G・K・チェスタトン/中村保男訳 1982年 創元推理文庫版
ブラウン神父ものの短編集を三つ読んだところで、あと二つあると知って、どうしようかと思ったが、やっぱ古本屋で買ってみたのは去年の11月だったか、最近になってやっと読んだ。
原題「THE SECRET OF FATHER BROWN」は1927年の刊行、第四短編集、10篇が入ってるけど、最初と最後はプロローグとエピローグといったとこで事件は起きない。
元泥棒で元探偵のフランボウの暮らすスペインの城を訪ねたブラウン神父は、居合わせたアメリカ人の客人に探偵術の方法を訊かれて、自分が殺人犯の心情になるのだというんだけど、それがタイトルの「秘密」って意味。
一読したなかで、おもしろいと思ったのは「マーン城の喪主」かな。
従弟の死という出来事があってから城に閉じこもって暮らしているマーン侯爵。
侯爵を知るひとびとは面会しようとするのだが、ブラウン神父は、かまわずにおいたほうがよい、余計なことをするとみんなが不幸になると忠告する。
みんなは侯爵が厭世家になったのはカトリック修道僧がいろいろ吹き込んだからだみたいな偏見を持っているけど、過去の事件の真相が明らかになると、主人公のブラウン神父が真に神父らしいところをみせるのがいい。
あとは、殺人事件の動機が復讐であって、それもブラウン神父に言わせると「相手に分相応な形で芸術的」な復讐を企てるという「ヴォードリーの失踪」も読後に印象に残るものがある。
コンテンツは以下のとおり。
ブラウン神父の秘密
大法律家の鏡
顎ひげの二つある男
飛び魚の歌
俳優とアリバイ
ヴォードリーの失踪
世の中で一番重い罪
メルーの赤い月
マーン城の喪主
フランボウの秘密