付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「黒猫曰わく、メイドは微笑む」 三輪山和

2010-05-31 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「……メイド」
「なんでしょう、ご主人」

 メインキャラ2人が役柄で呼ばれ合うだけで名前が出てこないあたり、いかにも幻狼ファンタジアノベルス「学生大賞」入選作。そういや、狩猟者もか。2ch文化の産物というのでしょうか。

 ありふれた没個性の住宅が建ち並ぶ一角にたたずむ広大な欧風邸宅。
 そこに住んでいるのは、銀髪の万能メイドとその主である黒猫だった……。

 やはりメイドも執事も万能でなくてはいけないなーと頷きながら読みました。なんでもできるし力持ちだけれど、つかみ所のないメイドさんは、いつもけだるい感じの黒猫と良い主従関係ですね。樹齢百年の大木より太い神経の持ち主っていいな。ストーリー的には小品程度のものですけれど。

【黒猫曰わく、メイドは微笑む】【CとDの螺旋】【三輪山和】【睦月ムンク】【吸血鬼】【連続猟奇殺人】【戦うメイドさん】
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「ミイラにダンスを踊らせて」 トマス・ホーヴィング

2010-05-30 | 伝記・ノンフィクション
 名古屋駅前にジェイアール名古屋タカシマヤができたとき、そこに入った三省堂書店は名古屋地区最大と言われていました。こういう大規模書店は完成した当初はとにかく取次に勧められるまま適当に本を並べているだけのような気がして(京都とか他の大規模書店で懲りた)しばらく足を運ばなかったのですが、ふと立ち寄って美術書コーナーでびっくり。美麗な大型本をさしおいて平棚を占拠していたのは波津彬子の『雨柳堂夢咄』と細野不二彦の『ギャラリーフェイク』だったのです……。
 その『ギャラリーフェイク』の主人公フジタがキュレーター(学芸員)を務めていたのがメトロポリタン美術館(メット)。そして、そのメットの館長だったホーヴィングが堅苦しくて陰鬱かつ停滞していたメットを再生し、追い出されるまでの身も蓋もない美術館運営の内幕を赤裸々に描いたのが本書。

『メットの館長は、優れた鑑識力と審美眼の持ち主で、十分に経験を積んだ学識者で、粘り強い外交官で、寄付を募ることに長け、経営能力があり、かつ調停や懐柔をこなせても、それだけでは足りない』
 美術品は集めるのにも維持するのにも金がかかる。そして予算と倉庫のスペースは有限。館長は海賊だったりギャングだったりアナーキストだったりもしなくてはならないのです。

【ミイラにダンスを踊らせて】【メトロポリタン美術館の内幕】【トマス・ホーヴィング】【理事会】
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「とらドラ・スピンオフ2!~虎、肥ゆる秋」 竹宮ゆゆこ

2010-05-29 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「なにが起こるかなんて、誰にもわからないよ。でもね、この先の未来でどんなにひどいことになっても、(今の『楽しい』は)なくなりはしないんだよ」
 いろいろあって吹っ切れたような、美大生の濱田瀬奈の言葉。

 食欲の秋を素直に満喫してしまった虎は……太った。

 「スピンオフ!」の1は本当にスピンオフ、派生作品でしたが、こちらはどちらかというと番外編の短編集です。悪いとは言わないし、どちらかというと竜児の友人その1の春田浩次が女性と理想の出会いをする話やら大河のダイエット話とか、本編で活躍するキャラのサイドストーリーの方が読みたいというのが正直なところです。でも、「スピンオフ」じゃねーだろー!?とは思いました。

【とらドラ・スピンオフ2!】【虎、肥ゆる秋】【竹宮ゆゆこ】【ヤス】【ラブコメ】【目つきの悪い主人公】【不思議ダイエット法】【人工呼吸】【芸術バカ】
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「獄門島」 横溝正史

2010-05-28 | ミステリー・推理小説
 太平洋戦争が終わったが、人々の生活が以前と同じに戻ることはない。
 獄門島は瀬戸内海に浮ぶ小島で、南北朝時代には海賊が基地にしていたという。
 その島に、軍に供出させられていた寺の鐘が戻ってくるという。そして、時を同じくして島に降り立ったのは、ニューギニアの戦場から引き揚げてきた名探偵・金田一耕助。彼は戦友だった鬼頭千万太の遺言により、連続殺人を食い止めようとするのだが……。
「おれがかえってやらないと、三人の妹たちが殺される……代わりに獄門島へ行ってくれ」

