この1年、体調は悪いし、気分は滅入るし、そんなときは新しい本を読む気も起きなくて、あらすじも結末もわかりきった本を何度もパラパラ読み飛ばしながらゴロ寝。なので、積ん読の山が大きくなるばかり。
ただ、けっこう「小説家になろう」の作品は読んでます。布団にくるまっていても、読めるのが良いね。新刊出たら購入前に内容は最新話までチェックするのが鉄則。こういう話って、導入部は面白くても勢いが続かないとか、展開が好みに合わなくなるのも多いので。それからジャンルごとの期間ランキングはひととおりチェック……だから、山が低くならないのかなあ。
とりあえず、今年読んで面白かった本。
『ドラゴンは寂しいと死んじゃいます』 藤原ゴンザレス
たった1人で戦局をひっくり返すことのできる傭兵アッシュは、身長2メートルを超える巨漢で、顔は殺人鬼のように怖い。でも、本当は畑仕事とお菓子作りの生活に憧れている、多感な17歳なのだ。そんなアッシュが傭兵を引退し、手に入れた幽霊屋敷で助けたのは、小さなドラゴンだった……。
巨漢と小さなドラゴンの田舎暮らしのはずが、本人たちは何も変わらないのに周囲が右往左往して国が滅びかねない大惨事が連発して自業自得に陥るスローライフ・ファンタジー。
『黒の召喚士』 迷井豆腐
転生者ケルヴィンは戦闘狂である。敵は強ければ強いほど嬉しいし、強い者は味方であるより敵であって欲しいという男だ。だから、転生した当初は完全に後衛向きのスキルだったのに、いつしか最前線で殺し合う冒険者になっていた。召喚士が接近戦に弱いと誰が決めたと……。
清々しくも知性派脳筋な主人公による異世界冒険譚。どいつもこいつも頭は良いのに、最後は脳筋で残念なことになるあたりがツボ。
『スーパーカブ』 トネ・コーケン
おとなしい女子高生が免許を取ってスーパーカブを手に入れ、自分でパーツつけたり整備とかしながら、学校に通ったりバイトしたりツーリングするだけの青春小説。バイク小説につきものの「知り合いが事故死」もない。これをスニーカー文庫で出したのがすごいと思う。絶対、一般文芸だよ。
それでも2巻が出ました。よかった。
『BLACK TO THE FUTURE』 左高例
犯罪者が跋扈するアメリカの大都市ゴッタマシティの黒人警官はギャングに襲撃されて死に、なぜか奈良時代の日本で転生した。その名は、坂ノ上田村麻呂……。
異世界転生ものは多いけれど、ひねりすぎてしまった怪作。転生してもアメリカ人なので日本の歴史なんか知らないし、コーンフレークくらいしか料理をしないので内政チートもできないという、なんにもメリットのない転生チートもの。でも、球技は強くて修羅場慣れはしてるのな。
『陶都物語』
斜陽の多治見の陶磁器業者の社長が過労死して、幕末に転生。今からスタートを切れば、多治見の陶器は天下を取れると考えるのだが、彼はいまだ幼子で、しかも貧農の末っ子。なんの力もないのだった……というところから始まる、陶磁器好きの下克上。
山あり谷ありのかっぱぎ人生も、尾張藩主からかっ剥ぎ、大老からかっ剥ぎ、ロシア人からかっ剥ぎ、今はアメリカ人からどれだけかっ剥げるか!?というところまでウェブ連載は来てます。続きが楽しみ!
