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2025年問題に挑む中小企業の成長戦略を探る‐4

2025-03-02 12:00:00 | 24期のブログリレー

こんにちは!

稼プロ!24期生の松田です。

本連載では「2025年問題」をテーマに、日本の中小企業が抱える経営課題、特に事業承継問題とその解決策を探っています。中小企業の多くは、後継者不足という深刻な課題に直面しており、経営者の高齢化が進む中で事業の存続が危ぶまれています。

しかし、事業承継の問題は経営者自身の価値観や個々の置かれた状況により、表面化しにくいという特徴があります。「まだ考えるのは早い」と後回しにしたり、「まだ健康だし何とかなる」と楽観視したりすることもあり、結果として対策が遅れるケースが少なくありません。また、後継者が決まっていても、事業承継の準備が不十分なままでは、引き継ぎが円滑に進まず、経営に支障をきたすことがあります。

私自身、中小企業のコンサルティング現場でこの問題の深刻さを日々実感しています。事業承継は単なる株式や経営権の移転だけではなく、経営理念、組織文化、取引先との関係、無形資産など、多くの要素が絡む複雑なプロセスです。そうした中で、中小企業診断士として何ができるのか、どのように経営者の悩みに寄り添い、最適な支援を提供できるのかを模索し続けています。しかし、表面化しにくい事業承継問題について、経営者の懐に入り、深いレベルで共感を得ながら支援を進めることは決して容易ではありません。本稿では、経営者といかに向き合うかについて考察します。

経営者との接し方に関する気づき

そんな中、先日の講義で、コンサルティングの本質について、次のような教えをいただきました。

「世の中は自分では変えられない(外部環境)。財務実績(粉飾をしていないという前提)も変えられない。変えられるのは自分(内部環境)」

これは、事業承継に限らず、経営課題を抱える経営者との向き合い方を考える上で、私に大きな示唆を与えてくれました。

外部環境の変化は誰人も止められません。市場動向、競争環境、技術革新、法規制の変更など、経営者を取り巻く環境は常に変化し続けています。しかし、それらの外部要因に対して受け身の姿勢でいるだけでは、企業は存続成長し続けることができません。結局のところ、まず自分自身とその行動を「変える」ところからGood Cycleをつくっていけるのです。

この視点は、事業承継を進める上でも極めて重要です。たとえ後継者が決まらず、雇用や取引先・顧客との関係維持が難しい状況でも、まずは経営者自身が自責思考で考え方や行動を見直すことで、状況を好転させることができます。しかし、経営者がこの法則を本当に理解し、自発的に動こうとしなければ、いくら診断士がアドバイスしても実際の行動には結びつきません。

果たして私は、これまでのコンサルティングにおいて、この視点を十分に実践できていただろうか。そう考えたとき、甚だ心もとない気持ちになりました。目の前の経営者に対して、特に「何を(What)」「なぜ(Why)」変えるべきかが明確でないまま、受け売りのアドバイスに終始していなかったか。

例えば、「後継者の育成を早く始めたほうがいい」と漠然とアドバイスするだけでは、それがなぜ重要か、どう進めればいいかの具体的なイメージをもってもらわない限り、経営者の意識も行動も変わりません。

「経営力再構築伴奏支援ガイドライン」からの示唆

先日の講義では、2023年に策定された「経営力再構築伴奏支援ガイドライン」に関しても触れられていました。ガイドラインを紐解くと、以下のように提唱されていました。

「専門知識を有する支援者が解決策を提示する課題解決型支援に対し、『経営力再構築伴走支援』は課題設定型の支援方法である。どちらが優れているということはなく、事業者の状況や抱える課題に応じて使い分ける必要がある。」
 すなわち、中小企業の抱える問題が多様化、複雑化する中で、従来型の「課題解決型支援」に加えて、「課題設定型支援」の重要性が高まってきているのです。

本連載で取り上げる事業承継の問題は、単なる解決策の提示だけで完了する案件ではなく、経営者とともに課題を整理し、言語化しながら未来像を組み立てていくプロセスに他なりません。そういう意味で、事業承継支援は「課題設定型」伴走支援のアプローチが求められているといえます。

事業承継支援において心掛けたいこと

このアプローチを実践するためには、経営者から信頼を得て、話しやすい雰囲気づくりが何よりも重要と考えています。そこで、私なりに心掛けるべきポイントを以下の通り整理してみました。

