堀江でございます。
今回は証券会社における「ゼネラリスト」と「スペシャリスト」の役割分担について書きたいと思います。診断士に求められはじめた“専門性”に関係していると思うからです。
先日の金子先生ブログにもあるように、中小企業経営力強化支援法が導入されました。そこに至る過程「“ちいさな企業”未来会議」等で、診断士の専門性について議論があったと聞いています。「経営支援ニーズが複雑化・高度化・専門化」しているとして、中小企業診断士も「専門性の強化・高度化が必要」と考えられているようです。“診断士の広場”にも、関連する記事が掲載されています。
そうか、これからは専門性や高度化が求められるのか。
私が長年席をおいた証券業界でも、かつて、事業法人へのサービスについて、同じような変化がありました。
証券会社における事業法人担当者は、うんと昔は「冠婚葬祭おじさん」とも揶揄され、客と仲良くなることが仕事でした。当時の収益の柱は株式引受けと資産運用。仲良くなった後は、市況情報など標準的なサービスを提供するだけでビジネスになりました。会社対会社の関係性が商売の大要であり、人脈を築きやすいよう財閥別に担当企業を割り振られました。
2000年前後から役割とサービスが大きく変わりました。M&Aやデリバティブなど、顧客が求めるニーズが急激に複雑化・高度化・専門化したためです。これに伴って、どこの証券会社も「顧客を担当するゼネラリスト」と、「商品に特化したスペシャリスト」に役割を分化させました。海外の証券会社では一般的な組織体制です。ゼネラリスト(顧客担当者)は業界別に組織され、顧客の問題点を理解・整理する役割となりました。そしてプロダクト・スペシャリストが、専門的な、個別課題の解決策を提供することになりました。「窓口の専門家」と「商品の専門家」への分化です。ゼネラリストは、多面的な観点から問題点を整理し真因を特定するために、金融知識、コミュニケーション力とともに客と同等の深い業界知識が必要です。スペシャリストとして認められるには、得意分野における実績が求められます。提供サービスの高度化に伴う機能分化は、証券業だけでなくITサービスなど多くのプロフェッショナル・サービスで起きたのではないでしょうか。
顧客あるいは顧客を代表するゼネラリストは、ではどうやってスペシャリストを選ぶのか。
スペシャリストの誰もが「私はあれもこれもできる。競争相手より私のほうが能力が高い」と主張します。どう見分けるのか。多くの場合、その人が過去に携わった案件のケーススタディが、一つの判断材料です。代表的な案件いくつかについて、その案件はどういう状況にあって、どういうタイミング参加して、何をアドバイスして、結果どうなったか、案件ごとにA4一枚にまとめます。顧客はそれを数ケース読んでみる。果たしてそのスペシャリストは自分の目的あった経験をしているのか、本当に実効性がある解を提供できそうか、ケーススタディをもとに推測します。
証券業界における機能分化の例から考えると、診断士においても、要求が高度化し一人で対応するのが非効率になるならば、「あなたのことをよく理解して、プロの視点で問題点を整理する」窓口機能としてのゼネラリストと、「特定の課題解決に特化した」スペシャリストにゆるやかに分かれていく可能性があります。たとえば、各地域や領域に根ざした診断士が「窓口機能」を果し、本部などに登録した「スペシャリスト」が個別ソリューションを提供するイメージです。提供するソリューションは、状況が具体的かつ実効性が高いもの、たとえば「個人ドラッグストアのメディケア化対応」「パパママ酒店のIT化支援」「中国○○市における工場閉鎖」などです。
なお、顧客のニーズに対応し証券会社が変化した過程で、顧客担当者と社外プロフェッショナル(弁護士・会計士・コンサルタント)の協働はあまりうまく行きませんでした。得意分野は重ならないものの、それぞれ報酬体系が異なり、成功報酬制であったり、時間給契約であったり、年間契約であったり、調整が困難でした。変化を加速したのは顧客担当者と社内の商品スペシャリストの、個人的信頼関係に基づく有機的・機動的な活動でした。中小企業支援においても、士業間連携も重要ながら、まずは各診断士の役割を明確化して、相互信頼に基づく能力補完的な診断士間協働が鍵になるのかもしれません。
さて、駆け出し半人前診断士の自分には何ができるのだろう。
ひとつ怖い話を付け足しておくと、「窓口さん」も自然と商品知識がついていきますし、「商品さん」にも顧客とのリレーションが積みあがっていきます。そうするとどこかで境界線があやふやになり、客の取り合いで血がなれる、というのも多々ありました。
私は独立して11年目に入りますが、今年は、友人の診断士から、年間を通じて、友人の顧問先の研修指導の仕事をいただきました。でも、お客様とは直接連絡を取り合うこともなければ、常に友人を立てます。まずは、礼儀ですね。
堀江さんが指摘をしているお客様の取り合いは、あまり心配をする必要はないと思います。今、診断士をめざしている方が、依然に、仲間と一緒に勉強をするのは好きではない。一緒に合格をしたら、ライバルになるから...といっていましたが、その発想では成功しないと思います。
独立したら、いつでも助け合える人脈が必要ですし、自分から、仕事を探しに行くというより、紹介やお客様から指名をもらえるようなコンサルタントになることが大切だと思います。
そのためには、ある程度は、ジェネラリストとスペシャリストを兼ね合わせておく必要があると思います。いかがでしょうか?