エリック・アンブラー/菊池光訳 昭和五十一年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
これは、以前読んだ『風の文庫談義』において、
>アンブラーの初期の作品ではやはり『ディミトリオスの棺』がいちばん面白いだろう。(略)
>(略)この作品は、スパイ・スリラーとしてはめずらしいほど、知的な側面をもっている。それが、醜悪な犯罪、暴力とうまく共存している点で、これはスリラーを超えた文学作品となり得ているように、私には思われるのだ。(『風の文庫談義』p.89-90)
という紹介をされていて、興味もったんで、昨年末ころに買い求めた古本の文庫。私はアンブラーの作品、読むの初めて。
原題「A COFFIN FOR DIMITRIOS」は1939年の作品、物語の舞台もそのころってことになる。
ディミトリオスってのは人の名前、ディミトリオス・マクロポウロスって男、一応ギリシア生まれとされてるが正体はよくわからない、ってのもこの男、広く各国を股にかけていた国際的なスパイだったから。
物語を動かしてく視点となるのはチャールズ・ラティマー、イギリス人の経済学者で、そのかたわら探偵小説も書いて成功をおさめてるひと。
ラティマーがトルコのイスタンブールに行ったときに、秘密警察の長官というハキ大佐という人物に出会う、ハキ大佐は自分の考えた探偵小説のアイデアをラティマーに提供したいって話をしてきたんだけど、そこに本業に係る電話連絡がかかってきて、「あなたは本物の殺人者に関心があるか?」とか言い出す。
大佐が言うには、ゆうべボスポラス海峡でディミトリオスという犯罪者の死体が上がった、ナイフで刺し殺され海へ投げ込まれたらしい、奴はいろいろ悪事に関わったがどの国の政府にも一度も捕まったことはない。
死体置き場にディミトリオスを見に行くという大佐に、ラティマーは自分もその男の死体を見てみたいと言い出し、同行の許可を得る。
実際に死体を見たあと、ラティマーはディミトリオスに興味をもち、この男の足跡をたどってみようと思い立って、ハキ大佐の話を手がかりとしてあちこちへ出かけてっては記録や証言を集める。
1922年にトルコのスミルナでショレムというユダヤ人を殺害して金を奪う、1923年にブルガリアのソフィアでブルガリア首相を暗殺する陰謀に加わる、1924年にアドリアノープルでケマル・パシャ暗殺計画に加わる、1926年にはベオグラードでフランスのためのスパイ行為をはたらく、1929年にパリで麻薬密輸事件があり一味が捕まったが捕まらなかった首謀者ではないかと疑われる、などなど大活躍のディミトリオスらしいんだが、どこでも最終的には逃げ切ってて真相はわからないんだが、ラティマーは順に現地へ行って足取りを追う。
スパイ小説って読んだことあまりないんで、なにがどう面白いとも思わないんだが、いろんな証言集めてくなかで、パリの麻薬密輸組織にいた男のいう、
>私たちみんなが、ほとんど異議なく彼を首領として認めていたことは、ほんとうに不思議なくらいです。(略)彼が私たちを支配しえたのは、彼が、自分が手に入れたいものはなんであるかを正確に知っており、それを最小限の労力と経費で手に入れる方法を正確に知っていたからです。(P.205-206)
ってのが私には印象に残ったなあ、欲しいものがわからないやつは欲しいものを手に入れられない、ってやつだ。
これは、以前読んだ『風の文庫談義』において、
>アンブラーの初期の作品ではやはり『ディミトリオスの棺』がいちばん面白いだろう。(略)
>(略)この作品は、スパイ・スリラーとしてはめずらしいほど、知的な側面をもっている。それが、醜悪な犯罪、暴力とうまく共存している点で、これはスリラーを超えた文学作品となり得ているように、私には思われるのだ。(『風の文庫談義』p.89-90)
という紹介をされていて、興味もったんで、昨年末ころに買い求めた古本の文庫。私はアンブラーの作品、読むの初めて。
原題「A COFFIN FOR DIMITRIOS」は1939年の作品、物語の舞台もそのころってことになる。
ディミトリオスってのは人の名前、ディミトリオス・マクロポウロスって男、一応ギリシア生まれとされてるが正体はよくわからない、ってのもこの男、広く各国を股にかけていた国際的なスパイだったから。
物語を動かしてく視点となるのはチャールズ・ラティマー、イギリス人の経済学者で、そのかたわら探偵小説も書いて成功をおさめてるひと。
ラティマーがトルコのイスタンブールに行ったときに、秘密警察の長官というハキ大佐という人物に出会う、ハキ大佐は自分の考えた探偵小説のアイデアをラティマーに提供したいって話をしてきたんだけど、そこに本業に係る電話連絡がかかってきて、「あなたは本物の殺人者に関心があるか?」とか言い出す。
大佐が言うには、ゆうべボスポラス海峡でディミトリオスという犯罪者の死体が上がった、ナイフで刺し殺され海へ投げ込まれたらしい、奴はいろいろ悪事に関わったがどの国の政府にも一度も捕まったことはない。
死体置き場にディミトリオスを見に行くという大佐に、ラティマーは自分もその男の死体を見てみたいと言い出し、同行の許可を得る。
実際に死体を見たあと、ラティマーはディミトリオスに興味をもち、この男の足跡をたどってみようと思い立って、ハキ大佐の話を手がかりとしてあちこちへ出かけてっては記録や証言を集める。
1922年にトルコのスミルナでショレムというユダヤ人を殺害して金を奪う、1923年にブルガリアのソフィアでブルガリア首相を暗殺する陰謀に加わる、1924年にアドリアノープルでケマル・パシャ暗殺計画に加わる、1926年にはベオグラードでフランスのためのスパイ行為をはたらく、1929年にパリで麻薬密輸事件があり一味が捕まったが捕まらなかった首謀者ではないかと疑われる、などなど大活躍のディミトリオスらしいんだが、どこでも最終的には逃げ切ってて真相はわからないんだが、ラティマーは順に現地へ行って足取りを追う。
スパイ小説って読んだことあまりないんで、なにがどう面白いとも思わないんだが、いろんな証言集めてくなかで、パリの麻薬密輸組織にいた男のいう、
>私たちみんなが、ほとんど異議なく彼を首領として認めていたことは、ほんとうに不思議なくらいです。(略)彼が私たちを支配しえたのは、彼が、自分が手に入れたいものはなんであるかを正確に知っており、それを最小限の労力と経費で手に入れる方法を正確に知っていたからです。(P.205-206)
ってのが私には印象に残ったなあ、欲しいものがわからないやつは欲しいものを手に入れられない、ってやつだ。
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