付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「宇宙軍士官学校2」 鷹見一幸

2012-11-30 | ミリタリーSF・未来戦記
「知識というのは、考えるための材料だ。知識を身につけただけじゃ意味がない」
 大事なことは、知識を組み合わせて最適の選択肢を選ぶことだ。

 特別士官候補生40名は、有坂恵一を艦長とした練習戦艦アルテミスで訓練航海に旅立ったが、与えられた試験は想像以上の試練だった……。

 『大戦前夜』や『老人と宇宙』に匹敵するハードで面白いミリタリーSF。でも、「おれたちの参考書はSFとマンガだ」と正面からいわれると「それを言っちゃあおしまいだよ」という気分に。同じようなことをニーブン&パーネルも言ってるんだけれどね。
 「前哨-スカウト」は1巻のサブタイトルかと思ったら、シリーズ共通のようです。今後の展開次第ということかな。

【宇宙軍士官学校】【前哨】【鷹見一幸】【太田垣康男】【銅大】【ハヤカワ文庫JA】【エンダーのゲーム】【幼年期の終り】【百億の昼と千億の夜】【ブービートラップ】
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「蘆屋家の崩壊」 津原泰水

2012-11-29 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 三十路を過ぎて定職につけずにいる猿渡と怪奇小説家の“伯爵”は、豆腐がなによりの大好物ということで意気投合。なにかと一緒に出かける機会も多いのだが、その行く先々で怪奇な事件に遭遇することも多く……。

 怪奇な事件や現象に遭遇すると伯爵の推理が冴え渡るのだけれど、残念ながら相手は怪異。推理が根底からひっくり返ったり手遅れになるのは茶飯事で、たいてい犠牲になるのは猿渡の方。
 あちこちで美味い料理を食べ、美女や昔の女と遭遇し、怪奇な事件に巻き込まれる悲喜劇の顛末という、夏場にテレビの2時間枠でやったら受けそうな組み合わせの短編集です。諸星大二郎の『妖怪ハンター』とか『栞と紙魚子』あたりが好きな人にはお薦め。
 深夜のトンネルから行き止まりの集落まで、お約束といえばお約束の連続。いちばん怖かったのはストーカーの話かな。

【蘆屋家の崩壊】【津原泰水】【ちくま文庫】【蘆屋道満】【蟲食】【水牛】【ストーカー】【蟹】【ケルベロス】【狛犬】【かちかち山】【八百比丘尼】【稲荷】
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「ぶたぶたの食卓」 矢崎在美

2012-11-28 | 食・料理
 どう見てもかわいいブタのぬいぐるみなのに、中身は妻子有りの中年男こと山崎ぶたぶたさんが活躍する短編集。
 初めて入った中華料理屋で死んだ祖母の味と同じチャーハンに出会ったり、失業してふらりと見かけた料理教室に参加したり、そんな風にしていろいろな人たちがぶたぶたさんに出会います。
 山崎ぶたぶたさんは全能ではないし、ぬいぐるみだし、失業したりもしますが、彼だけは周囲が変わっていっても(外観だけは)変わりません。ぶたぶたさんは人生のランドマーク。
 疲れたら休めばいいし、変わるなら変わればいい。無理に変える必要もないけれど、変わってしまうからと怯える必要もない。あたりまえのことをあたりまえに話し、過去の思い出を引き出し、傷つき疲れた人たちに新しい一歩を踏み出すきっかけを与えてくれるのです。

【ぶたぶたの食卓】【矢崎在美】【手塚リサ】【光文社文庫】【信江さんチャーハン】【異人たちの夏】【キャラメルソースのガレット】【鬱病】【かき氷】
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「猫にはなれないご職業2」 竹林七草

2012-11-27 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 陰陽師の家系の7代目である藤里桜子は、亡くなった祖母の後を継ごうとしているが、その類い希なる才能に反してバカであり不器用であり、尻ぬぐいするのは友人の神波命であり祖母の飼い猫だった猫又のタマだった……。

