付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「電波的な彼女~愚か者の選択」 片山憲太郎

2011-09-30 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「神様を信じるのは人間だけですから。わたしたちが信じてあげなければ、神様がかわいそうですよ」
 神様を信じていると、堕花雨の言葉。『超少女明日香』以来の、「前髪で目を隠した小娘はすごく有能」パターンは健在です。

 幼い少年少女が誘拐され、眼球をくり抜かれては放り出されるという事件が何十件も連続している。
 たまたま街で話をした少女が分かれた直後に被害者となったことから、柔沢ジュウは犯人を見つけたいと考えるが、なぜか雨はその考えに批判的だった……。

 猟奇事件が続発する社会に生きる高校生たちの物語の第2巻で、雨の親友2人が登場し、こちらも電波じゃないけれどかなりキレてます。オカルトでもホラーでもないけれど猟奇的。
 今回もユーモアを交えながら話は面白く進みますが、起きている事件は陰惨、結末はとってもビターで虚無的。でも、そこで雨の生きている限り考えて迷えばいいという言葉が生きてきます。

「正義の味方がいないからこそ、わたしたちは悪を憎み、正義を愛する。そう努力するのさ」
 この世に正義の味方は要らないし、いてはいけないと、柔沢紅香の言葉。

【電波的な彼女】【愚か者の選択】【片山憲太郎】【山本ヤマト】【暴力的な母親】【シスコンの妹】【猟奇事件】【秋葉原】【同人誌即売会】【コスプレ】【メイド】【目つき悪い主人公】
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「変態王子と笑わない猫。(4)」 さがら総

2011-09-29 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 今までのエピソードの中からいくつかを、主人公以外の視点から語り直した番外短編集。

「そんなわけあるか。あるわけない。ないと思う。ないかな。よくわからない」
 だんだん壊れていく“つんでるさん”こと副部長がかわいい。

 携帯で配信された本当の“最初の出会い”のことやら、小豆梓と沖縄に行ったモリイとモリヤの物語とか、聖歌隊とエミにまつわるエピソードとか、陸上部の仲直り話とかあれこれ。
 みんな幸せになって欲しいけど、やっぱり責任はとらんといかんよなあ。

【変態王子と笑わない猫。】【さがら総】【カントク】【鬼の子】【キティちゃん】【スゴロク】【沖縄】【お姫さまだっこ】【ソックス】
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「さくら荘のペットな彼女(5.5)」 鴨志田一

2011-09-28 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「才能なんてものを語るには、やれることをやってからにしないとね。でないと、真面目にやっている人間に対して失礼ってもんでしょ」
 外部進学を決めた、三鷹仁の言葉。

 今までのエピソードの中からいくつかを、主人公以外の視点から語り直した番外短編集。
 本編が一段落した今だからこそ、こうやって別の視点から振り返る企画が楽しめるというものです。しかし、巻を追うごとに性能アップするメイドちゃん、おそるべし。

 でも何かにつけて「炭水化物と炭水化物の組合せはおかしい」というネタになるけれど、ラーメンライスも、味噌煮込みうどんにライスも、焼きそばにライスも、タコ焼きにライスも、お好み焼きにライスも、スパゲティにライスも、組合せとしては有りだよねえ。いなり寿司と巻き寿司を組み合わせて助六……というのとはちょっと違うけれども、どれも慣れれば有り。ただ、そうめんの場合は白ごはんではなく、かやくごはんの方がいいかな。

【さくら荘のペットな彼女】【鴨志田一】【溝口ケージ】【ボーイ・ミーツ・ガール】【ラブコメディ】【お好み焼き定食】【焼きそば定食】【お風呂】【ノーパン】【メイドちゃん】
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「陰陽屋あやうし」 天野頌子

2011-09-27 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「人の縁とは不思議なもので、会うべき人には必ず会えるし、会わずに終わる人というのは、会う必要がなかったというだけのことさ」
 祥明のの祖父、阿部柊一郎の言葉。

