「僕が思うに、あそこには、人間が生み出した世界一すばらしい奇跡というか、人の勇気、創造力、欲を示す究極のシンボルが詰まっている」
だから築地市場が移転する前に、借金をしてでも今の古い市場を訪れてほしいと。
マイケル・ブースの「英国一家、日本を食べる」に続く、日本の食を探求する第2弾。日本人は自分たちについて語られるのが好きなのです。できれば好意的なスタンスで。
ただ、B級グルメから高級懐石までなんでも食べようという前巻に比べると、築地、かっぱ橋、焼津港、松阪、高野山、志摩、公設市場、城崎温泉等々、食より場へのこだわりが強い構成になっている気がします。というか、巻頭からいきなり寄生虫館かよと。
さらに海原雄山のように食品添加物としての化学調味料を嫌悪して味の素に乗り込み、自分の持っている情報が時代遅れと指摘されしょんぼりするくだりも入ってます。
さて、消費税増税に合わせて軽減税率導入の論議がわき起こってます。生活必需品である食品などは税率を安くするべきではないかというのですね。生きるために必要だから。
でも、これって何が生活必需品かで線引きがもめるんですよね。
たとえば、イギリスではチョコレートがかかったクッキーは贅沢品として課税で、チョコチップがはいってるクッキーは生活必需品なので非課税。カナダではドーナツ5個買うと贅沢な外食とみなされ消費税が6%、でもドーナツ6個買うとその場では食べられないとみなされ食料品となり消費税は非課税。ドイツではハンバーガーを店内で食べると外食とみなされ消費税19%かかり、テイクアウトにすると食料品とみなされ消費税7%となります。腹が減っていて、その場でドーナツ6個食べたい人は? 持ち帰るつもりでハンバーガーを買ったけれど、美味しそうでついその場で食べてしまった人は?(新聞がおおむね賛成方向の論調なのは、自分たちも軽減税率を適用してもらうつもりだから)
そして、この本でもさりげなく言及されているのがプリングルズの裁判。
プリングルは日本のスーパーでもよく見かける筒に入ったスナック菓子。あれ、ポテトチップスかと思ったら違っていたんですね。ポテトチップスだと嗜好品なので税率20%ですが、原料のジャガイモ使用量が50%以下なので生活必需品の食品だから非課税だろ!?という裁判が2008年に起きています。なんなんだ?
日本でも軽減税率が導入されたら、こんなボーダーラインをめぐる騒ぎが茶飯事になるんじゃないかとびくびくしています。
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