「蘇りの魔王３」 丘野優

　無事に予選突破したルルとイリスに、いつの間にか居着いてしまったキキョウ。
　本戦も順調に勝ち進む３人だったが、その陰で出場した冒険者たちが行方不明になる事件が続発していた……。

　闘技大会はもうちょっと続くんじゃよ。
　聖女のうさんくささ大爆発。分かる人は勘づくけれど証拠は残らず、そうでない人はただ神聖視してあがめるばかり。

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「人狼への転生、魔王の副官２」 漂月

「魔王軍どう？　楽しい？　いっぱい殺してる？」
　久々に故郷に帰ったヴァイトに、おねえちゃんがあれこれ聞いてくる。

　ヴァイトが攻略を指揮する南方戦線は占領地域の宥和政策も順調で、少しずつ共存共栄への道を歩み出していた。
　しかし力押しで進めていた北方では、勇者を投入した人間側の反攻作戦で、軍団長レベルにも死傷者が発生し始めていた……。

　自己評価低い系主人公の異世界転生譚。
　いろいろ横道それたり、大事件が連発しているようで、気がつけばサクサク話が進んでいるのは場面転換が巧いんだろうなと思いました。
　なろうには週に何回も更新する連載作品は珍しくありませんけれど、面白いまま毎回きちんと話が進む作品は珍しいのです。なんとなく日常会話とか食事シーンだけで１回終わり、それはそれで面白いのだけれど、延々と繰り返されると飽きてしまうし、話は進まないまま尻切れとんぼに陥ったりします。
　この作品、たわいのない会話をしていたり、横道にそれているようなことをしていても、ちゃんと物語が進行しているんです。
　このあたりのさじ加減が巧くて飽きさせないんです。

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「銀河連合日本 Ｉ 」 松本保羽

「やりもせず失敗するよりも、やって失敗する方がよっぽどいい。なぜなら後に何かを残せるからだ」

　地球圏に急速に接近した謎の巨大物体は、その形状からギガヘキサと呼ばれるようになった。
　異星人が乗り込んでいるのかいないのか、不明のまま地球人との接触も拒み、小型探査機らしきものを世界各地へ放っていたギガヘキサだったが、１人の日本人との接触を機に日本上空へと移動を開始した。
「まず、知らない人の家に訪問するときは、ピンポン鳴らして『はじめまして、私はどこそこから来た何某です。お話を聞いていただけませんか？』からだろうが！　お前の星はそんな礼儀もないのか!!」
　つい勢いで怒鳴ってしまった柏木真人だったが、まさか自分のそんな行為で巨大宇宙船が動き出すとはあまり信じたくはなかったのである……。

　マンガやアニメが「こどものもの」ではなく、普通の趣味の１つとして国内外に認識されるようになった時代が生み出した、ファーストコンタクトもので、政府がちゃんと前政権の反省を踏まえているところがポイント。
　データは抱え込まず公開しよう、法律の根拠のない組織を乱立させて機能不全に陥らせないようにしよう……って、昔は政権保守党が一方的に悪役や黒幕を担当する話が目立った気がするのですが、ここ最近は保守派も完璧じゃないけれど、国益を損なうことばかりしていた前政権よりはマシで希望が持てるという論調が増えてきました。
　けっこうテンポ良く、緩急つけて話が進んでいくのだけれど、ウェブ連載時のものをブラッシュアップしてるそうで、そのせいかな……とウェブ版に手をつけて、そのまま一気に完結まで読了。面白かったけれど、繁忙期に１週間潰れました。悔いは無いけど。

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「おっさんがびじょ。（４）」 山田まる

「私たち、その遊びのために今命賭けてる」

　セントラリアの街をモンスターが襲ったのは、黒竜王の意志によるものだったらしい。
　聖女から竜退治を依頼された２人だったが、彼らは黒竜王の神官エレニというエルフから気になる話も聞いていた。
　ドラゴンたちが街を滅ぼそうとするのは、世界のためだというのだ……。

　ゲームの世界に巻きこまれたあんちゃんと（びじょの）おっさんが、元の世界に戻るため、やりたいように暴れ回る話。
　この「やりたいように」「俺たちはわるもの」という開き直りが重要。所詮はただのプレイヤー。世界の全てを同時に救えはしないし、なにもかもお見通しという賢者でもない。なにが本当に正しいことなのか、やらなくてはいけないことか、なんてことも判断できないのだ。
　だからこそ、難しいことは考えず、そのとき自分たちがやりたいと思ったことをやるしかなかろうという、わるもの宣言なのだ。

