトドリンク、菓子類を買えたけれど、豪華客船だけに床が汚れるチューインガムだけは禁止されたそうな。

【補給】【輸送船団】
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「石油技術者たちの太平洋戦争」 石井正紀

2008-01-29 | 戦記・戦史・軍事
 太平洋戦争を「石油の戦い」と位置づけ、石油外交に派遣された使節団から、徴員された石油技術者、電気や作井などの専門家ばかりの技術工兵部隊、タイピストや電話交換手に志願した少女たちや看護婦などの姿を通して、太平洋戦争を開戦前夜から戦後復興期まで描いた戦記作品。

 何年もかけて対日戦略を押し進めていたアメリカに対し、対米認識の甘い陸軍と乱暴に楽観論を振り回す海軍に政府は引きずられ、日本は泥沼へとはまりこんでいきます。まあ、なんというか「船頭多くして」?
 パレンバンの石油精製施設への空挺作戦が奇跡的に成功したものの、陸軍と海軍の対立もあって輸送計画は滞り、タンカーが次々に撃沈されて内地では石油が枯渇し始めているのに、南方ではタンクからあふれた石油を密林で燃やし続けるありさま。結局、システムというものを軽視しているんだよね。魔法使いの弟子じゃあるまいし、命令一つで航空燃料が湧いて出るものかい。
 そして例によって、徴員された技術者7000名に対し犠牲者は25%、けれども徴員であって軍人でも軍属でもないから戦後も恩給等は無しという、最初から最後まで技術者を軽視しているのでした。
 技術者をはじめ民間人は頑張った。身の安全も保証されないまま頑張ったあげくに4人に1人は死んで、何もしないのに戦犯扱いで拘束され、やっとのことで帰国しても補償無しという話でした。

【石油技術者たちの太平洋戦争】【石井正紀】【パレンバン降下】【南方油田】【徴員】【電話交換手】
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「トリックスターズM」 久住四季

2008-01-28 | ミステリー・推理小説
 魔法というモノの存在が社会に認知されているということだけが我々の現実と違う日本。ただ魔法が存在するとはいえ、科学技術を発達させ高度経済成長を成し遂げた日本において、魔学はメジャーな学問とはなっていなかった。
 天乃原周は日本唯一と言って良い魔学コースがある城翠大学に通っている学部の1年生。彼が師事するのは佐杏冴奈。城翠大学魔学部の客員教授にして、世界に6人しかいない本物の魔術師だった……。


「未来を作るのは意志だそうです。だから、あなたの意志が過去に縛られている限り、きっと後ろ向きの未来しか生まない」
 世界で7番目の魔法使い、天乃原周の言葉。

 しまった。いきなり学園祭2日目の話だ!(またかい)
 この作品もシリーズに巻数をふってないのですね。『トリックスターズ』『トリックスターズL』『トリックスターズD』『トリックスターズM』と続くのです。無印とLは読んでるから、Dを飛ばしてるな……。
 とにかく学園祭2日目の話です。基本的に魔法が現実に存在するけれど、それほどありふれたものでもない世界で起きる事件を解くミステリー小説なので、学園祭初日にも何かあったようですが、とにかく2日目は誰かが襲われる予知夢を周が見たところから始まります。事件が起きる。犯人は見当がついている。しかし、いつ、どこで、誰が被害者になるかわからない。かくして周は事件現場と被害者を捜すため、学園祭で開催される仮面パーティー会場に乗り込むことになります。

【マスカレード】【犯罪予知】
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「戦場の絆」 小太刀右京

2008-01-27 | VRMMO・ゲーム世界
 最新のアミューズメント・ゲームを題材にしたガンダム小説です。小太刀右京著。楽天ブックスあたりだと富野著になってたりしますが、小太刀著です。
 こういう本は、えてしてゲームは口実に過ぎなかったりするわけですが、これに関しては100%完熟。アミューズメント・ゲーム「戦場の絆」をプレイしているプレイヤーたちが、ゲーム内の戦場で遭遇した不思議な事件の顛末……といったあたりかな。これでゲームの筐体をゲートにして完全に別世界へ行ってしまうとプラモ狂四郎だかデジモンみたいな話になっちゃうのかもしれないけれど、ゲームはあくまでもゲーム。でも、強敵に挑む主人公と1人づつ合流してくる頼もしき仲間たち……などの物語の王道パターンを踏襲しています。

 ゲーム内で黒いガンダムに遭遇し、負けるとキャラデータが初期化されてしまうという都市伝説。知り合いの店長に頼まれ、その真相を確かめるために閉店後のゲーセンに泊まり込んだ自衛隊戦車士官が見たものは、連邦軍モビルスーツの集中砲火を浴びる1機のグフだった……。