『オッサン(36)がアイドルになる話』
真面目で人柄は良いのに、太っていたため苛められ続けた少年時代。頑張って大学を卒業して就職しても業績不振を口実にクビを切られて無職に。成果を出しても評価されない社会人生活についに折れ、弥勒は自室に引きこもってしまう。それからおよそ10年で、ミロクも36歳。動画サイトに影響されてダンスを始め、スポーツジムに通っているうちに体重は減り、そのカラオケ動画がネットに流れてしまい……。
36歳のオッサンが、なぜかアイドルになってしまう人生やり直し芸能小説。転生しなくても人間って変われるんだー。でも、やはり性格の良さと努力は大事だよね。そこがスタートなのだ。
『魔王様、リトライ!』 神埼黒音
自分で運営していたオンラインゲームのボスキャラに転生してしまったものの、その世界は現実世界でもゲームの世界でもなかった。しかし、なぜかゲームのアイテムは使用することができて……というところから始まる、勘違い系悪役無双ストーリー。
魔王あるいは堕天使と呼ばれるようになった主人公が、適当に話を合わせて会話しているだけで相手は勝手に深謀遠慮だと勘違いし、また実際にそれを成し遂げる力があるものだから、話はなりゆき任せに転がって、勇者や魔人、はたまた周辺諸国を巻き込む大騒ぎになっていく。
『その無限の先へ』 二ツ樹五輪
その世界には転生者が普通に存在していた。とはいえ、現代日本からの転生者はそんなに多くはなかったのだが、ツナは迷宮都市へ向かう車中で日本人から転生したというユキという少年と出会う。彼らが向かう迷宮都市は、外部にはその実態がほとんど知られていないが、どうやら日本人が創り上げた都市らしい……。
死んでも復活できる不思議な迷宮で、1度も死なないまま攻略を続ける少年とその仲間たちの迷宮探索ストーリー。この話も3巻でドM紳士の武闘家サージェスが仲間に加わってから加速しはじめ、次第にパンダが増殖しはじめ、いつの間にか主人公のパーティーがキワモノ冒険者の溜まり場と化していくあたりが面白いわけですが、いよいよこれからという5巻で刊行が足踏みしてます。続きが待ち遠しいシリーズです。
『神達に拾われた男』 Roy
世界間の魔力のやりとりに使われるため転生することになったリョウマだが、その人柄が異世界の神々に愛されて人一倍の加護を得てしまう。だが、もともと人づきあいが得意ではなかったリョウマは、これ幸いと森の奥深くに引きこもり、スライムの研究や武術の鍛錬に明け暮れて、なかなか人間社会と接触しないまま数年が経過していくのだが……。
雑魚キャラ扱いされていたスライムのテイマーとして頭角を現していく主人公の冒険譚。あるいはクリーニング&ハウスクリーニング・ストーリー。
『雷帝のメイド』 なこはる
貧乏貴族の若様が屋敷のメイドとして連れてきた少女ナナキは、かつては帝国最強の戦士である五帝の1人であり、単身で神をも屠る雷帝であり、今は予言によって帝国の敵とされた逃亡者でもある。メイドに転職したナナキはマスターメイドをめざし、掃除洗濯に奔走しながら(厨房には立ち入り禁止)、行く手を遮る障害物を抹殺していく。己の誇りのために。
最強最悪の戦士がメイドとしても有能なポンコツぶりを発揮するアクションコメディなファンタジー。
今年いちばんの良いニュースは『陶都物語』が書籍化したこと。
今年いちばんの悪いニュースは『陶都物語』が1巻で打ち切りになってしまったこと。
こういうの多いよね。『嫌われ者始めました』とか『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』とか、あれやこれや。連載が続いているのに新刊が長く出ていないと、これもそうかなと不安になります。
作者が自作が書籍化したことに満足したり本業が忙しくなって書けなくなったというならいざ知らず、そうでなければ、これって出版社の無能を示しているだけかと思います。