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「邪神アベレージ２」 北瀬野ゆなき

「大変だからといって人任せにすると状況が悪化して更に大変なことになってしまう恐れもある」
　邪神アンリの反省。

　なし崩しに邪神になってしまったアンリの前に、二柱の神々が出現した。光神ソフィアと闇神アンバールである。
　光神と闇神は世界の管理権限、権能をアンリも分担しろと迫るのだが……。

　世界を支配する三柱の神がダンジョンで繰り広げる代理戦争……で、ウェブどおりにすっきり２巻完結。こういうスラップスティックはノリとテンポが命なので、勢いを巧く活かしての大団円は職人芸。人に勧めたものの、だらだらと終わらず続いていくうちに中だるみして……という作品も多い中、楽しく最後まで読めて満足。

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「ワールド・ティーチャー２」 ネコ光一

　ドリアヌス卿との縁を切ったシリウスは生まれ育った屋敷を出ると、エミリアとレウスを連れて魔法学校のあるエリュシオンへと旅立った。３人とも魔法でも剣でも十分に独り立ちできる程度の腕はあるが、なにぶんにも若すぎる。魔法学校の生徒として、もう少し年を重ねるまでほとぼりを冷まそうというのだ。
　しかし、特定の魔法に適正を持たない無色とバカにされながら、シリウスの戦闘力がずば抜けているのは誰もが認めざるを得なくなってくる……。

　最近、主人公の自己評価が低すぎる話ばかり読んでいたので、こういう自分を適正に評価できる主人公はそれだけで１ランク評価がアップします。あまり鼻持ちならない程度というあたりが重要です。
　ただ、どうしても年齢の割にしゃべり方がおっさん臭いのが気になります。仕方が無いのだけれど。
　今回はリースを争奪戦でクラス移動させるところまで。

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「異世界料理道（４）」 ＥＤＡ

　自分自身が森辺の民にギバ肉の処理法や調理法など革新的なアイデアを取り込んでおきながら、アスタはいつの間にか森辺の民は変わってはいけないと思い込んでいた。たとえ飢えて死人が出ようとも、清貧なまま森の中で今まで通り生きていけばいいとでもいうように。
　そんな考えを根底からひっくり返したのは、ふらりと森へやってきたカミュア＝ヨシュ。この胡散臭い怪しい男は、ギバ肉の料理がこんなに美味しいなら街に店を出せば良いじゃないかと提案する。森の民が街に出て、現金を稼いで少しくらい豊かになって何が問題なんだと。

　カミュア＝ヨシュのうさんくささに目をやりがちですが、閉鎖的な社会に革新的な考え方を持ち込んだはずのアスタが、いつの間にか保守的な思考に固まっていたというところが今回のポイント。
　とはいえ、街の人々に怖れられてもいる森の民が、嫌われているギバ肉で商売しようというのですから一筋縄ではいかず、ここからアスタの新たな七難八苦が始まります。

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「幼女戦記５」 カルロ・ゼン

「私は、必要とあらば悪魔とでも手を結ぼう。しかし、悪魔と悪魔が殴り合ってくれるほうが嬉しいと本音で語ることの何がいけないのかね？」
　連合王国チャーブル首相に衒いはなし。

　ＴＶアニメ化も決まってめでたい５冊目。
　なにがめでたいかというと、まがりなりにもウェブでは連載終了していて、アニメ化もされたなら、書籍化が途中ストップすることはないよね。

　帝国軍の戦況は芳しくない。戦力不足をなんとかしなくてはいけないけれど、なんとかするためには戦力がいるという袋小路に落ち込んでいる。
　あと２ヶ月で冬期になって積極的な作戦はできなくなるが、それまでに積極的な攻勢に出るか、越冬を見通した戦線再構築をするかで軍参謀本部は割れていた。
　そこで貧乏くじを引かされたのが、デグレチャフ魔導中佐のサラマンダー戦闘団だった……。

　みんなが忘れていることだけれど、デグレチャフ中佐は幼女なのだ。みんな忘れているみたいで、本人がしばしばツッコミいれるのだけれど、ただの善良な平和主義者の幼女なのだ。
　そしてメアリー・スーはその名を体現すべく、着々と成長していきます。とりあえず今のところは、毎回主人公に因縁つけて挑んではあっさり返り討ちにされる役回りですが。

