付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「信長の嫁、はじめました」 九條葉月

2024-12-19 | 戦国転生・歴史改変
「難しいことは明日考えればいい!」「明日になれば、見かねた誰かが助けてくれるかもしれない」
 帰蝶は師匠からそう教えられたし、帰蝶も光秀にそう言い含めた。

 巫国リーシェラルトで何百年か引きこもっていた銀髪赤目の魔女が、思い立って世界を渡って日本に帰ることにした。王様に追放とか言われちゃったし、なによりそろそろ味噌と醤油と米が恋しいのだ。この魔女、実は現代日本から異世界に転げ落ちてきたのが出自らしい。
 ところが人工精霊のプリニウスことプリちゃんをお供に転移してみたら、なにを間違ったか日本は日本でも戦国時代に来てしまった。しかも、そこで出会った男が言うには、その銀髪赤目の姿形は幼い頃に行方不明になった自分の娘に違いないという。男の名は斎藤道三、娘の名は帰蝶。ならば私は織田信長の嫁にならないといけないわねと、帰蝶の歴史オタの血が騒いだ……。

 帰蝶とプリちゃんのかけあいで進む戦国異聞。
 すべてにおいて大雑把でいい加減で、なにかあったら異世界で集めたアイテムや金銀財宝、チートな魔術でなんとかしちゃう帰蝶だけれど、最初の医療に関してだけはやけに堅実で、魔法やポーションに頼っていては何かあった時に医学が消えてしまうと回復魔法を使える者を探すのと同時に一般的な医学や薬学の基盤整備に励みます。ここ重要。これ以降、すべて無責任になるので。
 そしてまた帰蝶が濃姫と呼ばれそうな伏線が張られます。キャラが濃すぎると森可成に言われてます。濃ゆき姫かあ。

「ブドウのために攻め滅ぼされる武田とか前代未聞すぎるのでやめてもらえませんか?」
 プリちゃんが珍しく長文で帰蝶にツッコミを入れた。

【信長の嫁、はじめました】【九條葉月】【久賀フーナ】【アース・スターノベル】【異世界帰りの魔女が繰り広げる勘違いだらけの戦国ファンタジー】【真法】【肉食】【療養所】
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「戦国一の職人 天野宗助」 白龍斎

2024-10-25 | 戦国転生・歴史改変
「どんな時も笑顔じゃ! 心に余裕のある女は強いぞ! 一手二手先を読み軍師となれ!」
 気弱で姑小姑にいびられるお先を鏡の中の自分が叱咤した。

 老後のセカンドライフを楽しみに資格取得や物作りを趣味にしていたサラリーマン天野宗助は、甥っ子を助けてトラックに轢かれ死んだ。
 目を覚ませば若返った身体で見知らぬ森の中におり、近くの村人に助けられた。どうやら戦国時代らしいが、地名も領主名にも聞き覚えが無い。パラレルワールドらしい。やりそこなったセカンドライフを実現しようと、山奥の廃村に庵を作り、刀を打ったり細工物を拵えたりとし始めたのだが、それが領主の月ヶ原義晴の目にとまった。
 彼の打った刀の鍔では竜が泳ぎ、酒を呑んでは精霊を見る。そんな不思議なものをあつらえる宗介を、義晴は余所の国に行かぬよう見守り続けるのだが、やはり彼の作った品物は行く先々で不思議な事件を巻き起こすのだ……。

 パラレルワールドの戦国時代でひっそりと暮らしているのんびり職人と切れ者領主の物語……という売りをしているけれど、実質は宗介の作ったアイテムが巻き起こす寓話劇で、人ではなく物が中心。宗介の手になる品が辿り着いた先では不思議なことが起こり、善人には吉事があり、悪人には報いが与えられるというライトタッチの怪異譚。
 連載時にはエピソード毎に語られていたウィキペディア引用は巻末に纏めて掲載。