 長男はこれを一気読みして、なおも久々の繰り返し読み。嫁さんは、ゲーセン燃えになってしまって「行きたい行きたい行きたい行きたい……」と戦場の絆にドシロウトを連れて行ってくれる優しいお友だちを探して奔走することに。
 なんというか、読んだらゲームセンターに行きたくなるガンダムもの。いや、むしろ読んでからゲーセンへ行け!(2006.12.5)

【戦場の絆】【小太刀右京】【黒いガンダム】
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「アーニーの戦争」 デービット・ニコルズ編

2008-01-27 | 戦記・戦史・軍事
「ドイツ人は不倶戴天の敵とはいえ、少なくとも自分の国にとことん忠誠を尽くすだけの根性がある」
「補給部隊の7割前後は黒人だ。彼らは波止場で荷役を手伝い、トラックを運転し、集積所に詰める。彼らの中に死傷者のでない日はない」
「日本人は人間ではなく虫けらに思われている気配を私は既に感じている」

 第二次大戦中、従軍記者としてヨーロッパから太平洋まで飛び回り、記事を配信し続けたアメリカの人気コラムニスト、アーニー・パイルが1940年のロンドン入りから1945年沖縄戦で狙撃されて戦死されるまでに執筆したコラムから選び抜いたものに、編者の解説を挟んだベストコラム集。

 ピューリッツァー賞を受賞し、GHQが接収した東京の劇場にアーニー・パイル劇場と名付けるくらいの人気と実力のあった記者。確かに1人1人の兵士や戦地の人々の姿にピントを絞った記事は、リベラルでユーモアにあふれていて面白いし、日本人やドイツ人への憎悪とか嫌悪感とかはあまり感じられません。この時期の文章としては珍しいんでないかな。
 「実際に損害は多くはないが、(報道されている死者数である)12人の12倍には上ったのだ」とか「日ごとにトラックが何台も(味方の)死体を運んでくる」とか「補給は悪夢だ」とか、ドイツ軍に味方が蹴散らされる様子まで克明に書きつづり、よくこれで検閲を通ったなという思う箇所ばかり。こういう記者のこういう記事が「士気高揚に貢献した」とリアルタイムで評価されたところがアメリカの強さかな。
 巻末には編者によるパイルの略伝付き。

【アーニーの戦争】【デービット・ニコルズ】【アーニー・パイル】【コラム】【従軍記者】
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「うさぎの映画館」 殿先菜生

2008-01-26 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 10年前に母親を交通事故でなくし、父親が海外赴任となった静流は1人暮らし。来年は高校生3年生で、そろそろ進路を決めなくてはいけない時期なのに、静流はまだ何をしたいか決めかねている。
 ところで静流は、保護者代わりの父親の友人の骨董店で週1回の店番をしている。しかし骨董店の主人である鳴海はどうにも仕事に熱が入っているようには見えないし、店が繁盛しているとも思えない。
 そして静流が店番をしていたある日、少し挙動不審な青年が祖父の遺品を処分しにと銀河堂を訪れた。その中に鏡の端が割れた手鏡が混じっていたのだが……。

 正直、この本の挿絵は好みじゃなかったです。どこがどうとか言えないけれど。
 でも最後まで読み終わった瞬間、もう1度表紙から口絵まで見直して「ごめんなさい」と言いました。あなどってました。うん、すごいわ☆
 少女が夢に見る不思議な町並み、うさぎが店番をする映画館。アリスのいない不思議の国。何かを隠しているような周囲の人々。そこで静流はなにをみつけるのでしょうか。

【うさぎの映画館】【夢】【写真】【飛行機】
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「エニグマ暗号戦―恐るべき英独情報戦」 広田厚司

2008-01-25 | 戦記・戦史・軍事
 光人社NFの『エニグマ暗号戦』を読了。戦後50年以上経って公開された資料などが使われていて、今までの戦争・スパイ小説とはまた違った話が出ていて面白かったけれど、それよりも座礁したU617から数学者たちまで、ほとんど手当たり次第に挿入されている写真類の方が興味深かったりして。(2007.8.23)

 常識的な話についてもメモしておいたりする。
☆敵の暗号を解読すれば、敵の行動を察知して対応できる。
☆敵の暗号を解読していることが知られると暗号を変えられるので、時には味方の被害を見て見ぬふりをするのはあたりまえ。
☆暗号解読は数学者の仕事で、コンピュータも暗号解読目的で発達した。
☆第二次大戦中にドイツが使った代表的暗号が「エニグマ」。これを解読するためには、エニグマ暗号機の現物が必要だった。

