付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「冬嵐記2」 槐

2024-09-29 | 戦国転生・歴史改変
 壊滅した岡部城を生きのびた福島勝千代は、父である福島上総介と共に高天神の城へと向かっていた。福島家中に巣くう、父と勝千代たちを亡きものとしようする身中の虫を処理するためだ。しかし、相次ぐ事件と長旅に勝千代の身体は保たず、高熱で意識不明になってしまう。
 そんな彼らが身を寄せたのは今川の重鎮、朝比奈家の領内にある神社。そこには東雲と名乗る白装束の公家も滞在していたのだが、その神社のある村は、疫病を口実に焼き払われようとしていた……。

 『冬嵐記』2巻出ました。3巻の刊行も決まっているようで嬉しいです。勝千代、まだ4歳。幼少時の虐待でいまだ虚弱な身で、本願寺やら風魔やら襲いかかる陰謀を払いのけながらの旅。まだまだハードモードは続きます。
 さらに今回は岡部家の子で行方知れずになっていた姉妹が人買いに売られていたことを知り、その行方を追います。勝千代は守られるものから、守る者、裁く者へと開花し始めます。

【冬嵐記(二)~福島勝千代一代記~】【槐】【上條ロロ】【モーニングスターブックス】【転生×戦国サバイバル物語】【ヘルモード・サバイバルから始まる戦国成長物語】【小説家になろう】【本願寺】【扇子】
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「魯鈍の人」 牛一

2024-07-16 | 戦国転生・歴史改変
「子供のような事を言うな」
「この通り、子供です。子供らしく遊ばせてください」

 信長はこき使いたいし金を出させたいが、魯鈍丸は引き籠もりたい一心だ。

 大型プロジェクトを失敗して地方に飛ばされて細々と地域再生、村おこしを担当していた男が、車を運転中に土砂崩れに巻き込まれて死んだ……と思ったら戦国時代に転生していた。織田秀長の十男、魯鈍丸である。
 現代日本との生活格差に耐えきれず、まだカタコト言葉もおぼつかないうちから周囲に指示を出し、生活改善のためにあれやこれやと産業振興やら開拓をしていたら、数えで2歳の頃には「神童」「熱田明神様の生まれ代わり」と崇められるようになっていた。のんびりと暮らしたいだけなのだが……。

 天性魯鈍人(おろかでにぶい)と評された織田信照転生。魯鈍だ引きこもりだと言われながら本能寺の変も生き抜いて、江戸時代まで頑張って、諸説あるけど50歳までは生きているようなので、十分有能だよね。
 そんな戦国ニートな武将に転生した男が、やる気満々で行動力はあるけれど経済音痴の信長と丁々発止の駆け引きをしながらマイペース人生をめざす物語。
 最初の1年2年そこそこで澄み酒から土壌改良まで手がけているくらい上手くいきすぎなので、そのあたりの細かいところを「そんなにうまくいくかい!?」と気になる人はダメかも。そのあたりの殖産チートはあくまで外交や戦争準備にフリーハンドを確保するための手段なので、そこまで重要ではないのです。

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「RE:異世界から帰ったら江戸なのである4」 左高例

2024-07-13 | 戦国転生・歴史改変
「男の子ってのはね。半分くらい女の子なんだよ」
 ロリ・ショタ問わずの稚児趣味同心、人呼んで「青田狩り」の菅山利悟は人類の敵。

 女天狗とちまたで噂されている九子は、小柄だけれど胸は大きい美少女。男余りな江戸では彼女に懸想する者は多いが、中身は90歳の老人だし心は男なので本人にはその気はまったく無い。むしろ孫でも可愛がっている感覚なのだが、それでまた勘違いする者も少なくない。
 ところで、自前で掘った温泉で酒盛りしていて溺死した九子は、潜り込んでいた子供たちに助けられ、その御礼のひとつとして目の悪い雨次のために眼鏡を買いに行くことになった。だが、その頃、眼鏡が入手できる店は限られており、訪ねていったのは渡来品も扱う薩摩商人の店。そこで店の奥から聞こえてくる怒声や奇声、転がっていく生首みたいに見えるものを見せられたりしたあげく……。