【戦国一の職人 天野宗助】【白龍斎】【すざく】【TOブックス】【戦国ファンタジー】【小説家になろう】【花簪】【刀剣】【清酒】【壺】【風鈴】【根付】【木像】【農具】
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「大日本帝国宇宙軍 (1)」 朝日カヲル

2024-10-23 | 戦国転生・歴史改変
 2032年ヒッグズ粒子加速器の実験中に事故が発生。開発室長であった芦原蒼龍は加速器のパージを実行した瞬間現出したタンホイザーゲートに呑み込まれ、時間を遡って1901年、高城家の嫡男として転生した。だが、その内部には蒼龍とはもう一つの意識、天使リリエルが同居していた。目前に迫ったアルマゲドンに備えて加速器の偵察をしていて巻き込まれたのだ。
 来るアルマゲドンは悪魔有利だとリリエルはいう。二度の大戦に代表されるように、20世紀以降は民間人が多く死にすぎ、その憎しみの負のエネルギーが溜まりすぎているのだ。悪魔の支配を打ち砕くためには、21世紀の技術と知識で大量殺戮を阻止すべく歴史の流れを変える必要がある……。

 タイトルの「宇宙軍」は『王立宇宙軍』の宇宙軍に近いかな。まだまだ宇宙飛行の技術には届かないけれど、とにかく技術開発を推進するために陸海空軍ではない軍事組織の看板が必要だった……という理屈。

「これが、宇宙軍の田植機の実力か…」
 農村の機械化を推進して余剰人員を工業界に引き込もうという深謀遠慮。

 注釈文の存在感が大きすぎて読む流れが寸断されるのは難点。パロディ要素がやや強め。
 ただ、近現代史を改編するにあたって、その基点を(明治維新のIFとか)皆いろいろ工夫しているのだけれど、この作品は「統帥権」の確保に置いてあるところが異色。1巻は昭和が始まったところまで。

【大日本帝国宇宙軍 (1)~1901年にタイムスリップした俺は、21世紀の技術で歴史を変えることにした】【朝日カヲル】【湖川友謙】【アメージング出版】【小説家になろう】【カクヨム】【トップをねらえ!】【アナスタシア】【銀河英雄伝説】【宇宙戦艦ヤマト】【関東大震災】【統帥権】【尼港事件】
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「羽林、乱世を翔る5」 イスラーフィール

2024-10-18 | 戦国転生・歴史改変
「上に立つと言うことは人を纏めるという事なのです。纏める人数が多くなればなるほど力は強くなる」
 敵を作り切り捨てるだけの公方に春日局は忠告するが、その心は届かない。

 取り寄せた南瓜や唐辛子の栽培は順調で、朽木や尾張を中心に広めていく予定だ。しかし、周囲の状況は日増しに悪化していく中では慶事のはずの赤子の出生ですら一触即発の危険を孕んでいる。養母・目々典侍が無事に男児を出産したのだ。第二皇子である。
 三好憎しの幕府が煽る中、1561年夏、ついに三好に対し、六角と畠山が同時に挙兵。自力ではなお三好が優るものの、三好長慶の病によって十全に力を発揮することができず、最終的には勝つものの一度は京を放棄せざるを得ないだろうと基綱は予想している。そして、三好が都を離れるのを好機と、二条や万里小路といった朝廷内の親足利勢力が近衛と飛鳥井の排除を画策してることを基綱は想定し、その対応も進めていた……。

 基綱13歳の暗闘です。婚姻したり手紙を書いたり人の手配をしたりと大忙し。
 戦局としては、上杉と武田の戦いが終わって関東方面が小康状態。尾張美濃方面も織田家有生とはいえやはり小康状態。畿内では三好と六角・畠山がぶつかり、これに浅井や浅倉など周辺勢力が呼応するか見守るに留まるか思惑が交錯するところです。そして、信長は南瓜の味噌汁を堪能していました。