【エニグマ暗号戦】【恐るべき英独情報戦】【広田厚司】【ミリタリー】【暗号】
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「ヌクヒヴァ語会話集」 岩佐嘉親

2008-01-25 | エッセー・人文・科学
 本を買うときに、読みたい本、読むべき本ばかりを選ぶわけではありません。「今は必要ないけれど、そのうち必要になるかも」という本も先物買いで買ったりします。
 で、買ったときは「こんなん、何に使うん?」というような本も意外と数年のうちには使う機会があったりするわけで。たとえば『祝詞作文法』とか『梵字事典』とか。
 ところが、この『ヌクヒヴァ語会話集』だけはいまだに使う機会がありません。もう10年経つのに……。

 まあ、フランス領ポリネシアのマルケサス群島での日常会話なんて、そんなに需要があるとは思ってませんでしたけどね。いつ使う機会が来るのかなあ。

【無用の長物】【宝の持ち腐れ】
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「祖父たちの戦争~メドシップ」 マレイ・ラインスター

2008-01-24 | 宇宙・スペースオペラ
「他人から得た情報は、ある意味で常に不正確である」
 星間医療局業務便覧より。

 人類が星間飛行によって恒星間世界に飛び立ち始めた宇宙開拓時代。
 ただでさえ環境の異なる異世界で発生した病気には、移民たちの医療施設や装備では治療不可能なものも少なくなかった。そこで星間医療局が設立され、最新の装備と医療情報を備えたメドシップが医師と共に各星を巡回して回るようになった。
 星間医務局局員マーガ・トロイドは、抗体生成システム兼ペット兼パートナーであるトーマル族のプラネタラとともにメドシップ<エスクリプス20>で銀河系を飛び回る。彼らの行く手に現れるのは、住民が健康すぎる星、住民が消失した星、祖父や親の世代と子や孫の世代が惑星間戦争を始めようとしている星……。

 マレイ・ラインスターというのは1930年代から60年代にかけて活躍していた作家なので(デビューは17歳で最後の作品が70歳あたり)、時代的にはちょうどスペースオペラからサイエンスフィクションへの移行期真っ直中。『青い世界の怪物』とか『地の果てから来た怪物』みたいなモンスター映画みたいな作品を書いたかと思えば、ファースト・コンタクトテーマの古典的傑作『最初の接触』とかパラレル・ワールドテーマを創始した『時の脇道』とか書いているわけで、なかなか一筋縄ではいきません。
 連作短編集のメドシップのシリーズは最晩年の作品。日本では『祖父たちの戦争』、『惑星封鎖命令』、『禁断の世界』の3冊で刊行されています。アイデアも設定もすごいけれど、今となっては少し物足りない気もします。イラストと訳を一新して再刊すると面白い気がします。表紙イラストってのは、いつでもその時代でいちばんCOOL!なものを使わないとね。

【祖父たちの戦争】【マレイ・ラインスター】【メドシップ】【疫病】
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「大菩薩峠の要塞」 朝松健

2008-01-23 | 時代・歴史・武侠小説
 吉原炎上は滝津姫による謀反の狼煙であった。
 天保八年(1837)、甲州鴉ケ原で開催された砲術試合には日本各地より名うての銃士たちが集まっていた。彼らの銃には独自の工夫が凝らされており、それらは今の目から見ればボルトアクション式狙撃銃であり、擲弾筒であり、機関銃であり、つまりは産業革命を迎えていた欧米に勝るとも劣らないものであった。
 そしてこの砲術試合を主催した正親町滝津姫の目的は1つ。滝津姫を甲州に移封した、父である第十一代将軍家斉の抹殺であり幕府の転覆。しかし彼女の持つ真の武器は、銃士たちの銃ではない。大菩薩峠に密かに築かれた大要塞。そこで発射のときを迎えようとしている、射程105Kmの巨大砲であった。
 これを察知した家斉は公儀御庭番に要塞破壊の密命を下したのだが……。

 朝松健がオカルトとマジックとホラー抜きで書き進めていた幕末ガンアクション小説。ひと癖もふた癖もあるガンマンたちの集結、幻術と体術ばかりでなく銃術さえ駆使する忍者たちの対決、驚異の天才科学者が建造を進める巨大砲と見所たっぷり。せっかく山田風太郎みたいな地の語り口を使っているので、この際オカルトとマジックとホラーも取り入れてくれれば傑作になりそうな気もします。
 でも3巻以上になると言われながら、一の巻[攻]江戸砲撃編、二の巻[守]甲州封鎖編で中断したまま現在に至る。まったく残念。作者は書きたくないものを書いていた時期らしいので、これもその口かなあ……。

【吉原炎上】【江戸城西丸炎上】【要塞砲】
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「窓際OL 会社はいつもてんやわんや」 斎藤由香