 ミステリーには「見立て殺人」という、誰でも知っている童謡などの内容に従って人が殺されていくテーマがあります。マザー・グースの童謡のままに殺人がおこなわれるヴァン・ダインの『僧正殺人事件』やアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』が有名ですが、横溝正史はその「見立て殺人」に芭蕉と其角の俳句で挑みました。
 古き因習と新しい時代の風がぶつかり合う戦後の混乱期に、血縁関係が混沌としている田舎の旧家で繰り広げられる連続殺人という、横溝正史の典型的な作品であり代表作。あいかわらず金田一耕助は為すすべもなく雪枝・月代・花子の三姉妹が殺されてしまい、しかも犯人は……というやるせない結末でしたが、後味は『八墓村』ほど悪くなかったです(八墓村が悪すぎただけかも)。

 昔、東海地方の某大学のゲームサークルで古今東西のヒーローが戦うというゲームが製作されたとき、ジョーカーとなったのが金田一耕助だったそうです。金田一耕助カードが場にオープンされたら即座に連続殺人事件が発生し、1枚、また1枚とヒーローカードが問答無用で捨札となっていくんだそうです。
「ああっ、ぼくがもっと早く気がついていればっ!!」
 そんな特殊能力は他の名探偵ではしっくりこないのに、金田一耕助だというとなぜかみんな納得してしまうのです。金田一耕助が来たなら仕方がないなあと。

【獄門島】【横溝正史】【見立て殺人】【海賊】【むざんやな甲の下のきりぎりす】【鶯の身をさかさまに初音かな】【一家に遊女も寝たり萩と月】
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「ほうかご百物語5」 峰守ひろかず

2010-05-27 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「科学は現実を見据えて分析するためのテクニック兼ツールよ。視界を狭める枠じゃないの」
 ……とホームズを引用し始める、不要な知識と無駄な人脈でお馴染みの経島御崎。

 多々羅木家の蔵で何かが起こってる?
 やっとのことで蔵から逃げ出した付喪神を回収した白塚真一たちだったが、それは大事件の序章に過ぎなかった……。

 蛇女房の来訪から狸退治まであっという間の1冊で、いろいろあったなあと思う反面、きちんと連作にもなっているなあと納得もしたり。
 心の声がすぐに口から出てしまう主人公ですが、そうでなくてもいつも思ったままを口にしているので、たいした問題ではありません。正気でうわごとを言う男です。でも、生徒会長って、良い人だよね。

【ほうかご百物語】【峰守ひろかず】【京極しん】【新年度】【花見】【付喪神】【ぬっぺらぼう】【蛇女房】【座敷わらし】【悪魔ヶ風】【塵塚怪王】【狸】【雪女】【五行相克】【衆愚政治】【太歳】
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「博物戦艦アンヴェイル」 小川一水

2010-05-26 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 タイトルからして野尻抱介の「銀河博物誌」みたいな雰囲気かと思ったら違いました。あれほど博物学的なマニアックさはありませんでした。ちょっと残念。児童向けの海洋冒険ファンタジーの要素を丸ごと押し込めたようです。

 諸島の戦いは強大な島国ラングラフの勝利に終わったが、終戦により街には食を失った帰還兵があふれていた。騎士を目指す少女ティセルも資格十分ながら空席が無くこのままでは浪人確実の身の上。
 そんなティセルに思いもよらぬ話が舞い込んできた。ラングルフ王が海の果てにあるという「古の驚異」を探るために博物戦鑑を送り出すというのだが、その艦に乗り込む少年の護衛を務めるなら、騎士の地位と十分な俸禄を支払おうというのである……。

 博物戦艦というからどんなものかと思ったら、単なる調査船でしたね。博物調査もやるけれど挑まれれば戦闘もするから博物戦艦ってところでしょうか。戦うビーグル号というよりUSSエンタープライズ号の方がイメージに近いのですが、艦長が頼りない若造なのでぐだぐだ感が漂います。
 今回はまだまだ登場人物が顔見せしつつ立ち位置を決めたというあたりなので、次巻以後に期待です。

【博物戦艦アンヴェイル】【小川一水】【藤城陽】【大型帆船】【海洋冒険】【奇矯王】【メギオス驚異】【片手剣徒歩騎士子】
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「キラシャンドラ」 アン・マキャフリー