 面白いけれど、まるでおひきずりさんのような格好の桜子のトラブルメーカーぶりが読んでいて辛くて辛くて泣けてきます。確かに善良だし、物語の進行やお色気の増量に貢献しているけれど、こんなのとつきあいたくないなあ。みんな良いやつだなあと、自然に彼女以外の登場人物への評価が相対的に高くなり、それで読めてしまうのですね。
 ……と、ここまで考えたら、これは典型的な「権力や財力はあるけれど凡庸な主人と有能な執事/部下」パターンじゃありませんか。1冊目では桜子がヒロインだと思っていたから馴染めなかったけれど、最初からタマと命が主役なんだときちんと把握しちゃえば、あとはするすると。
 こりゃ、キャラクターが固まってきた3冊目が楽しみです。

【猫にはなれないご職業】【竹林七草】【藤ちょこ】【ガガガ文庫】【おっさん猫又と美少女達による妖怪退治】【鬼】【ポルターガイスト】【幼児用パンツ】【神隠し】【千里眼】【ピッキング】【牛】【浦島太郎】【幼怪】【台所】【五行相克】
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「死体置場は花ざかり」 カーター・ブラウン

2012-11-26 | ミステリー・推理小説
「殺人事件を捜査していると、かならず、女にぶっつかるんだ」
 ポルニック部長刑事の言葉。

 身元不明の美女の死体が死体置場から盗まれる。
 捜査を担当したウィーラー警部が匿名の電話に従ってTV局へ足を運んでみれば、今度はセットの棺桶から中年男の死体が姿を現し……。

 ミステリを片っ端から乱読していた高校生時分に購入。
 語呂の良いタイトルに、ユーモア・ミステリを期待して購入したら、軽妙なタッチではあるものの、基本はハードボイルドで、肩すかしを食らった気分……って、それくらいは表紙から予想しないといかんわな。若気の至り。

【死体置場は花ざかり】【カーター・ブラウン】【アル・ウィーラー警部】【モルグ】【メッセンジャー・ジョン】【二重生活】【生首】
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「新宿遊牧民」 椎名誠

2012-11-25 | 伝記・ノンフィクション
 椎名誠の私小説シリーズの1冊で、『哀愁の町に霧が降るのだ』や『わしらは怪しい探検隊』などのあれこれを総括した劇場版的な語りで、誰が主役やら主題が何かはっきりしないまま、本の雑誌を立ち上げた頃から新宿にパオを作って宴会するあたりまで。
 敦煌やパタゴニアへ旅行することになった顛末など他で語られている個々のエピソードは軽めに押さえられ、その分、そうしたことを機会に知り合った人々について書かれるのがメインとなっています。編集者や居酒屋店主、漁師に写真家など酒飲み友だち、旅仲間たちの人生について語るのがテーマのようです。そうした、それまで別々の人生を、別々の土地で過ごしてきた者たちが、次第に集っていくさまは梁山泊に漢たちが集う光景を見るようでもあります。バカでなりゆき任せだけれど格好良い。
 
【新宿遊牧民】【椎名誠】【講談社文庫】【輝けるバカたちの実話物語】【ホネフィルム】【本の雑誌社】【海浜棒球始末記】【あやしい探検隊】【本の雑誌血風録】
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「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」 総監督:庵野秀明

2012-11-24 | 巨大ロボット
 公開から1週間。夫婦でレイトショーに行ってきました。
 前回は子供を連れてもう何回かリピートしたけれど、今回はブルーレイが出たら買えばいいかな。そんな感じ。まあ、みんな以前の周回よりは成績が良くなっているけれど、まだまだだなあ。大人がもう少し言葉を選べ。時間はあるんだから。

 嫁さんいわく、「シンジくん、今度こそキミを幸せにしてみせる…」と誓っていたカヲルくんが「……あ、間違えちゃった。てへぺろ☆(・ω<)」でオチちゃった話。特定オールドゲーマーには「シンちゃんがたかまぁになっちゃった」といえば雰囲気が伝わるかもしれない(たぶん無理)。