【異伝 淡海乃海~羽林、乱世を翔る~《五》】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】
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「冬嵐記2」 槐

2024-09-29 | 戦国転生・歴史改変
 壊滅した岡部城を生きのびた福島勝千代は、父である福島上総介と共に高天神の城へと向かっていた。福島家中に巣くう、父と勝千代たちを亡きものとしようする身中の虫を処理するためだ。しかし、相次ぐ事件と長旅に勝千代の身体は保たず、高熱で意識不明になってしまう。
 そんな彼らが身を寄せたのは今川の重鎮、朝比奈家の領内にある神社。そこには東雲と名乗る白装束の公家も滞在していたのだが、その神社のある村は、疫病を口実に焼き払われようとしていた……。

 『冬嵐記』2巻出ました。3巻の刊行も決まっているようで嬉しいです。勝千代、まだ4歳。幼少時の虐待でいまだ虚弱な身で、本願寺やら風魔やら襲いかかる陰謀を払いのけながらの旅。まだまだハードモードは続きます。
 さらに今回は岡部家の子で行方知れずになっていた姉妹が人買いに売られていたことを知り、その行方を追います。勝千代は守られるものから、守る者、裁く者へと開花し始めます。

【冬嵐記(二)~福島勝千代一代記~】【槐】【上條ロロ】【モーニングスターブックス】【転生×戦国サバイバル物語】【ヘルモード・サバイバルから始まる戦国成長物語】【小説家になろう】【本願寺】【扇子】
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「魯鈍の人」 牛一

2024-07-16 | 戦国転生・歴史改変
「子供のような事を言うな」
「この通り、子供です。子供らしく遊ばせてください」

 信長はこき使いたいし金を出させたいが、魯鈍丸は引き籠もりたい一心だ。

 大型プロジェクトを失敗して地方に飛ばされて細々と地域再生、村おこしを担当していた男が、車を運転中に土砂崩れに巻き込まれて死んだ……と思ったら戦国時代に転生していた。織田秀長の十男、魯鈍丸である。
 現代日本との生活格差に耐えきれず、まだカタコト言葉もおぼつかないうちから周囲に指示を出し、生活改善のためにあれやこれやと産業振興やら開拓をしていたら、数えで2歳の頃には「神童」「熱田明神様の生まれ代わり」と崇められるようになっていた。のんびりと暮らしたいだけなのだが……。

 天性魯鈍人(おろかでにぶい)と評された織田信照転生。魯鈍だ引きこもりだと言われながら本能寺の変も生き抜いて、江戸時代まで頑張って、諸説あるけど50歳までは生きているようなので、十分有能だよね。
 そんな戦国ニートな武将に転生した男が、やる気満々で行動力はあるけれど経済音痴の信長と丁々発止の駆け引きをしながらマイペース人生をめざす物語。
 最初の1年2年そこそこで澄み酒から土壌改良まで手がけているくらい上手くいきすぎなので、そのあたりの細かいところを「そんなにうまくいくかい!?」と気になる人はダメかも。そのあたりの殖産チートはあくまで外交や戦争準備にフリーハンドを確保するための手段なので、そこまで重要ではないのです。

【魯鈍の人~信長の弟、信秀の十男と言われて】【牛一】【ニシカワエイト】【モーニングスターブックス】【美男子コンビが取り成す、戦国コミカル】【小説家になろう】【カクヨム】【望月千代女】【飛び加藤】【慶次郎】【椎茸栽培】【清酒】【南蛮船】【黒鋤】【ローマンコンクリート】【アスレチック】【富くじ】【肥料】【瓦版】【プレス機】【南蛮船】
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「RE:異世界から帰ったら江戸なのである4」 左高例

2024-07-13 | 戦国転生・歴史改変
「男の子ってのはね。半分くらい女の子なんだよ」
 ロリ・ショタ問わずの稚児趣味同心、人呼んで「青田狩り」の菅山利悟は人類の敵。

