蝶人物見遊山記第209回& 鎌倉ちょっと不思議な物語第367回
鎌倉文学館の抽選に当たったので初めて長谷の川端康成氏の庭園と邸宅を拝見することができました。
甘縄神社のすぐ傍にあるその住まいは、入口は狭いのですが、入ると右に作家の旧邸、左にかなり広い庭があって、広大な敷地の奥の方には家族の方がいまも住んでおられるそうです。
屋敷は宮大工が建てた純然たる平屋の日本家屋で広い和室が手前から3つほど横一列に並んでいて、いちばん奥に玄関口、その隣に書斎や仏間、その奥にはまたいくつかの和室があるようでした。
関東大震災では当地は壊滅的な打撃をうけ、近隣の家屋はみな倒壊したそうですが、この立派で頑丈な建物だけはびくともしなかったそうです。
屋敷を見下ろしているのは「山の音」で不気味なうなりをあげた裏山ですが、かつてこの山に聳えていた高い松の木の枝に鷹を見た、と川端選手はその「竹の聲桃の花」という随筆に書いていますが、残念ながら私はまだ鎌倉で鷹を見たことはありません。
幻は鷹か川端康成か 蝶人