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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

私的年間ベスト2013

2013-12-31 | その他フィクション
 それでは今年もさくっと1年を振り返ってみることにします。
 かなり読み飛ばした気もしますが、面白い作品にいろいろ出会えました。積ん読も多いし、新刊も控えているので、正月休みの間にさくさく山を片付けていきましょう。
 ファンタジー系作品がほとんどなく、SFといえば全集か創元・ハヤカワしかなかった学生時代を思うと夢のようです。

『瑠璃色にボケた日常』 伊達康
 スタートは昨年末でしたが今年末に完結したので今年枠で。
 お笑いに情熱を傾ける霊能力少女と、彼女に振り回される元・野球少年の物語。ボケとツッコミの会話が延々と続く話は多いのだけれど、これは元の話がしっかりしているので、笑いながらもジェットコースターみたいなストーリー展開を楽しめましたし、ちゃんと「お笑い」と「お祓い」の関係が描けているのもポイント高し。お約束通り、少年の周りにはさらに2人目、3人目の美少女が集まってきますが、いずれもその業界では知らぬ者がいない霊能力者であり、本業ではカミソリのような切れ味なのに、お笑いではボケ担当で、少年1人が必死でツッコむというのもポイントです。

『大きな音が聞こえるか』 坂木司
 ただ漫然と日々をおくっていた少年が、一念発起してアマゾン河でのサーフィンに挑戦しようと思い立ち、そのための障害を1つ1つ克服しながら前に進んでいく成長譚で青春小説。バイト話だったり、旅行記だったり、アドベンチャーだったり、凄い話ではないけれど、面白い話でした。
 高校くらいで読んでおきたい1冊です。

『まほうびんぼう』 伊藤螺子
 町に起きる様々な怪事件からご近所のおばさんのお肌の手入れまで、片っ端から解決していく魔法少女ですが、変身しては分単位で料金を徴収され、魔法を使っては使用料を請求される、エコノミカルウィッチ・シルクちゃんの貧乏よろず屋稼業。
 今では魔法少女ものは多くて、軽いコメディから陰鬱なサバイバル・アクションやミリタリーまで「魔法少女もの」だけではくくりきれなくなっているのが現状ですが、これは「貧乏魔法少女もの」の代表作。魔法の代償という意味ではQのやつが最低ですが、この話も負けてないと思います。

『鉄の魔道僧』 ケヴィン・ハーン
 アリゾナの小さな町の本屋のあんちゃんが実は2000年ばかり生きてるドルイド僧で、アイリッシュ・ウルフハウンド犬を相棒に、防犯カメラを利用したり、DNA鑑定から逃れようと苦労したりしながらケルトの神々や魔女と戦うという、ファンタジー世界のオールスターなシリーズ開幕。
 いろいろ怪しんで探りを入れてくる警察を、吸血鬼と狼男の弁護士軍団が迎え撃ち、自宅に帰ればあっちこっちの女神さまが色仕掛けで神々の紛争に介入させようとしてくるし、死体が出れば携帯電話でグールの処理業者を呼び寄せて……と、『ハイランダー』とか『ザ・キープ』あたりの作品だと不死身ゆえの苦悩みたいなものが色濃く出ているけれど、ここまで不老不死を達観して毎日を愉しんでいるとステキです。

『僕の学園生活はまだ始まったばかりだ』 岡本タクヤ
 文武両道、野球から流しそうめんまですべてに万能だけれど、性格が悪くて友達がいなかった少年が、容姿端麗で見かけだけなら理想の女子高生なのだけれど、性格はクズな少女に強いられて、新たに部活を立ち上げて学園支配をめざしていく物語。マンガ化するなら島本和彦希望で、料理対決あり、密室殺人ありの学園アドベンチャー。
 才能に死角のない主人公がイヤなやつになってしまったのは仕方が無いと共感……というか同情できないわけではないけれど、澄んだ瞳に濁った心のメインヒロインのクズぶりは最後まで終始一貫していてむしろすがすがしい。単独ヒロインなのにここまでゲスなキャラはなかなか見ないです。