 女天狗とちまたで噂されている九子は、小柄だけれど胸は大きい美少女。男余りな江戸では彼女に懸想する者は多いが、中身は90歳の老人だし心は男なので本人にはその気はまったく無い。むしろ孫でも可愛がっている感覚なのだが、それでまた勘違いする者も少なくない。
 ところで、自前で掘った温泉で酒盛りしていて溺死した九子は、潜り込んでいた子供たちに助けられ、その御礼のひとつとして目の悪い雨次のために眼鏡を買いに行くことになった。だが、その頃、眼鏡が入手できる店は限られており、訪ねていったのは渡来品も扱う薩摩商人の店。そこで店の奥から聞こえてくる怒声や奇声、転がっていく生首みたいに見えるものを見せられたりしたあげく……。

 無事にエンターブレイン版の全3巻を超えました!めでたい。分厚い装丁ですが、本編は3/4。残りは宴会ダーツのIF編をそれぞれに。
 温泉宿の盗賊撃退打ち上げ宴会のダーツから、吉良義央の霊に頼まれての諏訪旅行とかイベントを次々こなし、薩摩もんとの邂逅を経ての天狗製花火事件へと収束していきます(したのかな?)。

【RE:異世界から帰ったら江戸なのである~女天狗昔物語4~】【左高例】【ユウナラ】【カレヤマ文庫】【異世界ファンタジー×江戸時代×現代知識×女体化×エトセトラ】【B級歴史オルタナティブ】【江戸で現代知識と異世界魔法のスローライフ小説】【異世界転性】【東京フレンドパーク】【鍵屋】【オール・ユー・ニード・イズ・吉良】
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「薩摩転生」 原案:ほうこうおんち

2024-04-29 | 戦国転生・歴史改変
 1586年、九州平定に動き出した豊臣軍に挑みかからんとする島津の軍勢。しかし、そのとき天地が揺らめき、火山が噴火。気がつけば島津家一族郎党は、戦国時代から約1300年前、帝国存亡をかけた大戦国時代の真っ只中というローマ帝国へと転移していた……。

 戦国最恐、島津家の軍勢が戦力十分にして戦意過剰なまま異世界に転移していたら……という仮想戦記がまさかのコミカライズ。ウェブ版は西暦1453年の黒海沿岸に転移してオスマン帝国とぶつかりますが、そこは原案ということにしてさらに時間を遡り、3世紀ローマでの戦いが描かれていきます。そのあたり、読者は察しないといけません。
 鬼シマヅといえば平野耕太の『ドリフターズ』で先行して異世界で大暴れしていますが、こちらは一族郎党引き連れての遠征ですから歯止めが利きません。恐ろしや恐ろしや。

【薩摩転生~世に万葉の丸十字が咲くなり~】【内富拓地】【ほうこうおんち】【サンデーうぇぶり】【島津タイムスリップ絵巻】【鬼シマヅたちがローマを舞台に暴れまわる戦国スペクタクル大活劇】【九州統一戦争】【小説家になろう】
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「淡海乃海 水面が揺れる時 十六」 イスラーフィール

2024-04-15 | 戦国転生・歴史改変
「母上が俺を怖がるのは叡山を焼いたからでも一向一揆を根切りにしたからでもない。それ以前からだ。俺が子どもらしくない、自分のことは思えない。そのことに怯えていた」
 朽木基綱は元服した息子の滋綱が、あまりに自分に似過ぎていると忠告する。