2010-05-25 | 宇宙・スペースオペラ
 掘り出した白クリスタルの1セットを惑星オプセリアへ送り届け設置するという任務を引き受けたキラシャンドラだったが、惑星オプセリアで何者かによって襲撃を受け誘拐されてしまう……。

 キラシャンドラが惑星政府の陰謀と反政府活動に巻き込まれる、南国漫遊スパイ編。あいかわらず権威風吹かせて呑んで食って大騒ぎしていますが、前作よりは丸くなったというか、つき合いやすくなった気がします。
 『クリスタル・シンガー』の2作目ですが、3作目『クリスタル・ライン』はいまだ未訳。80年代から90年代にかけて、手当たり次第に翻訳されていたアン・マキャフリイ(マキャフリー)ですが、21世紀になると一気にペースダウン。『恐竜惑星』もは2冊で終わりで、後日談の『The Planet Pirates』3部作は手つかず。『The Unicorn Girl』も『Power/Petaybee』も『Acorna』も『DOONA』もシリーズ未訳。
 とはいえ、既に主だった人気作はあらかた訳されてしまったのかもしれません。「九星系連盟」シリーズも「キャテン」3部作も「ペガサス」3部作もシリーズ完結してますし、「パーンの竜騎士」や「歌う船」シリーズもほとんど訳されてます。ただ、油断できないのは歳をとるにつれてマキャフリーはどんどん共作するようになっているので、刊行ペースがちっとも落ちないのですよね。
 でも、「クリスタル・シンガー」と「パーンの竜騎士」だけは邦訳で全部読みたいと思います。出ると良いなあ……。

【キラシャンドラ】【アン・マキャフリイ】【クリスタル】【感情操作】【潜入調査員】【司法制度】【島流し】
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「ほうかご百物語2」 峰守ひろかず

2010-05-24 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「はいはいこちら経島御崎。ただいま電話に出たくありません。御用の方は絹を裂くような悲鳴の後に三十秒以内でメッセージをどうぞ。きゃあああああああっ! 窓に! 窓に!」
 ……クトゥルー神話でお馴染みの。

 分裂騒ぎで弱小となってしまった美術部は、今では生徒会の依頼で校内に出没する怪異の正体解明と解決をする役回りに。まあ、校内限定の妖怪Gメンといったところか。
 とはいえ、あくまで美術部ですから、スケッチに励んではいるのです……。

 犬神使いの滝沢さん登場の回。
 高校生の長男からのお奨めですが、置いてあった本を見て、妻が「珍しいもの読んでるねえ」と。こういう表紙の本を手に取ることはまずないので珍しがられました。高校生の部活+妖怪退治+凡庸な主人公に異能の美少女GFというパターンはよくある組み合わせですし、表紙イラストも好みではありませんし(ごめんなさい)、文章だってそんなにむちゃくちゃ巧いというわけでもない。でも、すべての要素がきっちり組み合わさって、それぞれの素材の持ち味以上の仕上がりになっているので、テンポ重視で後味さわやか、読みやすく面白いのです。主人公は客観的には賢くはないし非力で女好きだけれど、とにかく一途で真面目で、偶然とか他人任せではなく、きちんと事件の解決に貢献しているというところがポイント高し。
 本筋に関係ない部分をスパッと斬り捨てる思い切りの良さもあるので、あとは色気か猟奇な方面か、どこかでねちっこいと言われるくらい描写にこだわると緩急がついて、ピンポイントで私好みになります。

【ほうかご百物語】【峰守ひろかず】【京極しん】【芸術コンクール】【犬神使い】【河童】【天狗】【大猿】【坊主】【温水プール】【秋祭り】
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「ダーティペアの大帝国」 高千穂遥

2010-05-23 | その他SF(スコシフシギとかも)
 『ダーティペアの大征服』の完結編。でも、システム・メンテナンスが入って、コナン・ザ・グレートだかグイン・サーガからポケモンバトルになっちゃいました……。

 ファンタジーゲーム世界で一大勢力を築き上げたユリとケイ。しかし、ルシファーのシステム介入による新勢力の台頭ですべてがご破算になり、再び流浪の旅に。
 今度こそ敵の親玉をぶちのめさんと挑むはポケモンバトル……?