たとえば「小説家になろう」っていうのは長短合わせて約50万作品がひしめくところで、そこで期間限定だろうがランキング上位を取った、何百万プレビュー獲得したというのは、週刊雑誌のアンケートで4週連続トップを取ったくらいの快挙です。小説の新人賞と比較したって、下読みから選者・編集者まで合わせたところで、その何千倍かのウェブの読者の評価を得て出てきた作品です。
それだけの中から抜き出てきた作品をひょいひょいとつまんで書籍化して、売れなかったから打ち切りねー!(^_^)なんてのは、編集者の無能で、営業や宣伝の無為無策の結果でしかありません。自社レーベルの読者層と合わない作品を引っ張ってしまった、読みたい読者の手に届くように宣伝できていなかった、買おうと思った読者が買いに行った書店の店頭に配本できなかった……それだけです。
まあ、商売ですから、売れなければ切るのは当然かもしれませんが、売りようによっては売れたはずの作品をドブに捨ててしまったということで、自分たちの恥をさらしているということでもあると気づいて欲しいですね。
ただ、けっこう「小説家になろう」の作品は読んでます。布団にくるまっていても、読めるのが良いね。新刊出たら購入前に内容は最新話までチェックするのが鉄則。こういう話って、導入部は面白くても勢いが続かないとか、展開が好みに合わなくなるのも多いので。それからジャンルごとの期間ランキングはひととおりチェック……だから、山が低くならないのかなあ。
とりあえず、今年読んで面白かった本。
『ドラゴンは寂しいと死んじゃいます』 藤原ゴンザレス
たった1人で戦局をひっくり返すことのできる傭兵アッシュは、身長2メートルを超える巨漢で、顔は殺人鬼のように怖い。でも、本当は畑仕事とお菓子作りの生活に憧れている、多感な17歳なのだ。そんなアッシュが傭兵を引退し、手に入れた幽霊屋敷で助けたのは、小さなドラゴンだった……。
巨漢と小さなドラゴンの田舎暮らしのはずが、本人たちは何も変わらないのに周囲が右往左往して国が滅びかねない大惨事が連発して自業自得に陥るスローライフ・ファンタジー。
『黒の召喚士』 迷井豆腐
転生者ケルヴィンは戦闘狂である。敵は強ければ強いほど嬉しいし、強い者は味方であるより敵であって欲しいという男だ。だから、転生した当初は完全に後衛向きのスキルだったのに、いつしか最前線で殺し合う冒険者になっていた。召喚士が接近戦に弱いと誰が決めたと……。
清々しくも知性派脳筋な主人公による異世界冒険譚。どいつもこいつも頭は良いのに、最後は脳筋で残念なことになるあたりがツボ。
『スーパーカブ』 トネ・コーケン
おとなしい女子高生が免許を取ってスーパーカブを手に入れ、自分でパーツつけたり整備とかしながら、学校に通ったりバイトしたりツーリングするだけの青春小説。バイク小説につきものの「知り合いが事故死」もない。これをスニーカー文庫で出したのがすごいと思う。絶対、一般文芸だよ。
それでも2巻が出ました。よかった。
『BLACK TO THE FUTURE』 左高例
犯罪者が跋扈するアメリカの大都市ゴッタマシティの黒人警官はギャングに襲撃されて死に、なぜか奈良時代の日本で転生した。その名は、坂ノ上田村麻呂……。
異世界転生ものは多いけれど、ひねりすぎてしまった怪作。転生してもアメリカ人なので日本の歴史なんか知らないし、コーンフレークくらいしか料理をしないので内政チートもできないという、なんにもメリットのない転生チートもの。でも、球技は強くて修羅場慣れはしてるのな。
『陶都物語』
斜陽の多治見の陶磁器業者の社長が過労死して、幕末に転生。今からスタートを切れば、多治見の陶器は天下を取れると考えるのだが、彼はいまだ幼子で、しかも貧農の末っ子。なんの力もないのだった……というところから始まる、陶磁器好きの下克上。
山あり谷ありのかっぱぎ人生も、尾張藩主からかっ剥ぎ、大老からかっ剥ぎ、ロシア人からかっ剥ぎ、今はアメリカ人からどれだけかっ剥げるか!?というところまでウェブ連載は来てます。続きが楽しみ!