 序破急のQは、観客の頭の上に出っぱなしのクェスチョンマークのQ。中高年が過半数を占めたヤマト2199と違い、こちらの観客は大学生あたりが中心といたって普通。帰り道で、みんな「だからどういうことなんだってばよ!」と頭を悩ませていたけれど、2004年のNHK「トップランナー」で総監督自ら「エヴァンゲリオンは哲学的と言われるが、実際はそうではなく衒学的(知ったかぶり)である」と言い切っているから、気にしてはダメ。
 あるいは、1996年のあさりよしとおの同人誌での「エヴァのおびただしい設定は全てドラマを展開するための方便である」という評論が至言。難解な裏設定やらは気にせず、そのシーン、そのキャラを楽しめばいいから。
 深読みしたいなら、スタッフのことは考えず、自分がどう考えれば辻褄が合うかだけを考えればいいから。

 ええ。いろいろ変わっていたけれど、中身は紛れもなくテレビで観ていたエヴァンゲリオンだったし、庵野監督もゼネプロ版「帰ってきたウルトラマン」の頃からちっとも変わっていませんでした。

【ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q】【庵野秀明】【摩砂雪】【鶴巻和哉】【前田真宏】
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『宇宙戦艦ヤマト2199』 第三章「果てしなき航海」BD

2012-11-24 | ミリタリーSF・未来戦記
……は売り切れだった。
 通常版は1ヶ月後か……。公開2日目の午後一でこれかよ。毎回厳しくなっていくなあ……。
 劇場では若い娘さんたちがタイバニに流れ、年配のおっさんと小さい子供連れがヤマトに流れる構図でした。
 そしてグッズ売り場はブルーレイのみならず、ヒルデ・グッズも既に壊滅。あれだけ美少女クルーが増えていて、まだ美少女が欲しいのかいっ!

 というわけで、今回は地球にお別れ会、ガス生命体と太陽フレアの回と、アナライザーが自我に悩む回、そして宇宙サルガッソーの全4話。
 本来ならアステロイド・ベルト回転あたりの話で、オリジナル版だともう少し先にあった、アナライザーの主役話とか次元断層話が前倒しで来ていますし、第四章の予告だと本来ならばヤマト3に登場するキャラまで登場するらしく、どこまで前倒しすんねん!と。
 
 J・J・エイブラムス版の『スタートレック』が構成要素のすべてがスタトレでありながら、できあがりがなんとなくスターウォーズっぽいように、この作品もちゃんとヤマトの要素をしっかり詰め込みながら、できあがりの雰囲気はなんとなく『スタートレック』。ヴォイジャーみたいな群像劇になってるなーという気がしました。逆にそう思うと、艦に乗り込んでいる保安要員が空間騎兵隊ではなく保安部というあたりにも納得できたりして。(2012/10/14)

 やっとこさディスクが到着。劇場で観てから40日ぶりの再見。
 ふむ。OPはやはり途中からアップテンポなバージョンに切り替わるのね。真田さんや沖田艦長の洞察力はあいかわらず神がかっているなあと、まるっきりオリジナルをなぞるわけでもなく、改変しすぎて原作の雰囲気が吹き飛ぶでもなく、絶妙な舵取りをしているなあと思いました。
 機関士の薮くんが原作より出番が増えると共に、すごく親近感のわくキャラになっていると痛感。彼には幸せになって欲しいなあ……。

【宇宙戦艦ヤマト2199】【第三章「果てしなき航海」】【出渕裕】【結城信輝】【キャットファイト】【人工知能】【船魂】【大タラン・小タラン】【融和政策】【辺境の蛮族】【市民権】【赤道祭】
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「俺はまだ恋に落ちていない4」 高木幸一

2012-11-24 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「俺的には、3回までなら逃げてオッケーです」
 辛いことや悲しいこと、自分にはどうしようもないことがあったら逃げても良いと赤井公。ただし公自身は既に3回使い切っている。

