「私は好きにした。君らも好きにしろ」
牧悟郎のダイイング・メッセージ。
そしてクライマックスで好きにする人々……。
泉内閣総理大臣補佐官は、里見祐介内閣総理大臣臨時代理に対して覇道ではなく王道をと示唆し、赤坂秀樹内閣官房長官代理が「そろそろ好きになさったらどうですか」と背中を押します。そこであっさり「どこに判を押したら良いの?」と応える総理。
要所要所でみんながハンコを押してる映画です。
東京湾で漂流している無人のプレジャーボートが発見される。
その直後、海中から大量の水蒸気が噴出、東京湾アクアラインの海底トンネルにて崩落事故が発生。これを受けて閣僚と関連省庁関係者が招集され、緊急会議ではこの事象は自然現象と判断して対応していくのだが……。
新作ゴジラ映画で、当初は観に行く予定はなかったのだけれど、Twitterのタイムラインが「観てきて面白いんだけれどネタバレ怖くて何も言えない」モード一色になってきたので、公開3日目の昼間に夫婦で劇場へ。
あっという間の2時間。
『踊る大捜査線』は「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」という作品でしたけれど、こちらは「起きてるのは現場かもしれないが、決めるのは会議室だ!」という文民統制。それが民主主義日本。文書主義の手続き重視で進む怪獣対策で、真っ先に出てくるのは会議室に運び込まれるゼロックス複合機の群とマジックマーカー。規模が拡大するたびに参入してくるスタッフが増え、機材が追加されていきます。そしてアメリカ勢は軍人も科学者も鳴り物入りで乗り込んできて、危なくなるとスッと消えていきます。狡いぞ。
でも最後には「日本の力は現場にある」に戻るんです。
最大公約数的な感想は「エヴァみたい」だったけれど、映画について語りたいのにネタバレ怖くて結局「エヴァみたい」としか言えないのにも納得。「ガルパンはいいぞ」と同じですね。
お涙ちょうだいの家族ドラマも、臭すぎる恋愛ドラマも、霊能少女の愛の奇跡も、死んだ肉親と再会することも、欲に駆られた小悪党が確実に思われた作戦をダメにすることも、それを正義漢のジャーナリストがスタンドプレイで逆転することもなく、ありえない超兵器も登場せず、ただただ官公庁と自衛隊を中心に淡々と話が進みます。
だからテンプレのドラマしか人間ドラマと受け止められなかったり、超兵器が乱入する怪獣プロレスだけが観たい人などには愉しめない映画です。人間ドラマ部分は大仰にクローズアップされて音楽で盛り上げられはしないけれど、本当にさりげなくちりばめられています。ギャレス・ゴジラでは生き別れた家族との再会が繰り返されるテーマの1つだったけれど、シン・ゴジラでは作業の合間に家族にスマホで連絡を取ろうとする姿がちらりと映るくらい。でも、よく見ると全然つながってないし、それでも仕事ではそんなそぶりも見せてなかったりするんですよね。そういう細かい描写の積み重ねです。
大河内総理も「総理、ご決断を」「総理! 撃ちますか? 撃ちますよ!」「総理、よろしいですか!?」と何度もみんなに囲まれて即断で苦しい選択を迫られ、あらゆる視点の判断材料が必要とはいえ、脳溢血で死ぬかと心配してました。そういう中で(正解かどうかは別として)政治家として取捨選択していきます。
名のある役者だけで300人超、その上けっこう個性派俳優が登場するのだけれど、自分が1984ゴジラのときに感じた違和感はなくて自然で、官僚のしゃべり方が早口すぎるという批判があっても「若手の役人って、みんなああいう話し方ですよ」という声があがり、カヨコ・アン・パタースンの演技が浮いてないかという指摘にも「バイリンガルな人ってああですよね」という感想も出てくるように、この「はじめてゴジラが出現した」世界観にすっぽりはまってました。良かった。片桐はいりも嶋田久作もピエール瀧も、みんなそのシーンに入り込んでました。
そしてテレビ東京は通常営業。(2016/07/31)
面白かったので、長男を連れて2回目。(2016/08/01)
これは劇場で観ておかねばなるまいと、どうでも良いよと言っていた次男と三男を連れて3回目。とりあえずネタバレとか広まる前に見せておいてやるのが親の務め。異論は認めない。(2016/08/05)
IMAX上映が終わるというので、一度くらい観ておくかと、家族3人でレイトショーへ。
最近の戦争映画ならあるかもしれないけど、無人攻撃機が主役側で大活躍する映画って、これが最初かな? あれ、アメリカが協力を申し入れてこなかったら、どうするつもりだったんだろう。なんにせよ物量の勝利。請求書が怖いなー。(2016/08/10)
さすがにもう劇場では観ないだろうと思っていたけれど、名古屋でも字幕版上映があるというので夫婦で大高イオンへ。これで5回目。
いろいろ聞き取れなかったところとか、誰がしゃべっているか分からなかった箇所を確認できて成果あり。地下鉄の駅中で不安そうな尾頭さんがかわいいとか、いつも矢口副長官の後ろにいる志村秘書官のさらに後ろにいつもいる強面のおっさんの名前が庭野だとか。
そういえば、アレは経口投与ではなく直腸内投与すべきだったという指摘もありますが、進化して水と空気で生きていけるゴジラには、そもそも肛門がない可能性もありますので、あれが正解かな。(2016/09/05)
今まで同じ映画を5回に通ったことはなかったけれど、今度は名古屋でも発声可能上映があるというので、TOHOシネマズ名古屋ベイシティへ6回目。観客の男女比は1:2か2:3か分からないけれど、ともかく女性多数。登場時の歓声からすると一番人気は尾頭さん、ついで安田くんと泉ちゃん。
いろいろ感想が言われているけれど、バランスが良い映画だなあとあらためて思いました。
とにかくエンタテイメント作品というのを大前提にしながら、無理を言うアメリカと助けに駆けつけるアメリカを同時に描き、お茶くみするおばちゃんの前にはゴミを集めるおじさんを映し、各省庁から一匹狼を集めてチームを作ったと言いながらしっかり出向元との連携をとっていて、淡々と任務をこなす自衛官がいれば不安におもう自衛官もいて……と、常にプラスとマイナス、善と悪、美と醜、表と裏を書き込んでいるので、観る人が好きに部分抜粋して好きに解釈できるんですね。(2016/09/15)
面倒な仕事が多くて、心がささくれ立ってきたので映画で癒やしを。
まだやってたIMAXでシン・ゴジラ。
行政は描いていても政治は描けてないとかいう声もあるけれど、なにからなにまで描写すれば良いというものじゃなく、取捨選択が重要なんですよ。この期に及んで法案成立でごねる野党勢力との駆け引きとか、うちの街に戦車は通さないと言い張る反戦政治家との折衝とか、そんなの見てもテンポが悪くなるだけで面白くなるわけじゃありません。そこは「泉ちゃんたち、たいへんだったんだろうな」と想像しとけばいいんです。
そういえば最後に放射能の半減期が短いことが判明したとき、泉総理補佐官は最初は訳が分からなそうに聞いていたけれど、内容を把握した途端に場を離れて誰かに電話してました。ああやってあちこちに恩を売ったりコネクション作ったりしながら調整してるんだろうね。
そして7回目にして尾頭ヒロミ課長補佐が課長代理になっている字幕を初めて確認。ほんとだー。気になってたけど、いつも見逃してたんだよね。(2016/10/27)
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