『オッサン(36)がアイドルになる話』
真面目で人柄は良いのに、太っていたため苛められ続けた少年時代。頑張って大学を卒業して就職しても業績不振を口実にクビを切られて無職に。成果を出しても評価されない社会人生活についに折れ、弥勒は自室に引きこもってしまう。それからおよそ10年で、ミロクも36歳。動画サイトに影響されてダンスを始め、スポーツジムに通っているうちに体重は減り、そのカラオケ動画がネットに流れてしまい……。
36歳のオッサンが、なぜかアイドルになってしまう人生やり直し芸能小説。転生しなくても人間って変われるんだー。でも、やはり性格の良さと努力は大事だよね。そこがスタートなのだ。
『魔王様、リトライ!』 神埼黒音
自分で運営していたオンラインゲームのボスキャラに転生してしまったものの、その世界は現実世界でもゲームの世界でもなかった。しかし、なぜかゲームのアイテムは使用することができて……というところから始まる、勘違い系悪役無双ストーリー。
魔王あるいは堕天使と呼ばれるようになった主人公が、適当に話を合わせて会話しているだけで相手は勝手に深謀遠慮だと勘違いし、また実際にそれを成し遂げる力があるものだから、話はなりゆき任せに転がって、勇者や魔人、はたまた周辺諸国を巻き込む大騒ぎになっていく。
『その無限の先へ』 二ツ樹五輪
その世界には転生者が普通に存在していた。とはいえ、現代日本からの転生者はそんなに多くはなかったのだが、ツナは迷宮都市へ向かう車中で日本人から転生したというユキという少年と出会う。彼らが向かう迷宮都市は、外部にはその実態がほとんど知られていないが、どうやら日本人が創り上げた都市らしい……。
死んでも復活できる不思議な迷宮で、1度も死なないまま攻略を続ける少年とその仲間たちの迷宮探索ストーリー。この話も3巻でドM紳士の武闘家サージェスが仲間に加わってから加速しはじめ、次第にパンダが増殖しはじめ、いつの間にか主人公のパーティーがキワモノ冒険者の溜まり場と化していくあたりが面白いわけですが、いよいよこれからという5巻で刊行が足踏みしてます。続きが待ち遠しいシリーズです。
『神達に拾われた男』 Roy
世界間の魔力のやりとりに使われるため転生することになったリョウマだが、その人柄が異世界の神々に愛されて人一倍の加護を得てしまう。だが、もともと人づきあいが得意ではなかったリョウマは、これ幸いと森の奥深くに引きこもり、スライムの研究や武術の鍛錬に明け暮れて、なかなか人間社会と接触しないまま数年が経過していくのだが……。
雑魚キャラ扱いされていたスライムのテイマーとして頭角を現していく主人公の冒険譚。あるいはクリーニング&ハウスクリーニング・ストーリー。
『雷帝のメイド』 なこはる
貧乏貴族の若様が屋敷のメイドとして連れてきた少女ナナキは、かつては帝国最強の戦士である五帝の1人であり、単身で神をも屠る雷帝であり、今は予言によって帝国の敵とされた逃亡者でもある。メイドに転職したナナキはマスターメイドをめざし、掃除洗濯に奔走しながら(厨房には立ち入り禁止)、行く手を遮る障害物を抹殺していく。己の誇りのために。
最強最悪の戦士がメイドとしても有能なポンコツぶりを発揮するアクションコメディなファンタジー。
今年いちばんの良いニュースは『陶都物語』が書籍化したこと。
今年いちばんの悪いニュースは『陶都物語』が1巻で打ち切りになってしまったこと。
こういうの多いよね。『嫌われ者始めました』とか『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』とか、あれやこれや。連載が続いているのに新刊が長く出ていないと、これもそうかなと不安になります。
作者が自作が書籍化したことに満足したり本業が忙しくなって書けなくなったというならいざ知らず、そうでなければ、これって出版社の無能を示しているだけかと思います。
たとえば「小説家になろう」っていうのは長短合わせて約50万作品がひしめくところで、そこで期間限定だろうがランキング上位を取った、何百万プレビュー獲得したというのは、週刊雑誌のアンケートで4週連続トップを取ったくらいの快挙です。小説の新人賞と比較したって、下読みから選者・編集者まで合わせたところで、その何千倍かのウェブの読者の評価を得て出てきた作品です。
それだけの中から抜き出てきた作品をひょいひょいとつまんで書籍化して、売れなかったから打ち切りねー!(^_^)なんてのは、編集者の無能で、営業や宣伝の無為無策の結果でしかありません。自社レーベルの読者層と合わない作品を引っ張ってしまった、読みたい読者の手に届くように宣伝できていなかった、買おうと思った読者が買いに行った書店の店頭に配本できなかった……それだけです。
まあ、商売ですから、売れなければ切るのは当然かもしれませんが、売りようによっては売れたはずの作品をドブに捨ててしまったということで、自分たちの恥をさらしているということでもあると気づいて欲しいですね。