 知識はあっても霊能力はないホストあがりの陰陽師とキツネ耳中学生のコンビの物語ですが、もはや探偵物語ですらなくなってます。
 高校の授業中居眠りばかりしている瞬太に、担任教師が生活指導、家庭訪問とたたみかけ、バイトをやめるように説得してくるのだが……。

 瞬太がバイトできなくなりそうだったり、ホスト時代の祥明に「30までに結婚できる」と占われたのに結婚できなかったから責任とれと女性が押しかけてきたり、病院に幽霊が出たり……とどたばたしてるうちに終わってしまった1冊。月曜ドラマランド向き。

【よろず占い処】【陰陽屋あやうし】【天野頌子】【toi8】【ストーカー】【生活指導】【公然の秘密】【すべからくの誤用】
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「S.P.A.T.!」 鷹野祐希

2011-09-26 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 誰もが幽霊を見ることができるようになった時代には、刑事事件に幽霊が絡むことは珍しくない。殺人事件ともなれば、被害者の幽霊こそがもっとも有力な情報提供者になるからだ。
 宇津賀ひまりは祖母からさんざんお化け話を聞かされて育ち、すっかり幽霊恐怖症になってしまっていたが、警察学校を卒業した彼女が配備されたのは、よりにもよって警視庁・特務課。幽霊専門のGクライシス対策室だった……。

 目撃者など証人がもっぱら幽霊というだけで、話そのものは真っ当でライトな警察小説。
 あちこちから呼び集められたメンバーから構成された特殊チームだけれど、その性格から組織内ではつまはじき。それでも現場百回、警察が1人1人(幽霊相手の)聞き込みを続ける一方で、証拠隠滅を図る犯人が非合法の除霊師を送り込み、どちらが先に(幽霊の)証人や被害者を見つけるのか!?という、なかなかスリリングな物語。
 幽霊嫌いなひまりがいかに幽霊恐怖症を克服するかとか正体不明の掃除屋との遭遇とかポイントはいろいろだけれど、今回は顔見せ程度に終わったライバルの霊魂処理業者や、先輩刑事の妹などがどう話に絡んでくるかも楽しみです。

【S.P.A.T.!】【スパット!】【鷹野祐希】【平つくね】【自縛霊】【浮遊霊】【セーフハウス】【バラバラ殺人】
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「電波的な彼女」 片山憲太郎

2011-09-25 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「悩むのはいいんだよ。いくらでも悩めばいい。でも、必ず答えを出さなきゃダメ。答えを、結論を、それをしっかり見つけておかないとダメ。いざという時に何を取り、何を捨てるのか、その判断に困っちゃうよ」
 優先順位が曖昧だと取捨選択が混乱すると、紗月美夜。

「人生は悩むことだと私は思います。だから、生きているうちはまだ過程であり、結論も答えもない」
 答えが出るのは怖いこと、悩むこと自体が答えだと、堕花夜。

 不良高校生・柔沢ジュウの前に突如現れた奇妙な少女は、いきなり彼の前にひざまづいた。
「我が身はあなたの領土。我が心はあなたの奴隷。我が王、柔沢ジュウ様。あなたに永遠の忠誠を誓います」
 それが堕花夜との出会いだった……。

 猟奇な事件が続発する街を舞台に、ツッパリ高校生と電波女、脳天気少女の3人が繰り広げる人間模様と猟奇事件への挑戦。株価大暴落!の美夜もいいけれど、こんな電波女にならストーカーされてもいいよなと思い始めてしまうところがミソ。委員長がちょっと不憫。
 2004年の刊行だけれど、とりあえずアマゾンで調べたら続編が2冊出ているのを確認したので、ぽちっとな。

「恋に楽勝なんかないです。良くても辛勝、それが恋」
 紗月美夜の言葉。

【電波的な彼女】【片山憲太郎】【山本ヤマト】【前世】【インターネット】【暴力的な母親】【シスコンの妹】【猟奇事件】
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「去年はいい年になるだろう」 山本弘

2011-09-24 | 時間SF・次元・平行宇宙
 SF作家・山本弘の仕事場にいきなり押しかけてきた美女は、世界をよりよき方向に変えるために未来からやってきたロボットだと名乗った……。