 みんなで島に渡ってキャンプをしたり、受験を前にして楽しい思い出を積み重ねていく公と恵衣美と詠羅の姉妹だが、周囲は次第にそんな関係を許さないようになってきて……。

「女は、褒められたいのでございます」
 自分のことを大好きな女には、常に声をかけて褒めるようにしろと山寺愛子。

 3ヶ月や半年で人生の結論を出せとは言わないけれど、何年も放置は気の毒だ。どちらか選ぶとか、両方ともオレのものだ!もいいけれど、選ばないのは無しだよ。
 ということで、高校生ならではの不安定さはあるけれど、とにかく前向きで、きちんと問題に正面から向かい合う主人公と、いろいろ素直でないとこもあったりするけれど彼のことを大好きな少女たちの物語も、この巻にて一応の完結。
 こういう話を中高生のうちに、きちんと読んでおくと良いよ。特に名前は挙げないけれど、書店で「今でも読める名作文学」とかの棚に並んでいる文豪の名作群を今さら読むよりも、遙かに学ぶことが多いと思う。

【俺はまだ恋に落ちていない4】【高木幸一】【庭】【GA文庫】【トライアングル・ラブコメディ】【大人げない】【キャンプ】【進路指導】【見合い】
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「のぼうの城」 和田竜

2012-11-23 | 時代・歴史・武侠小説
 本そのものは何年か前に手に入れていたけれど積ん読。映画もやっとこさ公開され、なかなか評判がよいと聞いて読んでみようかという気になりました。

 石田三成は誇り高い男であった。
 戦はおのれが認める者を相手とすべきものであり、くだらない者どもとする戦いはくだらない。
 そして三成は、秀吉の大遠征軍の前に次々と落城していく北条勢の中、ついに相まみえる価値のある敵を見つけた。
 わずか500の兵が守る小さな支城にすぎない忍城、その総大将となった成田長親は「のぼう様」と呼ばれ、百姓からさえでくのぼうと馬鹿にされる男であった。
 500対2万の戦が始まる……。

「わしはどこを守ろうか」
「総大将はおとなしく本丸におれ」


 『風来忍法帖』も面白かったけれど、これも面白いな……まだ、映画に間に合うな……。
 戦国時代の名勝負、名だたる武将は数あれど、物語として見た場合、大軍の前に孤立無援の小城とか、城の甲斐姫が東国無双の美人にして槍の達人と、この攻防戦は王道パターンです。ライトノベルなら、これをプロローグにして英雄譚を幕開けするかな。そんな感じの330ページ。
 石田三成も嫌な感じの敵役として登場しながら、戦国武将としてぐんぐん好感度アップ。こういう解釈もあるんだなあ。
 エピローグ部分も、いろいろ史実につながる余韻にひたりつつ、いちばん印象に残ったのは、おさな妻萌え?

【のぼうの城】【和田竜】【オノ・ナツメ】【小学館】【水攻め】【板東武者】【太田三楽斎】
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「トカゲの王(IV)」 入間人間

2012-11-22 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「責任は、己の内側にしかない」
 原因は外にあっても尻ぬぐいするのは自分しかいないと、ナメクジこと米原麻衣。

 今まで知らなかったこととはいえ、世の中にはプロの殺し屋がぞろぞろいて、しかもその中で超能力者の比率がかなり高い。超能力者が実在することすら驚きだけれど、そいつらが金次第でいつ自分を殺しに来るかわからないのだ。
 殺し屋同士の仕事の巻き添えでマンション1つが無人になったところからナメクジが逃げだそうとしていた頃、トカゲは自らが教祖となって新勢力を立ち上げようとしていた……。

 前巻まででさんざん人が死にまくって状況が整理されたどころか、ますます混沌としていく4冊目。ナメクジさんはついに気が狂ってしまうけれど、もともとそんな感じの殺し屋さんだったし、他の登場人物も似たり寄ったり。
 開き直ったトカゲとすべて承知で彼についていくマネージャーさんの今後の奮闘に期待したいです。すぐに死んでしまうかもしれないけれど。

【トカゲの王IV】【インビジブル・ライト】【入間人間】【ブリキ】【電撃文庫】【ジョジョの奇妙な冒険】
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「覚えてないけど、キミが好き2」 比嘉智康

2012-11-21 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「学生時代に女の子2人にお弁当つくってきてもらったという幸せな思い出があれば、人の人生を一生支え続ける力になりうる」
 馬場園君の言葉。