 内容的には1冊に詰め込めた気がしないでもないけれど、ゲーム世界で遊びすぎたという感じです。『大帝国』の方で、いったん表のイベントも本当の任務も無事にクリアできた!……という形にして続けていれば気にならなかったかもしれないけれど、本当にゲーム世界を堪能しすぎて1巻まるまる国盗り物語をやってますから。
 面白いから問題ないけれど。

【ダーティペアの大帝国】【高千穂遥】【安彦良和】【ナノマシン】【電話】
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「神のまにまに!」 山口幸三郎

2010-05-22 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「終わり良ければすべてよし、過程など知らぬ。時には平気で嘘を吐くのが人永よな?」
 語り部たる品部人永を称えるアマテラス。

 ある日突然、八百万の神々が雲隠れしてしまった。この事態に対処するため政府は諮問機関を設置し、唯一雲隠れしていないヘッポコ神に愛されし男をその職員としてスカウトすべく動き出した……。

 高校生の息子が置いていった、シリーズものの1冊目シリーズ。今回は珍しく成人男性、社会人が主役です。頭上に小さなヘッポコ女神を乗せた女好きの青年が、神さまを捜して回る奮闘記。語りは騙りに通じるという、いかがわしさがステキ。
 ただ、直属上司の高峯小町に本気さ・真剣さが見えないのが残念。というか、書類の処理は早いけれど仕事は現場の部下に押しつけっ放しというのは典型的な“タチの悪いお役人”なので、あまり魅力的にならないのですね。単に自分が楽したくて外郭団体を1つでっち上げただけじゃないですか? それをいかにも当然と受け入れてしまう主人公の性が悲しすぎます。

【神のまにまに!】【カグツチ様の神芝居】【山口幸三郎】【天草帳】【蝉】【河童】【山神】
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「漆黒の難破船~ミニスカ宇宙海賊4」 笹本祐一

2010-05-21 | 宇宙海賊・宇宙商人
「王族の言葉など、素直に聞くものではありませんよ」
 セレニティ第7皇女グリューエルの言葉。

 ヨット部員たちが訓練を続けている<オデットII世号>に、120年前の独立戦争で沈んだと思われていた<黒鳥号>から救難メッセージが届く。<黒鳥号>は「最初の7隻」と呼ばれる伝説の海賊船の1隻であり、<弁天丸>や<オデットII世号>の僚艦だった艦だった……。

 厳密にいうと海賊船ではなく私掠船なんだけれど、まあ、ひと癖もふた癖もあるお嬢さま学校の女子高生たちが宇宙船を操って海賊稼業……の第4弾。女子高生たちが大活躍とはいえ、色っぽいシーンを期待するのは間違いだし、ボーイ・ミーツ・ガールがあるわけでもない。どちらかというとメカニック好きとして宇宙船の出航や航行・戦闘のシークエンスの緻密な描写にわくわくするのが正しい読み方の気がしますし、それだったら、船の図解的なものも欲しいなあと思うのです。

【ミニスカ宇宙海賊4】【漆黒の難破船】【笹本祐一】【松本規之】【女子高生】【赤色巨星アンタレス】【超新星爆弾】【税務職員】
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「舞面真面とお面の女」 野崎まど

2010-05-20 | ミステリー・推理小説
 ちょうどこれを読み始めたときに、BGVで『化物語』がかかっていたため、両者のイメージが混在してしまって引きずられてしまいました。脳内では主人公の声がありゃりゃ木さんのイメージになっちゃってます。いや、あんなにセリフが多い話ではありませんけれど。

「印象は大切な情報だよ? みんな印象で生きてる」

 興信所の調査員・三隅の言葉。

 恩義ある叔父に呼ばれて山中の邸宅に赴いた大学院生・舞面真面(まいつら・まとも)は、従妹の水面(みなも)、興信所の男らと共に1つの依頼を受ける。財閥を一代で興し、戦後の財閥解体の中で倒れた曾祖父・舞面被面が残した遺言の謎を解き明かして欲しいというのだ。
 蔵の中から発見された謎の立方体が、これまで意味の通らなかった遺言書の鍵となるのではないかというのだが、既に戦後ン十年。今さら何の意味があるのかと思いつつ調査を開始した真面の前に、不思議な仮面をかぶったセーラー服の少女が姿を現した……。