 1587年、朽木家は九州再征を果たし、西日本から抵抗勢力を完全に排除した。残すは関東・奥州のみとなったのが、そんなおりに琉球よりの使者が親書を携えてきた。日本に服属するという内容だが、問題は宛先が帝ではなく相国である基綱ということだ。その扱いに朝廷は揺れ動くのだが、基綱にとってはどちらでも良いことだった。
 琉球は位置的に明との交易の中継点であるだけではなく、スペインやポルトガルなど西欧諸国が日本への侵略を画策する際の拠点ともなる位置にある。実際、既に支援者であった大友の没落で切支丹が苦境に立たされている現状を打開するため、宣教師たちが拠点のマニラから軍船を呼び寄せようとしているらしい。日本統一の前であれ後であれ、琉球を支配下に組み込むのは基綱にとっては決定事項であった……。

 各勢力関係図とか人物紹介はあるけれど、そろそろ家系図が必要かも。子や孫や養子が増えました。
 歴史改変戦国絵巻『淡海乃海』も16巻到達。九州平定もほぼ終わり、奥州に向けて謀を巡らせているけれど、アジア情勢も予断を許しません。子どもたちの独り立ちも始まりました。
 物語として、どこで区切りを付けるのか、どこまで突っ走るのかワクワクしながら待ち続けています。

【淡海乃海 水面が揺れる時 十六~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【兄弟】【関白解任】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【弱肉強食の世を描く戦国サバイバル小説】【小説家になろう】
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「戦国小町苦労譚17」 夾竹桃

2024-04-13 | 戦国転生・歴史改変
「人は数が集まり、熱くなってしまえば我を忘れる阿呆が必ず出る。そういう奴は口で言っても無駄だ。先に拳で黙らせてから話をするのが一番だ!」
 一応、話をする気はあるらしい、森長可の言い分。

 1578年11月、静子が段取りを任された『京都御馬揃え』は無事に終わった。史実より約1年半早く開催される運びとなった馬揃えでは、織田家の偉功はむろんのこと、その織田信長と近衛前久が静子に庇護を与えていることも十分にアピールされたが、その裏では光秀らによる出陣の準備も進んでいた……。

 仕事の褒美に新しい仕事を願い出る、永久機関的ワーカーホリックの静子の日常回。
 メインストーリーは馬揃えから光秀の西国進出が始まるあたりまでで、こぼれ話的なサイドストーリーが半分くらいになります。

【戦国小町苦労譚】【十七、西国進出とこぼれ話】【夾竹桃】【平沢下戸】【アーススター】【戦国ライトノベル】【羊羹】【鉄道構想】【マンガン選鉱】【オオウミガラス】【綿花】【酒合戦】【百万石の酒杯】【レーション選定】
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「冬嵐記」 槐

2024-02-22 | 戦国転生・歴史改変
「人は誰もがいずれ死ぬ。わしもそなたも。だが、その死に様を選ぶことはできる」
 納得して死ねるように生きろと上総介は勝千代に語る。

 現代日本で教師だった記憶はある。交差点で事故に遭ったことも覚えている。だが、気がつけば今にも死にそうな幼子の身体になっていた。
 おそらくは戦国時代。どうやら今川の一族にあたる城主の嫡男らしいのだが、城主が戦場からなかなか戻って来られないのを良いことに、この勝千代という少年は父の側室や異母兄たちから虐待され続け、今にも死にそうなありさまだったのだ……。

 今、ウェブ連載でいちばん続きが楽しみなのが「福島勝千代一代記」。その第一部『冬嵐記』が書籍化しました。
 戦国転生ものですが、そもそもがチートなスキルもない虚弱な幼少の身。ちょっと見聞きしただけでここがいつの何処とか、あれは後にこんな活躍をする何某だと分かるような歴史知識もなく、火薬の製造法だとか未来の知識もありません。身近には主人公を信じて支援してくれるような人間どころか、あわよくば死んでしまえと虐待してくる親族や家人ばかりのヘルモード。
 そんな手探り状態から、知恵を巡らせ頭を使い、1つずつ手駒を集め、助けを求める策を練り、戦国の世の次期当主を巡る争いを生きのびようとします。この逆境に次ぐ逆境を乗り越えていく様がハラハラドキドキの展開なのです。
 書籍はウェブの第2章、国境地帯の雪山で死にかけるところまで。