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「フェアリーテイル・クロニクル９」 埴輪星人

「まあ、錬金術ってのは、端から見たら怪しいもんや」
　わら人形を作りながら、宏はいう。それを錬金術といっていいのか、疑問ではある。

　フォーレ大闘技場で武闘大会が始まった。
　もちろん自分たちは職人だからと宏たちも参加するつもりはなかったが、宏がふいに「そこそこの腕の無名の選手が、装備の力で優勝したらおもろない？」などと言い出した……。

　フォーレ編の後編。本人たちが自覚しているかどうかはともかく、やっていることが神々の戯れです。
　気がつけば、途中１冊か２冊抜けている気がします。

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「教えて！ 誰にでもわかる異世界生活術２」 藤正治

「ダメなのです！　返さないのです!!　貰ったからにはあたしのものなのです！」

　賞金稼ぎから冒険者へと転職したヨシタツは、看破スキルによって索敵はできるが、戦うにはまだ技量不足なため、新米冒険者のクリスとフィーとパーティーを組んでいる。はっきり言って稼ぎは落ちたが、後ろめたさがなくなっただけでも気分が良い。
　そんなヨシタツたちが森の奥で見つけたのは、巨大な鎧蟻の巣だった……。

　鎧蟻の群との攻防戦、壮絶な戦いはやがて前代未聞の強力な２つのスキルがぶつかり合うクライマックスへと流れ込む……と、異世界に紛れ込んだ現代人のファンタジー冒険譚としては王道。規格はずれのスキルを持っているけれど、人づきあいが苦手で不器用な主人公と、彼に好意をよせて陰ひなたに支える冒険者や宿の未亡人やその娘たち。そんな中で主人公は冒険者としても人間としても成長していき、気になるのは加齢臭くらい。
　読者が安心して話を読めるくらいにはチートだけれど、話がつまらなくならない程度には弱くて、それでもやらなくてはいけないからと頑張る姿を応援したくなるのです。物語は常に波乱万象。
　でも、今回の本当の主役は、チビで生意気な名もないギルドの受付嬢だったと思います。

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「もしかして彼女はレベル97」 汀こるもの

「今どきの若いのはルールを守るために躍起になっとるが、本当に大事なのは規則よりも建前じゃぞ」
　妖物も人間も同じだと史郎坊。

　事故死した元警察官が助六と史郎坊の都合で天狗として新たな生を得たというか物の怪になったというかしたけれど、実は鞍馬の天狗と名乗りつつ、いまだ雀は鞍馬に顔を出してはいなかった。そこで「４年前にここの天狗になりました」と間の抜けた挨拶に行くはずが、いつの間にか日本全国12万5500いるという天狗のトップ100が彼を待ち構えていた……。

　テレビで有名な陰陽師との対決や学習塾の怪異もあり、市子も史郎坊も、そして一般人の筈の芹香や楓もわいわい飛び回っているのだけれど、今回のメインは雀かな。雀の天狗狩りとか過去話も含めて話の軸に雀がいます。「なんで800年前に生まれてこなかった！」と義経に八つ当たりされてますが。　
　タイトルが99、98ときて97。毎回レベルが下がってるよ……と思ったけれど、そういえば能力のピークを過ぎて国家の守護を引退したんでしたっけ。でもまだ気分次第で地震を起こしたりしてるので、最盛期はいかほどばかりか……そしてそれでも悲劇をくい止めきれなかったというのも無情な話です。

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「プリント・ブレイン」 芝村裕吏

「人生のヒントを教えてあげる。なりたい大人にはなれないものよ。たいていは自分が嫌いな大人になっていることに気づいて、ある日愕然とするの」
　桜木このかはそう楠正親に告げ、失敗に備えておくのも手だと語った。

　事故で植物状態になった正親は、瞬きひとつできないまま病院のベッドの上で何年も過ごし、気がつけば19歳。生きるのにも飽きた少年の心に、ある日接触してくるものがあった。医療実験として接続された自意識を持つ生命維持装置・全規模試作機（プリント・ブレイン）だ。
　正親によって「ぶんた」と名付けられたプリント・ブレインは、自分がロボットかアンドロイドなのかと訊かれると、「当方はほぼ人間である」と怒る。とはいえ実態は、布地に特殊印刷された人工知能。ぶんたは自分を作り出し、正親と接続したものを「敵」と呼び、自分と自分をコピーした同類を滅ぼすのに協力して欲しいと言い出した……。