 無事にエンターブレイン版の全3巻を超えました!めでたい。分厚い装丁ですが、本編は3/4。残りは宴会ダーツのIF編をそれぞれに。
 温泉宿の盗賊撃退打ち上げ宴会のダーツから、吉良義央の霊に頼まれての諏訪旅行とかイベントを次々こなし、薩摩もんとの邂逅を経ての天狗製花火事件へと収束していきます(したのかな?)。

【RE:異世界から帰ったら江戸なのである~女天狗昔物語4~】【左高例】【ユウナラ】【カレヤマ文庫】【異世界ファンタジー×江戸時代×現代知識×女体化×エトセトラ】【B級歴史オルタナティブ】【江戸で現代知識と異世界魔法のスローライフ小説】【異世界転性】【東京フレンドパーク】【鍵屋】【オール・ユー・ニード・イズ・吉良】
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「薩摩転生」 原案:ほうこうおんち

2024-04-29 | 戦国転生・歴史改変
 1586年、九州平定に動き出した豊臣軍に挑みかからんとする島津の軍勢。しかし、そのとき天地が揺らめき、火山が噴火。気がつけば島津家一族郎党は、戦国時代から約1300年前、帝国存亡をかけた大戦国時代の真っ只中というローマ帝国へと転移していた……。

 戦国最恐、島津家の軍勢が戦力十分にして戦意過剰なまま異世界に転移していたら……という仮想戦記がまさかのコミカライズ。ウェブ版は西暦1453年の黒海沿岸に転移してオスマン帝国とぶつかりますが、そこは原案ということにしてさらに時間を遡り、3世紀ローマでの戦いが描かれていきます。そのあたり、読者は察しないといけません。
 鬼シマヅといえば平野耕太の『ドリフターズ』で先行して異世界で大暴れしていますが、こちらは一族郎党引き連れての遠征ですから歯止めが利きません。恐ろしや恐ろしや。

【薩摩転生~世に万葉の丸十字が咲くなり~】【内富拓地】【ほうこうおんち】【サンデーうぇぶり】【島津タイムスリップ絵巻】【鬼シマヅたちがローマを舞台に暴れまわる戦国スペクタクル大活劇】【九州統一戦争】【小説家になろう】
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「淡海乃海 水面が揺れる時 十六」 イスラーフィール

2024-04-15 | 戦国転生・歴史改変
「母上が俺を怖がるのは叡山を焼いたからでも一向一揆を根切りにしたからでもない。それ以前からだ。俺が子どもらしくない、自分のことは思えない。そのことに怯えていた」
 朽木基綱は元服した息子の滋綱が、あまりに自分に似過ぎていると忠告する。

 1587年、朽木家は九州再征を果たし、西日本から抵抗勢力を完全に排除した。残すは関東・奥州のみとなったのが、そんなおりに琉球よりの使者が親書を携えてきた。日本に服属するという内容だが、問題は宛先が帝ではなく相国である基綱ということだ。その扱いに朝廷は揺れ動くのだが、基綱にとってはどちらでも良いことだった。
 琉球は位置的に明との交易の中継点であるだけではなく、スペインやポルトガルなど西欧諸国が日本への侵略を画策する際の拠点ともなる位置にある。実際、既に支援者であった大友の没落で切支丹が苦境に立たされている現状を打開するため、宣教師たちが拠点のマニラから軍船を呼び寄せようとしているらしい。日本統一の前であれ後であれ、琉球を支配下に組み込むのは基綱にとっては決定事項であった……。

 各勢力関係図とか人物紹介はあるけれど、そろそろ家系図が必要かも。子や孫や養子が増えました。
 歴史改変戦国絵巻『淡海乃海』も16巻到達。九州平定もほぼ終わり、奥州に向けて謀を巡らせているけれど、アジア情勢も予断を許しません。子どもたちの独り立ちも始まりました。
 物語として、どこで区切りを付けるのか、どこまで突っ走るのかワクワクしながら待ち続けています。

【淡海乃海 水面が揺れる時 十六~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【兄弟】【関白解任】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【弱肉強食の世を描く戦国サバイバル小説】【小説家になろう】
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「戦国小町苦労譚17」 夾竹桃