  • 謙虚な姿勢

診断士として専門的なアドバイスをすることも大切ですが、それ以上に、どこに真の問題があるのかを気づかせることが重要だと考えています。それによって経営者の心をつかみ、懐に入りやすくなると思うからです。そのため、経営者の経験や価値観を尊重し、まずは経営者の「思い、ありたい姿」にじっくり耳を傾け、「現状」をしっかり診る姿勢を心掛けたいと思います。

  • 経営者は感情を持った人間である

事業承継は、経営者にとって単なる経営戦略ではなく、人生そのものに関わる重要なテーマです。したがって、経済的合理性だけでなく、心理的安全性にも配慮し、経営者の性格やタイプに応じた最適な言葉を選び、心に響くような支援を心掛けたいと思います。

  • 経営者が「コンフォートゾーン」から抜け出す支援

先日の講義では、もうひとつ興味深い概念を教えていただきました。「コンフォートゾーン」というものです。経営者の多くは、日々の短期的な業務に追われ、事業承継など長期的な課題がおろそかになりがちです。これはまさに、これは、「コンフォートゾーン」に留まっている状態を示しているといえるでしょう。この状況を打破するためには、経営者が「コンフォートゾーン」から抜け出すきっかけづくりを提供していければと思っています。

緊急度vs重要度の二軸で業務をたな卸し

この「コンフォートゾーン」から抜け出すきっかけづくりに、特に有効と思われるのが、コヴィー博士の『7つの習慣』にある「緊急度より重要度を優先する」という原則です。特に、日常業務で多忙を極めつつも、事業承継など将来に不安を抱えている経営者ほど極めて重要な原則と思われます。

緊急度の高い業務は、多くの場合、クライアントの要請や市場の変化などの外部要因によって発生するため、自ら「選択」できる余地は限られます。ただ、投げられてきたボールをとりあえず打ち返しておけば、その時は安心感を得られます。まさに「コンフォートゾーン」です。

一方で、重要度の高い業務は、経営者自ら「コンフォートゾーン」にいることを自覚し、そこから抜け出す「選択」をしなければ実行に移せません。意識しなければ、ついつい緊急度の高い業務に引っ張られ、経営者として、本来重要度の高い業務は後回しになりがちです。

事業承継問題は、まさしく「緊急度より重要度を優先する」原則に従って取り組むべき課題です。

重要度の「判断軸」

その原則を意識しなければ、限りある「経営者の時間」はどんどん「緊急度の高い現在業務」に削り取られてしまいます。これを防ぐために、経営者自身が重要度について「判断軸」を意識して堅持する必要があります。

その「判断軸」となるのが、ミッション、ビジョン、バリュー、すなわち経営理念です。経営理念を常に意識する習慣があれば、企業にとって長期的にどんな業務を優先すべきかブレずに実行できるようになるからです。

次に、VUCAの時代、世界と歴史を見渡し先行事例を学ぶという、幅広い視点を持つことも重要と考えます。「賢者は歴史から学び、愚者は経験からしか学ばない」という名言があります。古今東西、過去の成功・失敗事例を学ぶことで、より確かな「選択」を行えるようになるのではないでしょうか。今や生成AIを活用すれば、英語圏の膨大な情報にも容易にアクセスでき、より多角的な視点と壁打ちしながら、迷った時の「判断軸」を磨くことも可能となりつつあります。

前回、予告していた、M&Aを通した第三者承継支援専門家への有難いツールについては紙面の都合で次回以降取り上げることにします。

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3 コメント

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志を全うする (今村信哉)
2025-03-02 13:43:24
目の前の仕事に追われる(あるいは、目の前の誘惑に負ける)ことが多いので、それではコンサルタント失格だなと反省している今日この頃です。
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Unknown (山口賢哉)
2025-03-02 20:43:54
日々多忙な中小企業の経営者は、たしかに緊急度の高い業務に追われ、重要度の高い業務は後回しになっていると思われます。このような時こそ、一度立ち止まって課題に気づいてもらえるよう働きかけ、一緒に課題解決を目指す伴走支援が重要だなと感じました。
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伴走 (太田一宏)
2025-03-02 22:38:43
「商品を売る前に己を売れ」と若い頃に言われたような。伴走は似ている気がする、と感じるのは拙者だけ?
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