『know』 野まど 
 IT化の大発展をもたらした教授が画策する新しい世界のデザインとは? 暗号解読の物語であり、失踪した天才の足取りを追う物語で、新しい世代による時代の変革を描いた物語であり、知ることとは生きることであることを教えてくれた作品。
 ここ数年でめきめき頭角を現し、メディアワークス文庫からハヤカワ文庫や電撃文庫へと展開している野崎まどは、今いちばん押さえておきたい作家さん。メディアワークス文庫を一通り読み、最後に「2」を読んで打ちのめされ、それからハヤカワJAへと進んでポスト伊藤計劃はこの人しかいないとかなんとかむにゃむにゃ言いながら「野崎まど劇場」を読んでのたうち回るのがよろしい。

『ヴァンパイア・サマータイム』 石川博品
 吸血鬼と人間が昼と夜で世界をシェアしている時代の日本が舞台の、青春ラブストーリー。ちょっと日常系ミステリっぽい導入部だったけれど、基本はボーイ・ミーツ・ガールの物語で、ファーストキスがやたら濃厚なあたりが吸血鬼っぽいかな。
 吸血鬼が人間社会に紛れ込んでいる世界というのも、共存している世界というのもよくあるけれど、それを昼と夜をまたいだ作品として構成しているところが好きです。

『絶対城先輩の妖怪学講座』 峰守ひろかず
 文学部4号館4階44番資料室に巣くう絶対城先輩は、傍若無人な妖怪博士。今日もユーレイを引き連れて詐欺で小銭を稼いだりしながらも、妖怪や幽霊の正体を暴いていく……。
 こういう話って、実はみんな妖怪の仕業でしたとか、逆に実は人間の仕掛けたトリックでしたとか、どちらかに偏ることが多い気がするのだけれど、こちらは幽霊の正体見たり枯れ尾花もあれば、本当にソレとしか思えないものもあり、最後まで何が飛び出すか解らない連作ミステリ短編集。

『遙か凍土のカナン』 芝村裕吏
 今回は日露戦争から始まる大陸浪漫活劇。『マージナル・オペレーション』を完結させて今年も絶好調。今回は、据え膳食わないダルタニャンという感じの主人公です。来年も期待できそうですね。
 『この空のまもり』の感想で、「芝村作品もやっぱり最近流行のオタク万能な話ばかりでないの?」という人もいましたが、そんなことはないですね。むしろ、芝村作品の主人公に共通しているのは、どんな難問に対してもその問題を構成している要素を分割していくことで難易度を下げ、1つ1つ地道に解決していくという状況分析と判断を瞬間的にできてしまう点のような気がします。だから、主人公はたいして悩んでいるように見えないし、感情的に無思慮なこともしません。でも、論理的すぎて間というようにも見えないんですよね。

『ストライプ・ザ・パンツァー』 為三 
 純情美少女と心優しい宇宙生命体が共生し、互いのカルチャーギャップを1つ1つ克服しながら、行方不明の少女の兄の捜索、宇宙人の元のパートナーを殺害した犯人捜しに挑んでいく……という、クレメントの「20億の針」から始まった人間と異星人が共生する物語は、円谷のウルトラマン・シリーズを経て、ついにこんなところに着地してしまったのです。
 でも、ハートフルなSFミステリというより、日本人にしか書けないバカSFですね。もう一歩踏み出したら変態仮面です……というか、パンツァーvs変態仮面という二次創作はアリだと思います。


 今年の作品からあえて10作というとこんなところで順不同。次点で年末に出た『ウは宇宙ヤバイのウ』もおすすめ。
 これ以外だと、人間不信の少女と人体模型の学園ミステリ『エーコと【トオル】と部活の時間。』、奇癖奇行の作家たちを相手に一歩も引かぬ辣腕の女性編集者は、やはり負けず劣らずの奇人でした……という『ふくわらい』、魔術が存在する世界でおバカなヒロインが活躍する西部劇『アリス・リローデッド』あたりが面白かったですね。ネット上で作者が騒動を引き起こしてしまいましたが、『生徒会探偵キリカ』も面白かったので、しっかり続きが刊行されることを願ってます。読者は作者が清廉潔白な聖人であることを求めているのではなく、作品が面白いかどうかだけなんです。