2024-04-13 | 戦国転生・歴史改変
「人は数が集まり、熱くなってしまえば我を忘れる阿呆が必ず出る。そういう奴は口で言っても無駄だ。先に拳で黙らせてから話をするのが一番だ!」
 一応、話をする気はあるらしい、森長可の言い分。

 1578年11月、静子が段取りを任された『京都御馬揃え』は無事に終わった。史実より約1年半早く開催される運びとなった馬揃えでは、織田家の偉功はむろんのこと、その織田信長と近衛前久が静子に庇護を与えていることも十分にアピールされたが、その裏では光秀らによる出陣の準備も進んでいた……。

 仕事の褒美に新しい仕事を願い出る、永久機関的ワーカーホリックの静子の日常回。
 メインストーリーは馬揃えから光秀の西国進出が始まるあたりまでで、こぼれ話的なサイドストーリーが半分くらいになります。

【戦国小町苦労譚】【十七、西国進出とこぼれ話】【夾竹桃】【平沢下戸】【アーススター】【戦国ライトノベル】【羊羹】【鉄道構想】【マンガン選鉱】【オオウミガラス】【綿花】【酒合戦】【百万石の酒杯】【レーション選定】
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「冬嵐記」 槐

2024-02-22 | 戦国転生・歴史改変
「人は誰もがいずれ死ぬ。わしもそなたも。だが、その死に様を選ぶことはできる」
 納得して死ねるように生きろと上総介は勝千代に語る。

 現代日本で教師だった記憶はある。交差点で事故に遭ったことも覚えている。だが、気がつけば今にも死にそうな幼子の身体になっていた。
 おそらくは戦国時代。どうやら今川の一族にあたる城主の嫡男らしいのだが、城主が戦場からなかなか戻って来られないのを良いことに、この勝千代という少年は父の側室や異母兄たちから虐待され続け、今にも死にそうなありさまだったのだ……。

 今、ウェブ連載でいちばん続きが楽しみなのが「福島勝千代一代記」。その第一部『冬嵐記』が書籍化しました。
 戦国転生ものですが、そもそもがチートなスキルもない虚弱な幼少の身。ちょっと見聞きしただけでここがいつの何処とか、あれは後にこんな活躍をする何某だと分かるような歴史知識もなく、火薬の製造法だとか未来の知識もありません。身近には主人公を信じて支援してくれるような人間どころか、あわよくば死んでしまえと虐待してくる親族や家人ばかりのヘルモード。
 そんな手探り状態から、知恵を巡らせ頭を使い、1つずつ手駒を集め、助けを求める策を練り、戦国の世の次期当主を巡る争いを生きのびようとします。この逆境に次ぐ逆境を乗り越えていく様がハラハラドキドキの展開なのです。
 書籍はウェブの第2章、国境地帯の雪山で死にかけるところまで。

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「ルイ16世に転生してしまった俺はフランス革命を全力で阻止してアントワネットと末永くお幸せに暮らしたい1」 スカーレッドG

2024-02-14 | 戦国転生・歴史改変
 歴史シミュレーションゲームで遊んでいた30代独身男が、酒を飲みながらゲームで遊んで寝落ちしてしまう。その夢うつつの間に聞いた気がするのは、「フランス王国を救ってはくれないだろうか?」の声。
 そして、目が覚めると豪華絢爛なヴェルサイユ宮殿だった。彼はルイ・オーギュスト王太子と呼ばれるのだが、つまり後のルイ16世。このままだと20年弱で革命が起きて断頭台の露と消えることになるのだ。転生に混乱したものの、嫁いできたマリー・アントワネットややがて生まれる子供たちのためにも革命ルートは回避しないといけない。まだ、ぎりぎり間に合うかもしれないと、あの手この手でフランスを偉大な国家にするために立ち上がるのだが……。

 本人は決して無能じゃなかったのに、祖父の代からの財政赤字と対立貴族の妨害で何もなせなかったルイ16世に憑依してしまう歴史改変もの。ルイ16世の行動が北米大陸や極東にまでバタフライ効果を及ぼす歴史改変系として面白いし、話が進むにつれて文明が史実ルートとズレはじめ、スチームパンク・テイストが出てくるあたりも面白いし、アントワネットちゃんや子供たちも頑張るので、今のところ書籍もコミックも1巻止まりだけどちゃんと続刊が出て欲しいなあ。