 善意の使命感で未来からやってきたアンドロイドたちが引き起こす世界改変の顛末。911テロも未然に阻止され、独裁国家は解体され、大災害での被害が軽微なまでに抑えられたとき、世界はどう変わっていくか……という話。
 こういう話だと、事件が起きると相手の正体や能力について検討するのは科学者の役目なのに、と学会が担当しているというあたりがポイント。なので、キース・ローマーの『優しい侵略者』みたいに開き直った結末になるかと期待していたら、案外と時間改変ネタとしてはオーソドックスで手堅い結末に。読後感としては、話の軸足がSFではなく私小説方向にあったという感じ。

【去年はいい年になるだろう】【山本弘】【時間改変】【と学会】【宇宙要塞】【911】【タイムマシン】【ボーイ・ミーツ・ガール】【夫婦の危機】
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「激走!5000キロ」 監督:チャック・ベイル

2011-09-23 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 昔、けっこう映画好きなツレがいて、学校への行き帰りで最近見た面白い映画の話などを熱く語ってくれた。その中でもっとも印象深かったのが『激走!5000キロ(ガムボールラリー)』。
 映画『キャノンボール』に代表される公道無法レースのはしりです。順番に言えば、1933年に実際にアメリカ大陸を54時間あまりで横断したバイクレーサーがいて、彼のあだ名である「キャノンボール」が公道を使って道路交通法無視のレースをすることの代名詞となり、1976年にはそれをテーマにした『ガムボールラリー』がヒットし、それに『爆走!キャノンボール』が続き、『キャノンボール』が登場。しかし、本家アメリカでは取り締まりが厳しくなってできなくなり(あたりまえだ)、それが欧州で1999年に公道ラリーとして復活したのが「ガムボール3000」。
 『爆走!キャノンボール』も『キャノンボール』も、どちらもレースやトトカルチョの高額の賞金をめぐって裏切りや罠が張り巡らされる話なのですが、『ガムボールラリー』はお金が全く動かない話。優勝者に与えられるものは、“いちばん早いヤツ”という栄誉とトロフィー代わりのガムボールマシン(コインを入れると丸いガムが転がり出てくるやつ)だけ。純粋なスピード狂のコメディになっているところが好きです。
 勝っても負けてもガムボールだけ。

 ソクター社の社長バノンは退屈だった。重役会議の間も上の空。
 たまらなくなって、やおら電話を取り上げると、ただひとこと「ガムボール!」。
 それがニューヨークからロサンゼルスまでのアメリカ大陸5000キロを横断するカーレースの開催を告げる合図だった。
 連絡は瞬く間に口コミで伝わり、全国から素人レーサーがフェラーリ、カマロ、コブラといった名車を引っさげ、秘密のスタート地点に続々と集結。
 しかし、その情報は警察も察知しており、定年間際のロスコー警部率いる警察隊が手ぐすねを引いて待ち受けていた……。

 DVD発売を待ちかねている洋画の筆頭。LDがよほど売れなかったのかねえ。あと、これで『モンテカルロラリー』が加われば言うことはないのだけれど。
 コメディタッチの公道レース物というとジャッキー・チェンが日本人役で登場した『キャノンボール』が有名だけれど、あのシリーズは良くも悪くもオールスターなお正月映画なものだから、みんなが平等に出番があってストーリーは平坦という隠し芸大会的に見えちゃうのですよ。嫌いではないけれど、(シナトラ登場みたいな)楽屋落ちがあり、クライマックスでキャスト総登場の乱闘シーンがあり、そこからみんなでドタバタとスタートしたりするのでレース映画としては物足りない。役者がスゴすぎで、主役は車じゃなくて役者だものね。
 こちらは、会議の真っ最中にレースの開始を告げちゃう車道楽の会社社長とか、負けがこんでるものだから助っ人にF1レーサーを呼んでくる金持ちとか、たまには真っ当に走りたいというスタントレーサーと曲芸したい助手のコンビとか、隠居老人コンビとか、ニセモノじゃないニセ警官コンビとか、色っぽい有閑マダムコンビとか、趣味にこれくらいの金と時間を費やすバカって絶対にいるよね!というレベルが絶妙。貧乏な下働きの青年が高級車の陸送仕事を引き受け、気になる彼女をデートに誘ってそのままロサンゼルスを目指すというのもバカっぽくて好き。
 そして、州境を超えて追いかけてくるロスコー警部には、ルパン三世の銭形警部並の執念があって、警部とレーサーたちとの知恵比べもストーリーを盛り上げるポイント。というか、あのラストを見たら、ぜったい「ロスコー!グッジョブ」だろ? やはりライバルが魅力的な作品は面白いよ。みんなの立ち直りもステキすぎ。
 名車の競演という視点でも、洒落たレース物としても、文句なしの映画でした。