 それではみなさん、良いお年を。
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「仮面教師SJ(6)」 麻城ゆう

2013-12-31 | 学園小説(ミステリ)
「オネエチャンに、あげるって」
 驚異的な記憶力でさまざまな分野の専門家に一夜漬けでなりすませる、クラクラこと笹蔵十蔵は教育機構監査局の潜入教師だ。もちろん男。
 そのクラクラが交通事故現場で小さな男の子から手渡された折り紙の鶴には、違法ドラッグが染みこまされていた。どうやら事故で死んだ赤毛の少女と間違われてしまったらしい。
 ちょうどペーパークラフト学校に不審な点があるとの報告もあり、クラクラは折り紙教室の臨時教師として送り込まれるのだが、やはり今回もショータとスナが当然のようについてきていた……。

 各地の専門学校に臨時教師として潜入する仮面教師SJですが、今回は折り紙教室への潜入捜査。本当に有象無象の専門学校が乱立している世界です。
 テレビドラマ化したなら1冊60分枠な内容で、お約束の軽いやりとりを交えながらするすると読了。
 具体的に特捜司法官の組織も見えてきて、後日譚ともいえる短編ではイカサマ占い師にかかわる事件からジョーカーに言及していて、次あたりでどんな具合に完結させようとするのか楽しみに待ちたいと思います。

【仮面教師SJ】【麻城ゆう】【道原かつみ】【ウィングス文庫】【特捜司法官シリーズ】【学園ミステリSF】【特殊加工紙】【非合法ドラッグ】【SNS】
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「セブンスホールの魔女」 池田朝佳

2013-12-30 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
『まだ、たった1回失敗しただけだ。
 失敗なんて、生きていたらいくらでもあることなんだろう。まだ、死んだわけでもなければ、機会を失ったわけでもない』

 泉野原アカザは再びスタート位置に立った。今回は仲間たちと共に。

 複数の世界が衝突して穴が開き、異世界から侵入してきた怪物たちによって蹂躙されていた世界を救ったのは、魔女を集めて組織化した“世界対策株式会社”、通称コーポレーションであった。だが、怪物の出現は途切れることはなく、地球上には未だ7つもの穴が残されている。
 怪物への復讐から穴を破壊しようとするフリーランスの魔力持ちであった泉野原アカザは、穴を守護する謎の魔女によって魔力を奪われてしまい……。

 魔法を封じられた魔法使いが、取り替えっ子の落ちこぼれ魔女集団の零細企業の社長にスカウトされる話。
 魔法チームのバトルファンタジーとしては面白かったけれど、わざわざフリーランス時代の経験を活かして……とスカウトされているので、適材適所に配置転換することで無駄飯食いが立派な戦力になったとか、実際の戦闘と経費を紐付けするとか、もう少し「お仕事」の経営部分を強調しても良かったかな。いろんな中小企業経営者の成功話・失敗譚には話のネタがいくらでも詰まってるので、うまく掘り起こして欲しいと思います。
 クライマックスの展開で、経営再建による現有戦力の活用ではなく、偶然のパワーアップによる力技に頼ってしまいましたね。早すぎる感じです。
 雰囲気は大好きなので、続刊に期待します。

【セブンスホールの魔女】【池田朝佳】【ふゆの春秋】【ガガガ文庫】【お仕事バトルファンタジー】【確定申告】【誰でもできる会社経営】【登記】【チェンジリング】【オンジョブトレーニング】【空飛ぶ魔女】【衝突災禍】
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「悠木まどかは神かもしれない」 竹内雄紀

2013-12-29 | 学園小説(ミステリ)
「勉強するのは、あくまでも手段だ。いい大学に入るのも、あくまでも手段。いい大学を出たら、いい人生が保障されるなんて、思うなよ」
 無理に今、将来の夢を決める必要はないけれど、頭のイイやつには社会のためにそれを役立てる義務があるんだと、マッテルバーガーの篠原店長。
 店長、ただのバカじゃなかったんですね。