【ルイ16世に転生してしまった俺はフランス革命を全力で阻止してアントワネットと末永くお幸せに暮らしたい1】【スカーレッドG】【いの】【サーガフォレスト】【小説家になろう】【トイレ】【入浴】【蒸気機関】【パウンドケーキ】【新聞記事】【ヨーゼフ・ハウザー】【ブルボンの改革】
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「北政所様の御化粧係《三》」 笹倉のり

2024-01-25 | 戦国転生・歴史改変
 徳川へと嫁いだ秀吉の妹、駿河御前こと旭姫が心を病んで帰洛した。ただでさえ秀吉の命で仲睦まじかった元の夫と別れさせられた上で家康の正室へと嫁がされ、なんとかその生活に慣れてきた頃に元夫の死を知らされたのだ。
 可能な限り万全な受け入れ体制を整えた与祢だったが、他の家族と違って農家の娘ままの地味な庶民気質が抜けなかった旭には、しっかり化粧して最先端のファッションに身を包んだ与祢に馴染むことができなかったのだ。そんな2人を大政所が取り結ぶ。天下人の母ながらどこにでも畑を開いて野良仕事を始める女傑ならではだ。
 そんな慌ただしい中に、さらに大型イベントが舞い込んでくる。帝の聚楽第への行幸がきまったのだが、帝を迎えるにあたって最先端の流行を揃えて豊臣の威光を参列者全員に見せつけようという秀吉の意向だ。当然、与祢が城の女性陣の御化粧全てを担当することになるのだが……。

 山内家の9歳の娘にすぎない与祢が、粧内侍こと豊臣豊子になるまで。もしくは旭の覚醒まで。与祢が大イベントのメイク総責任者として、新作コスメの開発から予算獲得、当日のスケジュール管理と山積みの難問を、前世の経験を活かして乗りきっていきます。

「美しさは女の剣であり、装いは女の鎧。それを研ぎ澄まし、磨き抜くために私は一切の妥協をいたしません」
 予算を使いすぎだという石田治部に対して、此度の行幸は戦なのだと一歩も引かない与祢。

 バトルものでどういう職のものがどんなスキルでどのように戦うか克明に描かれるように、シェーディングもハイライトもファウンデーションもコンシーラーもどのような素材のものを使い、相手の肌具合や衣装や赴く場所まで配慮して、どのように化粧が施されていくかが詳細に語られていきます。
 まさに彼女らの戦場なのです。

【北政所様の御化粧係《三》~戦国の世だって美容オタクは趣味に生きたいのです~】【笹倉のり】【Izumi】【TOブックス】【美容大好き能天気姫の本格歴史ファンタジー】【小説家になろう】【行幸メイク】【里帰り】【ゲイシャ・フェイシャル】【眼彩】【ウルトラマリン・バイオレット】
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「淡海乃海 水面が揺れる時 十五」 イスラーフィール

2023-12-30 | 戦国転生・歴史改変
「人を気遣うとは人に関心を持つ事なのだ。人に関心を持つ者だけが人を纏める力を持つ。そして人を纏められる者だけが大きくなれるのだ」
 児玉元良は相国が周囲の者に気遣えることは重要なことなのだと、今ひとつ理解していなかった息子・小次郎を叱責する。

 ついに朽木基綱は九州平定に動き出した。動かす兵は15万。龍造寺でさえ、その1/3も動員できないだろう。基綱はこれを最期に龍造寺も大友も潰す覚悟だ。
 彼は既にその目を日本統一の先に向けている。重税が続いて経済が崩壊しつつあり、国が倒れようとしている明が、交易でその銀を吸い上げている日本に矛先を向ける可能性。あるいは明が亡びるのに乗じて極東進出を画策する南蛮勢力が、その足がかりとして日本に攻め寄せる可能性。いずれも十分にあり得る話であった……。

 物語の中心は、九州平定で主に龍造寺との最終決戦と、それに加わった毛利家中の思惑から戦後始末まで。それから徳川のその後とか、初陣したい子供たちの話とか、あちこちで検討される婚姻外交のあれこれ等々。表紙の基綱像がまさに魔王みたいです。