 自分のことを大好きな少女2人と一つ屋根の下で寝起きしている吉足の気苦労は絶えない。だが、商店街の福引きで高級リゾートプールの招待券が手に入り……。

 記憶喪失少年の物語に大きな転機が訪れます。火事で両親を失った温泉街への再訪は、彼に何をもたらすのか!?
 今回は会話のキャッチボールが多めで、ヒロイン2人の主人公好き好き度はMAX。ちょっと1回あたりの掛け合いが長すぎる気もするけれど、これも試行錯誤かな。
 ヒロイン2人が良い子なのです。

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「俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件4」 七月隆文

2012-11-20 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 世間と隔絶したお嬢様学校に、一般庶民のサンプルとして連れてこられた少年が、世間知らずのお嬢様方に庶民文化を伝道していく話も4冊目。こうまとめると、『アウトブレイク・カンパニー』あたりと物語としての構造は似通っていることがわかります。
 今回は、本物のメイドさんを普通に使っているお嬢様たちにメイド喫茶を紹介する話。そろそろパターン化した展開に対し、カンフル剤が投入されるような気配が見受けられますが、単純に普通に良い話にしたいなら白亜メインにした方がいいよね。

【俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件】【七月隆文】【閏月戈】【一迅社文庫】【ハートフル学園ラブコメ】【声優】【メイド喫茶】【はきゅんっ】【マルコイ伝】【キャラ弁】【親子どんぶり】【便所飯】
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「よちよち文藝部」 久世番子

2012-11-19 | エッセー・人文・科学
「文春社員、ほーれんそー!!!」
 芥川龍之介が自殺した遠因は、文春社員の怠慢にあったのではなかったか……。

 太宰治や谷崎潤一郎まで、日本文学の名作と文豪たちをわかりやすく紹介していくが……。

 文豪だ、名作だといわれているけれど、作者や主人公が人間的にクズだったり、痛くて、自意識過剰で、毒舌垂れ流しだったり、ヤマなしオチなしだったり、同じパターン・同じセリフを繰り返していたり……。『雪国』なんか、そのまま忠実に映像化したら,単なるアダルトビデオになっちゃいそう。
 とにかく書き手の願望や嗜好がせきららに出ていて、自己表現の手段として、あるがままの痛い自分をさらけ出しているという意味で、みんな問題児で問題作。純文学もそんなにたいしたことがないという気にへの垣根を低く感じさせてさせてくれます。
 そして『舞姫』は記憶にある通りの最低な主人公ですが、発表当時からみんなそう思ってたんだ。やっぱり。あれなら、まだハーレム系ライトノベルの主人公の方がはるかにモラリストで誠実です。

【よちよち文藝部】【久世番子】【文藝春秋】【桃太郎】【三角関係】【ガラスの仮面】【下痢】【褌】【エロ老人】
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「岳物語」 椎名誠

2012-11-18 | その他フィクション
 岳(がく)は作家・椎名誠の息子である。
 椎名誠よりもシーナ的といわれた少年の成長を、親の視点から描いた私小説。

 いつの間にか自分の小遣いで道具を揃えて釣りにのめり込んでいたり、喧嘩も次第に強くなり、カナダまでカヌー旅に出かけ……と、子供の面倒を見ていたはずの父親が,いつの間にか息子につきあってもらっているようになるまでの話。少年の成長物語というか、親が子離れしていく物語というか、親が自分のふがいなさを自覚する過程というか。子供の成長ってのは悲喜こもごもであるけれど、それを笑い飛ばす作者の視点に勇気をもらいました……と思いたい。
 そのように選んで育てたのだけれど、小学校の入学時に読み書きできなかったのは自分ところの子供だけだったとか、ケンカやイタズラばかりして学校に呼び出されたり謝って回ったり……と、子を持つ親としてはなかなか身につまされて、前半は心が痛いエピソードが多いです。
 それで元気に成長して、自分のやりたいことを見つけて自立してくれれば良いですけども。

【岳物語】【椎名誠】【私小説】【釣り】【芋泥棒】【貢ぎ物】【川下り】【カヌー犬ガク】
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