2008-01-22 | エッセー・人文・科学
「研究者全員が倒れましたが、私は元気です。マカのお陰でしょうか?」

 万年赤字で認知度0の健康食品事業部へ移動となったヒラ社員のOLが、怖い者知らずにあちらこちらへ精力剤マカを送りつけ、「硬化バツグン!愚息ムクムク」のキャッチコピーでPRに奔走する情景やら、部長は食べてばかりだの課長はキャバクラ行ったのと社内のあれこれを週刊誌上で暴露して回る『窓際OL』の第二弾。週刊新潮連載のエッセイをテーマ別に並べ替えてまとめたもので、小ネズミ部長のあとがき付き。
 今回はお台場の新社屋への引っ越しの顛末からペルーやニュージーランドへ行ったあたりまでの話を収録。いつのまにかユカではなく「斎藤マカ」とか呼ばれるようになった顛末とか、ロータリークラブで講演するはめになったかと思えば自民党総裁にまでマカを送りつけ、ついにはマカの産地を見てこいと海抜3800mのペルーの農場まで飛ばされ、挙げ句の果てにウォールストリート・ジャーナルでまで「窓際OL」と紹介されたりとなかなか波瀾万丈なヒラ社員生活。

【精力剤】【エッセー】【北杜夫】【サントリー】
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「恐怖の疫病宇宙船~太陽の女王号2」 アンドレ・ノートン

2008-01-21 | 宇宙海賊・宇宙商人
 2004年に岐阜で開催された日本SF大会『G-con』。そこでの新訳レンズマンについて語る企画で、新訳版の訳者である小隅黎こと柴野拓美氏が語ったことですが、アンドレ・ノートンの<太陽の女王号>シリーズが全4巻のうち2巻までで止まってしまったのは、イラストに起用した松本零士が売れっ子になって使えなくなった為だそうです。そういう話を聞くと、ライトノベルの原点はハヤカワ文庫のSFシリーズにあるような気がしてきます……。
 「ライトノベル」を漫画家のイラストを表紙にして(商品価値におけるイラストの比重が高く)少年少女向けに書かれた小説と定義した場合、そのもっとも最初の作品は久美沙織の『丘の家のミッキー』あたりだろうと思っていました。でも『おかみき』がめるへんめーかーのイラストで世に出たのが1984年9月。でもハヤカワ文庫が漫画家・松本零士を使っていたのはもっと前。ノートンの『大宇宙の墓場』の初版は1972年4月刊行。その頃はノートンやC.L.ムーア、マイクル・ムアコックといったスペオペやファンタジー小説のイラストといったら松本零士一色でした。手元にあるいちばん古い作品ですと、1971年9月刊行の『大宇宙の魔女』。
 つまり(ライトノベルは国産に限ると定義しない限り)ハヤカワSFこそが今のライトノベルの原点であり、その最初はシャンブロウということになるのではないでしょうか(ちなみにソノラマ版『宇宙戦艦ヤマト』は1975年)。[2007.8.26]

 交易を成功させ、意気揚々と帰還する<太陽の女王号>。
 しかし突然謎の病気で次々に倒れる乗員たち。疫病か? 未知の疫病なら危険船として乗員ごと焼却処分されてしまう!
 デイン・ソーソンは一か八かの強硬手段に出て生き残りを図るのだが……。

 やっぱり大企業ってのは悪かったり、ずるかったりして、頑張っている中小企業の上前をはねようとしているんだよという話……かな?

【恐怖の疫病宇宙船】【太陽の女王号2】【アンドレ・ノートン】【松本零士】【ハヤカワ文庫SF】【疫病】【交易】【探検】【スペオペ】
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「冬の巨人」 古橋秀之

2008-01-21 | 巨大ロボット
 どこまでも続く吹雪の雪原を巨人がゆっくりと歩いていく。その背中に、人間の住む都市1つを背負って……。
 だがそこに住む住民の大半は自分たちが巨人の背中に住んでいることも、外に出れば極寒の世界だということも意識してはいない。自分たちの住む都市だけが世界なのだ。
 その数少ない例外の1人、ディエーニン教授の助手となった少年オーリャは、外の世界の探索途中で不思議な少女と出会う。


 古橋秀之の異世界ファンタジー。
 だけれど、『移動都市』みたいな活劇を期待しちゃったんで、ちょっと物足りない。普段の古橋基準からすると、かなり物足りない。これが中編とか短編集だったらイイカンジなんだろうけれど、長編として受け入れるには軽すぎないかな。いや、巨人ミールは絵的には面白い設定だよね。

【冬の巨人】【古橋秀之】【閉鎖空間】【雪原】【移動都市】
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