【淡海乃海 水面が揺れる時 十五~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【幸せ】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】【小説家になろう】【日本水軍】
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「羽林、乱世を翔る4」 イスラーフィール

2023-09-26 | 戦国転生・歴史改変
 長尾弾正が関東攻めに10万の大軍を動員しようとしていた頃、帝の側近、頭中将となった飛鳥井基綱は叔父である長門守に織田の娘を娶らせようと動いていた。そして、織田信長はこの申し入れに即座に対応し、実妹の美乃を送り出すことを決めた。朽木と織田では家格が釣り合わぬと見るむきもあるが、すべて先々の動きを見据えた一手だ。京のすぐ隣に位置する朽木との関係を強化する意味が分からぬ信長ではない。
 一方、その頃、三好家では岸和田城の十河讃岐守が毒殺されるという事件が起きていた。これからの三好を支えることが期待されていた重臣である……。

 足利義輝の屈折具合が良い塩梅の4巻。表紙イラストの義輝は気の毒に、すっかり末期の悪人顔です。自らの弱さを知りつつ、認められない男の足掻きは破滅に向かって突き進みます。まあ、原因の大半は幕臣の無能ゆえなんでしょうが。三好と幕府、そして六角や畠山との対立が激化し、朝廷と京の安寧に基綱が奔走します。
 織田家との婚礼を経て、大戦の予兆まで。夫が仕事に忙しく、家庭を顧みる暇がないのに不満を抱いた妻の暴走とか、スゴく怖いですよね。なんとか踏みとどまれ! 軍略では無双と謳われ怖れられる基綱も家庭内をまとめるのに四苦八苦。

【異伝 淡海乃海~羽林、乱世を翔る~《四》】【選択】【織田と朽木】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】
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「RE:異世界から帰ったら江戸なのである3」 左高例

2023-09-17 | 戦国転生・歴史改変
「えー、宴もたけなわになりましたが、皆に発表があります。
 今からこの宿に押し込み強盗が30人ぐらいやってくるから、各々そやつらを捕まえるように」


 助屋に新たな店員が増えた。九子が女友達の鳥山石燕と共に熱海へ湯治向かうことにしたので、穴埋めを甚八丸の嫁の晴海と娘の小唄に頼んだのである。
 普通の旅なら熱海まで東海道で3日4日はかかるし、もともと病弱だった石燕を連れてとなるともっと日数はかかるはずなのだが、そこは異世界帰り。九子が石燕を背負って姿を消し、そのまま空を飛んでいけばアッという間だ。
 そんな九子たちは湯治場近くの神社で、覆面姿の侍集団に襲われている子供連れを助けることとなったのだが……。

 だいたい享保年間あたりの徳川吉宗の治世を舞台にした、今回のB級歴史オルタナティブ時代コメディは温泉旅行回。いろいろ歴史が変わりつつありますが、なんかしらみんな風呂に入りっぱなしなので入浴シーンの挿絵がやたらに多いのは必然です。
 阿部将翁とか玉菊太夫、子興あたりのオリジナルのレギュラーキャラがついに参戦。金さえ払えば何でも調達する某爺さんまで加わって温泉街が誕生します。そして徳さん大暴れ。吉原改革から海沿いの村のいあいあ言葉から河童の腕まで、なぜ湯治話がここまで暴走するかというドタバタは健在。外伝(現代編)ではフレデリカ王女まで参戦してます。
 ウェブ版を増補改訂した書籍版からさらに主人公をTSさせ、ヒモからヒモ落ちさせる方へのクラスチェンジして全面リブートしてのオンデマンド版ですが、厚さがほぼ四季報並です。

【RE:異世界から帰ったら江戸なのである~女天狗昔物語3~】【左高例】【ユウナラ】【カレヤマ文庫】【異世界ファンタジー×江戸時代×現代知識×女体化×エトセトラ】【B級歴史オルタナティブ】【江戸で現代知識と異世界魔法のスローライフ小説】【異世界転性】【ゾンビ】【サメ】【吉原】【天丼】【河童伝説】【炒り豆腐】【猪鍋】【梅酒】【金目鯛】【成敗!】【エリア88】