 悠木和(まどか)は小学5年生の美少女。しかも秀才ぞろいのアインシュタイン進学会でもとびっきりの。
 けれど彼女の名前がテスト結果のランキングに載ることはない。なぜなら、彼女はいつでも国語と算数のテストが終わると帰ってしまうからだ。
 小田切たちアインシュタイン進学会の三バカトリオは、彼女がどうして理科と社会のテストを受けないのか調べようとするのだが……。

 新潮文庫のTwitterアカウントで「タイトル会議に参加していた者全員が、『まどマギ』を知らなかったんです」とコメントしていて、編集者のアンテナがそんなに低くて大丈夫か!?と物議をかもしたけれど、そんなことを知る前に表紙イラストとあらすじと立ち読みで購入済み。

 でも、ストーリーは『魔法少女まどか☆マギカ』のストーリーを換骨奪胎したものではなかったし、帯にあるようなバカミスともちょっと違う。原稿は持ち込みだったそうだけれど、どちらかといえばジュニア新書向けの、青すぎて痛すぎる小学生の青春小説というのがいちばん近いかな。
 勉強が苦にならず、むしろ勉強が得意な自分が自慢で、男子は互いに「××キョージュ」と呼び合って、ジャーゴン混じりに頭の良い自分をさりげなくアピールしようという姿が、そろそろ微笑ましく見守れるようになりました。20歳頃に読んでいたら、痛すぎるか腹が立って読んでいられなかったかも(そんなことはありませんでしたか?)。
 今はただ、「そういうのって理屈じゃないでしょ」のセリフに胸キュンするだけです。
 はちまき姿の店長さんやナポレオン軍曹の根本さんも、読み終わればステキです。

【悠木まどかは神かもしれない】【竹内雄紀】【ちほ】【新潮文庫】【青春前夜の胸キュンおバカミステリ】【ベーガー深偵】【ナポレオン服の女】【やさしい悪魔】
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「黒猫の遊歩あるいは美学講義」 森晶麿

2013-12-28 | 学園小説(ミステリ)
「川は巨大な香水でもある」
 そしてポオは、川は強烈な死の匂いを発する水だと言う。

 「実際の地名や建物が記されているのに位置関係はでたらめな地図」や「失踪した女性研究者」など、若き大学教授“黒猫”と、その付き人を仰せつかった大学院生の“私”が遭遇する事件を、美学とポオの作品に関する文学講義を題材に紐解いていく短編集。
 ミステリとしてはアンフェアじゃないかと思うところがないわけではないけれど、なにより事件を刺身のツマにするように語られるエドガー・アラン・ポオの作品分析、文学談義、現代美術論が面白いので、謎解きとポオ談義とどちらがメインかよくわからない作品です(たぶんポオ)。
 黒猫は変わり者の若き天才ながらパフェ好き。ときどき出てくる彼のお姉さんも病気持ちながら単なる「病弱」では括れない個性がにじみ出ていて、シリーズとして追っていくのも愉しそうです。

【黒猫の遊歩あるいは美学講義】【森晶麿】【丹地陽子】【ハヤカワ文庫JA】【モルグ街の殺人事件】【黒猫】【マリー・ロジェの謎】【盗まれた手紙】【黄金虫】【大鴉】【アガサ・クリスティー賞】【地図】【香水】【ピアノ】【ウォーホール】
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「エンダーのゲーム[新訳版](下)」 オースン・スコット・カード

2013-12-27 | ミリタリーSF・未来戦記
 なぜ、ここで表紙がペトラになるかな……?
 良いキャラだし、好きなキャラではあるけれど、この話は3人の兄妹弟の物語なので、アンドルー、ヴァレンタインと続いたら、次はピーターだろうに。

 バトルスクールでエンダーは異例の早さで自分の隊を手に入れていた。
 すべてが異例だった。与えられた部隊が繰り上げで編入された新兵と目立った戦績もない弱兵というのも異例だったし、熟練兵の1人もいない部隊でありながらエンダーの率いるドラゴン隊が模擬戦で全戦全勝の快進撃を続けていくのもありえない光景だった。
 だが、バトルスクールはエンダーにさらなる試練、フェアではない汚い勝負を次々に仕掛けてきた……。