【冬嵐記~福島勝千代一代記~】【槐】【上條ロロ】【モーニングスターブックス】【転生×戦国小説】【ヘルモード・サバイバルから始まる戦国成長物語】【小説家になろう
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「ルイ16世に転生してしまった俺はフランス革命を全力で阻止してアントワネットと末永くお幸せに暮らしたい1」 スカーレッドG

2024-02-14 | 戦国転生・歴史改変
 歴史シミュレーションゲームで遊んでいた30代独身男が、酒を飲みながらゲームで遊んで寝落ちしてしまう。その夢うつつの間に聞いた気がするのは、「フランス王国を救ってはくれないだろうか?」の声。
 そして、目が覚めると豪華絢爛なヴェルサイユ宮殿だった。彼はルイ・オーギュスト王太子と呼ばれるのだが、つまり後のルイ16世。このままだと20年弱で革命が起きて断頭台の露と消えることになるのだ。転生に混乱したものの、嫁いできたマリー・アントワネットややがて生まれる子供たちのためにも革命ルートは回避しないといけない。まだ、ぎりぎり間に合うかもしれないと、あの手この手でフランスを偉大な国家にするために立ち上がるのだが……。

 本人は決して無能じゃなかったのに、祖父の代からの財政赤字と対立貴族の妨害で何もなせなかったルイ16世に憑依してしまう歴史改変もの。ルイ16世の行動が北米大陸や極東にまでバタフライ効果を及ぼす歴史改変系として面白いし、話が進むにつれて文明が史実ルートとズレはじめ、スチームパンク・テイストが出てくるあたりも面白いし、アントワネットちゃんや子供たちも頑張るので、今のところ書籍もコミックも1巻止まりだけどちゃんと続刊が出て欲しいなあ。

【ルイ16世に転生してしまった俺はフランス革命を全力で阻止してアントワネットと末永くお幸せに暮らしたい1】【スカーレッドG】【いの】【サーガフォレスト】【小説家になろう】【トイレ】【入浴】【蒸気機関】【パウンドケーキ】【新聞記事】【ヨーゼフ・ハウザー】【ブルボンの改革】
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「北政所様の御化粧係《三》」 笹倉のり

2024-01-25 | 戦国転生・歴史改変
 徳川へと嫁いだ秀吉の妹、駿河御前こと旭姫が心を病んで帰洛した。ただでさえ秀吉の命で仲睦まじかった元の夫と別れさせられた上で家康の正室へと嫁がされ、なんとかその生活に慣れてきた頃に元夫の死を知らされたのだ。
 可能な限り万全な受け入れ体制を整えた与祢だったが、他の家族と違って農家の娘ままの地味な庶民気質が抜けなかった旭には、しっかり化粧して最先端のファッションに身を包んだ与祢に馴染むことができなかったのだ。そんな2人を大政所が取り結ぶ。天下人の母ながらどこにでも畑を開いて野良仕事を始める女傑ならではだ。
 そんな慌ただしい中に、さらに大型イベントが舞い込んでくる。帝の聚楽第への行幸がきまったのだが、帝を迎えるにあたって最先端の流行を揃えて豊臣の威光を参列者全員に見せつけようという秀吉の意向だ。当然、与祢が城の女性陣の御化粧全てを担当することになるのだが……。

 山内家の9歳の娘にすぎない与祢が、粧内侍こと豊臣豊子になるまで。もしくは旭の覚醒まで。与祢が大イベントのメイク総責任者として、新作コスメの開発から予算獲得、当日のスケジュール管理と山積みの難問を、前世の経験を活かして乗りきっていきます。

「美しさは女の剣であり、装いは女の鎧。それを研ぎ澄まし、磨き抜くために私は一切の妥協をいたしません」
 予算を使いすぎだという石田治部に対して、此度の行幸は戦なのだと一歩も引かない与祢。