【激走!5000キロ】【ガムボールラリー】【チャック・ベイル】【マイケル・サラザン】【ティム・マッキンタイア】【ブラックライダー】【放水路】【出産】
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「魔法少女のくせになまいきだ。」 永井寛志

2011-09-23 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 東京都心に突如出現し、ビル群を破壊し始めた八岐大蛇だかヒュドラだかの怪物。それに敢然と立ち向かったのは世界平和連合のエージェントにして正義の魔法少女ほゆら。
 ほむらは戦場にふらりと迷い込み、映画撮影と勘違いして見物を始めた少年シゲトを助けようとするが、シゲトは(自分でも知らなかったが)魔族を束ねる邪神だったのだ!

 最近は魔王や邪神が主人公の作品がちらほら見受けられますが、この話はその中でも成功する邪神さまです。おんぼろアパートで日々の生計を立てるのに四苦八苦もしていないし、手下の方が先に出世してもいないし。
 ただ、いろんなことが半端に終わって、ろくな伏線もなしに、ご都合主義に展開しているので、好みではないかな。いろんなキャラが思わせぶりに登場しても、結局、いてもいなくても良いキャラだったりするので。

【魔法少女のくせになまいきだ。】【永井寛志】【モフ】【蛇王ザッハーグ】【ヒュドラ】【ハーピー】【勇者のくせになまいきだ】【高山市】【白い学生服】
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「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(9)」 伏見つかさ

2011-09-22 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「妹ってのはな、兄貴と一緒にいるときにこそ、最高の魅力を発揮するんだよ!」
 高坂京介の言葉。
 表紙だけ見ると、大団円の最終回と見えないこともありません。

 へたれな高坂京介が主人公の一人称小説がもし存在するのなら、気取って「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」などと言い出すかもしれないが、俺、赤城浩平は断言する。「俺の妹はこんなに可愛い」と。
 たとえ腐女子といわれていようと、俺をホモ扱いしようと、夜中にホモゲーを買いに走らせようと……。

 京介以外の視点から物語を語る特別編。

「あたしの大好きなお姉ちゃんは、男の子に健気な恋をして、勇気を振り絞って告白して、そして幸せをつかみ取った凄い人だった。
 尊敬すべき女性だった。こんなに嬉しいことはない」

 内気なお嬢様だった槇島沙織がいかに沙織・バジーナになったのかが語られる「わたしもわがままに生きてやる」篇とか、黒猫が神猫になっていく一部始終を妹視点から語った「お姉ちゃんの妄想がひどくなっている」篇とか、いろいろ視点が変わると物語の見え方も変わってきて面白い。ミステリーでいうなら回答編の意外な結末といったところか。
 黒猫のあたふたする姿はかわいいし、姉への反発からオタクの道を突っ走った沙織も応援したいけれど、問題は田村麻奈実の視点ではまだ何一つ語られていないこと。最大限の地雷だか時限爆弾がいまだ所在不明のままチクタク動いてますよ?