 強い主人公グループが不利な条件での勝負を強いられて……というあたり、まさに学園マンガの王道路線の展開が続きます。主要登場人物のほとんどがせいぜい10歳で、大半がそれ以下ですが。

「もしかすると、それこそが人間ってものなのかもしれないわ。記憶していることが」
 記憶こそが人そのものなのかもとヴァレンタイン・ウィッギンは言うが、それはエンダーの意図した意味ではなかった。

【エンダーのゲーム[新訳版]】【オースン・スコット・カード】【鷲尾直広】【秋赤音】【ハヤカワ文庫SF】【少年の成長譚】【移民船団】【リンチ】
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「ディーン牧師の事件簿」 ハル・ホワイト

2013-12-26 | ミステリー・推理小説
「死後の世界があるのなら、間違いなく神は存在する。神が存在するのなら、魂が道をさまようことを、お許しになるはずがない」
 超常現象そのものを否定するつもりはないけれど、幽霊が悪さをしでかすということがあるはずないとサディアス・ディーン牧師の言葉。

 読書家な引退した老牧師が遭遇する不可能犯罪をテーマにした短編集。
 カーを彷彿とさせる雰囲気なので、なんとなくその頃の時代の話のつもりで読んでいたら、「携帯電話は持っていない」とか「パソコンのブラウザは2つ前のバージョン」とか今も今じゃないですか。よく見たら原書は2008年刊行。
 でも、トリックその他はいつの時代でも通じそうなものばかり。そして、単純に信仰にすがるだけではなんともならない人間の歴史を前提に、信仰者であるからこそ、目の前の出来事を無批判に受けいれるのではなく、論理的に物事を判断することが大切なのだというスタンスに共感。

【ディーン牧師の事件簿】【ハル・ホワイト】【創元推理文庫】【プロローグ】【足跡のない連続殺人】【四階から消えた狙撃者】【不吉なカリブ海クルーズ】【正餐式の予告殺人】【血の気の多い密室】【ガレージ密室の謎】
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「飛ぶ理由」 小林誠

2013-12-25 | ミリタリーSF・未来戦記
 ウェルズのSF『月世界最初の人間』に登場した重力を遮断する合金ケイバーリットが本当にあったものと勘違いされたところから変わる航空史を、航空機プラモデルを流用した模型写真とイラスト、デザイン画、文章によって構成した1冊で、航空模型誌「スケールアヴィエーション」に連載されていた記事を増補しています。
 地図から模型から、スチームパンクっぽく構築されていく飛ぶ自転車や飛ぶ船や飛ぶ兵士や飛ぶ列車の姿が魅惑的ですが、記事が全般的に小さめの活字でびっしり書き込まれていて、超弩級空中戦艦大和の項なんか半分くらい目が悪くて読めません。

「必ず此所へ帰ってくる」
 超弩級空中戦艦大和の初代艦長はそう言い残し、アラブ=ヨーロッパ連合の都市アル・イスカンダリアで開発された放射能除去装置を空輸するための旅に旅立ったのである。

 空中戦艦大和ネタから、映画『宇宙戦艦ヤマト2220』『宇宙戦艦ヤマト2199』でのデザイン話となり、本なかばでいきなり帝都バレラスのイメージボードが出てきてびっくり。そして閑話休題で、再び何事もなかったかのように「こんな事も在ろうかと」などと大日本帝国とアメリカ帝国の決戦話にUターンです。

【飛ぶ理由】【ハイパーウェポン2013s】【小林誠】【大日本絵画】【異星からの訪問者によって研究類推された人類史】【ケイバーリット】【倍返しのニコイチ】【タイムマシン】【次元装甲特急999】【超弩級空中戦艦大和】【アメリカ帝国】【ザトウクジラ】【ポリススピナー】【アダムスキー型】【超時空要塞マクロス】【ラストエグザイル】
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「彼女がフラグをおられたら(7)」 竹井10日