　『ど根性ガエル』『カエアンの聖衣』『キルラキル』　に続く「服に着られる」物語の系譜で、かなりサイバーパンク。多少、『ピーナッツ』のライナスの毛布っぽいところはあります。
　なにかあるとすぐに「攻撃を受けている！」と騒ぎ出すぶんた。箱娘に続いてプリント・ブレイン。人の形をしていないヒロインをかわいく描くのが巧いなあと思いました。

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「無職転生～異世界行ったら本気だす（９）」 理不尽な孫の手

「踊らされ、笑われても、得られるものはある」

　ある日突然、魔法大学に魔王バーディガーディがやってきた。魔界大帝キシリカにルーデウスの話を聞き、そんなに面白い相手なら戦ってみたいというのだ。
　かくして校舎の外に出てきたルーデウスの前にはバタバタとなぎ倒された獣人たちの山と、高笑いする魔王の姿があった。果たしてルーデウスは不死身の魔王相手に生き残る事ができるのか……。

　などというエピソードというか伏線を折り込みながら、おかたいクリフがイチャラブ生活に陥る顛末とか、地球人サイレントの登場とか、ルークが意外にも問題については親身になって相談してくれたりとか、あれこれ盛りだくさんのエピソードが怒濤のように流れていきますが、中心は幼馴染みとの再会であり、機能不全の解消なんです。
　ルーデウスくんもイケメンに成長しましたね。前巻の帯に「魔法大学編開始!!」ってあったのに、もう「魔法大学編完結!!」って、はえーな、おい。でも、勃っちゃったから完結ってのは正しいよね。
　魔王バーディガーディ様は、ポケモンのカイリキーなイメージで読んでいたので、案外普通のおっさんでした。

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「二度目の人生を異世界で８」 まいん

「足りないくらいならやりすぎくらいの方がマシだと思います」
　世界が終わってしまったかのような惨状にビビる竜騎士リアリスだが、ドラ君はきちんとできていなくて後でレンヤに怒られるよりも良いという。

　魔王の出現に合わせて、人族やエルフ、竜人、獣人の間から勇者が出現して立ち向かうのがお約束だが、あくまで中心となるのは人族の勇者であり、その他種族の勇者は人の勇者に従う者に過ぎないと彼らは言い張る。
　しかし、最初の人族の勇者はあまりにも人間のクズであり、それを斬り刻んで混ぜ込んで型にはめたかのように再生産された新しい勇者は、むちゃくちゃ強いし、美少年だし、かわいい顔の割りに股間は凶悪だけれど、頭の中身は子供なみで、作戦指揮とか味方の鼓舞とかできるタイプじゃない。
　そういう場合は後見人が補佐しなくてはならないのだけれど、そうなると自然とレンヤが勇者のパーティーに同行して指揮することになり、そういうのは面倒くさいんだよなあとレンヤは思う……。

　領地開発も順調で、政治的必然性から今回は肌色成分たっぷり多めの獣人王国訪問。男はみんな脳筋で、女は腹黒。力こそ正義と言い張っているけれど、戦えば女の方が強いんじゃないかという怖ろしい国です。その居城はゴーメンガーストとウィンチェスター・ミステリー・ハウスを足したような設定というあたりが最大の山場。ＲＰＧにしたら絶対ランダムマップですよ、これ。
　収録短編はクヌギ伯爵の城に勤めるメイドさんたちの日常生活でした。

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「THE NEW GATE〈06〉」 風波しのぎ

　竜皇国キルモントを目指していたシンに、ヴィルヘルムから助けを求める手紙が届いた。ラシアが刺されてミリーが掠われたというのだ。
　教会内過激派に生け贄として攫われた少女を取り戻すべく、城塞都市ジグルスの教会へと向かう。かつての仲間、世界最強の冒険者仲間たちに招集をかけながら……。

　暗躍する過激派グループを殲滅して少女を奪回すべく敵の拠点に向かうけれど、その拠点ももともと自分たちのホームの１つで、500年ほど留守にしている間に勝手に使われていただけ。敵が使っている凄い武器も自分たちが昔作ったもので、裏目に出れば「かつての味方が敵に！」という大ピンチだけれど、まだまだ横綱相撲です。
　この物語としてのピンチを余力を持たせつつ乗り切りながら、緊迫感を残しているところが巧さです。

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