【俺の妹がこんなに可愛いわけがない】【伏見つかさ】【かんざきひろ】【ツーショット】【元マネージャー】【妹フェチ】【脳内彼氏】【Bカップ】【そんな人はいないよ】【シスコン勝負】【ClariS】
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「魔弾の王と戦姫2」 川口士

2011-09-21 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「礼儀や品性は、己の意思と努力で身につけることのできる数少ないものよ」
 “破邪の穿角”の戦姫、リュドミラ=ルリエの言葉。

 ブリューヌ王国は内乱の危機に直面していた。
 二大勢力の狩り場となろうとしていたアルサスの領主、ティグルヴルムド・ヴォルン伯爵は隣国ジスタートの戦姫エレンに従属することで、なんとか郷土防衛に成功していた。しかし、このままでは自身が反乱分子と見なされかねないし、それはエレンも同じだった。
 エレンはジスタート王に自らの行動の承認を求めるのだが……。

 前作が面白かったので期待していたら、続巻が登場。今の調子で続いてくれると嬉しいな。
 新たに登場した戦姫(ヴァナディース)であるリュドミラは、名門育ちの戦姫ということでなかなかの好敵手。普段の言動と、紅茶とジャムの瓶を腰にぶら下げて歩く姿のギャップが素適です。
 ただ、「貧相な胸」とエレンに揶揄されるスタイルが、イラストではどれも詰め物をしたように豊満。比較すれば大きさの違いは分かりますが、スイカの3号玉と4号玉の違いくらいの話で、ここは興ざめ。なんでも目と乳をデカく描けば良いというものでもないでしょうに。

「もうちょっとだけ気楽に行こう。怒っている時間よりも、笑っている時間が多い方が良い」
 ティグルヴルムド・ヴォルン伯爵の言葉。

 ティグルにとっての敵役であるところのテナルディエ公爵も、人間的にはどうかなと思わないでもないけれど、交渉相手としては有能で誠実……みたいな位置づけで、今後の展開が楽しみです。「魔弾の王」の誕生まで続いてくれることを期待します。

【魔弾の王と戦姫】【川口士】【よし☆ヲ】【戦費】【ブリューヌ内乱】【野盗】【暗殺者】【粥】【温泉イベント】
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「れんげ野原のまんなかで」 森谷明子

2011-09-20 | 本屋・図書館・愛書家
「図書館には本しかない。でも本だけはある。お前ら、この中にどれだけの広い世界がつまっているか、知っているか?」
 司書・能勢の言葉。

 秋葉図書館はすすきの荒野のど真ん中にぽつんと建てられたバブルの残り香。
 新人司書の文子は、ここで先輩司書からしごかれる日々だが、現在の悩みは閉館後も図書館に残ろうとあの手この手を繰り広げる小学生集団との戦いで……。

 小学生のブームに悩まされたり、大雪で帰宅難民になってしまったり、かと思えば存在しないはずの貸出名簿が流出したり、今はもう存在しないはずの図書館蔵書が姿を現したり、小さな図書館で起きる事件の数々と、利用者がほとんどいなかった図書館に少しずつ人が集まってくる様子を描いた四季の物語。

【れんげ野原のまんなかで】【森谷明子】【雪白姫】【百人一首】【雪女】【借りぐらしのアリエッティ】【日常系ミステリ】
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「妖精作戦」 笹本祐一

2011-09-19 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 ジュブナイル小説と呼ばれていたものが、いつの間にかヤングアダルトとなり、ライトノベルといわれるようになりました。中身は変わらず、器だけが変わったようなものですが、その変遷を如実に理解させる作品があります。
 笹本祐一の『妖精作戦』。デビュー作なだけに荒削りな話だけれど、個人的には『エリアル』より好き。高校生が主役で、同級生の超能力美少女を護って地球防衛している秘密組織と戦う話です。

 一番左、昭和59年初版時のイラストは挿絵画家の若菜等。いかにも表紙絵、挿絵でございといった風格の作品です。買ったときは、すでにその古さに手を出すのがためらわれたけど、今となってはかえって味があるかも。昔のジュブナイルと呼ばれた小説は、みんなこういう装幀でした。