2013-12-24 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「疑念というのは、人の精神を蝕むな」
 探索を続けようとする仲間たちが次々に不可解な病や事故で姿を消していき、旗立颯太は疑心暗鬼に陥りそうな自分を自覚した。

 体育祭や文化祭がそれぞれ1週間続くような旗ヶ谷学園なのに、なぜかクリスマスは校則で禁止されている。改正の試みは何度もおこなわれたが、そのいずれも全校投票で否認され、クリスマスを祝おうとする者は風紀委員によって拘束されていく。
 なんとしても颯太くんとのクリスマスを祝いたいクエスト寮の面々は、クリスマス禁止の秘密を求めて学園史を掘り起こそうとするのだが……。

 連続爆破テロから台風襲来まで、予期せぬ強力なフラグすら折れるようになっていく颯太ですが、人に身に余る力を行使するたびに自身の死亡フラグを感じ取ります………が、そんなことおかまいなしに脳天気で颯太スキスキなクエスト寮の女子たちはマイペースで譲り合い精神を発揮するのです。
 そして、いよいよ難攻不落のクエスト寮長、菜波・K・ブレードフィールドが動きます。

【彼女がフラグをおられたら】【おや、こんな時間に誰だろう…サンタクロースかな?】【竹井10日】【CUTEG】【講談社ラノベ文庫】【イチャコメ】【愛の重いクリスマスプレゼント】【聖杯と賢者の石】【ミニスカサンタ】【雀卓】【クリスマス終了のお知らせ】
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「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(8)」 渡航

2013-12-23 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「家族にはどれだけ迷惑をかけてもいい。俺はどれだけ迷惑をかけられても構わない」
 世界は自分の主観に過ぎないと、常に孤高を貫こうとする比企谷八幡にとっての例外事項。

 修学旅行での依頼の解決方法による行き違いが少しずつ顕在化する中、奉仕部に持ち込まれた新たな依頼は「生徒会選挙に当選しないこと」だった。
 奉仕部の3人がそれぞれの方法で解決しようとするが、そんな時、葉山が比企谷のやり方では本当に助けたい誰かを助けられなくなるときが来ると告げる……。

 正統派主人公、葉山は頑張ってますが、孤高のスタイルを貫く比企谷と周囲の関係に歪みが生じ始めます。比企谷は、基本的に他人の善意や好意を信じない信用しない主人公なので、(戸塚を好きすぎていることで天秤は釣り合っているのでしょうけれど)いずれ袋小路に陥るかと思います。こういうときは、信用するしないは別として、一度じっくり話し合った方が良いと思うし、妹とはできるのに。
 周囲の人たちを、信用しなくてもいいから、もう少し信頼することを学んだ方が良いと思いますが、これも材木座についてはアテにはしてないけど、信頼はしているんだよね。
 つまり、誰かを好きになるとか、誰かと腹を割ってじっくり話すとか、誰かを信頼するということについて、限定的にはできているので、あともう一歩、どこかで突破口があれば……と見守るスタンスで読んでます。もうちょいなんだ。

【やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】【渡航】【ぽんかん⑧】【ガガガ文庫】【生徒会選挙】【グループデート】【他人との距離感】
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「トオチカ」 崎谷はるひ

2013-12-22 | その他フィクション
 鎌倉の駅からほど近い脇道にある雑貨ショップ《トオチカ》に並ぶのは、店員やデザイナーのたまごの製作したアクセサリーや服とか、オーナー店長の西風理葎子が吟味した輸入雑貨などなど。相棒の森平比奈とうまく店を切り盛りしてきたけれど、最近やけに気になる男の姿を見かけるようになった……。

 タイトルの「トオチカ」ってなんの意味かと思ったら店の名前で、どういう意味かと思ったら「遠くからでも近くからでも」お店に来て欲しいという意味で、ついでにいえば主人公にとって心のトーチカなんです。

「(ブルーチーズと貴腐ワインは)どちらも単体だと強烈ですけど、あわせるとむしろ自然に感じる。人間関係も、そういうところはありますよね」
 どこか人を見透かしたような、《あの店》の店長の言葉。