 バトルものでどういう職のものがどんなスキルでどのように戦うか克明に描かれるように、シェーディングもハイライトもファウンデーションもコンシーラーもどのような素材のものを使い、相手の肌具合や衣装や赴く場所まで配慮して、どのように化粧が施されていくかが詳細に語られていきます。
 まさに彼女らの戦場なのです。

【北政所様の御化粧係《三》~戦国の世だって美容オタクは趣味に生きたいのです~】【笹倉のり】【Izumi】【TOブックス】【美容大好き能天気姫の本格歴史ファンタジー】【小説家になろう】【行幸メイク】【里帰り】【ゲイシャ・フェイシャル】【眼彩】【ウルトラマリン・バイオレット】
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「淡海乃海 水面が揺れる時 十五」 イスラーフィール

2023-12-30 | 戦国転生・歴史改変
「人を気遣うとは人に関心を持つ事なのだ。人に関心を持つ者だけが人を纏める力を持つ。そして人を纏められる者だけが大きくなれるのだ」
 児玉元良は相国が周囲の者に気遣えることは重要なことなのだと、今ひとつ理解していなかった息子・小次郎を叱責する。

 ついに朽木基綱は九州平定に動き出した。動かす兵は15万。龍造寺でさえ、その1/3も動員できないだろう。基綱はこれを最期に龍造寺も大友も潰す覚悟だ。
 彼は既にその目を日本統一の先に向けている。重税が続いて経済が崩壊しつつあり、国が倒れようとしている明が、交易でその銀を吸い上げている日本に矛先を向ける可能性。あるいは明が亡びるのに乗じて極東進出を画策する南蛮勢力が、その足がかりとして日本に攻め寄せる可能性。いずれも十分にあり得る話であった……。

 物語の中心は、九州平定で主に龍造寺との最終決戦と、それに加わった毛利家中の思惑から戦後始末まで。それから徳川のその後とか、初陣したい子供たちの話とか、あちこちで検討される婚姻外交のあれこれ等々。表紙の基綱像がまさに魔王みたいです。

【淡海乃海 水面が揺れる時 十五~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【幸せ】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】【小説家になろう】【日本水軍】
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「羽林、乱世を翔る4」 イスラーフィール

2023-09-26 | 戦国転生・歴史改変
 長尾弾正が関東攻めに10万の大軍を動員しようとしていた頃、帝の側近、頭中将となった飛鳥井基綱は叔父である長門守に織田の娘を娶らせようと動いていた。そして、織田信長はこの申し入れに即座に対応し、実妹の美乃を送り出すことを決めた。朽木と織田では家格が釣り合わぬと見るむきもあるが、すべて先々の動きを見据えた一手だ。京のすぐ隣に位置する朽木との関係を強化する意味が分からぬ信長ではない。
 一方、その頃、三好家では岸和田城の十河讃岐守が毒殺されるという事件が起きていた。これからの三好を支えることが期待されていた重臣である……。

 足利義輝の屈折具合が良い塩梅の4巻。表紙イラストの義輝は気の毒に、すっかり末期の悪人顔です。自らの弱さを知りつつ、認められない男の足掻きは破滅に向かって突き進みます。まあ、原因の大半は幕臣の無能ゆえなんでしょうが。三好と幕府、そして六角や畠山との対立が激化し、朝廷と京の安寧に基綱が奔走します。
 織田家との婚礼を経て、大戦の予兆まで。夫が仕事に忙しく、家庭を顧みる暇がないのに不満を抱いた妻の暴走とか、スゴく怖いですよね。なんとか踏みとどまれ! 軍略では無双と謳われ怖れられる基綱も家庭内をまとめるのに四苦八苦。

【異伝 淡海乃海~羽林、乱世を翔る~《四》】【選択】【織田と朽木】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】
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