 真ん中、昭和62年12版時のイラストは、アニメーターの平野俊弘。言っちゃ悪いが、いかにも人気アニメーターの余技のバイトでございと、マジックペンでさらさらと描かれたイメージボードともキャラクター設定ともいえないイラストがしょぼい。でもこういう小説にアニメーターやマンガ家のイラストをつけるのが流行し始めた当時はコレで通用してました。イラストが挿絵であることを目的とせず、そのイラスト担当者の作品発表の場に過ぎなかったのです(今でも、カットとしか呼べないイラストは多いけど)。
 そして最後、平成6年の新装版の担当は、SFマンガ家の御米椎。いかにもマンガでございのイラストでありながら、全編緻密に構成されたイラストは文章の魅力を最大限に活かしています。絵柄は今風でありながら、昔の挿絵が果たしていた「小説の一場面を描き出して読者がイメージを伝える一助とする」という役割をしっかり果たしています。

 中高生向けのイラスト重視の小説を、ときにジュブナイルと呼び、ヤングアダルトといい、ライトノベルと称します。うまくいえないけど、その違いは、こういうことじゃないのかなあと思うのです。(2007-08-29)

 妖精作戦、4度の登場!
 今回は創元推理文庫に移籍して、D.Kのイラストで、有川浩の解説付き。1つの作品が、こんな形でイラストが移り変わるのを見ていると、ラノベのイラストの変遷が見て取れますね。

【妖精作戦】【笹本祐一】【ソノラマ文庫】【創元推理文庫】【地球防衛】【超能力者】【忍者】【潜水母艦】【月基地】
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「美少女を嫌いなこれだけの理由」 遠藤浅蜊

2011-09-19 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「僕の知る全ての物語において、恋する美少女は、理不尽で、無敵だ」
 サポート・マネージャー、亜麻野雄介の言葉。

 「美少女」とは人間によく似た別の種族である。
 人間の可愛い女の子とよく似た容姿だが、人間と違って生まれてから死ぬまでその姿であり、老若男女の区別もちゃんとある。
 亜麻野雄介は民営化された、美少女管理団体のサポート・マネージャーとして地方配属された2名の美少女を担当することになったのだが……。

 ぶっ飛んだキャラ設定だけで最後まで突っ走った、いかにもライトノベル的な1冊。栗山千秋のイチオシというのも納得かな。「五郎八」と書いてイロハと読ませるけれど中身は「ゴロハチ」なおっとり美少女とか、サブリナだけれど実態は「サブ」さんな金髪ツインテールとか。
 年金もらっているような爺さんでも、筋肉フェチの40親父でも、見た目は美少女……という設定は、吾妻ひでおの『ふたりと5人』を先駆とするし、それ以外でも単発キャラで「見た目は美少女、でも老婆だったり男だったり」という話はあったけれど、それを種族としてしまったところは慧眼。これに第一属性、第二属性と、RPG的に個性付けしたのもわかりやすい。
 感想としては、役所の内輪争いはエグいなーといったところか。

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「アネかみ!」 橘ぱん

2011-09-18 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「恋する美少女は獲物しか見えないのよ」
 そして愛だなんだと取り繕っても、結局はエッチしたいの一言に集約されると、北方乙女。

 日本には八百万の神々がいた。
 いたけれど、今はもういない。
 でも神さま不在では世の中の汚れを浄化できず、穢魂が国中に蔓延して人々に災いをなすので、とりあえず多神教のギリシアから女神アルテミスを引っ張ってきて、彼女を責任者に神々の再降臨計画を実施中。
 ところが神々を降ろすのに使った、15歳の美少女アイドル・日野照美の水着写真集から1柱の女神が生まれてしまい……。

 主人公が性格はまともでも人相が悪くて周囲に不良扱いをされているというのも最近に多いパターンだし、八百万の神々が姿を消してしまったからなんとかしよう!……という基本設定までは『神のまにまに!』と同じなのだけれど、こちらは神さま捜しの物語ではなく、ヘンタイ神様ラブコメディに枠に収めてしまったところが特徴。「居候の女神と実姉が俺のパンツを取り合い修羅場ってるんだが」……って。
 もうちょっと最初にお姉さんの品行方正な優等生ぶりを見たかったかな。読者的にはいきなり猫の皮が脱ぎ捨てられているので、ギャップ萌え半減。

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