 テンションの低い普通の青年が、美貌の令嬢に育ってしまった従妹、蔵の掃除すら失敗してしまうヤル気だけはあるお手伝いさんの“熊さん”、はたまた古めかしい言葉を使う謎の仮面の少女(自称「中学生」)など周囲の女性陣に翻弄されながら、怪奇な事件の渦中に投げ込まれてしまうお話。
 とはいえ、終わってみるといちばんまともでいちばん大人しそうに見えた男がいちばんヤバげというあたりは『化物語』と同じのような気がします。中身はぜんぜん違うんですけどね。

【舞面真面とお面の女】【野崎まど】【ハイエナ】【パンダ】【妖怪譚】【っポイ!】【健康ランド】
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「蔵書まるごと消失事件」 イアン・サンソム

2010-05-19 | 本屋・図書館・愛書家
 新米司書としてアイルランドの片田舎に赴任してきた青年イスラエルは、到着早々図書館の閉鎖を告げられる。そして、代わりに移動図書館の仕事を与えられたが、車がオンボロなだけでなく、蔵書15000冊が1冊残らず消えていた……。
 またまた図書館が舞台のミステリです。以前からちょこちょこありましたが、本屋や古書店や図書館を舞台にした作品が目立ってきたような気がします。どのくらいあるか、今度数えてやろう……。

 しかし、この主人公も、図書館の申し子だの本の虫だのと言われながらも、「オッカムの剃刀」といわれても何のことかわからないなんて、今まで何の本を読んでいたのやらと思わないでもありません。結局、事件の謎を解くのには成功してませんし、ミステリとして読むより都会から田舎にやってきた人づきあいの下手な若者が、事なかれ主義の上司に責任だけ押しつけられ、田舎の頑なな人々に拒絶されつつ、街にとけ込もうとすることもなく、殴られ、鶏の糞にまみれ、迷子になりながら、右往左往する話……として読むべきものですね。
 だいたい主人公がこの街にきて、本人も周囲の人にも何ひとつ良かったことがなかったような気がします……。

【蔵書まるごと消失事件】【移動図書館貸出記録1】【イアン・サンソム】【タムドラム】【図書館司書】
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「これがC級グルメのありったけ」 小泉武夫

2010-05-18 | 食・料理
 安くて手近なのに、めちゃくちゃ美味い料理をC級グルメと定義して、醗酵学者がメロンパンからぶっかけご飯まで食べ物についてあれこれ書いたエッセイをまとめたもの。
 C級グルメといっても、きちんとしたA級なものから不味くて食えないものまで混じっているので、そこは厳密に追求しちゃいけないんでしょうね。でも、お茶漬けとか総菜パンとか、もっとC級な話を読みたかったかなという気はします。ネコマンマとか玉子かけごはんなんか、それだけで1冊の本になってますもの。

【これがC級グルメのありったけ】【小泉武夫】
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「星の舞台からみてる」 木本雅彦

2010-05-17 | VRMMO・ゲーム世界
 インターネットが普及・拡大し、誰もがweb上に秘書の仕事をこなす仮想人格(エージェント、バディ)を持つようになった時代。
 死亡広告から葬儀・埋葬の手配までおこなうHCC社の契約社員・香南は、担当する会員・野上が会社の創業メンバーでもあったことから、親会社から派遣されてきた辻河原と2人で野上の死亡手続を担当することになる。
 しかし、そこに死んだはずの野上からメールが届いたことから、2人は事実をはっきりさせるため、その発信履歴を追い始めるのだが……。

 死んだはずの男に振り回され、彼の過去を辿っていく……という構図は『機動警察パトレイバー 劇場版』での松井警部補と片岡刑事の捜査行とかを彷彿とさせました。あるいは『遠い町・ウクバール』かな。でも、平行して仮想空間から宇宙空間まで巻き込む陰謀やら計画が紆余曲折して、最後はちゃんとボーイ・ミーツ・ガールかつSFの王道を進むわけで、なかなかのアタリ。

「信念を持て。決断しろ。決断したらそれを貫け。しかしいつでも手のひらを返す準備をしておけ。信念を持って、手のひらを返せ」
 ダビデからのメッセージ。「即断即決即実行」「臨機応変」ってことです。

 インターネットが日常に入り込んでくると、web上でしか知らない知人というのも出てくるわけで、本当にその人は存在しているのか、それとも誰かが名を騙っているだけなのか、あるいは何かのプログラムが応答しているだけなのか、そんなことを思わないでもありません。(10.05/19改稿)

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