 読み終えた第一の感想は「めんどくせー」。
 大人の恋愛って、面倒くさいです。
 でも、恋愛なんてもともと面倒くさいものですよね。

【トオチカ】【崎谷はるひ】【佐原ミズ】【角川書店】【大人女子のリアル・ラブストーリー】【トーチカ】【下着泥棒】【インド・ビジネス】
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「妖怪青春白書」 沖田雅

2013-12-21 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「ゆうべはおたのしみでしたね!!」
 朝いちばんに雪雄が母親からかけられた言葉。

 いろいろ相思相愛で周囲の状況もお膳立てができているのに、主人公が未成年なためか、据え膳を食う食わぬで話が進まない本も多いわけですが、いきなり朝ちゅんから始まりました。誤解もなにもなく事後からのスタート。菊地秀行のエイリアンシリーズの大ちゃんだって本編中では寸止めで終わっていたことを思うと、感慨深いものがあります。

 太古より人間社会に妖怪は潜んでいたけれど、その結果として妖怪と人間の血が混じり続けて21世紀。前世紀末の気候の変化と杉花粉の大量発生によって人間の中に潜伏していた妖怪の遺伝子が一斉に活性化。気がついたら妖怪の遺伝子を持っていない人間など存在しておらず、だいたい思春期の頃になると何らかの妖怪として覚醒するのがあたりまえになっていました。
 幼なじみの雪雄と薫子も相思相愛でついに結ばれてしまったのだけれど、かつては完璧なイケメンとして有名だった雪雄も今ではもこもこの雪男、品行方正な清純派美少女だった薫子は下ネタ大好きな蛇女になってしまっていましたが、2人は幸せだったのです……。

 シモネタ満載のお話。
 ちらりと涼子さんと亮士くんが登場するので、もしかしたら「オオカミさん」シリーズの少し先の時代かもしれないと臭わせるところがあるなあと思ったら、やはりアパートの管理人さんの設定から始まる流用だったそうです。地続きで同じ世界かどうかはまた別ですけれど。

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「アラビアの夜の種族」 古川日出男

2013-12-21 | 本屋・図書館・愛書家
「術計というものは、相手がその裏を嗅ぎあてたと信じる次元に、さらに陥穽をしかけてこそ役だつのではありませんか?」
 マムルークの首長の1人イスマーイール・ベイを主と仰ぐ、万能の執事にして若き奴隷のアイユーブは、「書物」を以て謀とした。
 罠というのは、2枚3枚と重ねて張るのは当たり前。裏の裏まで読んでもまだ足りません。

 聖遷歴1213年、エジプトのカイロに向けて大艦隊が押し寄せつつあった。欧州の覇者となった常勝将軍ナポレオンによるエジプト支配の先遣部隊である。
 軍人の長であるイスマーイール・ベイは、近代化されたフランス軍にエジプトの騎兵は勝てないとわかっていた。しかし、万能の執事アイユーブは、記録に残されないまま語り継がれている「災厄の書」のフランス語版を用意することでフランス軍を破滅させようと進言した。
 ところが、そのような書物はどこにも存在しなかったのである……。

 虚実が入り交じり、最後まで混沌が続く「アラビアの夜の種族」の一巻本です。

 PBMにおいて迷宮(ダンジョン)が舞台になることはあまりありません。あるとしても機械処理による簡易なおまけゲームであることがほとんど。初期のRPGが迷宮探検そのものであったことを思うと意外なくらいです。
 思えばパソコンゲームの迷宮なんて不思議なものです。怪物はいくらでも湧いて出るし、そいつらは倒すとかならずといっていいほどお金や財宝を持っています。そんな危険な迷宮なのに、出口のすぐそばに冒険者向きの宿屋や武器屋が並び、なんの役に立つのか冒険者のギルドがあったりします。それどころか、怪物の出没する地下深くで、普通の人間が道案内や商売をしてます。孤島の灼熱地獄の中で「やあ☆」と挨拶されてもねえ…(いや、それでも買い物はするし情報ももらうけどさ)。
 そんな不思議に答えたのが『アラビアの夜の種族』です。内容そのものは、アラビアンナイト風の絵巻物であったり、ナポレオンの侵攻に揺れるエジプトの陰謀劇だったりしますが、その中のかなりのページを割いて、1つの大迷宮が生み出されるされるさまが描かれています(長いエピソードですが、物語全体からすれば枝葉に過ぎません)。
 ああ、確かにこれならこんな大迷宮が大きな街のすぐそばにあるはずです。確かに怪物は宝物を所持しているし、冒険者たちはギルドを作るでしょう。そしてそんな迷宮の奥深くに、武器も何も持たない人間が住み着いていても不思議ではありません。そう納得させるだけの物語が、このアラビアンナイトの世界で語られているのです。いろいろ迷宮について辻褄合わせの設定は見ましたが、これが最高です……と各種の賞を受けた作品に対して、になんたる偏った読み方☆(2007/08/22 2013/12/21改稿)

