「答えは、必ずこの中にある」
なんか『毛沢東語録』命の楊警部補みたいになってしまった女子マネージャー・川島みなみ。
野球部のマネージャーになったみなみだったが、部の士気は最低。監督とエースのピッチャーは反目し、甲子園をめざすとか言い出せる雰囲気ではない。
そこでみなみはマネージャーとしての務めを果たすべく、マネージメントのテキストを読みふけるのだが……。
マネージャーの仕事はなんだろう? マネージャーというくらいだからマネジメントだろう。では、マネジメントってなんだろう? おや、ここに『マネジメント』とかいう本があるぞ……。
経営や会計に関するビジネス知識を女性を主人公にしてソフトに物語形式で紹介するというのは、たぶん三木義一の『税理士・春香の事件簿』が最初。それからすぐに山田真哉の『女子大生会計士の事件簿』が始まり現在に至るわけですが、P・F・ドラッカー生誕100年の年にビジネス書のダイヤモンド社が世に送り出したのは、
野球部の新人マネージャーがドラッカーを読んで甲子園をめざす青春小説……もはや対象読者が分かりません。
学部でドラッカーを読み込んだ人間は「第2章 みなみは野球部のマネジメントに取り組んだ」とか「第6章 みなみはイノベーションに取り組んだ」などの章題や「ドラッカーは全部読んでいる」というセリフに大笑いしましたけど、あまりにニッチ。大学1年生でこれから経営学の基本を学ぼうという人にお勧め(2年生だったらドラッカーを直接読みなさい)。
もともとはブログ連載で、アマゾンのトップ100やbk1の今日の売上ランキング5位に入っていたりしましたので(bk1の12/23売上では1位w)、注目された作品だったようです。文章は単文の連続がちょっと気になるかな。(2009.12/13)
発売開始後3ヶ月が経過しても、リアル書店のビジネス書コーナーでベスト5に入って平積みで売られているという不思議な売れ行き。すぐ隣にオリジナルの『マネジメント』を売っているんだから、そっちを買えよ!と思わないではありません。(2010.03/14)
已然として書店に面陳で山積みされているどころか、本家ドラッカーの『マネジメント』の帯に「『もし高校野球の…』の元ネタ!」みたいなアオリ文句が入るは、ビジネス誌の表紙を飾ってしまうとか(週刊ダイヤモンド2010年4月17日号)、もはや留まるところを知りません。何か間違っている気がしてなりませんが、『もし香港警察の警部補が毛沢東語録を読んだら』などという類似書が出回りそうで期待しちゃいます。『秘密指令オヨヨ』を装幀とタイトル変えて再版しませんか?(2010.04/28)
なんでも先日のテレビ番組で紹介されたらしく、3冊も仕入れて大丈夫か!?と思われていた地元書店も完売。駅前大型書店に至っては、平積みの面積が減らないどころか等身大ポップまで登場してしまいました。
確かにそれなりに面白いし、マネジメントの基本概念を分かりやすく伝えるという意味では良書ではありますが、ここまで売れるものではないと思います。(2010.06/23)
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