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「夢のまた夢」 森岡浩之

2023-06-18 | 戦国転生・歴史改変
 豊臣秀頼の奥小姓の1人である神照庚丸は、戦乱で親を失ったらしく出自不明。それゆえに町人風情と周囲から侮られることも多いが、本人はさして気にした風もない。養い親の僧侶・浄林の縁で大坂城に上がり、ただ秀頼に仕えるのみだ。しかし、時代は動き、徳川家は豊臣家失墜を図ってさまざまな圧力をかけてくる。
 そして、ついに豊臣に叛意ありと軍を動かす徳川家康に対し、庚丸ら豊臣勢は関ヶ原の戦いを生き延びた島左近を軍師に迎え、戦場へ向かうことになる……。

 豊臣秀吉の辞世の句の一節として知られる「夢のまた夢」という言葉をタイトルに、津本陽など何人もの作家がこのタイトルで歴史小説を書いているけど、これは「星界の紋章」の森岡浩之によるもの。ここ最近、徳間文庫では電脳空間を舞台にしたハードボイルドが続いていた森岡浩之ですが、今回は秀吉が今際の際に五大老の前で秀頼に遺言を遺したところから始まる歴史エンタテイメントです。
 イラストは、『サラマンダー殲滅』など梶尾真治の作品とか時代小説からSFアクションまで幅広く担当されてる方。アニメ・コミックを当たり前に受け入れて育った大人向けのエンタテイメント小説というなら、こういう絵で良いんですよ。こんな絵がいい。カッコいい。ピンポイントで脳裏に作品イメージをたたき込んでくれます。

【夢のまた夢~若武者の誕生~】【森岡浩之】【小林系】【徳間文庫】【SF界の鬼才が描く歴史時代エンタテインメント】【大坂の陣】【豊国祭礼】【君臣豊楽】
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「淡海乃海 水面が揺れる時 十四」 イスラーフィール

2023-06-17 | 戦国転生・歴史改変
「人それぞれに幸せの掴み方は違うのだ。周りが如何思うかなど……」
 織田信広は姪の藤姫に、お市のしたことは許せるものではないが、彼女は確かに幸せだったのだと語った。

 朝堂院の再建が始まった1585年。
 朽木による日本統一は目前で、空前の好景気に沸いていた。朽木基綱は関東平定を当主となった堅綱に任せつつ、通貨作りや産業育成を手配しながら明や琉球を経てスペインやポルトガルの動向にまで目を配っている。
 明は深刻な不景気のさなかにあって、民衆の不満は今にも爆発寸前なのだが、その原因は朽木による交易の拡大らしい。しかし、明と日本が争うことになれば、スペインなど西洋諸国からの介入は避けられない……。

 苦戦しがちな戦国改変ものの中でも順調に巻を重ねている『淡海乃海』は14巻。
 九州討伐前夜ということで朽木から龍造寺まで各陣営の動きを中心に語っています。あと明とか琉球の動きもちらほら。佐渡もきな臭くなってますね。大地震に菅公の祟りだと吹聴して朽木を貶めようとする天満宮に、にこにこ笑いながら「祟りと認めてやる」と根切りを突きつける主人公の黒さ。熟成もここに極まれり。
 今回も表紙はおっさんばかりですが、良い味が出てます。良いぞ!

【淡海乃海 水面が揺れる時 十四~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【幸せ】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【戦国サバイバル小説】【小説家になろう】【カステラ】【造幣】【朝堂院再建】【天正大地震】
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「北政所様の御化粧係《二》」 笹倉のり

2023-04-06 | 戦国転生・歴史改変
「諦めたらそこで終わりなのですよ」
 寧々と島津との間に挟まって苦労が絶えない石田三成を、与祢は口先だけで応援してみた。

 与祢姫が世に送り出したおしろいの評判は太閤秀吉の耳にまで届いた。
 まだ八歳の女童と聞いてもなお関心を寄せる秀吉に、寧々は危機感を覚え、さらに警戒して予防線を張る必要を痛感するのだが、大奥のスキンケアとメイク担当として与祢が登城することは避けられなかった……。

 大阪城の奥勤めとなった与祢は、果たして生き延びることができるか?
 とりあえず、いちばんエラい人をなんとかしないとなんともならない大阪城の奥の話。そんなところにもちゃんと社交界と呼べるものはあり、日本各地から呼び集められた姫や女房たちが贅を競っているのでした。

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