【アラビアの夜の種族】【古川日出男】【角川書店】【ピラミッド会戦】【千夜一夜物語】【蛇神】【万能執事】【不眠の迷宮王】【いかさま師】【物語り師】【偽書】【怪奇】【迷宮】
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「あかんやつら」 春日太一

2013-12-20 | アイドル・声優・芸能
 フィクションからノンフィクションまで映画撮影の内幕を描いた作品はいろいろあるのですけれど、これはその中でも「東映京都撮影所」に舞台を絞った作品です。
 撮影所はあちこちにあるのだけれど、太秦の映画村が有名なように、ここはもともと時代劇がメインのスタジオ。その栄枯盛衰を戦後の引き揚げ者たちが集められてスタートしたところから、年間100本製作体制でスタッフがヒロポン打ちながら不眠不休で映画を作るようになり、やがて映画が斜陽産業となり、頼みの綱のテレビの時代劇までが消えてしまい、時代劇の撮影シーンを見学できる太秦映画村までが不振になるまでをじっくり語っています。
 戦地から引き揚げてきた兵隊あがりやヤクザから映画監督志望の大学出のインテリまでが集まって、GHQや映倫の内容チェックから食糧不足まで条件が悪い中での映画作り。その中からのし上がる者もいれば消えていく者あり、東京の本社の都合で予算やら日程やら右往左往しながらも、1つ1つ乗り越えていく様はまさに梁山泊。
 粗製濫造、パクリだろうと思いつきだろうとどんどんやり、史実を無視して将軍の首を切り落とすくらいだから、原作を無視するくらいナンボのものか。
 そうやって成功したけれど、観客を置き去りにしてスター役者や監督の自尊心を満足させることしか考えなくなった途端、世間の流れと乖離してたちまち失速……というのは、後の視点では一目瞭然なんだろうけれど、読んだ限りの内容の修羅場の連続では、神の視点も持たない者がいきなり舵を切るのは無理だったんだろうなと思いました。
 「忠臣蔵」はどれだけの豪華スターをそろえられるか、絢爛豪華なセットを組めるか映画会社の試金石であるということは、この本でなるほどなと納得したこと。
 そして「宇宙からのメッセージ」のやっつけ仕事ぶりは、この中でもきちんと語られていて、まさか海外でカルト映画扱いされようとは思ってもいなかったでしょうよと苦笑い。

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「宇宙戦艦ヤマト2199 公式設定資料集[GARMILLAS]」

2013-12-19 | ミリタリーSF・未来戦記
 地球篇の設定資料を購入したらガミラス篇を買わないわけにはいきません。
 中身は地球篇と比較するとキャラが少なめな気がしますが、ガミラス、イスカンダル、ザルツ、ガトランティス、オルタリア、ビーメラと地球以外のキャラ設定、メカ設定、美術設定がてんこもり。巻末にはインタビュー以外にもガミラス語の論説もついていて、もっともらしい言語構築について語られていますが、これが大昔の「○×△」から始まったものかと思うと感慨深いものがあります。
 ただ、もともとメインの女性キャラが多くないからでしょうが、ヒルデ・シュルツで1ページというのは、さすがに大きすぎのような気がします。そもそも、そんなにデータがないじゃないですか?

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